2014/04/06

外国人材の活用は慎重に考えるべき

移民問題

安部首相は減り続ける日本人労働力をまかなうために外国人労働者の受け入れを進めようとしている。企業からすれば労働市場を開放する動きは歓迎すべきものだろう。飲食や販売業のようなロースキル人材を大量に必要とするような業界では、労働力減少に加えて好景気で労働力需要が高まっており大きな問題だ。それに、東京オリンピックに向けて建設業の労働力不足もニュースを賑わせている。

参照: 首相「外国人材活用を」 建設や介護で検討指示 (日経電子版)

日本が今の経済規模や競争力を保持するためにも外国人労働社の受け入れは必要不可欠に思えるが、私個人の考えとしては慎重に慎重を重ねて限定的に少しずつ受け入れるべきだ。

■移民受け入れ国の失敗事例

私が移民受け入れに慎重な考えを持つのは、既に移民を受け入れた国がことごとく移民受け入れに失敗しているという事実だ。

例えば1960年代から東欧やトルコの移民を受け入れていたドイツ。当初は短期間労働だけが許可されていたが、移民が定住し、職を失ってもドイツ国内にとどまり生活保護を受け続けているという問題が起きている。また、受け入れている移民の大半がイスラム系であるため、宗教や文化摩擦といった問題を抱えている。

ブルガリアとルーマニアから広く移民を受け入れていたイギリスでは、実に77%のイギリス国民が移民の受け入れを減らして欲しいと考えている。キャメロン政権は2015年までに移民の数を10万人に絞り込むという公約まで掲げている。

また、ロシアでもアジア系の外国人労働力を受け入れて3Kのしごとを広く担っているが、移民に仕事を奪われたと逆上したロシア人によるアジア系住民への暴力事件や殺人事件が多発している。



どの国もはじめは慎重に移民を受け入れようとした。それこそ安部首相が掲げているようにビザの期間を限定したり、監視体制の強化も行っていた。


だが、受入期間を短期で制限しようとすれば十分な教育が行われず、移民労働者の質が上がらない。企業からは移民をしっかり教育して戦力化するためにビザ発行期間を増やすように要求が上がってくるだろう。そしてなし崩し的にビザ発給条件が緩和されることになる。

定住する移民労働者や永住権を獲得した移民労働者が増えると家族を呼び、仲間を呼び、移民の増加が加速することになる。そして一旦緩和が行われればその蛇口を閉めるのは難しい。

日本は移民受け入れに失敗した他の国と同じ轍を踏もうとしている。

■労働力不足を移民で補うことの問題

単純化すると、移民問題は経済的な問題と受入国の国民と移民の間の融和問題に分けられる。

経済的な問題は至極単純な話で、受入国の仕事を移民が奪ってしまうことと、それに付随する平均賃金の低下だ。
今回安部首相が目指す移民受け入れ政策は建設現場や介護、製造業などロースキル労働力を移民で解決する狙いだ。日本人のロースキル労働力を担う人材が移民と競合し、日本人の失業者が増える。

また、移民が増えることで労働力の供給が改善し、労働者間で仕事の取り合いが発生することになる。すると企業は市場の原理でもっと安い賃金で労働力を獲得することができる。つまり、同じ仕事でも移民が増えることでその平均賃金が下がっていくことになるのだ。



国民と移民の融和問題はもっと厄介だ。移民を受け入れる側と移民が完全に融和している国はゼロと言っても過言ではない。

移民の大半は言うまでもなく真っ当に職を得て真っ当に暮らそうと思って新天地である移民受け入れ国にやって来る。そしてそこで同じ国から来た移民たちとコミュニティを作って情報や相互扶助を行うのは生きる知恵だ。だが同時にこれは受入国との融和を妨げる行為であり、受入国からすると異分子が入ってきたという感覚を得るだろう。

移民の融和問題は経済的な問題だけではなく、宗教的・文化的な異分子を受け入れることに対して受け入れ側の国民が大きな拒否反応を示すのだ。文化的な生物である人間としては当然の免疫反応だと言ってもよい。



これら経済的な問題と融和問題は厄介なことにネガティブスパイラルを生み出す。不況期になると真っ先に移民労働者達が失業し、彼らが生活保護を受給したり、活きるための糊口を得るために犯罪を犯す。そんな移民たちに対して受入国の国民たちは拒否反応を示す。これはほとんど全ての移民受け入れ国で起きている。

■日本は外国人材活用問題をどう解決すべきか

個人的意見としては、そもそも受入国と移民の摩擦をなくすことは不可能だと思っている。移民を受け入れることのネガティブサイドがポジティブサイドを上回るという点に対しても懐疑的だ。

もし一つ可能性があるとすれば、シンガポールの手法に学ぶことだ。シンガポールでは国民が3K仕事に携わらず、時限的にその仕事限定でビザを発給された移民がその3K仕事を担っている。

シンガポールが移民を完全にコントロールできている理由の一つには、与党の人民行動党が圧倒的議席数を誇る政治体制にあるかもしれない。この点、日本がこの政策を真似るのは難しいかもしれない。

2014/03/21

Echelon 2014 日本Satelliteに参加してみた

Echelon日本Satellite

Echelon 2014 日本Satelliteというイベントが2014/3/14にNTTドコモベンチャーズのオフィスで開催された。このイベントはアジアのテック系スタートアップに投資するe27が開催するイベントで、アジアのテック系スタートアップ12社が登場した。6月にシンガポールで開かれる本番のEchelon2014の前哨戦みたいなものだ。

まだマネタイズのプランもない荒削りなスタートアップもあれば、既に100社程度に導入が進んでいるスタートアップもいるなど、結構幅広いステージにいるスタートアップが参加していたが、以前参加したサムライスタートアップ?よりも全体的にクオリティが高い。サムライスタートアップ?ではそのサービス一体誰が使うの?レベルのものや、そもそもこれから作ります、というものが多かった。スタートアップピッチはまだ数えるくらいしか見たことがないが、結構イベントによってバラつきがあるものなんだと認識した。

時間の関係で全てのスタートアップは見れなかったのだが、幾つか面白いスタートアップや発見があったので、シェアしてみたい。

1. iChef


iChefはiPadを使った快適な操作性と多機能性を持つ飲食店向けの新しいPOSシステムだ。iChefは台湾を拠点としたスタートアップで、台湾・香港で約100店舗に導入が進んでいる。同社は日本でのビジネス展開を目指している。
CEOだかCOOのKenのプレゼン能力が優れていて、ピッチでは他のスタートアップをはるかに凌いでいた印象がある。実際iChefは審査員賞を受賞した。

2. Capy

Capyでも画面
Capyのパズル型Cpatcha

Capyは新しいCaptchaのデファクトスタンダードを目指しているスタートアップだ。Captchaとは、サイトへログインするIDの不正利用を防ぐチャレンジ/レスポンス型のテストだ。OCRでは認識できず、人間にしか認識できないような文字列を入力させ、ソフトウェアによるハッキングを防止する。
一般的なCaptcha
一般的なCaptcha

Captchaは今大きな課題を抱えている。OCRソフトウェアの読み取り精度が上がってきているため、もっと認識が難しい文字画像を使うようになってきたが、今度は人間の認識の限界に達してきている。
そこでCapyが考えついたのは、人間の文字認識能力に依拠したCaptchaではなく、コンテキストを理解する能力を利用したCaptchaだ。

下記の参考画像ではパズルを正しい位置に埋め込むタイプのCaptchaだが、ピッチでデモンストレーションされていたのはキャラクターと帽子が表示され、帽子をキャラクターの頭の上にドラッグしていくと認証されるというものだ。それぞれの要素を認識し、どう要素を組み合わせるべきかという課題を、人間だけが持っている常識を活用して解決するという仕組みになっており、よっぽどAIが発達しない限りはソフトウェアのブルートフォースに対して強い対抗力を持つだろう。


何よりCaptchaのビジネスモデルが面白いのは、これからも世の中に増え続けるであろうSNSやWebサービスの基本機能として、大きなスケーラビリティを有しているということだ。シンプルな機能で、かつただのセキュリティ対策のコストでしかないので単価は安いだろうが、変動コストが低くチャリンチャリン稼げるビジネスになるだろう。
さらに、GoogleなどWeb系大手企業にバイアウトされエグジットする可能性も高い。投資先としても結構有望な企業だろう。

2014/03/02

LINEより一足先に換金化を開始したWeChat

メッセージングアプリユーザー数推移

Tencentは中国のコンシューマーWebサービスのナンバーワンプレイヤーだ。

2012年6月時点では世界のWeb系企業の中でも時価総額5位、もちろん中国国内では1位。そして時価総額では、Web系企業として日本で最も時価総額の大きいYahoo!Japanの3.7兆円の約4倍の13兆円だ。歴史は意外と古く、1998年に創業し2004年に香港証券取引所に上場。Facebookが設立されたのはちょうどTencentが上場した2004年なのだ。

■WeChatとは

WeChatはTencentが2010年にリリースしたアジア初でもっともユーザー数の多いメッセージングアプリだ。世界的に見れば最も利用ユーザーの多いSNSのFacebookMessengerがあり、最近Facebookに買収されたWhatsAppがあるが、その次にユーザーが多いのがWeChatだ。中国国内で圧倒的なシェアを誇るため、海外展開の進むLINEよりもユーザー数が多い。

■マネタイズの進むWeChat

どのメッセージングアプリも目指すビジネスモデルは、圧倒的なユーザー数を持つプラットフォームを作り、そこで多くのユーザーから薄く課金をして大きな売上を稼ぐことだろう。マネタイズにおいては、WeChatが他のアプリに先駆けて稲刈りを始めている。そしてその方法はLINEとはまたひと味ちがう側面がある。

・コンシューマーに換金ポイントを設ける

WeChatもLINEも収益の重心はコンシューマー側に重心がある。2013年のある四半期ではLINEの売上の60%はゲーム売上、20%はスタンプ、もう20%はB2Bの公式アカウントであり、実に80%がコンシューマーからの売上だ。WeChatの売上詳細は分からないが、恐らく似たようなものなはずだ。なぜなら、WeChatもLINEと同じように有料スタンプショップとソーシャルゲームを運営している。

だがWeChatがLINEよりも本気で換金化しているなと感じるのは、2013年8月にWeChatアプリに搭載されたオンラインペイメント機能だ。WeChatは主に3つのペイメント機能を提供している。ひとつひとつ紹介していこう。

(1) プリペイド型携帯電話代金のデポジット
ポストペイド型が主流の日本と違い、中国ではプリペイド型の携帯電話代金支払が主流だ。通常この支払はATMやネットバンキングなどで行われるようだが、WeChatでならペイメント機能を通じて、スマホからそのスマホの利用料を入金できるということだ。

(2) QRコードをスキャンして購入する機能
WeChatにはQRコードをスキャンしてオンラインペイメントを実行する機能が追加された。この機能は主にPCやタブレットでECショップを利用する場面を想定して作られているようだ。例えばTencentのECストアであるYixunで買い物しようとするとWeChatペイメントを選択することができ、QRコードをスキャンしてペイメントパスコードを入力すると決済が完了する。アカウントにクレジットカード情報を登録してネットショッピングするほうが簡単な気がするが、WeChatに支払を統一させたいというニーズがあるなら流行るかもしれない。

(3)公式アカウント内の商品をワンタップで購入
これは案外強いかもしれない機能だ。WeChatにもLINEなどと同様に企業のブランディングページを展開することができる。そこに企業が紹介した商品を、ワンタップで購入できるというわけだ。フラッシュマーケティングに向いたペイメントサービスと言えるだろう。
最近LINEもLINE MALLという個人もビジネスも使えるECプラットフォームを提供し始めたが、WeChatのほうが3四半期も先に企業向けにマーケットプレイスとしてプラットフォームを提供し始めた形だ。

・銀行サービス

さらにWeChatにユニークなサービスが、つい最近参入したオンラインバンキングサービスだ。
WeChat Wealthなるサービスでは、100万元を上限にファンドへ投資することができる。この口座に入金すると、自動的に華夏銀行が運営するファンドに運用され、年率6.435%の運用益が見込まれるのだという。
WeChatがコンシューマーのあらゆる生活側面に根ざしたサービスになろうという思想が透けて見える。



アジアではWeChatとLINEがユーザー数を競い合っているが、グローバル展開という意味ではLINEが一足先ん出ている印象だが、換金化のスピードや幅広さはWeChatも負けていない。だが一方で、LINEもつい先日B2B向けにAPIを公開したり、クリエイター向けにスタンプショップを公開したりと矢継ぎ早に換金化サービスを広げている。どちらのサービスがアジアを制するのか、引き続き見守って行きたい。

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