2012/09/04

顧客を囲い込むなら有刺鉄線ではなくバラの生垣で

小売業で最も大切なマーケティングのテーマのひとつに、顧客の囲い込みがあります。様々な手段を用いて、自社でリピート購入してもらうことを目的とした活動です。主だったいくつかの囲い込みの手段を見ていきましょう。


ポイントカード。自社チェーン、またはグループでの買物金額のうち数%がポイントになり、次回以降ポイントを精算にあてることができるシステムです。Tポイントカードや家電量販店系のポイントカードが有名ドコロですね。特徴は付与したポイントと利用されるポイントとの格差が結構あるようで、企業に有利なシステムです。なぜなら引当金として負債化された差額は金利のない借入のようなものなので。ただし、家電量販店のような異常なポイント率の場合は話は別のようで、負担が大きいようです。ポイントカードによる顧客囲い込みは企業にとっては負担がそれほど大きくないにもかかわらず、ポイントカードを元に顧客の購買行動が見える化できるので、あらたなマーケティングの機会を提供します。Tポイントカードが業界横断で連携先を増やしているのはまさにこのためです。


情報提供。最近多くなってきている、ブランドやチェーン、店舗などのメルマガが情報提供による囲い込みにあたります。使われ方としては、新製品の販促やイベント告知、商品の効果や製造過程などを紹介する顧客教育といったことに用いられます。情報提供がうまくいくと顧客の欲求を高めて購買行動をコントロールできますし、顧客教育によるブランド価値の向上も効果がありそうです。しかし、よほどためになる情報を継続的に提供してくれるか、よほど読み物として面白くない限り、途中で顧客に飽きられてしまう可能性が高いでしょう。新しい使い方として、双方向の情報提供が生まれています。SNSを使って顧客参加型で製品開発するなどの例が出てきています。某女性下着メーカーが顧客参加型の製品開発をしたところ、大きな反響を呼びました。


割引クーポン。言うまでもなく、商品を一定率、一定額で割り引くチケットを配布する手法です。最近ではグルーポンなどのクーポンそのものをビジネスとする企業の出現やLine公式アカウントのクーポン配信など、ホットな手法です。しかし、クーポンが囲い込みとしては効果が弱いと見えます。最も有効なのは新規顧客の開拓と安価な商品のリピートに限られるでしょう。高価な商品は高品質や自分用カスタマイズなどの付加価値を理由にロイヤルティが形成されるので、クーポンなどの割引ではリピート効果は薄いでしょう。さらに、安価な商品でもクーポンを使い過ぎると、割引なしでは購入しない理由になってしまう危険性があります。クーポン新規顧客の開拓に集中的に使うべきでしょう。


保証を高める。実はこれは一番有効だと思います。心理学的に、人はプラスを得ること(割引クーポン・ポイントカード)よりも、マイナスを回避すること(保証)を2倍重視するという研究結果があります。ただし、保証も使いドコロが重要です。というのも、普通保証はUSPにはなりえません。例えば、DellのPCとAppleのMacでどちらを買うか悩んでいるとき、スペックやOSの違い、デザインなどが購入を決める要素になるでしょうが、保証で選ぶ人はおそらく少数派です。なぜかというと、パソコンの本質的な付加価値ではないからです。「何を」買うか悩むときに保証はあまり関係ないということです。

しかし、「どこで」買うかという判断をするとき、保証は大きな意味を持ってきます。楽天やヤフー、アマゾンなどのECショップでは、あまり品揃えや値段などの違いはありません。そうするとどれだけ保証がついているかということが大きな価値を持つようになります。裏付けるように保証を手厚くするECサイトが増えています。


日経MJ 2012/9/3 P.13ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

楽天は3日、仮想商店「楽天市場」などで保証サービスを導入する。商品購入後に発生した破損や盗難、修理の際に年間10万円を上限に購入額や修理費用を保証する。インターネット通販ではヤフーも保証サービスを拡充しており、競争が激化するなか顧客の信頼性を高めて囲い込みを進める。

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実はこの手法はダイレクトレスポンスマーケティングの世界では十年以上前から使われているリスクリバーサルという手法です。保証を高めることが顧客のロイヤルティを高めることは昔から証明されていたようです。


発想を一歩前進させてみます。これらのBtoCの手法をどのようにBtoBに転用することができるでしょうか?購入するものによりますが、ポイントカード、割引クーポンはあまり向かないと思います。まず、企業は予算ありきで動くので、次回安くなるというのはあまりメリットを感じないでしょう。それに会計処理をややこしくしてしましかねないので、還元率によってはそんな割引ないほうがいい、ということになり全く囲い込みにならないかもしれません。もっとも使われているのは情報提供ですね。メルマガはどの企業も比較的活用していますし、SNSの活用も増えてきています。有望そうなのはリスクリバーサルです。BtoBにとっては非常識すぎて使われていない手法ですが、ある程度販売数量が多いパッケージ製品ならリスクは計算しやすいと思います。ただ、前述のとおり、「何を」買うかという判断で保証の厚さは主な差別化要因には成り得ないので、効果は懐疑的な部分もあります。むしろ、インテグレーターがパーツとなる製品を無償または差額のみで入れ替えるという保証をしたほうが訴求効果はありそうですね。


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