2012/10/31

キングジムの特化戦略

1029日付けの日経MJ3面にキングジム社長のインタビューが掲載されていました。ファイルのキングジムといえばピンと来る人も多いでしょう。実はラベルプリンターで誰でも知っている「テプラ」の生みの親でもあります。
キングジムは事務用品メーカーですが、メモを取ることだけに特化した電子機器pomeraや前述のテプラなど、定番用品とは少し違う独創的な商品で有名です。

そのキングジムの社長 宮本彰さんのインタビューが、ニッチ戦略を考える上で教科書的お手本になりますのでシェアしたいと思います。

□買う人は少なくても深く刺さる商品
キングジムの商品はどれも、誰もが使う商品ではなく、使う人は少数だけれどこの商品がないと困ってしまうようなものばかりです。テプラがない総務部なんて考えられませんし、デジタルメモのpomeraも一部ブロガーから熱狂的支持を受けているようです。使う人が10人に一人でも、その人たちにとって無くてはならない商品である方が商品として安定するのです。
宮本社長は、「人間の頭の中には常に買い物リストがあります。欲しい度合いが高い品から買っていくと、どこかでお金が尽きます。10位まで買える人たちのリストで15位に入っている商品はいくら作っても売れない。」と言います。
まさにこれがニッチ商品のあるべき姿なのだと思います。

□他社が参入しない程度の規模のカテゴリを独占
宮本社長は市場が10億程度しかない商品がベストだと考えています。なぜなら、他社が市場を奪いに来るほどの大きさではないからです。参入する企業がなければ価格決定権は企業にあるので高収益をもたらします。
デジタルメモの市場規模がちょうど10億くらいなのだそうです。実際、pomeraの値段は2,3万程度と機能の割には高いという印象です。しかし、他社は新規参入してきません。新規参入しても、自社もキングジムも損をするだけだと分かっているからですね。
一方、テプラは市場規模が50億程度とやや大きかったので、他社が参入しています。テプラはテープで利幅をかせぐインストールベース利益モデルなので、競合他社もうまみがありそうだと見たのでしょう。

□安定した定番商品で食い扶持を稼ぎ、新商品で勝負
キングジムはファイルとテプラという定番かつ安定した需要が見込まれる商品が強いからこそ、新しい商品で果敢にニッチを攻める事ができます。こうした強い商品を持たない企業は、ついつい安全策のつもりでニッチではなく主戦場を攻めてしまいます。結果、撃沈。市場で受け入れられたニッチ商品が次代の定番商品になり、その利益が次のイノベーティブなニッチ商品の原資として再投資されてゆくのです。

安定収入を得られるニッチ商品で土台を固めつつ、新しいニッチ商品でイノベーションを作り出す。商品軸のイノベーティブな企業として理想的なかたちだと感心しました。


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2012/10/30

クライミングジムの売上向上策

昨日はフリークライミングやボルダリングのクライミングジムについて勝手に考えてみました。ジムひとつあたり1000人程度の会員を有し、売上は月収400万程度で、コストは家賃が100万程度で人件費が250万、雑費で10万~20万と計算しました。人件費はもうちょっと安いと想いますが。
いろいろ趣味が多く、趣味関連のこうした施設がビジネスとして成り立つと生活が豊かになるなあ、なんて思っている私としては、クライミングジムの売上を向上させる方法を考えてみたいと思います。

まず基本の「き」ですが、売上を向上させるには原則次の3つの方法しかありません。
1.単価を上げる、2.顧客を増やす、3.購入頻度を上げるの3つです。この3つの要素はもう少し細かく分類できます。「単価を上げる」については、商品単価を上げる、顧客一人あたりの購入点数を上げる、複数の商品を組み合わせてセット販売する、ということが考えられます。「顧客を増やす」は、これ以上分解するのは難しいですが、単価が高い顧客を増やすにはどうするか、など顧客増を具体化して考えると良いでしょう。「購入頻度上げる」では、顧客の来店頻度を上げる、来店時の購入確率を上げる、という要素が考えられます。
この原則を念頭に、幾つかのプランを考えてみました。

単価を上げる
・パッケージ販売:ビギナーズパックやレッスンパック
初心者向けの講習やレベルアップスクールなど、競技技術習得のためのパッケージです。クライミングジムは固定的な月額費用をとっているところはほとんどなく、一日や半日単位で利用料を請求しています。初心者向けコースやレベルアップコースなどの付加価値パッケージを販売することによって、先払いで確実な収益を得ることができますし、通常の利用料金よりも高い単価を要求することができます。また、そのパッケージを購入した人が継続的にクライミングジムを利用する可能性も高くなるでしょう。私が行ったジムはパッケージ販売に積極的に取り組んでおり、私もビギナー向けのパッケージを購入しました。参加したビギナーズパックは2万円弱で3回の講習がついています。通常は一日クライミングジムを使用すると2000円前後なので、どれだけ単価が変わるかお分かりいただけると思います。

・物販:クライミングに必要なグッズを販売
現実ほとんどのクライミングジムで物販は行なわれています。最近登山が流行っているので町中で登山用品店が目立つようになってきていますが、フリークライミング用のグッズを十分においている店舗は少ないので需要があるのでしょう。店頭にグッズを置いているだけではあまり売れていないようなので有名クライマーによる実演販売や実際にシューズなどの商品を試してクライミングできる、といったような販促イベントもあると良いでしょう。


利用者数を増やす
・山岳会との連携:山岳会の「ホーム」になることを狙う
フリークライミングに興味を持っていない人に興味を持たせてを新たな顧客とするのは非常にコストが掛かり成功率が低いでしょう。それよりはフリークライミングに興味を持っているが、クライミングジムをまだ利用していない人々にアプローチするほうが効果的です。例えば、登山を趣味にしているけどフリークライミングはしたことがないという人々や、いつもアウトドアでフリークライミングをしているけどインドアでの経験はないという人々が一番顧客化しやすいでしょう。山でフリークライミング体験イベントを開催すると、たまたま登山をしている人を顧客化できるかもしれません。また、クライミングジムを山岳会のホームのような位置づけを狙ってみるのはどうでしょうか。山岳会で登録すると割引したり、グッズを提供したりといった個別のサービスを実施し、固定客化できる施策をうちます。山岳会がホームのクライミングジムを持つようになると、クライミングジム対抗戦のようなイベントで盛り上がりそうです。

・アウトドアショップとの相互送客:ポイントカードや割引チケット
自分たちはショップでの物販の売り上げを諦める代わりに、クライミンググッズ販売店と相互送客し合うというのも一つの可能性です。販売店からすると購買意欲の高い顧客を紹介してもらえるのでメリットがありますし、クライミングジム側にとっても顧客化できる可能性が高い見込み客をタダで連れてきてくれるので、win-winでしょう。

・ゲーム要素を取り入れる:チーム同士のバトル
登山やクライミングがいまいち人気が出ないひとつの理由は、競技にゲーム性が不足しているからではないでしょうか。登っている本人この上なく楽しいのですが、見ている方はあまりおもしろいとは言えません。しかし、ルートを成功したらポイントをつけてチーム間で競争するバトル要素を取り入れると、案外ファンが増えるかもしれません。垂直の壁を登ったり、むしろそっくり返った壁を登っているのは見た目にインパクトがありますからね。定期的にチーム対抗戦などのイベントを開催していると徐々に利用者も増えてくるでしょう。


利用頻度を上げる
・訪問単位の課金ではなく月単位や年単位のパスを
顧客の利用頻度を上げるには、最初に月単位や年単位のパスを購入してもらうことです。単価は下がることになりますが、ジムを継続利用してもらえる可能性が高まります。

幾つかアイディアを出しましたが、月単位、年単位のパスや物販、パッケージ販売などは既に施策として実施しているジムが多いようです。そうするとイベントや山岳会との連携で顧客の裾野を増やしていくことが重要になるでしょう。



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2012/10/29

フリークライミングジムの経済性

私事ですが、週末にフリークライミング体験をしてきました。フリークライミングとボルダリング専門のクライミングジムが自宅の近くにあり、そこでビギナーレッスンを受けてきました。ご存知ない方のために解説すると、ボルダリングとは3,4mの壁を登る一番カジュアルなクライミングスポーツで、ロープで体を固定したりはせず、壁の下にマットを引くことで体の安全を確保します。一方、フリークライミングはロープとハーネスで安全を確保して10~15m程の壁を登る競技です。

驚いたのは、日曜日というのもありますが、想像以上に利用者が多くて常時50人以上はいたと思います。ボルダリングを合わせると6-70人でしょうか。ボルダリングはスポーツとしては始めるのに敷居が低く、シューズとチョークバックを揃えればOKなので、手軽な運動としてにわかに人気が出てきているようです。しかし、フリークライミングの方はシューズとチョークバックだけでなく、ハーネスやロープ、カラビナなどを揃える必要があり、それなりに敷居が高くなっています。

フリークライミングはその性質上、町中で競技している人を見かけるようなスポーツではないのでどの程度の競技人口があるのかと思っていましたが、案外多いのかもしれません。私が行ったジムで6,70人が競技していて、登録しているフリークライマーは10倍以上はいるでしょうから1,000人程度でしょうか。簡単に調べた感じでは都内でフリークライミングできるジムは、両手で数えられる程度しか存在していないようなので、都内のインドアフリークライミングを楽しむ競技人口は1,000人×10(都内のジム数)で、ざっくり約10,000人といったところでしょう。

クライミングジムの経済規模
新しい世界に入るとどうしてもその業界の経済規模やビジネスモデルが気になってしまうので、クライミングジムの経済性を考えてみました。
ガッツフィーリングで月一以上利用する利用者が1000人で、一人平均月2回の利用、単価を料金表から1,800円程度と考えると、月収360万円。検算として別の考え方をしてみると、土日の常時利用者が70人で1.5回転、平日がその6割の利用率で単価を1,800円とすると約400万の月収です。物販もしていますが、あまり売上への貢献度は大きくないでしょう。収入は月400万で年4800万の売上と考えます。
次にランニングコストを考えます。私が行ったジムは平米単価約2,500円の場所で大体400平米ぐらいでしたので、家賃が月100万。スタッフは14人いますが、恐らく社員2人であとはパート・アルバイトと思われます。福利厚生含め社員一人のコストが35万、アルバイトが15万だとすると、250万。雑費で10~20万程度といった具合でしょうか。

明日は売上を増大させるためにどうするかを考えたいと思います。それにしても腕がパンパンで筋肉痛必至です。。。



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2012/10/28

ぐるなびの次の一手 多対多から個別化へ


ぐるなびは全国にわたる50万店のレストランとその利用者を結ぶポータルサービスです。登録しているレストランは、広告料・利用料を支払ってぐるなびで店舗情報とクーポンを提供するポータルサービスと、ぐるなびが持つ豊富なマーケティングデータを活用した販促サービスを利用することができます。一方、ユーザーにはプレミアムサービスを提供して有料課金を実現しています。ぐるなびはこのビジネスモデルで売上240億円、純利益10%を達成しています。

ぐるなびはポータルビジネスの草分け的な存在ですが、彼らが始めた新しいサービスに今後のポータルビジネスの方向性が垣間見えます。以下の記事は、ぐるなびが開始した有料プレミアム会員向けのぐるなびコンシェルサービスに関する記事です。

日経MJ 2012/8/24 p.3―――――――――――――――――――
コンシェル利用者は、まず電話やメールで希望の料理のジャンルや予算、人数、目的などを伝える。すると、オペレーターが原則5分以内に会員の携帯電話のメールに3〜5店の情報を送ってくる。おすすめする店舗はぐるなびに加盟する約50万店の中から選び出している。
――――――――――――――――――――――――――――――

この記事から察するに、ぐるなびはレストラン向けのサービスを厚くして店舗からの収入を増やすよりも、個人利用者のロイヤルティを高めて収入を得るモデルを強化するほうが成長性が高いと考えているようです。正確な数字は資料を取り寄せる必要がありますが、店舗への課金は月額3~5万円から機能やカスタマイズが豊富になると月額数十万円という単位になるようです。忘年会特集などの販促を利用すると、さらにショットで数十万円。これ以上店舗からの収入を増やそうとすると、正当化できるだけ効果のあるマーケティングプランを提供できないといけません。それよりは個人顧客のプレミアムユーザーを増やそうということでしょう。

プレミアムユーザーの数を拡大するために、ぐるなびはコンシェルサービスで新たな付加価値を追加するという方法をとりました。これまでのプレミアム会員のメリットは、掲載店舗を予約・利用するとポイントが何かと高倍率で貯まる程度のサービスでしたが、今後はコンシェルサービスのようにユーザー個別のニーズに応えるサービスが増えていくでしょう。
実は利用者を獲得するためにサービス個別化の動きを見せ始めたのはぐるなびだけではなく、他のポータルでも同じような個別化の動きがみえます。

例えば、リクルートの不動産ポータルサイトであるSUUMOもスーモカウンターというオフラインの窓口を構え、顧客個別のニーズを捉える個別化戦略を展開し始めています。このスーモカウンターでは、利用者(主に不動産を買いたい人)向けに個別相談会やセミナーを行なっています。SUUMOは利用者向けに十把一絡げに情報を提供するだけでは利用者個人のロイヤルティを高めるには不十分で認識しています。SUUMOへの利用者のロイヤルティを高め、自社サイトを利用した賃貸契約や売買契約を促進して手数料収入を増やすために個別化戦略で利用者へ働きかけているのです。

これまでのポータルビジネスは、企業向けに情報掲載や販促支援サービスで成功してきましたが、掲載企業から収益を得るモデルが固定化してきており、プレイヤーも増えてきたため戦略の転換を迫られています。ポータルビジネスの次の一手として、個別化戦略が一つの可能性として選ばれているようです。


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2012/10/27

新興国を見込み顧客とした伊藤忠のプロダクトフロー戦略

伊藤忠商事は売上総利益(売上じゃありませんよ)が1兆円を超える言わずと知れた超巨大商社です。繊維業から始まった事業なので、いまでも繊維業の強みが突出しています。しかし現在では総合商社なので、衣料だけでなく食料から機械、資源、不動産から金融までなんでも幅広く取り扱っています。

私は商社のビジネスに明るくありませんが、商社の原型は「売りたい商品を持っているけど売る先を持たない人」と「買いたい商品があるけど手に入れられない人」を結ぶビジネスです。インターネットの登場のお陰で小さくなったこの世界では、売りたい人と買いたい人を結ぶプラットフォームはいくらでも存在します。そんな中、商社のビジネスモデルはアパレルメーカーの新興国での工場設立の支援や現地企業との資源開発など、単純にモノを右から左へ流すだけのビジネスからより高付加価値なビジネスへシフトしています。
どんな商品を取り扱っているにしろ、商社のビジネスには二種類の顧客がいます。商品を買ってくれる顧客と、商品を売ってくれる顧客です。商社の場合、仕入れられる商品が買ってくれる顧客にもたらす価値を決定づけるので、売ってくれる顧客が買ってくれる顧客と同等に重要です。この関係性は商社の特殊性と言えるでしょう。

他の産業と比べて、商社は非常に早い段階で新興国とのビジネスの開拓を進めていました。なぜなら、新興国は商社の扱う商品を必要としている前途有望な買い手であると同時に、安い労働力や資源をもつ有望な売り手でもあるからです。総合商社はこのような新興国と特定の商品カテゴリだけで点で接したいのではなく、さまざまな商品カテゴリで面で接したいわけです。
伊藤忠の新興国へのアプローチは、明確に接点を増やして面にしていく戦略が見受けられます。

伊藤忠は新興国でのビジネス進出を果たし、拡大していく上で、プロダクトフローに則った戦略を実行しています。プロダクトフローとはマーケター佐藤義典氏のコンセプトで、見込み顧客に対してまずは売れる商品(利益率が低い、またはタダのフロントエンド商品)を提供し、無理なく売りたい商品(利益率の高いバックエンド商品)へ誘導していく方法です。
伊藤忠は、繊維や食品という生活関連事業をフロントエンドビジネスとして、最終的にインフラや資源、不動産、金融といったバックエンドビジネスを手がけられるよう、新興国にはたらきかけています。いきなりインフラや資源開発をさせろと要求すると、相手側新興国は自国の重要な資源や利権が奪われるのではないかと警戒させますが、生活関連事業は相手国にとってそういったリスクが低く、確実に雇用を生み出し国民の生活水準を上げてくれます。まずは相手が受け入れやすい生活関連事業で十分に信頼を得て、インフラや資源開発に乗り出すという戦略です。

この戦略が功を奏していることを示す記事が日経産業新聞にありました。

日経産業新聞 2012/10/22 p.22―――――――――――――――――――
伊藤忠商事が中東や東南アジアなどで「ポスト中国」を探っている。その先兵役が、アパレル製品や食料品などの生活関連事業だ。 (中略) 川下事業(注釈: アパレル・食料品などの生活関連事業)で深く根を張り、現地のビジネスを資源やインフラ分野まで太くしていく深謀遠慮がある。伊藤忠が「川下」から新市場に入り、「川上」まで攻め上がる経験は初めてではない。最大の成功例が中国。1990年台に広がった中国進出ブームの中、日本のビジネス界で定着した「中国なら伊藤忠」の定評も始まりは、他社に先行して進出した繊維などの生活関連ビジネスだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

商社のように売ってくれる顧客が買ってくれる顧客と同等に重要であるビジネスの場合、売り手の顧客化は買い手の顧客化と同じくらい戦略的に行わなければなりません。プロダクトフローは本来、買い手の見込み顧客を顧客化するための方法論ですが、商社ビジネスにおいては売り手の見込み顧客を顧客化するためにも活用可能であることを示しています。



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2012/10/26

異業種からの侵略者

前回は、競合は同業他社だけでなく顧客の求める価値によって異業他社も競合になるということについて書きました。顧客が求める価値を提供しているのであれば、まったく別の企業が競合してくる可能性があるのです。テーマパークの競合は他のテーマパークと考えがちですが、「休みの日を恋人と楽しく過ごす」というニーズで考えればショッピングモールや公園も競合となるわけです。

私の勤めるIT企業でも最近このような気付きがありました。私の部門はハードウェアとソフトウェアをセットにしたソリューションを顧客へ提供するSIerです。競合他社として考えていたのは、まずはSI事業をおこなっている同業他社ですが、最近ではディストリビューターも競合として認識しなければいけません。もともとディストリビューターはハードやソフトを流通させていただけですが、徐々にITビジネスの川上へ移行しSI事業をおこなうようになりました。SIerに対する顧客のニーズは「○○という課題を解決してくれる、一まとまりのITシステムが欲しい」なので、ディストリビューターは自社が流通させているハードやシステムを組み合わせて提案すればSIerと同じバリューが提供できてしまうのです。

さて、ディストリビューターまでは想定の範囲内でしたが、最近発見したのはリース・ファイナンス会社も同じようにSIerとしての価値を顧客に提供しつつあるということです。リース・ファイナンス会社を利用する顧客の主なニーズは「一括払いで高価な機器やシステムを導入してキャッシュフローを悪くしたくない」というところだと思います。これまではリース・ファイナンス会社は顧客のキャッシュフローを改善するファイナンシャルサービスの提供が主要な付加価値でしたが、さらに顧客に提供する付加価値を高めようとした結果、リース・ファイナンスと共にIT機器やシステム導入の手助けをするワンストップソリューションに踏み込んだのでしょう。

まったく別のビジネスドメインにいる異業他社が競合してくるというのは2つのポイントで脅威です。
一つは、業界のプレイヤーが増えて競争が激化するという点です。異業種が自社の業界に参入してきても、パイが大きくなるわけではないので、当然ながら競争が激化します。
二つ目は、相手は自社が提供できない付加価値を持っているということ。異業種が異業種たるゆえんは、自社とは違うバリューを提供できるからです。競合が新たに業界に持ち込んだ価値が顧客にとって魅力的だったとすると、流出する顧客を止める術がありません。

しかし、異業種からの侵食者は必ずしも排他的な関係とは限りません。業界における専門知識やブランドは、新規参入者がキャッチアップするにはそれなりに時間がかかるものです。一方、異業種の新規参入者が提供できるバリューが顧客にとってメリットがあるのであれば、パートナーシップを結ぶというのがwin-winな解決策です。ただし、いつか専門知識を蓄えてパートナーシップを解消してくる可能性もあるので要注意ですね。


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2012/10/24

競合は同業他社だけじゃない

自分のビジネスの競合を尋ねると、ほとんどの人が自社とまったく同じ業態の競合他社を思い浮かべます。しかし、世の中残念ながら単純ではなく、想定していなかったような業態が自社と競合している場合があります。

ラーメン屋にとっては近隣のラーメン屋は当然競合しているライバルです。しかし、視野をラーメンから昼食に広げるとファストフードや弁当屋、ファミレスも競合してきます。視野を「ビールを飲みながら夕飯が食べられる店」にずらすと、焼き鳥屋や大衆食堂が競合としての存在感が濃くなってきます。

この視野を何を基準にして定めるべきかといえば、間違いなく顧客のニーズです。もっと理解しやすい言葉で言うと、自社の顧客が自社を利用している理由です。自社に来ている顧客のニーズが「ラーメンがどうしても食べたい!」というニーズなのであれば近隣のラーメン屋だけを競合としていれば良いのですが、自社の顧客のニーズが「手ごろな昼食」であった場合はもっと視野を広げなければいけません。

つまり、経営者は自社の顧客のニーズを正確に理解したうえで競合を定義しなければいけません。まずは自社の顧客に対してアンケートやインタビューでニーズを正確に把握します。ここを思い込みで顧客のニーズを決めてしまうと、的外れどころか逆効果な手を打ってしまう可能性すらあります。

例えば、周囲に高価な食事どころしかないので手ごろな価格の自分のラーメン店に来ているお客様を「ラーメン好きが集っている」と勘違いしてしまうと、周辺の本格中華料理屋をライバルだと思い込んでしまうかもしれません。思い違いに気づかないまま、対策として値上げして味にこだわる戦略をとった場合、これまで自分の店に来ていた顧客をみすみす逃してしまうことになります。美味しいラーメンを求めてくる顧客は増えるかもしれませんが、周辺が高級路線の店なので結果的にはマイナスになってしまうでしょう。

このラーメン店が取るべきだった施策は、現状維持で良かったのです。なぜなら、安く飯を済ませたいという顧客のニーズに対して競合はいないエリアだからです。しかし、もちろん同じ低価格路線のファストフードやチェーン店がこのような出店余地のエリアを放っておくことはありませんから、遅かれ早かれ参入してくることになります。そうするとこのラーメン店は一気に苦境に立たされることになるでしょう。

経営者は常に顧客のニーズと、顧客のニーズからみた競合を正確に把握して自社を差別化する方法を考えていかなければならないのです。今日こんなことに考えが至ったのは、私の働いているBtoBのIT企業に対して意外な競合が発見されたからなのです。これについては明日書いてみます。


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シャドープランニング: ALSOK次の一手

京王線の中吊り広告を見て初めて知ったのですが、京王線の鉄道警備はALSOK(綜合警備保障株式会社)が請け負っているのだそうです。ラッシュの時間帯にプラットフォームで利用者の安全を守っている人たちでしょうかね。ALSOKはとにかく夜間ビルの警備をしているというイメージしかありませんでしたが、実は非常に広い範囲でビジネスを展開していることがわかりました。
そんなALSOKの次の一手を、自分が社長だったらどう展開するか考えてみました。勝手に企業の次の一手を考える思考訓練をシャドープランニングと呼んでいます。

現在ALSOKのビジネスは、4つの主要事業から成り立っています。機械警備業務、常駐警備業務、警備輸送業務、その他の業務です。機械警備業務はALSOKの売上の半分近くを占める主要ビジネスです。契約した企業、または個人の建物に設置された警備センサーなどが以上を感知するとガードセンターと呼ばれる中枢機関に通知され、ガードセンターから最寄りの詰所へ連絡し、ガードマンへ現場へ急行するというサービスです。ガードセンターや全国各地の詰所というハードへの投資、ガードセンターを運営するためのITへの投資が重い、インフラ型のストックビジネスですね。損益分岐点は高いですが、契約数が増えるほど高い利益率が望め、安定した収益源になります。常駐警備業務はその名の通りオフィスビルビルなどに常駐して警備に当たるビジネスです。警備輸送業務はATMなどの現金輸送を担当します。その他の業務では清掃や設備管理などが含まれます。
機械警備がほぼ半分の売上を上げ、他の3事業がそれぞれ10~20%の売上を構成しています。

■損害保険への進出■
ALSOKは警備により安心を提供するのが本質機能です。この安心を提供するという価値を拡大すると、損害保険を提供するというのがしっくり来るビジネス領域の広げ方だと思います。ALSOKは警備により安心を提供するものの、万が一それでも損害が起きてしまった場合には保険による補償を提供するというのは顧客視点でも納得感があるように感じます。数十万件という契約を持つALSOKは、インシデントがどれだけの率で発生し、そのうち何%で損害が発生するかを計算するのに十分な情報を持っているはずです。保険を警備とパッケージ化して売ることをメインにすれば、保険の掛金のかなりの割合を占めるであろう営業コストもほとんど要らないことになります。契約数がある程度見込めれば、利益率と付加価値の高いサービスになるでしょう。

■高齢者所在確認サービスなど■
売上の最も多くを占める機械警備のビジネスモデルからすると、ALSOKのユニークなアセットは、24時間365日でセンサーからの異常を受け付けているガードセンターと全国にあるガードマンの詰所です。本質的な要素を取り出すと、異常を感知してすぐ駆けつけることができる、という体制がALSOKの強みなのです。これを転用すれば、一人住まいの老人宅にドアの開閉などを検知するセンサーを設置し、一定時間動きがなければ現場に急行するといった、見守りサービスが提供できます。顧客が独居老人や老人ホームに入居させる資金が足りない家族ということになるので、一件あたりの売上は小さいかもしれませんが、固定費はメインの機械警備で回収できているので、利益への貢献は小さくありません。

ALSOKのように業界のトップ企業はトップ企業だけあって明らかな強みを持っているので、その強みを活用した次の一手が考えやすいですね。しかし、実際に実行に移す上では、プロフィットゾーン経営戦略の専門家利益にある通り、同時に複数の新規事業へ打って出るのではなく、新しい一つの領域で卓越するのが重要でしょう。

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2012/10/22

「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート3

エイドリアン・J・スライウォツキーとデイビッド・J・モリソンによる著書「プロフィット・ゾーンの経営戦略」から利益を生み出す22の方法について紹介します。昨日までで14番目の方法まで説明しました。今日は残りの15~22までご紹介します。

15. 取引規模利益
このモデルは主に多大なインフラ投資のため損益分岐点が高く、販売量を増やした時のコスト上昇が低い携帯キャリアやロジスティクスのような企業で有用な利益モデルです。こうした業界では利益率の高い顧客にターゲットを絞って販売量を増やすことが基本戦術になります。取引規模利益モデルが適用されるのは必ずしもインフラビジネスだけでなく、沢山のアナリストという固定コストを抱え、取引の数ではなく規模の大きさで手数料収入が大きく変わる投資銀行でも適用できます。

16. 価値連鎖ポジション利益
一つの製品やサービスは複数のステップからなるバリューチェーンのアウトプットですが、各ステップで生み出される付加価値の大きさと利益は必ずしも一致しません。このため自社がそのバリューチェーンの中で利益率の高い付加価値創造ステップに所属していることが重要になってきます。

17. 景気循環型利益
景気サイクルの影響を受けやすい業界において、景気の影響を戦略にあらかじめ折り込んでおき、利益を最大化しようという試みです。方法としては、正攻法ですが好景気の間にできる限り利益をオーバーアチーブする、コストと売価をコントロールするなどの方法論があります。

18. 販売後利益
インストール・ベース利益と似ていますが、販売後のアフターサービスやファイナンシングで利益を生み出すモデルです。GEの例では、機器の販売での利益は少ないものの、ソリューション利益とファイナンシングによる販売後利益で売上高利益率の多くを上げています。このモデルの特徴は、インストール・ベース利益と違い、インストール・ベースの元となる製品やサービス(例えばプリンター)を自社が販売している必要がなく、他社が販売した製品のアフターサービスを販売するというような他社製品依存型でも実現可能です。

19. 新製品利益
業界の中でも需要が落ち着いて利益率が低い商品と需要が高く利益率も高い製品があります。PCハードの業界ではデスクトップPCは必ず一定の需要があるものの利益率がこれ以上上がることはありません。一方、業界内で新製品であるウルトラブックは需要が旺盛で利益率も高いため、経営資本を投入するならウルトラブックに集中すべきです。このように新しい商品で利益を稼ぎだしていこうというモデルが新製品利益です。

20. 相対的市場シェア利益
同じ市場における競合他社よりもシェアで優位に立つことにより、規模の経済による製造コストの低減や製品一ユニットあたりのマーケティングコストの負担が減り、競合他社よりも相対的に利益率が高くなるというモデルです。シェア絶対主義は必ずしも利益にはつながりませんが、相対的市場シェアをを獲得することにより利益率が高まることもまた事実です。

21. 経験曲線利益
製品の製造やサービス提供に習熟することにより、製品一ユニットあたりの製造コストの低減や不良品率の低下といった恩恵があります。習熟によってコストを低下させ、利益率を高めるのもひとつの利益モデルです。

22. 低コスト・ビジネス・デザイン利益
経験曲線利益のような連続的なコスト削減に対し、ビジネスモデルを大きく変える非連続的なイノベーションにより、ゲームを変える企業が出てくることがあります。爪に火をともすようなコスト削減を繰り返していたPC業界に参入したデルは、営業チャネルを大胆に絞り込み、製造と販売をダイレクトに結びつけることで大幅なコスト削減を実現しました。ライバルPCメーカーの連続的なコスト削減アプローチではデルの勢いを止められず、一気にシェアを奪われました。

以上が利益を稼ぎだす22の方法です。
ある業界では当たり前に使われている方法が、別の業界では全く新しい概念だったりします。ビジネスデザインを考えるときに、是非参考にしてみて下さい。
それにしても、欧米のビジネス研究者によるビジネス書はどれも徹底して研究されていて、豊富な事例が掲載されています。ほんとに頭が下がります。



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「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2

昨日に続き、エイドリアン・J・スライウォツキーとデイビッド・J・モリソンによる著書「プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新」から利益を生み出す22の方法についてまとめていきます。読みながら、ぜひ自社の属する業界で活用されている型はどれか、自社が利益を獲得するために取るべき型はどれかを考えてみて下さい。

今日は中盤の8から14まで紹介します。

8. 起業家利益
このモデルでは商品をどうこうするのではなく、商品や製品カテゴリごとに組織を親会社からスピンオフさせて、組織の官僚化と効率低下を防ぐモデルです。スピンオフした会社の社長となったマネージャーはより顧客との対話に時間を使うことができ、コスト感覚も磨かれるので、一つの大きな会社であるよりも利益が多くなる可能性を秘めています。

9.専門家利益
このモデルはどちらかというと戦略というよりは、戦略の進め方に対する示唆といったほうが良いかもしれません。高い専門性を求める顧客は高い対価を支払ってでも専門性の高い企業から商品やサービスを購入します。しかし、事業が拡大するにつれて企業は様々な分野に一度に手を広げがちですが、十分な専門性を確保できる分野を一つ一つ増やすことによって高い収益性を保ったまま事業を拡大できるのです。

10. インストール・ベース利益
インストール・ベースモデルはカミソリの販売やインクジェットプリンターに見られるビジネスモデルで、自社の製品を顧客に導入してもらう時点ではほとんど利益を上げず、継続利用するための消耗品で利益を出す仕組みです。プリンター本体は非常に安いものですが、正規版のインクカートリッジは驚くほど高く、プリンター本体の値段とほとんど変わらない場合すらあります。メーカーにとってインクカートリッジが利益の源泉なので、非正規カートリッジの侵入を防ぐべく、ICチップでカートリッジを認証するなど様々な対策を取っています。

11. デファクト・スタンダード利益
別名プラットフォーム戦略とも言われます。製品カテゴリのなかで自社の製品を標準規格化する戦略で、標準規格化に成功すると自社のプラットフォーム上で派生するビジネスが一つのエコシステムを作り上げます。顧客がそのエコシステムにとらわれると他のシステムへのスイッチングコストが高くなり継続して利用し続けるため、標準規格を持つ企業は継続的に利益を上げ続けることができます。マイクロソフトがこの戦略の教科書的ケースです。

12. ブランド利益
全く同じ機能性をもつ製品であっても、それを製造・販売する企業がブランド価値を持っているか否かで全く販売価格が変わって来ます。しかし、ブランドを作り上げるには莫大なマーケティング投資が必要となります。ヴィトンやエルメスなどのラグジュアリーブランドがブランド利益モデルの好例で、同じような機能性を持つ鞄でも、無名の企業の数倍の価格を顧客は喜んで支払います。

13. 専門品利益
5の時間利益、9の専門家利益と似通っていますが、特定の完成品の一モジュールや特定の用途の製品に経営資源を集中することで利益を生み出すモデルです。例えば、医薬品や特殊化学製品がこのモデルに含まれます。このビジネスモデルは特許による自社製品利益の保護と切っても切れない関係にあります。

14. ローカル・リーダーシップ利益
この本では規模でナンバーワンを獲得することが必ずしも利益につながらないことを、再三述べています。そのアンチテーゼとして、局地的な戦いでナンバーワンになることが利益につながることを主張しています。本書ではウォルマートとスターバックスがまずはローカルで競合他社に対する優位性を確立してから次のエリアへと規模を広げていったため、収益を保ちながら成長できたと説明されています。セブンイレブンジャパンのドミナント出店戦略もこのローカル・リーダーシップ利益を追求した形と言えます。

明日15から22まで説明してこのシリーズを終えたいと思います。

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2012/10/21

「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1

エイドリアン・J・スライウォツキーとデイビッド・J・モリソンによる著書「プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新」は利益中心の経営戦略の名著です。経営戦略について書かれた本はたくさんありますが、この書では利益を生み出す場所・方法(プロフィット・ゾーン)は業界によって異なり、さらに時間を経ることによって常に移動しているというスタンスをとっています。
長い間(というか今でも)ビジネス界ではシェアでトップの地位を獲得すれば業界で一番利益を上げることができ、2番めにシェアを持っていれば業界で2番めに儲かるという「ビジネスの常識」がありました。プロフィットゾーンという考え方はこのシェア神話に対するアンチテーゼとして、シェアの結果としての利益ではなく、利益を目的とした経営戦略の結果としての利益を目指すべしとしています。

スライウォツキーとモリソンはこの本の中で22の利益を得る方法を紹介しています。どのような業界やビジネスであれ経営戦略を立てる上での指標になると思いますので、この22の「型」を簡単にまとめて紹介します。まずは前半の1~7まで。

1. 顧客開発/顧客ソリューション利益
製品を販売するだけでなく、その製品を顧客が使用する上で付随するメンテナンスやユーザートレーニングといった周辺サービスも合わせて提案する、いわゆるソリューション型のビジネスモデルです。ITの世界ではSIerという形で業界として確立されていますが、業界によってはソリューション型のビジネスを提案することで大きなブレイクスルーになる業界もあることでしょう。

2. 製品ピラミッド利益
製品ピラミッド型の利益モデルでは、顧客の所得と優先事項の多様性に合わせてローエンドからハイエンドまで膨大なラインアップを組むことにより、その商品に関しては顧客のどのような要求にも応えられるようにしておく戦略をとります。代表的な例はスウォッチ・グループで、カジュアルな若者向けのスタイルで安価なスウォッチから、超高級エグゼクティブ向けのオメガやブランパン、そしてその両者の間に位置する中価格帯の製品まで、時計を求めるすべての顧客のニーズに応えられるようになっています。スウォッチを愛用している若者が所得が増えるに従い、スウォッチグループのラインアップのなかで高価格帯ゾーンへ垂直移動していくことを狙います。低価格帯の製品は殆ど利益を出さず、ユーザーの裾野を増やすための商品と位置づけられており、ほとんどの利益は高価格帯の商品によって生み出されます。

3. マルチコンポーネント利益
コンポーネントはほぼチャネルと同じ意味で、マルチコンポーネント戦略とは各チャネルの特性を理解し、利益を最大化する戦略を意味します。例えばコカ・コーラは自動販売機での販売が最も利益率が高く小売店での販売が最も低いことを突き止めましたが、小売店のチャネルをカットして自動販売機での販売に経営資源をすべて投入するようなことはせず、小売店はブランド価値を高めるために不可欠なチャネルで利益率の高い自動販売機での販売にも大きな影響力を持つとして両者に適切な経営資源の配分を行なって収益を拡大しました。

4. スイッチボード利益
よほどローカルなビジネスでない限り、消費者は商品やサービスを利用する上で複数の選択肢を持っています。しかし複数の選択肢を持つことが売り手と買い手双方に高い取引コストが発生します。売り手側は認知を得て自社製品の優位性を伝えるために様々なコミュニケーションチャネルに広告を打つ必要がありますし、買い手側も複数の売り手の情報を探して比較検討を行わなければいけません。スイッチボードとはこの両者を取り持つことによって双方の取引コストを下げ、収益を上げるというビジネスモデルです。Webポータルがスイッチボードの代表的なビジネスモデルです。

5. 時間利益
商品イノベーションを起こすと、同業他社が同じ製品を市場に投入するまで市場で自社の商品が独占できるカテゴリが生まれます。この間に市場から膨大な利益をあげることを主眼においたビジネスモデルが時間利益のビジネスモデルです。パソコン向けCPUで現在も独占的地位を占めるインテルが競争相手のAMDに対してとっている戦略がこの時間利益戦略です。

6. ブロックバスター利益
ブロックバスター戦略に適した製品は、R&Dや開発といった初期投資が大きく、開発後の生産コストが低い製品です。例えば医薬品やソフトウェア、映画などがこのカテゴリの代表的な製品です。ブロックバスターモデルでは開発している製品の規模が重要で、十分な販売量を達成できないと利益を出すどころか開発コストすら回収できず、会社が苦境に陥る可能性があります。

7. 利益増殖モデル
一つの製品から派生商品を継続的に開発し、利益を出し続けるビジネスモデルです。ディズニーやアニメなどのキャラクタービジネスや、映画、ドラマなどが代表的な例です。派生商品を生み出し続けることによって元となるキャラクターのブランド価値が高まりますが、一方でブランド価値を毀損するような使い方をしてしまうと全ての派生商品に悪影響を及ぼすので注意が必要です。

次回に続きます。


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2012/10/20

日経電子版の微妙な値付けは何が目的?日経電子版のマーケティング戦略


Webで無料でニュースが読めるようになり、新聞各社が利益を守るためにビジネスモデルの変更を模索しています。中でもビジネスパーソンに広く読まれている日経新聞は2010年3月から日経電子版を有料サービスとして配信を開始しました。会員未登録の状態だと、主要記事のタイトルとさわりの部分しか読めません。
特徴的なのは、その価格設定です。購読者が選べるプランは通常の宅配と合わせると3つの選択肢が提供されています。

(1) 宅配+電子版 ¥5,383/月額
(2) 電子版有料 ¥4,000/月額
(3) 電子版無料 ¥0(ただし制限あり)

こうして各プランを並べてみると、明らかに電子版がコストの割に高いということです。新聞紙の宅配であれば、印刷にかかる費用と配送にかかる費用があるので一部あたり100円弱の価格になるのは分かりますが、電子版は記事をアップロードするだけで配信にかかるコストはありません。
新聞記事の作成にかかる取材費や人件費は発行部数(=売上)となんら比例関係のないサンクコストなので、単価と発行部数をかけた売上が最大になる価格設定をすれば良いわけです。少なくとも4000円がその最大のポイントではなくてもっと安いはずです。
なぜこのような価格設定なのでしょうか?いくつか仮説が考えられます。

■広告収入ではなく会員収入のビジネスモデルを模索している
電子版を高価にしている可能性の一つとして、日経新聞は将来的にWeb版メインで、会員収入モデルで事業を成り立たせようとしているのかもしれません。
新聞各社の収益は購読料と広告料で成り立っています。利益でいえば広告がメインということになるでしょう。新聞紙の折込広告であれば、確実に各家庭へ届けることができますが、Web版の広告となるとどうしても表示できる数が限られてしまいますし、PVが安定しないので広告収入が得にくいという問題点が出てくるのでしょう。そこで安定した固定収入を上げられる会員収入モデルに移行しているという見方ができます。

■宅配+電子版の契約獲得数最大化を狙った値付け
新聞紙の発行部数最大化と収益の最大化を狙った値付けだという可能性です。「A Successful Failure」(http://d.hatena.ne.jp/LM-7/20100224/1267021310)というブログで詳しく解説されていますが、行動経済学の観点で分析すると上記の3択の提示は、宅配+電子版を選択する人が最大となる提示の仕方です。電子版だけで4000円もするのであれば、プラス1400円弱で新聞紙の配送もついてくるほうが良い、という選択をする人が多くなるのです。電子版4000円というのはあくまでもオトリであって、本音としては新聞紙をとにかく取って欲しいということですね。やはりチラシによる広告収入は捨てられないし、販売店との関係性を考慮すると一気にWeb版へ傾倒することはできないという思惑があるのでしょう。

もし前者が正しければ、無料購読期間を3ヶ月とか長めに設けて、Web版を読むことを習慣づけるようなマーケティングプランを立てるでしょう。しかし、日経が提供している無料購読期間は10日に過ぎないので、後者のほうが正解なのでしょうね。
私としては、マーカーを引いて特定の記事だけスクラップしているので、そういう機能があれば電子版だけ購読したいのですけどねえ。

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2012/10/18

SIerの3つの価値軸: 価値軸のさらに奥の価値軸

ITの分野にはシステム・インテグレーターという業種が存在します。業界ではシステムインテグレーターを略語でSIerと表記します。国内では大手のIT企業は高確率でSIerです。
SIerの役割は、顧客企業の課題に対するソリューションの提案です。顧客企業が抱える大小さまざまなITに関する課題を解決するために、SIerは複数のハードウェアやソフトウェアを集め、それが一つのシステムとして稼動するように統合し、顧客の事業環境へ導入します。導入だけでなく、システムのメンテナンスや日常的な運用まで受託することもあります。

企業戦略を整理するために、以前から私が好んで利用している差別化のための3つの価値軸で言うと、SIerという業種そのものが密着軸のビジネスです。

――――――――――――――――――――――――――――――――
補足:
3つの差別化軸とは、お客様に競合他社ではなく自社を選んでいただく3つの理由です。3つの軸はお客様がモノやサービスを選択する理由と合致しているので、企業はこの3つの価値軸のどれかに特化し一貫した戦略をとることにより顧客に選ばれやすくなります。

1. 手軽軸: 「早い」「安い」「手軽に手に入る」という価値
2. 商品軸: 「最高級」「最先端」「本場」という価値
3. 密着軸: 「自分だけの」「カスタマイズできる」という価値
――――――――――――――――――――――――――――――――

しかし、業界自体が密着軸であってもその業界が巨大になると、さらに業界の中で細分化してすみわけが行われます。

SIerの中での手軽軸は、同じ機能を持つハードウェアやソフトウェアの中でも低価格帯の製品を集め、カスタマイズを最小限に保つことによりシステム全体を低価格で提供するという方法です。こうしたシステムを好むのは企業規模がそれほど大きくなく、ITチームが社内のITシステムに対して比較的主導的な立場を取っている企業が多いでしょう。欲しい機能が明確で、自分たちで運用管理できるスキルがあるということが前提になってきます。

官公庁や古い体質の内資企業のように商品軸のSIerを求める企業は、少しでも必要だと思う機能は全て付けてもらい、長年稼動した実績があるハードウェアとソフトウェア、そしてその組み合わせを要求します。カスタマイズは多岐にわたり、高価なシステムになります。商品軸を求める顧客は運用やメンテナンスもすべて丸投げでSIerに託すことが多く、ある意味とても美味しい顧客です。しかし、要求が高く必要な技術も広範囲にわたるのでSIer企業の体力が求められます。このため、商品軸のSIerは超大手になりがちです。

最後に密着軸の中でも密着軸のSIerは、SIerよりもITコンサルタントと呼ばれるような企業になるでしょう。SIerは顧客から出された要件定義に基づいてシステムを構築しますが、ITコンサルタントは顧客の課題を見つけて要件を定義するところから顧客の懐に飛び込みます。要件定義を纏めるところから顧客に入り込めると、システム構築案件も自社でとりやすくなるのでほとんどのSIerがこの領域を目指していると言っても過言ではありません。

このように、業態自体がより大きな業界の一つの軸であっても、プレイヤーが増えてくるとその業態の中で価値軸による住み分けが進みます。これはITに限らず、他の業界でも同じです。手軽軸のディスカウントショップの中でもさらに安値に特化した超手軽軸特化型の店、そこそこのグレードの商品が安いという商品軸の店、安さもありながら顧客との関係性を重視した店。自社の属する業界だけでなく、その業態の中でもどのようなポジショニングをしていくか、3つの軸を使って考えてみて下さい。

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二毛作店のチェーン展開におけるKFSとは?


以前のポストで二毛作店の目的はサンクコスト化した資産を高回転させる方法である、と解説しました。二毛作戦術は飲食店でよく見られます。なぜかというと、飲食店には家賃という非常にわかりやすいサンクコストがあるからです。店を閉めていても同じ家賃がかかる、だったら夜間だけ営業する居酒屋の売上に頼るのではなく、昼も店を開けてランチを提供して売上を上げよう、というのが二毛作店の考えです。これは個人営業の居酒屋であれば簡単な話で、自分の労働時間を増やしてランチを始めれば売上が増えます。ではチェーン展開している店舗でも同じように簡単に二毛作戦術を導入することができるのでしょうか?そうは簡単にはいかず、チェーン店には超えなければいけないハードルがあります。

二毛作を狙うチェーン店が超えなければいけないハードルとは、昼と夜で違う業態を運営するゆえの複雑さです。チェーン店では各店舗での品質の差をなくし、どこでも同じ商品、サービスが提供されることが重要な価値です。ですが、二毛作戦術では全く別の業態とまではいかないものの、二毛作でない店舗と比較して複雑なオペレーションが求められます。このため、二毛作チェーンではオペレーションの複雑さを解決するために、人材教育への投資、そしてオペレーションの標準化・自動化に対して一般のチェーン以上に力を入れなければなりません。

まずは人材教育ですが、二毛作店は2つの業態を運営しているので必然的に従業員が覚えなければいけない商品点数やサービスの種類が増えることになります。そして客層や顧客のニーズも全く異なってきますので、顧客対応という点でも従業員に求められる負荷は二毛作でないチェーンより大きくなるでしょう。かといって二毛作が二倍売上を上げることができるわけではないので、従業員に二倍の時間や金を投下するわけにはいきません。カフェとショットバーの二毛作店で有名なプロントは、Eラーニングを活用してこの問題に対処しています。2008年から携帯電話を使ったEラーニングシステムを採用し(同社プレスリリース)、店舗ごとに教育水準のバラつきやサービス品質の低下を防ぐ対策を打っています。

一方、オペレーションの標準化と自動化も人材教育と同じように重要なポイントです。二毛作チェーン店ではオペレーションが複雑になるため、飲食店であればセントラルキッチンを採用するなど従業員の質に商品やサービスが左右されない仕組みを設けておきます。また、セントラルキッチンのような生産の集中化は、各店舗に設置する厨房設備を減らすことができるので、設備投資の削減や客席数アップを見込むことができます。昼はピザ店、夜はイタリアンの二毛作店をチェーン展開しているナポリスでは、従業員のスキルに頼った調理を極力減らすためにピザを自動調理する装置や加工済み素材の仕入れを採用しています(日経MJ 2012/10/17 P.15)。

このように、二毛作チェーン店は品質の担保のために人材教育とオペレーションの標準化・自動化という課題があります。しかし、多店舗展開の二毛作チェーンだからこそ、人材教育への投資とセントラルキッチンへの投資以上のレバレッジが売上に発揮されるでしょう。


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2012/10/17

ビッグデータというバズワード


どの業界にも流行り・廃れというものがありまして、最近のIT業界ではもっぱらモバイルとビッグデータが業界の話題の中心になっています。ビッグデータというのは、通常のデータベースでは扱えないような膨大のデータの集まりから、意味のあるパターンを見つけ出して複雑系を理解し、予測しようというイノベーションです。ビジネスではどのような文脈で使われているかというと、SNSやPOSデータ、会員データベースなどの情報を統合して人々の購買行動を理解し、もっと売れる方法を考え実行するためにビッグデータを使いましょう、というものです。
確かにビッグデータが複数のデータを組み合わせて、一人ひとりの購買行動や消費活動を企業は把握することができるようになりました。しかし、ビッグデータがあればすぐに売上が伸ばせると過度な期待をするのは考えものです。ビッグデータを扱う上で、いくつか本質的な問題があります。

ビッグデータで顧客の購買行動を分析することはできるようになります。しかし、販売量や売上を伸ばすには、分析だけでなく一貫した戦略が必要です。戦略策定と実行のプロセスを単純化すると、傾向を把握し、仮設を立て、仮説を検証し、戦略化し、実行するという流れになります。定量的なデータが意味を持つのはこのプロセスのなかで傾向の把握と仮説の検証だけなのです。戦略を打ち立てる上での肝となるのは、傾向を把握してどのような仮説を立てるか、そしてそれをどのように実行プランに落とし込むかです。

特に仮説を検証する上で重要なのですが、本当に必要なデータがそのデータベースに存在しているのかという問題です。ユニークな仮説であればあるほど、ピンポイントで欲しい情報というのは既存のデータベースに存在せず、自分たちで収集しなければいけないものです。例えば、什器をこのようにレイアウトすると顧客の反応はどう変わるか、のようなシミュレーションは、基本的に自分たちで試してみるしかないのです。

また、データベースが膨大すぎるというのも問題です。エクセルで扱える程度のデータベースであっても、目的意識をもってデータを扱わないと、データに翻弄されて時間を浪費します。予めこういった情報を探してこの検証に役立てる、というプランを考えてからデータベースにアクセスしないと、何か面白い情報があるのではないかと思いつきでデータベースをいじくってしまい、気づくと数時間経っていて何も得られるものがなかった・・・ということが私の経験上もあります。

最後に、クリエイティブなアイディアは観察と水平思考で生まれます。情報として定量データで傾向を把握しておくことはもちろん重要ですが、定量データは誰でも等しく得られるものですが、そこから何を読み取るか、読み取った情報を元に何を考えるかはそれぞれの人がもつ直感次第なのです。その直感の大部分が想像力ですが、想像力を構成する要素として過去に目にしてきた人々の行動パターンや非連続的な思考法である水平思考がキーになるのです。ビッグデータは直感から得られたプランを検証するために使用されるのが、データと直感の理想的な関係です。

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2012/10/16

ダイヤモンドダイニングに見る明確なフロントエンド商品とバックエンドエンド商品


マーケティング用語でフロントエンド商品とバックエンド商品という言葉があります。フロントエンド商品は、顧客に提案しやすく売りやすい商品のことで、見込み顧客を顧客化するための戦略商品を指します。この商品は有料の場合もあれば、無料の場合もありますが、一般的に利益率は高くありません。。一方、バックエンド商品は、フロントエンド商品を購入して顧客化した消費者に対し、企業が本当に売りたい利益率の高い商品を指します。例えば、英会話学校ビジネスであれば無料体験コースがフロントエンド商品で、本科のコースはバックエンド商品になります。高級フレンチのレストランであれば、ランチがフロントエンド商品でディナーがバックエンド商品でしょう。時計であれば、スウォッチがフロントエンド商品でオメガがバック商品などなど。
収益性が高く安定したビジネスモデルを展開している企業はフロントエンド商品とバックエンド商品が明確であり、かつフロントエンド商品からバックエンド商品への橋渡しがしっかりデザインされている場合が多いです。

一つの好例として、日経MJ(2012/10/14 P.15)ではダイヤモンドダイニングの例が取り上げられていました。
ダイヤモンドダイニングでは、忘年会の下見目的のお客さんに対し、予定コースの半額で料理を提供するというサービスを展開しています。恐らく忘年会の予約をした場合に限り、下見で幹事来店の際に予約したコース料金を半額にするということでしょう。下見割引は11月中までで、忘年会売上の1割アップを目指すための施策なのだとか。
このダイヤモンドダイニングのプランはフロントエンド―バックエンドを見事に活用しています。フロントエンド商品はもちろん幹事向けの下見の割引で、バックエンド商品は大人数向けの忘年会コースという事になります。幹事向けの半額割引というのは大幅な割引な気がしますが、少なくとも原価割れすることはないでしょうし、2,3人に半額で提供して数十人の予約が取れるのであれば安い投資です。土日昼間にやっているような情報番組で以前知ったのですが、結構忘年会幹事の下見は一般化していたようです。ダイヤモンドダイニングはここに目をつけたのでしょう。幹事数人さえ落とせば、数十人の予約が手に入ります。忘年会の仮予約を入れれば割引する仕組みにすれば、高確率でフロントエンド商品とバックエンド商品がつながります。ただひとつ問題点をあげれば、模倣が非常に簡単という事でしょうか。個人や小規模の居酒屋なら明日からでも真似できてしまいます。

このようなフロントエンド商品―バックエンド商品という考え方は、私が身を置いているIT分野でもよくあります。特に顧客に深く入り込んで、統合的なソリューションを提案するSIerのような職種では、最初に顧客に取り入る入札では利益がほとんど0か赤字でも案件を取りにいきます。そしてその後顧客とのビジネスを増やし、全体で収益をあげようというモデルです。このようにフロントエンド―バックエンドが常態化した業界ではあまり真新しさはないかもしれませんが、思いつきですが製薬業界やフィットネス業界など、あまりこのモデルが一般的でない業界ではブレイクスルーになるかもしれませんね。

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2012/10/15

CGMの収益構造


CGMとは主にインターネットサイトにおける形態の一つで、Consumer Generated Media(消費者生成メディア)の略です。CGMサイトではコンテンツ提供者と利用者が明確に分離しておらず、利用者によって提供されたコンテンツを他の利用者が消費するサイトになっています。サイト運営者は利用者にコンテンツ提供を促し、視聴者に見やすいように整理し、企業などと協業し収益化するという役割を持ちます。

CGMはいくつかの分類に分けることができます。例えば、FacebookやmixiなどのSNS、カカクコムやぐるなびなどの口コミサイト、ニコニコ動画やYouTubeなどの(動画)コミュニティサイト、Yahoo知恵袋やオールアバウトといったナレッジコミュニティがあります。どの分類のサイトにおいても、すべてのコンテンツが消費者生成であるケースは少なく、プロフェッショナルや企業により提供されたコンテンツが含まれます。

既存メディアの代表格であるテレビはこのような収益構造を持っています。

制作会社作成のコンテンツ → 視聴者 ← CM ← 出稿企業 >>広告料>> テレビ局
                   ← グッズ販売 >>グッズ売り上げ>>

コンテンツは基本的にテレビ局の下請け制作会社で作成され、その番組にCMが織り込まれて、テレビ局はCM出稿企業から広告収入を得るというモデルです。しかし、最近ではドラマに連動した物販の特設サイトをテレビ局のHPに設置するなど、広告収入以外に物販での収益も上げているようです。

これに対し、ネットのCGMサイトはどのような収益モデルがあるのでしょうか。CGMの分類それぞれの収益構造を見てみたいと思います。

□Facebook(SNS) 広告収入

フレンドの投稿 → 利用者 ← 広告 ← 出稿企業 >>広告料>> Facebook
Facebookページ→

SNSは消費者生成のコンテンツがメインであるサイトの最たるものです。利用者は基本的に友達のアップデートや写真を見るためにサイトを訪問します。Facebookでは投稿された単語などに反応して関連する広告を表示させ、広告の出稿企業から広告費用を回収するモデルになっています。広告収入はFacebookの収益源の9割を占めます。

□カカクコム(口コミサイト) 販売手数料収入・広告収入

消費者による口コミ → 利用者 ← サイト経由販売 ← 企業 >>販売手数料>> カカクコム
                ← 広告 ← 出稿企業 >>広告料>>

カカクコムは口コミ情報ポータルの国内最大手。価格.comを始め、複数の口コミサイトを有しています。メインの収益構造は、カカクコムサイトを通じて成約に至った売買の手数料を収益源とするモデルです。商品を出展する企業側としては成果報酬型なので利用しやすく、単に広告を出すよりもwin-winな一面があります。

□ニコニコ動画(動画コミュニティサイト) プレミアムユーザー課金

利用者作成コンテンツ → 利用者 ←優先回線 >> ユーザー課金 >> ニコニコ動画
協力企業コンテンツ  →

ニコニコ動画はCGMサイトでは珍しく、利用するユーザーへの課金で成り立っているサイトです。売上高比率をみると、7割以上がプレミアムユーザーへの課金(500円/月)で、残りがニコニコ動画内で使えるポイントや広告が占めています。ニコニコ動画に提供されている消費者生成コンテンツは約8百万ほど存在し(2012年10月現在)、その大半がユーザーによってアップロードされたものです。動画の質はピンからキリまでありますが、コンテンツの質と量が十分であれば、ユーザーは喜んでCGMサイトへお金を払うことを証明しています。

□オールアバウト(専門家情報メディア) 広告収入メイン

専門家による記事 → 利用者 ← 広告 ←出稿企業 >>広告料>> オールアバウト

オールアバウトは専門家がコンテンツを作成しているため、正確に言うとCGMとは言いがたいかもしれません。しかし、専門家は公募で選ばれており、今後消費者のクチコミや利用者からの投稿を増やすということでCGMに含めています。オールアバウトでもやはり広告収入が主な収益源になっています。他のCGMと一つ違うのは、純粋なバナー広告などではなく、雑誌によく見られる編集広告を採用している点です。編集広告は記事のような体裁になっているため、読み物としての価値が高く、一般的な広告に比べて訴求効果が高い傾向にあるようです。

CGMの収益構造をざっと俯瞰してきましたが、既存メディアのテレビ・ラジオとそれほど収益構造は変わらず、広告をメインとしているサイトが多いようです。中でも目を引くのはやはりニコニコ動画で、コンテンツは利用者が提供してくれるうえ、利用者がお金を落としてくれるという面白い収益構造になっています。ニコニコ動画はフリーマーケットの元締めみたいな役割ですね。
オールアバウトもメインコンテンツに似せた編集広告を提供しているという点で他のCGMサイトと違いがあります。自ら広告に付加価値を付与しているので、おそらく高単価を実現しているでしょう。ですが、決して新しいことではなく、日経ビジネスなどの雑誌でよく見られる手法です。収益構造を他のビジネスモデルから借りてくるというのは新しい付加価値を生み出す良い方法なのでしょう。


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2012/10/14

SNSを広告プラットフォームにするというアイディア

SNSが20代から40代に本格的に普及し、特に首都圏の若者でひとつもSNSアカウントを持っていないという人は見ない程になりました。主なSNSの月間アクティブユーザー数を上げると、Facebookで約1000万人、mixiで約1500万人にのぼります。実はアジア圏の中でも日本のSNSの普及率はそれほど高くなく、ブルネイや台湾、香港になると驚くことに利用者数は全国民の過半数を超えます。急速に発展してきている国ほど新しいモノを抵抗なく受け入れるということでしょうね。
どのSNSも多かれ少なかれ広告収入で収益を得ています。広告を出したい企業はSNS運営者に手数料を払って広告を掲載するのですが、アイディア1つで全く新しいSNS広告が広がっているようなので紹介します。

日経MJ 2012年10月10日 P.16――――――――――――――――――――――――――
体を広告媒体とする試みは最近にわかに活気づいてきた。角川書店が10日に発行するアーティスト村上隆氏の新書「想像力なき日本」(税別 781円)の場合は女性の太もも。発売に合わせて全国の女性たちに、村上氏がデザインしたシールを貼って街を歩いてもらう。企画した角川グループパブリッシング宣伝部の菅原剛係長は「村上氏のかわいいデザインを貼った女性たちが、自分の写真をネットに投稿してくれれば、大きな拡散量が見込める」と話す。 (中略) 条件は18歳以上でSNSに20人以上の友だちがいること。指定された日時にシールを貼って1日8時間を過ごし、その画像を2枚以上SNSに投稿するのが役割だ。 (中略) 例えばフットサル場の広告を20人の女性が1日貼ったところ、20人の新規顧客獲得につながったという。渥美美紀社長は「SNSへの投稿ネタを探している女性たちにとって格好の素材になっている」と指摘する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SNS運営者が用意している広告スキームを全く利用せず、SNSのタイムラインに利用者自らの投稿として広告を紛れ込ませるというユニークな広告手法です。体に広告を貼り付けるという手法は以前から何度かニュースなどで目にした覚えがありますが、あくまでも話題づくりという印象でした。広告は拡散して多くの人に視聴され、反復されて視聴者の意識に刷り込まれ、視聴者の購買行動を起こさなければ広告に投資する意味がありません。その点で今までの人体広告は拡散も反復も不十分でした。しかし、この広告手法では広告媒体となった人のSNSのつながりで、自然に拡散させることができます。商品のターゲットユーザーがSNSの利用者と重なる層が多ければ、効果は高いでしょう。広告掲載価格は広告媒体となる人一人あたり数万円程度とさほど高くないので、反復もしやすいでしょう。

このSNSを広告プラットフォームにした人体広告、いくつか特有のメリットがあります。
まず、宣伝広告という捉え方がされにくく、訴求効果が高くなる可能性があります。人体広告を友人の写真投稿として視聴した人は、もちろん宣伝広告であることはすぐに分かるのですが、企業の広告というカテゴリーよりも友だちの投稿というカテゴリーで捉える可能性が高いでしょう。人は得てして広告というカテゴリーで捉えてしまうと、不要なものとか鬱陶しいものというネガティブな印象を持ってしまうものです。友達の投稿として捉えればニュートラルないし好意的に捉える人が多いでしょう。

次に、人体に広告を貼り付けるという手法は、身に着けている服やカバンに宣伝を貼り付けるよりも印象に残りやすいものです。人間にはモノを見るときよりもヒトを見るときの方が活性化する脳の部位があります。ソーシャルな動物である人間は、進化の過程でモノよりもヒトについて多くの情報を得ようとする脳力がついたのでしょう。このため、モノに広告をいれても脳に背景として処理されてしまう危険性があります。一方、人体に広告が貼り付けられていると、ヒトの一部として認識されて印象に残りやすくなります。

最後に、この広告スキームは、SNS運営者に一銭も払わずにSNSを広告プラットフォームとして利用できるという素晴らしいシステムです。ある意味、テレビ番組に無料で広告を出せるようなものです。SNS運営者がこの広告をしめ出そうとしてもただの写真投稿なので機械的に判別するのは難しいでしょうから、人的に一つ一つチェックしなければいけません。禁止しようにも、個人的な写真投稿だと言われてしまえば反論もしにくいものです。

テレビドラマの中で出演者にブランドの衣服や消費財を利用させるという手法や、モバイルゲームやネットゲームの中で広告企業のロゴなどを表示させるという広告手法があります。便乗広告とでも言うのでしょうか。このSNS広告スキームも便乗広告から得たアイディアかもしれませんね。

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2012/10/13

リバースプランニング: ニコニコ動画


ニコニコ動画は言わずと知れた国内最大手の動画配信サイトです。設立は意外と古く、YouTubeがスタートした翌年の2006年10月にサービスがスタートしました。スタート当初は動画配信サイトではなく、YouTubeやその他動画配信サイトの動画にコメントするというのが主な機能でした。スタートから約6年で2200万以上の一般会員と130万人もの有料会員を持つまでの超大手動画配信サイトになりました。コメントの機能が充実している動画配信サイトで、視聴者間や投稿者と視聴者のコミュニケーションがコメントを通してなされています。ニコニコチャンネルという運営側が設定したジャンルごとのコミュニティとユーザーが共通点を持つ人同士集まったコミュニティなど、コミュニティを構築する機能に特徴があります。
ニコニコ動画生みの親であるドワンゴ代表取締役会長の川上氏は、これほどの会員数を獲得し、ビジネス的にも成功させるにあたってどのようなビジョンを持っていたのかリバースプランニングしてみます。

視聴者参加型とコミュニティ形成を重視
まずこうしたコミュニティサイトは大きなユーザー数を獲得することが不可欠です。広告で課金するにしても、ユーザーや企業に課金するにしてもまずはユーザーの獲得を初めに達成しなければいけません。
ニコニコ動画はYouTubeとは違う、投稿者と視聴者、視聴者と視聴者の関係性を志向しています。ニコニコ動画はコメントの特性として、動画の再生に合わせてコメントを載せることができます。この機能のお陰で、視聴者は動画に対する自分のリアクションを詳細に示せるようになりました。動画の一番盛り上がる場面でコメントが流れる数も最大になり、続いてそのコメントの多さに対するコメントが出てきたりして一体感が生まれてくるのです。ニコニコ動画は、この一体感を出すために動画の再生に合わせてコメントが流れるシステムを採用したのだと思います。目的は何か?もちろんユーザーを増やすためです。2chを見ていると、ネットユーザーの特性として話題になるようなコト(内輪ネタ、神業、おもしろ映像、アニメなどなど)をみんなで盛り上がりたいという印象があります。この盛り上がりを生み出す仕組みがあれば、ヘビーなネットユーザーを中心に集客できるだろうと考えたのでしょう。
人が集まってコトに盛り上がる場ができれば、元来人は褒められたり話題にされるのが好きなので、自分たちからコンテンツを提供する視聴者が出てくるものと想定できます。そして動画投稿サイトは動画の量と質が重要なので、動画投稿者がもっと面白い映像を継続的に投稿してくれるインセンティブを設ける必要があります。タイムラインに合わせたコメントシステムは間違いなく動画投稿者のインセンティブになりますが、タグとコミュニティという仕組みがさらに動画投稿意欲を高めることになっているのです。

広告収入とユーザー課金のハイブリッドモデル
ニコニコ動画の収入モデルは広告収入とプレミアムユーザーへの課金を組み合わせた課金方法になっています。動画投稿サイトでユーザー課金をしているサイトは当時はほとんどなかったでしょうが、ニコニコ動画はサービス開始から一年後にはユーザー課金をしていることを見ると、はじめからユーザー課金モデルを狙っていたようです。タイムラインにポストできるコメントシステム、タグ、コミュニティという仕組みで質の高い動画をユーザーから投稿してもらい、視聴者を囲い込みできるという自信がはじめからあったのでしょう。他の有料動画サイトはテレビ番組や映画などのコンテンツを提供しており、コンテンツの取得にお金がかかります。ニコニコ動画は大半のコンテンツがユーザーによって投稿された動画なので、コンテンツの取得にかかるコストは相対的に小さいため黒字化がしやすいと考えたのでしょう。


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2012/10/12

セーレンとニコニコ超会議に見る手段としてのO2O

ネット専門企業が活動の場をオンラインからオフラインに広げることをO2O (Online to Offline)と呼ばれます。少し前にコラムを書いた、ECサイトやニコニコ動画がオフラインイベントを開催する動きをオンラインからオフラインへ向かうO2Oです。
一方で、実在の店舗を持つ企業が活動の場をオンラインに広げるO2O (Offline to Online)の動きもあります。オフラインの企業がウェブページや通販サイトを設けるくらいでは今や何も珍しくありません。最近ではもっとオフラインとオンラインをクロスチャネル的に活用した例が出てきています。

マッシュマニアというエキゾチックなデザインの婦人向けアパレル店では、恵比寿や他にも国内で数店舗リアル店舗を展開している一方で、オンラインショップも稼働しています。オフラインとオンライン両方でショップをもつブランドが増えてきていますが、戦略的に補完的な役割を担っているケースは少なく、どこも他がオンラインでも店舗を出しているから、、といったような横並び意識でオンラインショップを開いているように見受けられます。しかし、マッシュマニアのケースはオフラインからオンラインへ向かう戦略的なO2Oデザインが優れており、他のオフライン企業にO2Oの可能性を示す好例です。

日経MJ2012/10/08 P.1―――――――――――――――――――――――――――
4月に東京・恵比寿に開いた婦人服店「マッシュマニア」内に大型モニターを設置したスペースがある。近くのパソコンには合繊デニムの色、柄、装飾など様々なパターンのデータが入る。客は店員と相談しながら自分の好みを反映させ、画面上でパンツを完成させる。―中略― 消費者が数十万種の中から好みを選び出すのは至難の業だ。まず店舗でネットでは不可能なカスタマイズも実現させることで、客にシステムの良さを理解してもらう。そこで掴んだコツを、今度は自宅のネット通販で生かしてもらうのが狙いだ。―中略― マッシュマニアのネット通販は「リピーター客が65%と高水準で推移している」(セーレン)在庫負担の小さいカスタマイズの固定客増加が収益拡大に大きく寄与すると期待を膨らませる
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マッシュマニアではジーンズのカスタマイズという一つの目玉商品を取り上げて、店舗でジーンズをカスタマイズする方法や楽しさを教え、オンラインショップを訪問する理由付けをしています。もし顧客が店舗でカスタマイズジーンズの楽しさを実感したのなら、自宅に帰ってからオンラインショップを訪問して自分でカスタマイズを試してみる可能性は低くないと思います。熱心にカスタマイズしていれば、購買意欲が高まるものです。人間の心理として、こっちがいいかな、それともこっちがいいかな、と試していると、問題はカスタマイズジーンズを買うかどうかではなく、どのカスタマイズを施したジーンズを買うかという意識に変わってくるものです。さらに、オンラインショップではトップスやアクセサリも扱っているので、クロスセルできる可能性があります。

顧客にとっても、オンラインショップでジーンズのカスタマイズが試せるということは、様々なベネフィットがあります。まず、わざわざ店舗へ足を運ぶ必要がなく自宅で楽しめますし、店舗が閉まっているような時間でも気にせずオンラインショップで試すことができます。先に店舗を訪れてサイズ合わせさえしておけば、サイズが合わないかもしれないという不安も解消できるでしょう。

企業側にとってはオンラインショップのほうが賃料や人件費といったコストが低く、さらに在庫リスクを下げることができるため、企業としてはオンラインショップへの顧客の流れは歓迎すべきものです。顧客が自社オンラインショップで購入してくれる限りにおいては、マッシュマニアとしては店舗がショールーミング化しても構わないということですね。

他にも顧客が度々オンラインショップを訪問したり購入することによって顧客との接点が増えるという副次的な効果もあるでしょう。オンラインによって顧客との接点が増えれば、新しい商品の企画を生産前にオンラインショップやSNSで掲載し、顧客の反応を確かめてから製造を開始するということも可能になります。新製品開発のリスクがかなり抑えられるはずです。

このように、マッシュマニアはOffline to Onlineを上手く活用した先進的な例といえます。ジーンズのカスタマイズだけではどれだけ効果が続くか不安があるので、他のキラーコンテンツもいくつか用意しておくともっと効果が出てくるでしょう。

一方、Online to Offlineであるニコニコ動画のオフラインイベントは明確に知名度向上を目的としています。4億円以上の赤字というのは過大な投資ではありましたが、すべての主要メディアに取り上げられ40~50代という新たなターゲット層に認知が広まりました。ニコニコ動画はこの新たなターゲット層の取り込みを明確に意識した戦術を展開しています。認知の広まった40~50代の層を取り込むため、昔懐かしいアニメを一部無料大半有料で配信したり、パソコンにあまり馴染みがない人達でも視聴できるようにニコニコ動画対応テレビを発売するなど、ニコニコ超会議前後に一貫性のある行動を取っています。
ZOZOTOWNのゾゾコレはニコニコ超会議よりも商業的に成功したイベントですが、利益を出すことが目的ではありません。本質はニュース・メディアに取り上げられることによる知名度向上を狙ったものでしょう。

O2Oがオフライン企業、ネット企業にどのように活用されているかまとめると、オフライン企業はWebや広告でOnline to Offlineという顧客の流れを作っているのは今や常識で、最近ではOffline to Onlineの取り組みも進行中。Offline to Online
の取り組みではロイヤルティの高い顧客の獲得や運営負担の小さい通販サイトへの顧客誘導を目的とするマッシュマニアの施策が上手くいっています。
ネット企業のOnline to Offline活動は今のところ知名度の向上に狙いが集中しており、ユーザー数を増やすことを最終目的としています。テレビやニュースという、ネットとは違うメディアを活用するのは新しいターゲット層にリーチするのに適しているでしょう。


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2012/10/11

マルチコンセプト vs シングルコンセプト


飲食やサービスの業界の中で、どの店舗でも金太郎飴のように同じ商品やサービスを展開するシングルコンセプト企業と、それぞれの店舗で商品やサービスだけでなく内装・外装も変えて多様性のある店舗を展開するマルチコンセプト企業が存在しています。
シングルコンセプト企業の代表的な例をあげると、飲食ではマクドナルドや吉野家、スポーツジムではコナミスポーツ、その他多くの小売チェーンがシングルコンセプトで店舗展開をしています。大手小売チェーンや大手飲食チェーンがシングルコンセプトで店舗展開するのはある意味当然で、流通の効率化などでコスト効率を高め、顧客にとっての費用対ベネフィットを最大化しようとすると自然とシングルコンセプトを選択することになります。
一方、マルチコンセプト企業は程度に差はありますが、それぞれの店舗で異なった商品やサービスを提供し、価格や客単価も店舗によって大幅に異なっています。例を挙げると、飲食ではダイヤモンドダイニング、スポーツジムではNAS、微妙なラインですが、雑貨屋ではビレッジヴァンガードがあげられるでしょうか。店舗によってオリジナルメニューを扱っている王将や、均一化されたブランドを多ブランド展開しているゼンショーなどは分類に困るところです。
問題は、なぜ一つの業界にシングルコンセプトを選択する企業とマルチコンセプトを選択する企業に別れるのでしょうか?シングルコンセプトとマルチコンセプト、それぞれの戦略の比較優位性はなにか、そして企業がどういう場合にその戦略を取るのか考えてみます。

まず、シングルコンセプトがマルチコンセプトに勝る点と逆にマルチコンセプトがシングルコンセプトに劣る点を見てみましょう。
□シングルコンセプトが勝る点
・顧客にとって、すべての店舗で同じサービスが提供されるという安心感
・どの店舗でも同じ価格て提供される、もしくは大きな価格差はないという安心感
・流通や運用が効率化され、あらゆる面でコスト的に有利

■マルチコンセプトが劣る点
・同じグループなのに店舗で提供されるサービスが違うという混乱を生む
・利用する店舗によって顧客が受け取るブランドイメージが異なる
・流通面で効率が悪く、また、マニュアル化が難しいため人材教育の難易度とコストが高い

一般的に言って、シングルコンセプト企業の方がコスト効率に優れたオペレーションを行うことができます。どのような企業にシングルコンセプトが向いているかというと、以前説明した3つの価値軸でいえば手軽軸と商品軸の企業でしょう。優れたオペレーションで顧客の費用対効果を最大化するのが手軽軸なので、シングルコンセプトは手軽軸にピッタリ。さらに、商品軸でもシングルコンセプトを取ることがありえます。普通、自社が優れた商品で競合と差別化を図っているという認識があれば、販売やマーケティングで売り方を工夫する必要はなく、商品を知ってもらえさえすればいいのだ、という考えに陥りやすくなるものです。また、販売やマーケティングよりも研究開発に予算が割り当てられるという事情もあって、あまり売り方に力を入れていないことが多いでしょう。

次に、マルチコンセプトがシングルコンセプトに勝る点と、逆にシングルコンセプトが劣る点があるか、見てみましょう
□マルチコンセプトが勝る点
・地域の顧客層に合わせたサービスを提供できる
・柔軟性が高いサービスを生み出しやすい
・店舗が独自に新しいことを試せるので、イノベーションが生まれやすい
・成熟化・硬直化した市場で、新しい価値を生み出す可能性が高い

■シングルコンセプトが劣る点
・シングルコンセプトでは画一的なサービスのため、地域によっては出店に適さない場合がある
・トップダウンで動くことが多く、組織が硬直化しやすい
・イノベーションが起こりにくい

マルチコンセプ企業は店舗ごとに特色を出せるので、その地域の顧客層にあったベネフィットが提案しやすくなります。いや、むしろ顧客層にあったベネフィットを提供するための前提条件と言っても過言ではありません。フィットネスクラブのNASは立地によって提供するサービスや内装・外装といったハードをガラっと変えてその立地にあった顧客にベネフィットを提供しています。例えば、都心の店舗ではエステを併設したり美容に良いプログラムを用意して若い女性客に訴求したり、銀座の店舗ではスポーツジムというよりは会員制ラウンジのようなフィットネスクラブを運営し、商談スペースや自由に使える会議室、バーラウンジやゴルフシミュレーターなど会社社長を始めとしたVIP向けの設備とサービスを取り揃えています。もちろん会員価格は店舗のタイプによって全く異なります。スポーツジムは都心近くであればほぼ一駅に一つある状態で、成熟した市場と言えます。それでもNASのようなマルチコンセプト企業は、シングルコンセプトの業界リーダー企業と競合する地域に出店してもニッチなニーズを捉えて一定のシェアを握ることができるはずです。価値軸で言えば、顧客に合わせたサービスを提供する密着軸の戦略に向いている出店の仕方です。
一つのブランドでありながら多様な業態の店舗を構えることにより、ひとつの店舗の取り組みを成功事例として他の店舗に展開することができます。イノベーションを生み出しやすい土壌があるということです。しかしながら、一つの成功例からイノベーションの要素を取り出して他の店舗に展開するというプロセスがその企業に根付いていることが前提条件となるので、かならずしもマルチコンセプトであるイコールイノベーションが生まれやすいということにはなりません。

例外はあるかもしれませんが、ほとんどの業界でリーダー=シングルコンセプト企業で、業界に改革の風を呼び込むチャレンジャーがマルチコンセプト企業という図式になっているように見受けられます。それもそのはずでリーダー企業は品質を上げ、コストを下げ、顧客を囲い込む戦略が最も効率的なのです。
一方チャレンジャーはリーダーの牙城を崩すために、真っ向から勝負をせず、ニッチを攻めたり、低価格を徹底する戦略で攻めることになります。ニッチを攻める手段の一つがマルチコンセプト戦略であるため、チャレンジャー=マルチコンセプト企業ということになるのでしょう。

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2012/10/10

シャドープランニング: ライフスタイルSNSの課金


前回これからSNSをつくるなら、というテーマで趣味と遊びのコミュニティを中心としたライフスタイルSNSを提案しました。今回は、そのライフスタイルSNSでどのような収益モデルを作れるかについて考えてみます。
まずは、ライフスタイルSNSの主な機能や目的について、もう一度説明します。

機能1: コミュニティ作成機能
ライフスタイルSNSでは趣味や遊びのジャンルごとにコミュニティを作ることができます。例えばサーフィン、登山、クラブやバーなど。さらにそこから富士山や槍ヶ岳、ハワイのワイキキビーチやイビサ島のクラブなど、趣味や遊びの舞台となる「場」のサブコミュニティや、登山用品メーカーやサーフボードのブランド、ショップなど、「商」のサブコミュニティも作成できます。ユーザーはそのコミュニティに集まって登山難易度や波の高さ、クラブの評価に関する議論や情報を共有してもらい、自分の体験談をアウトプットする場として、そして情報を得る場所として価値を高めます。登山用品メーカーやサーフボードのブランド、そしてその用品販売店についてもざっくばらんな意見交換ができる場所になっていれば、用品や販売店を利用しようとしているユーザーにとっても価値がある場所になります。

機能2: 企業とユーザーのコミュニケーションプラットフォーム
ライフスタイルSNSでは企業とユーザーの活発なコミュニケーションを促進します。コミュニティ参加者へのクーポン配布や新製品情報の提供、ユーザーからのフィードバックを受け取れるプラットフォームを提供します。ユーザーと企業のコラボレーション企画を促し、オフラインでの趣味・遊びの体験をもっと充実させるためのツールを目指します。

すでに世にあるSNSと比較するとFacebookと近いのですが、ユーザーのベネフィットという視点では「Facebookはリアルな友人と交流関係をメンテナンスするもの」という考え方がマジョリティだと考えられるため、趣味や遊び場の情報交流という定義のSNSを広めることは十分可能だと考えられます。現在は趣味の情報交流場所がアチラコチラに散在している状態なので、その情報を統合する場所としての位置を狙います。
では、ライフスタイルSNSではどのような課金モデルが考えられるでしょうか。いま主流となっているSNSの収益モデルから、ライフスタイルSNSの収益モデルを考えてみます。

クーポン、広告
SNSにおける最もベーシックな収益モデルです。このSNSでは共通の趣味を持つ人同士でコミュニティを作るので、他のSNSよりも企業にとっては自社の見込み客へリーチしやすいという比較優位性があります。よくバナー広告を出している中古車販売サイトも、ヤフーニュースの車関連の記事に貼り付けるよりは車のコミュニティに広告を出すほうが明らかにターゲットユーザーにリーチしやすくなります。ライフスタイルSNS内に自社のページを所有していれば、ユーザーはそのまま流れで中古販売サイトの評価やコメントを見て信頼性を高めることができます。もちろん評価が低ければ逆効果ですが。自社のコミュニティでクーポンを配布するのも効果的です。もともと自社のファンであるユーザーに対して選択的にクーポンを配布できるので、企業にとってはO2O(Online to Offline)の流れを期待できます。新規顧客獲得の手段として関連性の高いコミュニティに対してクーポンを配布することもできれば、さらに企業にとって強力な販促ツールになります。

企業アカウント課金
企業が自社の公式コミュニティを作成するのに課金をする、公式アカウント課金は安定した収益基盤になることを期待できます。企業が本物であるかの認証、コミュニティページ管理機能、クーポン配布プラットフォームなどをパッケージにして月額利用料を請求します。このサービスが企業にとってどれだけ魅力的になるかは、関連コミュニティのユーザー数と配布したクーポンが実際に消費された数や企画したイベントへの集客数といったコンバージョン率が重要になるので、まずはライフスタイルSNSへユーザーを呼び込むことが重要になりますね。月額課金でそれなりに高い単価を期待できる企業公式アカウントはストック型の安定した収益基盤になるでしょう。

プレミアムユーザー課金
SNSの収益モデルの一つとしてプレミアムユーザー課金があります。しかし、一般的なSNSではユーザーを集めて企業からの広告を収入の柱とするケースが多いので、ユーザー数をいかに多く集めるかが肝になります。Facebookがまさにそのモデルで、ユーザー数を集めることが重要であれば、ユーザーに課金するのはあまり得策ではありません。それでも一部のSNS、例えばニコニコ動画はプレミアムユーザーへの月額課金を収益の柱として成功しています。しかし、ユーザーに課金するには、お金を払ってでも見たいコンテンツが不可欠です。そういった意味では、ライフスタイルSNSはユーザー間のテキストや画像によるコミュニケーションと企業が提供するコンテンツが主になるので、ユーザーに課金するのは容易ではありません。機能差がある無料コミュニティと有料コミュニティを設けて、有料コミュニティに課金するというのは一つの方法かもしれません。

・アバター・アイテム課金
サイバーエージェント社のアメーバやオンラインゲームが得意とする課金で、ユーザーが自身のモデルとなるアバター(人形・キャラクター)をオンラインで作り、そのアバターを着飾ったりステータスを強化するためのアイテムを販売するユーザー課金型の収益モデルです。初期の開発コストを除き、アイテムの開発はほとんど元手がかからないので非常に利益率が高くなる傾向にあります。ただし、SNS全体のカラーをゲームっぽくしてしまう、コミュニティで交換される情報の質よりもキャラクター同士の交流がメインになってしまう可能性があるので、SNSのカラーに合うか慎重な判断が必要です。ライフスタイルSNSは情報の中身と質が重要なので、むしろ妨げになる部分が多いと考えます。


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2012/10/09

シャドープランニング 趣味・遊びの情報を交換するライフスタイルSNS


みなさんはいくつのSNSを利用していますか?私が日常的に使用しているのは3つですが、登録したことのあるSNSは10以上あると思います。そして、新聞やニュースのプレスを見ていると日々あらたなSNSが生まれています。そこで、いまビジネス化できる(=収益化できる)SNSがを作るとしたら、どのようなSNSをを作るかについて考えてみました。

私が考えたのは、ユーザーの趣味や遊びをテーマに情報交換を行うライフスタイルSNSです。主な機能は、ユーザーが趣味や遊びについて情報交換できる場を提供することと、その趣味や遊びに関係する企業がクーポン配布やユーザーとのコラボ企画を行う場を提供することです。登山が好きならば、コミュニティごとに登山靴などのアイテムについて語っても良いですし、山ごとのコミュニティで情報交換するのも面白そうです。クラブ好きであれば、クラブごとのコミュニティで評判を調べられたら便利ですし、クラブDJのコミュニティで情報交換できればファン同士つながりがもてます。そこで交換された情報を元に企業が割引クーポンを提供するほか、登山ツアーの企画を組んだりクラブでイベントを行うなど、ユーザーと企業双方にメリットがある使い方ができると思います。

特徴1: 趣味や遊び場に関して交流する場を一つにまとめる。
自分の趣味や遊びについて、同じ趣向を持つ人達と交流したい、情報を交換したいという感覚は誰しも持っているものだと思います。趣味や遊びの情報は、掲示板、メーリングリスト、個人サイト、企業サイト、SNSなどネット上のあちこちに分散して存在しているので、これを一箇所ここに行けば全ての情報があるというSNSがあれば、ユーザーにとって大きなベネフィットになるでしょう。

特徴2: 情報交換だけでなく意思決定の補助ツールにする
どのような趣味や遊びであっても、どこかの企業の商品やサービスを利用することになります。価格.comやぐるなびのように、企業の評判・評価を採点やコメント付けできることで商品・サービス購入の意思決定補助ツールとしての価値を持たせると、ユーザーにとっての利用価値が高まるでしょう。

特徴3: 会員限定のクーポンやコラボ企画を目玉に
趣味・遊びを提供する企業がクーポンを提供したり、ユーザーとコラボレーション企画を行うことを前提にSNSを設計します。また、企業が新製品情報やプレスリリースなどの情報提供ができるプラットフォームも用意します。収益化できる仕組みがそのSNSの目的に組み込まれていると収益化が安定するので(例:Linkedin)、ライフスタイルSNSでも踏襲します。何より、ユーザーにもメリットがある提案になるでしょうから。
以前ゼクシィのビジネスモデルについて書いたときに触れましたが、企業からの広告やクーポンといった投資を集めたければ、まずはユーザーの流れを捉える必要があります。そのためにはまず情報交換プラットフォームとしてユーザーに高い満足を提供することが先決です。

しかし、このようなライフスタイルSNSがは既存のSNSと競合するのではないか?という疑問がわいて来ると思います。私が理解するに、まだ趣味や遊びに関する情報交換を主目的としたSNSは存在していないと思います。もっと正確に言うと、ユーザーの頭の中で、ここは趣味や遊びの情報を交換する場だ、と定義されているSNSが存在していないということです。一番競合しそうに思えるのがFacebookだと思いますが、Facebookはリアルな知り合いとの友人関係をオンラインでメンテナンスする場という定義を持っているユーザーが多いのではないでしょうか。Linkedinは人によってプロフェッショナルな"表の顔"のつながりを求めるか、ヘッドハンティングのチャンスを求めるという明確な利用用途があります。このように、SNSの使い方はたいていひとつの一貫した用途で使われるのだと考えられます。違う用途なら違うSNSのほうがユーザーの頭の中で整理がつきやすいのです。
逆に、最近ではSNSが細分化しすぎていて不便になっている傾向があります。音楽の情報を交換するためのSNSや化粧品の情報や使い方を交換するSNSなど、企業が仕掛けた小規模単位のSNSが日々生まれています。しかし、参加するSNSが増えすぎるのはユーザーにとってデメリットになると思います。単純にアカウント情報の登録やIDパスワードの管理が面倒ですし、SNSを切り替えるときに違うサイトに移動したりアプリを立ち上げるというのも小さいことですが面倒だと感じるのではないでしょうか。ほとんどの人が複数の趣味や遊びを持っているはずなので、ひとつのSNSで自分のすべての趣味と遊びが完結できるのはユーザーにとってメリットがありますし、他のSNSとの差別化になります。


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2012/10/07

価値軸の罠 顧客視点を忘れるな! 2

昨日のポスト、価値軸の罠の続きです。差別化軸2つ目の罠、顧客にとって差別化が十分か?の続きから解説していきます。

差別化が顧客にとって十分かどうかというのは常に悩ましい問題です。なぜなら、その差が価値を持つかどうかは顧客一人ひとりの状況によって全く変わってしまう場合があるからです。飲食業界はグレード(価格)、ジャンル、立地、という複数の要素が複雑に絡み合い、顧客へのベネフィットを提案するのが難しい業界の一つです。一例として、あなたがある日仕事が遅くなってしまって帰りにササッと安くご飯を済ませてしまおうと思った場合、どのような店が候補に上がったでしょうか?マクドナルド?すき家?大戸屋?ロイヤルホストはどうですか?少し高いですか?では、彼氏・彼女とデートで少し良い所で食事したいと考えた場合のロイヤルホストはどうですか?おそらく候補のなか(もし候補としてあげるのならば)では安い部類に入るのではないでしょうか。このように、あるニーズをもつ顧客にとっては手軽軸で優位性を持っていたとしても、別のニーズから見ると、優位性を持っていないということもあり得るのです。また、これが価格ではなくて、食事に割ける時間が短いけどそこそこ美味しいものが食べたいというニーズの場合、候補がまた全然変わってくるでしょう。飲食店だけではなくどの業界でも同じですが、このように潜在顧客の数だけ存在するニーズから、自分たちがお客にしたいターゲット顧客のベネフィットを選択しなければなりません。そして、その顧客の視点で自分たちが十分な差別化ができているかを常に考えなければなりません。

3つ目の罠は、自社のターゲット顧客にとって全く意味のないベネフィットを目指していないかという罠です。例えば商品軸で差別化を図っている家電製造業なのであれば、いかに新技術で衣類の臭いを除去できる洗濯機を開発するか、いかにコンパクトで場所を取らない洗濯乾燥機を開発するか、というような視点で商品企画をすべきです。高価だけれど今までにない商品を、最先端の製品を高いお金を出してでも買いたい人たち、いわゆるイノベーター層に提案するのが商品軸の企業の基本戦略です。このイノベーター層が新製品の素晴らしさを認める事によってアーリーアダプター層に製品が広がっていくのです。ところが、家電はコモディティ化して価格競争になっているという事実に圧倒され、商品軸を標榜していたはずなのにいつの間にかそこそこの製品を安く作ることに腐心している企業が少なくないのです。こうなってしまうと、中国系メーカーのように手軽軸を徹底しているメーカーの得意とする戦場に飛び込むようなものです。そして、本来ターゲットとしている最先端の製品を高いお金を出してでも買いたい顧客は、手軽軸に流れようとしている商品軸のメーカーに愛想を尽かしてしまうのです。戦略に一貫性がないから商品軸を求める顧客も手軽軸を求める顧客も一気に失ってしまうのです。

ここまで価値軸の3つの罠を見てきました。では、この罠にはまらないためにはどうしたらいいのでしょうか。
第一に、自社が提供していると思い込んでいるベネフィットではなく顧客が受け取っているベネフィットにフォーカスを当てるということです。自社の特徴は密着軸だ、と思い込んで戦略を立てても、自社の顧客は安さに魅力を感じているかもしれません。顧客が自社に抱いているイメージを正確に把握するには、アンケートやインタビューで顧客の声を聞くしかありません。第二に、顧客の声を聞いた結果、顧客が自社から得ているベネフィットと自社が提供していると思っているベネフィットに相違がある場合、どちらかに軸を合わせなければいけません。殆どの場合、顧客持っているイメージに自社の合わせていくのが懸命です。最後に、いざイノベーションを起こそうとするとき、そのイノベーションが自社の価値軸と乖離していないかを注意深く分析することです。もう少し詳しく言うと、そのイノベーションの結果をどのように顧客に見せるかが大事です。生産技術のイノベーションにより製品の生産コストが下がるのであれば、手軽軸なら価格を下げるのが良いでしょうが、商品軸や密着軸ではそうではありません。商品軸の企業であれば、下がった生産コストをより優れたパッケージにまわすほうが戦略と一貫性があるでしょう。密着軸の企業では価格を据え置きにしたまま、浮いたコストを接客のための人件費予算に上乗せするほうが密着軸を求める顧客にとって大きなベネフィットになります。これら3つのポイントを意識して戦略と戦術を考えていけば、顧客に価値を提供し続けられる企業になれるのです。

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