2012/10/06

価値軸の罠 顧客視点を忘れるな! 1


今日も罠になってまいました。以前、「個別化というポジショニングと個人ブランディング」というポストでも解説させていただきましたが、ある業界の中で自社を差別化させるために、3つの軸のどれかのポジショニングに注力すべきというポジショニングの理論があります。

1. オペレーショナル・エクセレンス(運用効率を最大化して、安価で標準化された製品の提供に優れている)
2. 製品リーダー(多少価格が高くとも製品そのものの訴求力が高い)
3. カスタマーインティマシー(顧客の細かいニーズに応えたり、個別化で顧客を囲い込む)

詳しくは、「ナンバーワン企業の法則―勝者が選んだポジショニング (日経ビジネス人文庫)」を参照してください。さらに私が尊敬するマーケター佐藤義典氏はこの理論をさらに分かりやすく直感的に表現し、

1. 手軽軸
2. 商品軸
3. 密着軸

としています。
この3つの価値軸の理論はシンプルで行動につなげやすい実践的な理論です。この3つの価値軸のどれかに特化するために自社のリソースを投入し、差別化を図っていくというのがこの理論の基本戦略になります。このポジショニング理論を実践しようとすると、競合他社とSWOT分析で比較して自社が特定の軸で抜きん出ているかチェックし、そしてまだ足りないところがあればそこを強化して、またSWOT分析によりどれだけ競合他社に対して優位性を獲得したかチェックして…。おそらく経営企画や事業企画と呼ばれる戦略の舵取りをするポジションの人たちは、このようなプロセスを考えると思いますが、ここには大きな落とし穴があります。それは顧客視点の欠如というとっても基本的で企業が陥りがちな罠です。

顧客視点を持つというのは、なにも顧客第一主義を掲げるということではありません。戦略を立てるときに重要なのは、顧客の視点から、自社の提供している価値が3つの軸のいずれかのベネフィットになっているか、競合他社と比べて差別化できているか、そしてそのベネフィットが顧客にとって意味があるかということを常に問題の中心に置くということです。

1つ目の罠は、自社の取り組みが顧客にとってベネフィットを生み出しているという勘違いです。ちょっと手厳しい言い方ですが、勘違いなのです。バブルの時代から2000年過ぎくらいまで、日本のエレクトロニクス分野はとても品質が高いものを手頃な価格で生産するということで、一世を風靡していました。そのころ日本の持っていた生産技術や研究力は実際外国企業より明らかに優れていて、それが商品軸で大きな差別化を生んでいました。ただ、消費者はより優れている製品を欲しがる単純な生き物だったわけではありません。それまでのアメリカ式大量生産で作られた雑な製品に不満があったので、日本の信頼性が高い製品に価値を感じたのです。ここ十年ほどで明確になって来ましたが、いまは中国製のエレクトロニクス製品であっても、使用していて問題を感じるような欠陥はそれほどないものなのです。こうなると、高性能高信頼性というのは商品軸において十分な価値をもたらしません。パソコン市場を見た場合、それでも日本のパソコンメーカーはハイスペックをアピールする製品ばかり生産し、(むしろスペックばっかりをアピールするマーケティングの問題かもしれません)、自分たちは今でも商品軸で差別化できていると勘違いしたままなのです。では、パソコン市場における商品軸のベネフィットはどこにいったのか?デザインと所有欲です。パソコンのスペックはクロック数ではなくデザインのハイセンスさとカフェで開いたときの満足感(もっと有り体に言うと周りに対する「どや!」感)になったのです。

2つ目の罠は、競合との差別化が顧客にとって不十分であるのに、自分たちでは十分に差別化できているという勘違いです。一番わかり易いのは、商品価格で差別化しようとする場合の失敗です。生産技術のイノベーションで製品価格を競合より5%を落とすことができたとして、これが意味のある価格差であるかどうかは顧客が決めるということです。その生産技術のイノベーションがいかに業界にとって衝撃的で、5%価格を抑えることが業界内で革命的だと思われていても、顧客にとってはその製品の購入しやすさのほうがよっぽど重要かもしれません。例えば、日用品のような購入頻度が高いものであれば、近くのコンビニで買えることや他の買い物のついでに買えることのほうが、5%安いことより重要でしょう。業界中がお騒ぎするようなイノベーションであっても顧客にとってはどうでもよい、ということがあり得るのです。

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