2012/10/21

「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1

エイドリアン・J・スライウォツキーとデイビッド・J・モリソンによる著書「プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新」は利益中心の経営戦略の名著です。経営戦略について書かれた本はたくさんありますが、この書では利益を生み出す場所・方法(プロフィット・ゾーン)は業界によって異なり、さらに時間を経ることによって常に移動しているというスタンスをとっています。
長い間(というか今でも)ビジネス界ではシェアでトップの地位を獲得すれば業界で一番利益を上げることができ、2番めにシェアを持っていれば業界で2番めに儲かるという「ビジネスの常識」がありました。プロフィットゾーンという考え方はこのシェア神話に対するアンチテーゼとして、シェアの結果としての利益ではなく、利益を目的とした経営戦略の結果としての利益を目指すべしとしています。

スライウォツキーとモリソンはこの本の中で22の利益を得る方法を紹介しています。どのような業界やビジネスであれ経営戦略を立てる上での指標になると思いますので、この22の「型」を簡単にまとめて紹介します。まずは前半の1~7まで。

1. 顧客開発/顧客ソリューション利益
製品を販売するだけでなく、その製品を顧客が使用する上で付随するメンテナンスやユーザートレーニングといった周辺サービスも合わせて提案する、いわゆるソリューション型のビジネスモデルです。ITの世界ではSIerという形で業界として確立されていますが、業界によってはソリューション型のビジネスを提案することで大きなブレイクスルーになる業界もあることでしょう。

2. 製品ピラミッド利益
製品ピラミッド型の利益モデルでは、顧客の所得と優先事項の多様性に合わせてローエンドからハイエンドまで膨大なラインアップを組むことにより、その商品に関しては顧客のどのような要求にも応えられるようにしておく戦略をとります。代表的な例はスウォッチ・グループで、カジュアルな若者向けのスタイルで安価なスウォッチから、超高級エグゼクティブ向けのオメガやブランパン、そしてその両者の間に位置する中価格帯の製品まで、時計を求めるすべての顧客のニーズに応えられるようになっています。スウォッチを愛用している若者が所得が増えるに従い、スウォッチグループのラインアップのなかで高価格帯ゾーンへ垂直移動していくことを狙います。低価格帯の製品は殆ど利益を出さず、ユーザーの裾野を増やすための商品と位置づけられており、ほとんどの利益は高価格帯の商品によって生み出されます。

3. マルチコンポーネント利益
コンポーネントはほぼチャネルと同じ意味で、マルチコンポーネント戦略とは各チャネルの特性を理解し、利益を最大化する戦略を意味します。例えばコカ・コーラは自動販売機での販売が最も利益率が高く小売店での販売が最も低いことを突き止めましたが、小売店のチャネルをカットして自動販売機での販売に経営資源をすべて投入するようなことはせず、小売店はブランド価値を高めるために不可欠なチャネルで利益率の高い自動販売機での販売にも大きな影響力を持つとして両者に適切な経営資源の配分を行なって収益を拡大しました。

4. スイッチボード利益
よほどローカルなビジネスでない限り、消費者は商品やサービスを利用する上で複数の選択肢を持っています。しかし複数の選択肢を持つことが売り手と買い手双方に高い取引コストが発生します。売り手側は認知を得て自社製品の優位性を伝えるために様々なコミュニケーションチャネルに広告を打つ必要がありますし、買い手側も複数の売り手の情報を探して比較検討を行わなければいけません。スイッチボードとはこの両者を取り持つことによって双方の取引コストを下げ、収益を上げるというビジネスモデルです。Webポータルがスイッチボードの代表的なビジネスモデルです。

5. 時間利益
商品イノベーションを起こすと、同業他社が同じ製品を市場に投入するまで市場で自社の商品が独占できるカテゴリが生まれます。この間に市場から膨大な利益をあげることを主眼においたビジネスモデルが時間利益のビジネスモデルです。パソコン向けCPUで現在も独占的地位を占めるインテルが競争相手のAMDに対してとっている戦略がこの時間利益戦略です。

6. ブロックバスター利益
ブロックバスター戦略に適した製品は、R&Dや開発といった初期投資が大きく、開発後の生産コストが低い製品です。例えば医薬品やソフトウェア、映画などがこのカテゴリの代表的な製品です。ブロックバスターモデルでは開発している製品の規模が重要で、十分な販売量を達成できないと利益を出すどころか開発コストすら回収できず、会社が苦境に陥る可能性があります。

7. 利益増殖モデル
一つの製品から派生商品を継続的に開発し、利益を出し続けるビジネスモデルです。ディズニーやアニメなどのキャラクタービジネスや、映画、ドラマなどが代表的な例です。派生商品を生み出し続けることによって元となるキャラクターのブランド価値が高まりますが、一方でブランド価値を毀損するような使い方をしてしまうと全ての派生商品に悪影響を及ぼすので注意が必要です。

次回に続きます。


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