2012/10/12

セーレンとニコニコ超会議に見る手段としてのO2O

ネット専門企業が活動の場をオンラインからオフラインに広げることをO2O (Online to Offline)と呼ばれます。少し前にコラムを書いた、ECサイトやニコニコ動画がオフラインイベントを開催する動きをオンラインからオフラインへ向かうO2Oです。
一方で、実在の店舗を持つ企業が活動の場をオンラインに広げるO2O (Offline to Online)の動きもあります。オフラインの企業がウェブページや通販サイトを設けるくらいでは今や何も珍しくありません。最近ではもっとオフラインとオンラインをクロスチャネル的に活用した例が出てきています。

マッシュマニアというエキゾチックなデザインの婦人向けアパレル店では、恵比寿や他にも国内で数店舗リアル店舗を展開している一方で、オンラインショップも稼働しています。オフラインとオンライン両方でショップをもつブランドが増えてきていますが、戦略的に補完的な役割を担っているケースは少なく、どこも他がオンラインでも店舗を出しているから、、といったような横並び意識でオンラインショップを開いているように見受けられます。しかし、マッシュマニアのケースはオフラインからオンラインへ向かう戦略的なO2Oデザインが優れており、他のオフライン企業にO2Oの可能性を示す好例です。

日経MJ2012/10/08 P.1―――――――――――――――――――――――――――
4月に東京・恵比寿に開いた婦人服店「マッシュマニア」内に大型モニターを設置したスペースがある。近くのパソコンには合繊デニムの色、柄、装飾など様々なパターンのデータが入る。客は店員と相談しながら自分の好みを反映させ、画面上でパンツを完成させる。―中略― 消費者が数十万種の中から好みを選び出すのは至難の業だ。まず店舗でネットでは不可能なカスタマイズも実現させることで、客にシステムの良さを理解してもらう。そこで掴んだコツを、今度は自宅のネット通販で生かしてもらうのが狙いだ。―中略― マッシュマニアのネット通販は「リピーター客が65%と高水準で推移している」(セーレン)在庫負担の小さいカスタマイズの固定客増加が収益拡大に大きく寄与すると期待を膨らませる
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マッシュマニアではジーンズのカスタマイズという一つの目玉商品を取り上げて、店舗でジーンズをカスタマイズする方法や楽しさを教え、オンラインショップを訪問する理由付けをしています。もし顧客が店舗でカスタマイズジーンズの楽しさを実感したのなら、自宅に帰ってからオンラインショップを訪問して自分でカスタマイズを試してみる可能性は低くないと思います。熱心にカスタマイズしていれば、購買意欲が高まるものです。人間の心理として、こっちがいいかな、それともこっちがいいかな、と試していると、問題はカスタマイズジーンズを買うかどうかではなく、どのカスタマイズを施したジーンズを買うかという意識に変わってくるものです。さらに、オンラインショップではトップスやアクセサリも扱っているので、クロスセルできる可能性があります。

顧客にとっても、オンラインショップでジーンズのカスタマイズが試せるということは、様々なベネフィットがあります。まず、わざわざ店舗へ足を運ぶ必要がなく自宅で楽しめますし、店舗が閉まっているような時間でも気にせずオンラインショップで試すことができます。先に店舗を訪れてサイズ合わせさえしておけば、サイズが合わないかもしれないという不安も解消できるでしょう。

企業側にとってはオンラインショップのほうが賃料や人件費といったコストが低く、さらに在庫リスクを下げることができるため、企業としてはオンラインショップへの顧客の流れは歓迎すべきものです。顧客が自社オンラインショップで購入してくれる限りにおいては、マッシュマニアとしては店舗がショールーミング化しても構わないということですね。

他にも顧客が度々オンラインショップを訪問したり購入することによって顧客との接点が増えるという副次的な効果もあるでしょう。オンラインによって顧客との接点が増えれば、新しい商品の企画を生産前にオンラインショップやSNSで掲載し、顧客の反応を確かめてから製造を開始するということも可能になります。新製品開発のリスクがかなり抑えられるはずです。

このように、マッシュマニアはOffline to Onlineを上手く活用した先進的な例といえます。ジーンズのカスタマイズだけではどれだけ効果が続くか不安があるので、他のキラーコンテンツもいくつか用意しておくともっと効果が出てくるでしょう。

一方、Online to Offlineであるニコニコ動画のオフラインイベントは明確に知名度向上を目的としています。4億円以上の赤字というのは過大な投資ではありましたが、すべての主要メディアに取り上げられ40~50代という新たなターゲット層に認知が広まりました。ニコニコ動画はこの新たなターゲット層の取り込みを明確に意識した戦術を展開しています。認知の広まった40~50代の層を取り込むため、昔懐かしいアニメを一部無料大半有料で配信したり、パソコンにあまり馴染みがない人達でも視聴できるようにニコニコ動画対応テレビを発売するなど、ニコニコ超会議前後に一貫性のある行動を取っています。
ZOZOTOWNのゾゾコレはニコニコ超会議よりも商業的に成功したイベントですが、利益を出すことが目的ではありません。本質はニュース・メディアに取り上げられることによる知名度向上を狙ったものでしょう。

O2Oがオフライン企業、ネット企業にどのように活用されているかまとめると、オフライン企業はWebや広告でOnline to Offlineという顧客の流れを作っているのは今や常識で、最近ではOffline to Onlineの取り組みも進行中。Offline to Online
の取り組みではロイヤルティの高い顧客の獲得や運営負担の小さい通販サイトへの顧客誘導を目的とするマッシュマニアの施策が上手くいっています。
ネット企業のOnline to Offline活動は今のところ知名度の向上に狙いが集中しており、ユーザー数を増やすことを最終目的としています。テレビやニュースという、ネットとは違うメディアを活用するのは新しいターゲット層にリーチするのに適しているでしょう。


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