2012/10/11

マルチコンセプト vs シングルコンセプト


飲食やサービスの業界の中で、どの店舗でも金太郎飴のように同じ商品やサービスを展開するシングルコンセプト企業と、それぞれの店舗で商品やサービスだけでなく内装・外装も変えて多様性のある店舗を展開するマルチコンセプト企業が存在しています。
シングルコンセプト企業の代表的な例をあげると、飲食ではマクドナルドや吉野家、スポーツジムではコナミスポーツ、その他多くの小売チェーンがシングルコンセプトで店舗展開をしています。大手小売チェーンや大手飲食チェーンがシングルコンセプトで店舗展開するのはある意味当然で、流通の効率化などでコスト効率を高め、顧客にとっての費用対ベネフィットを最大化しようとすると自然とシングルコンセプトを選択することになります。
一方、マルチコンセプト企業は程度に差はありますが、それぞれの店舗で異なった商品やサービスを提供し、価格や客単価も店舗によって大幅に異なっています。例を挙げると、飲食ではダイヤモンドダイニング、スポーツジムではNAS、微妙なラインですが、雑貨屋ではビレッジヴァンガードがあげられるでしょうか。店舗によってオリジナルメニューを扱っている王将や、均一化されたブランドを多ブランド展開しているゼンショーなどは分類に困るところです。
問題は、なぜ一つの業界にシングルコンセプトを選択する企業とマルチコンセプトを選択する企業に別れるのでしょうか?シングルコンセプトとマルチコンセプト、それぞれの戦略の比較優位性はなにか、そして企業がどういう場合にその戦略を取るのか考えてみます。

まず、シングルコンセプトがマルチコンセプトに勝る点と逆にマルチコンセプトがシングルコンセプトに劣る点を見てみましょう。
□シングルコンセプトが勝る点
・顧客にとって、すべての店舗で同じサービスが提供されるという安心感
・どの店舗でも同じ価格て提供される、もしくは大きな価格差はないという安心感
・流通や運用が効率化され、あらゆる面でコスト的に有利

■マルチコンセプトが劣る点
・同じグループなのに店舗で提供されるサービスが違うという混乱を生む
・利用する店舗によって顧客が受け取るブランドイメージが異なる
・流通面で効率が悪く、また、マニュアル化が難しいため人材教育の難易度とコストが高い

一般的に言って、シングルコンセプト企業の方がコスト効率に優れたオペレーションを行うことができます。どのような企業にシングルコンセプトが向いているかというと、以前説明した3つの価値軸でいえば手軽軸と商品軸の企業でしょう。優れたオペレーションで顧客の費用対効果を最大化するのが手軽軸なので、シングルコンセプトは手軽軸にピッタリ。さらに、商品軸でもシングルコンセプトを取ることがありえます。普通、自社が優れた商品で競合と差別化を図っているという認識があれば、販売やマーケティングで売り方を工夫する必要はなく、商品を知ってもらえさえすればいいのだ、という考えに陥りやすくなるものです。また、販売やマーケティングよりも研究開発に予算が割り当てられるという事情もあって、あまり売り方に力を入れていないことが多いでしょう。

次に、マルチコンセプトがシングルコンセプトに勝る点と、逆にシングルコンセプトが劣る点があるか、見てみましょう
□マルチコンセプトが勝る点
・地域の顧客層に合わせたサービスを提供できる
・柔軟性が高いサービスを生み出しやすい
・店舗が独自に新しいことを試せるので、イノベーションが生まれやすい
・成熟化・硬直化した市場で、新しい価値を生み出す可能性が高い

■シングルコンセプトが劣る点
・シングルコンセプトでは画一的なサービスのため、地域によっては出店に適さない場合がある
・トップダウンで動くことが多く、組織が硬直化しやすい
・イノベーションが起こりにくい

マルチコンセプ企業は店舗ごとに特色を出せるので、その地域の顧客層にあったベネフィットが提案しやすくなります。いや、むしろ顧客層にあったベネフィットを提供するための前提条件と言っても過言ではありません。フィットネスクラブのNASは立地によって提供するサービスや内装・外装といったハードをガラっと変えてその立地にあった顧客にベネフィットを提供しています。例えば、都心の店舗ではエステを併設したり美容に良いプログラムを用意して若い女性客に訴求したり、銀座の店舗ではスポーツジムというよりは会員制ラウンジのようなフィットネスクラブを運営し、商談スペースや自由に使える会議室、バーラウンジやゴルフシミュレーターなど会社社長を始めとしたVIP向けの設備とサービスを取り揃えています。もちろん会員価格は店舗のタイプによって全く異なります。スポーツジムは都心近くであればほぼ一駅に一つある状態で、成熟した市場と言えます。それでもNASのようなマルチコンセプト企業は、シングルコンセプトの業界リーダー企業と競合する地域に出店してもニッチなニーズを捉えて一定のシェアを握ることができるはずです。価値軸で言えば、顧客に合わせたサービスを提供する密着軸の戦略に向いている出店の仕方です。
一つのブランドでありながら多様な業態の店舗を構えることにより、ひとつの店舗の取り組みを成功事例として他の店舗に展開することができます。イノベーションを生み出しやすい土壌があるということです。しかしながら、一つの成功例からイノベーションの要素を取り出して他の店舗に展開するというプロセスがその企業に根付いていることが前提条件となるので、かならずしもマルチコンセプトであるイコールイノベーションが生まれやすいということにはなりません。

例外はあるかもしれませんが、ほとんどの業界でリーダー=シングルコンセプト企業で、業界に改革の風を呼び込むチャレンジャーがマルチコンセプト企業という図式になっているように見受けられます。それもそのはずでリーダー企業は品質を上げ、コストを下げ、顧客を囲い込む戦略が最も効率的なのです。
一方チャレンジャーはリーダーの牙城を崩すために、真っ向から勝負をせず、ニッチを攻めたり、低価格を徹底する戦略で攻めることになります。ニッチを攻める手段の一つがマルチコンセプト戦略であるため、チャレンジャー=マルチコンセプト企業ということになるのでしょう。

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