2012/11/07

「顧客シャッフル」によるビジネスモデル発想1

かつては規模とシェアが利益を上げるための正攻法と言われてきましたが、ここ数年ではシェアや利益よりもビジネスモデルの重要性に視点が移っています。スライウォツキーとモリソンによる「プロフィット・ゾーン経営戦略」でも語られていますが、これからの企業は有機的にビジネスモデルを変革して利益が出る場所(プロフィット・ゾーン)へ移っていくという経営努力が求められています。

プロフィット・ゾーンへ移動するビジネスモデルを検討に使えるフレームワークとして、前回・前々回のポストでは「コアバリュー切り出しイノベーション」を提案してきました。今回は、「顧客シャッフル」によるイノベーションを考えていきます。例によって、山田英夫氏著「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(日本経済新聞社出版)」を参考にしています。

□■顧客シャッフルとは?■□

顧客シャッフルとは私が勝手に名づけたフレームワークですが、今の顧客とは別の顧客を相手にしたらどのようなビジネスモデルが考えられるか、という発想法です。

まず、ビジネスモデルという多様な解釈がある言葉を定義しなければいけません。経営学者によりビジネスモデルの定義は違いますが、私は「誰に、何を、どのように売るか」という定義を好んで使っています。この定義でいえば、顧客シャッフルとは「誰に」の部分の前提を変えて、より利益が出るビジネスを考えるということになります。

実際にこの方法を使ってビジネスモデルを確信してきた企業を見ると、「誰に」を変えることによって「何を」と「どのように」も同時に変えている企業もあれば、「何を」「どのように」をそのままに「誰に」だけを変えているケースもあります。一方、業界の常識であるビジネスモデルの「誰に」を変えるイノベーションで市場に切り込むベンチャー企業のケースもあります。

□■4つのメソッド■□

顧客シャッフルでイノベーションを起こしている成功例を見ると、4つの分類に分けることができます。
1. 顧客ユニットの分割・再定義
2. リシャッフル
3. 一足飛び
4. キャッシュポイント移動

それぞれ少しずつ企業が抱えている課題や現在のビジネスモデルによって適用できるものが異なってきます。それぞれのメソッドの詳細と実例を見ていきましょう。

□■顧客ユニットの分割・再定義■□



顧客ユニットとは?

顧客は「顧客」という一言でくくれるほどシンプルな存在ではありません。ランドセルを買いに来た家族は、誰が顧客なのでしょうか?ランドセルを使うのは子供ですが、最終的にどれがよいか決めるのは母親でしょう。もちろん代金は父親の給料から払われます。こうしたお客様一人一人の役割を明確にすれば、コミュニケーションやプロモーションの方法を最適化することができます。それが顧客ユニットの分割・再定義です。

この例で言えば、子供は使う人(CU=Consuming Unit)、母親は購入する製品を決める人(DMU=Decision Making Unit)、父親は支払う人(PU=Paying Unit)。

顧客ユニットの分割はB to CだけでなくB to Bでも有効です。あるERPパッケージを企業に導入する場合、CUはシステムを利用する全ての社員、DMUは経営ボードメンバー、PUは財務部と言うことになります。もう少し小規模なITシステムであればCUは利用部門、DMUは利用部門の部門長とIT部門、PUは財務といったところです。B to Bではマーケティングよりも担当営業のほうが顧客ユニットを身近に感じているでしょう

少しビジネスモデルと離れてきたので話を戻します。顧客ユニットの分類と再構成はマーケティングだけに関係があるように見えますが、実際はビジネスモデルと経営戦略にもダイレクトにインパクトがあります。「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編」でも紹介されているフランスベッドのケースで紹介します。


フランスベッドの例


フランスベッドのもともとのビジネスモデルは、自分の力で立ち上がるのが難しい高齢者向けに、電動でベッドを起こして立ち上がりやすくしたベッドを売り切る商売でした。しかし、高齢者向けなので購入してさほど使用していないうちに不要になることも多かったようです。フランスベッドの顧客ユニットを分析すると、DMUとPUは高齢者の家族でCUは実際にベッドを利用する高齢者ということがわかります。
DMUとPUにとっての付加価値を最大化しようとすると、売り切りよりもレンタル方式の方が金銭的な負担が小さく、最悪利用者がすぐに亡くなった場合もデメリットがありません。フランスベッドはレンタル方式にビジネスモデルを転換しました。しかし、CUである高齢者からすると「先が短いからレンタルなのか」と印象を悪くすることもあるので、レンタルバックしてきたベッドの再レンタルの前に入念なリペアと洗浄行程を入れることによってCUの満足を得られるようにしました。
このように、フランスベッドは顧客ユニットを再定義し、DMUとPUにとって最も付加価値が高くなるようにビジネスモデルを転換しました。しかし、CUの満足をなおざりにするとDMUの意思決定に影響を及ぼすのでCUにとっての価値も追求しています。


ITサービスの世界では...


B to Bの世界では、あまり高価でないIT機器やITサービスの販売はIT部門のマネージャーがCUかつDMUというケースが多く、営業はマネージャーとのリレーションを重視すればビジネスが成り立ちます。しかし、外資系企業では固定費削減のため、自社ITで行なっていた業務をそっくりアウトソースすることがあります。この場合、ITサービスベンダーにとってのDMUとPUはIT部門マネージャーからCIOなどの役員に移行します。そして社内ITのメンバーやマネージャーは顧客ユニットのどれにも当てはまらなくなります。それもそのはず、アウトソースが完了すれば彼らはリストラされてしまうのですから...


残り3つの顧客シャッフルメソッドは明日に続きます。


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