2012/11/18

戦略論 大企業が良い戦略をもてないのはなぜか2

前回のポストでは良い戦略とはどのようなものかについて見てきました。現状を十分に分析、把握した上で方針(目標)を設定し、その方針を達成するために最も重要で最も効果のある一連の行動指針が戦略です
今回は大企業はなぜ優秀な人材を抱えているにも関わらず良い戦略に恵まれないかについて考えてみたいと思います。引き続きリチャード・P・ルメルト氏著「良い戦略、悪い戦略(日本経済新聞出版社)」を参考にしています。


なぜベンチャー企業が比較的良い戦略を持っていることが多く、大企業が持っていないことが多いのでしょうか。単なるエクスキューズではなく正当な理由として、大企業の方が事業環境が複雑であることがあげられます。ベンチャー企業は既存企業の正面衝突を避けてニッチな市場めがけてシェアを取りに行くビジネスモデルなので、自然と事業環境はシンプルになります。一方、大企業は競合も顧客もパートナーも多く、ひとつの方針転換が多くのステークホルダーの不利益になることが多いため、どうしても行動が取りにくくなります。

さらに事業自体が複雑でトップが全ての事業に精通することができないということも、適切な戦略を取ることの難しさに拍車をかけています。特に巨大コングロマリット企業のようになってくると、事業本部長やカンパニー長が事実上の社長になってしまい、実際の社長が正しい判断をするのは難しくなってしまいます。ホールディングカンパニーという形態はこのために生まれたのでしょう。

つぎに大企業が良い戦略を持つことができない原因として社内政治の存在があげられるでしょう。大企業の内部では出世レースという社内競争が発生します。大企業でなくどこでも社内競争は発生するのですが、大企業特有の問題は政党政治と同じで派閥ができてしまう点にあります。大企業になればプロモーションの対象になる優秀な人材はたくさん出てきます。一つの事業部でも数千人単位になる大企業では数多の役割があり、その役割で実績を出している人たちをゼロベースで比較検討して後任を決定するのは至難の業です。そうなると偉い人はヒューリスティックを使って後任を選び出すことになります。偉い人のヒューリスティックで選ばれためにはその人におもねることが正しい戦略になります(昇進のための「良い戦略」です)。こうして派閥というのが生まれるのです。

派閥が生まれてしまうと次期社長を決めるための派閥間闘争が生まれ、派閥間闘争では顧客のための事業戦略ではなくて「有権者を利するための事業戦略」が作られます。一方、現社長も会長に退いてからの影響力を保つために、シンパの中でもちょっと実力が足りなくて操作しやすい人間を後継者に推します。このような事態に至るともはや会社に最適な戦略を期待するのは困難です。ベンチャー企業はよくも悪くも社長と数名の取締役に決定権が集約されている独裁国家となっており、社内政治が生まれにくい土壌になっています。また、ベンチャーは大企業のように実力がないシンパにポジションを与えておく余裕はないため、政治的な人選も起きにくいでしょう。

成績不振にあえいでいる大企業のトップはリーダーシップに欠けています。その原因として、上記で見てきた事業や事業環境の複雑さと社内政治の影響力が強いと言えるでしょう。リーダーシップが欠如したトップは現状を正しく鑑みたシンプルで分かりやすい方針を立てることができず、戦略もうやむやなスローガンになってしまいます。私の会社の親会社はいわゆる親方日の丸大企業ですが、トップの仕事は各事業部の利益調整だと思っている役職者が多い気がします。こうした企業はこのままでは破滅に向かうか国営になるしかありません。大企業のトップはリーダーシップを取り戻すことが良い戦略を持つための第一歩です。


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