2012/11/09

「顧客シャッフル」によるビジネスモデル発想2


昨日の続きで、プロフィットゾーンへ移るためのビジネス発想法の一つ、「顧客シャッフル」について引き続き解説していきます。前回は、1. 顧客ユニットの分割・再定義について見てきましたので、今日は残りの3つのメソッド、2. リシャッフル、3.一足飛び、4. キャッシュポイント移動、のうち2番めのリシャッフルについて考えてみたいと思います。

なお、引き続き参考として山田英夫氏著「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(日本経済新聞社出版)」から引用している部分があります。興味を持たれた方はぜひ本書を読んでみて下さい。

□■リシャッフル■□

リシャッフルとは

この発想法では、自社が提供している製品やサービスを、今の顧客が企業(B)なら個人(C)に、今の顧客が個人(C)なら企業(B)に提供してみたらどうか、というシミューレションをして新しいビジネスモデルを模索する方法です。実際にこの方法でブレイン・ストーミングする場合はもう少し具体的に顧客を捉え、企業のなかでも大企業なら、中小企業なら、医療機関なら、官公庁なら、と掘り下げていくと発想が広がります。さらに、顧客のさらに先の顧客がBなのかCなのか、さらに細分化するとどういう属性なのか、と思考を発展させて行く事ができます。

このメソッドのポイントは、顧客が今と違ったら、という仮定を置いた上で自社ならどんな製品やサービスをその仮想の顧客に提供できるかと考えることです。この時に、「こんなサービスを提供したら受けるよなぁ、でもうちには◯◯が足りないよなぁ」といったように自社のリソースや課題が明確になります。逆に仮想の顧客にサービスを提供している仮想の競合他社と比較すると、自社に今まで見えてなかった強みが見えてきます。自社の強みや課題がクリアに見えてくるようになるのです。

リシャッフルは企業が既存のビジネスモデルを変革する際にも使えますし、異業種への参入やベンチャー企業の立ち上げでも使えます。いくつか実例を見てみましょう。

星野リゾート:旅館から旅館再生事業へ

現在数々の老舗旅館の再生を手がけている星のやリゾートですが、もともとは他の旅館と同じく所有する軽井沢の旅館経営をしていました。しかし、他の旅館と少し違った点があります。それは、社長である星野佳路氏が米国留学時代に学習した経営学や米国ホテルのシステマチックな管理手法を、何十年、何百年も変わらないビジネスモデルであった日本の旧態依然とした旅館事業に適用したのです。そして大成功しました。さらに自分の旅館だけでなく、旅館再生ファンド事業に着手して数々の老舗旅館を再生・統合し、富裕層向けでブランド評価の高い星野リゾートを作り上げました。

星野社長ははもともとB to Cの旅館事業に従事してきましたが、自らが受け継いだ旅館を再生させた手法が同じように経営に苦しんでいる旅館再生に適用できると考え、顧客を経営不振の旅館としたB to Bの旅館再生支援事業に切り替えてきました。星野リゾートグループは大きな発展を遂げ、1400名もの社員を抱える一大リゾートグループになりました。

ガリバー:成熟市場へ新しいビジネスモデルで参入

車に乗る方はよくご存知だと思いますが、中古車買取で有名なガリバーという企業があります。中古車市場は長い間ビジネスモデルが固定化された成熟市場でしたが、ガリバーはリシャッフルで新しいビジネスモデルを引っさげて参入しました。
ガリバーが参入するまで、中古車業界では企業が個人から中古車を購入し、別の個人に販売するというシンプルなビジネスモデルでした。買取価格と販売価格の差額で儲ける商売なので、いかに安く買い、短い期間で高く売り捌くかがキーとなる業界でした。安く買い叩くことが重要だったので、売却する個人からすると価格に不満も多かったようです。

既存の中古車企業は個人から車両を買い、個人に販売するC to B to Cモデルでしたが、ガリバーは個人から車両を買い、業者に販売するというC to B to Bモデルでこの業界に飛び込みました。販売先のBは他の中古車販売店のことなので、個人に販売するよりも安い価格になってしまいます。しかし、仕入れから売却までのサイクルが短く、販売にかかる費用も安いので、他の中古車販売業者よりも高く個人から車両を購入することができました。当然車を売りたい個人はより高く買ってくれるガリバーに売却するので、ガリバーの中古車取扱量が増えてさらに固定費が圧縮されるという好スパイラルを実現できたのです。最近では業界で一般的なC to B to Cビジネスに参入し、個人相手にも販売するようになっているようです。
このビジネスモデルでガリバーは創業から20年未満の若い企業であるにもかかわらず、業界でダントツ1位の業績を誇っています。


リシャッフルの有用性を説明するために例に上げておいてなんですが、星野リゾートは顧客をCからBに変えてみてはどうだろうという発想で旅館再生事業に転向したわけではないと思います。自社が再現可能な旅館再生ノウハウを持っている、ということと老舗旅館が経営不振にあえいでいるという現実がたまたまマッチして生まれた事業でしょう。それでもこうした事例を知識としてストックしておけば、自分のビジネスを発展させる方法を考えるときに役に立つはずです。
一方、ガリバーは中古車業界で固着していたC to B to Cのビジネスモデルに疑問を感じて、顧客をリシャッフルしてみてはどうか、という発想から生まれたビジネスモデルなんじゃないかと思います。そしてその発想から、販売費の圧縮と売却サイクルの短縮から車両を個人から高く購入できるという強みを導き出したところが今の業績に結びついています。


長くなりましたので、明日に続けます。



なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編
山田 英夫
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