2012/11/10

「顧客シャッフル」によるビジネスモデル発想4

長くなってしまったこのシリーズですが、今日で最後になります。4番目の顧客シャッフルの方法、「キャッシュポイント移動」について解説していきます。
今日もおなじみの山田英夫氏著「なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編(日本経済新聞社出版)」より事例などを引用させていただいています。

□■キャッシュポイント移動■□

キャッシュポイント移動によるビジネスモデル発想法は、製品やサービスの対価をもらう相手を変える、または対価の比重を顧客間で変えることでビジネスモデルの革新を考える方法です。キャッシュポイントの移動をさらにブレイクダウンすると、「キャッシュポイントの変更」、「サンクコストを顧客の付加価値に転換」、「キャッシュポイントの偏在」に分けることができます。


キャッシュポイントの変更

キャッシュポイントの変更は、その名の通りいままでの顧客とは別のグループから売上をあげようという目論見です。いままでは顧客ではなくて仕入れ業者だったあの会社から売上を上げるにはどうすればいいか、仕入れ業者でも顧客でもないステークホルダーから売上を上げるにはどうすればいいか、という視点で新たな収益源を考えます。

ここまで読んで気づくかもしれませんが、これは顧客シャッフルの2番めのメソッドである「リシャッフル」に近い概念であることが分かります。ひとつ違う点を述べると、リシャッフルの事例、星のやリゾートの例をあげると、顧客をCからBに変更すると同時に、提供するサービスも宿泊から旅館再生コンサルに変わっています。一方、キャッシュポイントの変更では、コアとなる商品は変えずにキャッシュポイントを変更します。具体例としてビズリーチの事例を見てみましょう

ビズリーチ:会員制ハイクラス求人紹介

ビズリーチは主に年収1000万以上のハイクラス専用の転職支援サイトです。1000万円以下の一般的なポジションでの転職市場では、多くの人が転職サイトを利用するのに対し、1000万円以上では転職サイトに情報を乗せるとポジションに対し応募が増えすぎて採用コストがかかってしまうため、ヘッドハンターを通して行われていました。このためビズリーチでは登録者を原則年収750万以上にしているそうです。こうして会員になるためのハードルを設けて会員の質を高めたのがひとつのイノベーションでした。

もう一つのイノベーションは、紹介を受ける側の個人の会員も費用を負担するという点です。通常の転職支援ビジネスでは、間口を広げるために転職先を探す個人からは料金を徴収しません。その代わり、転職成功時に転職先の企業から、転職成功者の年収の2〜3割を受け取るというモデルです。ビズリーチは転職を希望する個人会員からも会費を受け取る事によって希望者の質の向上と経営の安定性を手に入れました。ビズリーチは転職支援サービスというビジネスモデルを基本的には変えないまま、キャッシュポイントを増やすことに成功したのです。


サンクコストを顧客の付加価値に転換

サービスビジネスにはどうしてもその性質上、発生してしまう無駄なコストがあります。繁閑による人材や施設の遊びはサンク(埋没)コスト化してしまい、売上を上げないのにコストが掛かっている状態になってしまいます。その分価格に上乗せすることになるので、ある意味顧客は閑散期のツケを払わされていることになりのです。このサンクコスト化してしまった余剰をうまく活用して、顧客に付加価値を提供しようとするのがこのモデルの特徴です。

分かりやすい例は、以前のポストでも取り上げましたが、飲食店の二毛作です。夜間だけ営業している居酒屋であっても家賃は昼のぶんも含めて支払わなければならないので、昼間の家賃はサンクコスト化して埋没しています。しかし、ランチ営業をすることによって今までは余剰でしかなかった施設の昼間の稼働を収益を生み出す厳選に変えられるのです。

トランスファーカー:レンタカーの回送を利用者に委託

オーストラリアで生まれたトランスファーカーというビジネスは、サンクコストでしかなかったレンタカーの回収を収益性のあるビジネスに変えた革新的なビジネスモデルです。日本では少ないですが、国土の面積が大きい海外では長期旅行者がキャンピングカーを借りてA地点からB地点に行くという片道旅行が盛んです。そうするとレンタカー会社はB地点からA地点へ車を回送させる必要が出てくるのですが、これが完全にサンクコストになっていました。

トランスファーカーはこの店に目をつけて、B地点からA地点へキャンピングカーを借りて移動したい旅行者に回送を委託し、レンタカー会社から手数料を回収するというビジネスを立ち上げました。旅行者は全く料金を払う必要がなく燃料費もレンタカー会社が出してくれます。レンタカー会社からしても余計な人件費がかからなくなっただけで大きなメリットになるのです。


キャッシュポイントの偏在

キャッシュポイントの偏在は、フリーミアムのような偏った収益モデルへの移行の可能性を探る発想法です。フリーミアムとは基本無料のMMORPGに見られるような、一部の有料課金ユーザーからの収益だけで大量の無料ユーザーを含めてサービス全体を提供します。ポイントは、まず無料会員を最大限獲得し、その中から少しずつ有料ユーザーにコンバージョンしていくことを狙います。

MMORPGのようなフリーミアムが例として分かりやすいですが、有料ユーザーと無料ユーザーという区分けに思考を縛られる必要はなく、単価が低いユーザーと高いユーザーという偏在の仕方も考えられます。しかし、キャッシュポイントの偏在にうまく導けるサービスには幾つかの条件があります。まずは限界利益が極端に低いこと。大量の無料、または低収益のユーザーを抱えるわけですから、損益分岐が低くなければすぐに破綻してしまいます。もう一つの重要な条件は、有料サービスが一部のユーザーの圧倒的な支持を受けられることです。有料ユーザーが受け取る価値が提供するのにかかるコストよりも圧倒的に高くなければ、このモデルは成り立ちません。


4回に分けてきました顧客シャッフルによるビジネスモデル発想ですが、参考になりましたでしょうか?いま自分が関わっているビジネスのイノベーションを考えるときにぜひとも参考にしてみてください。



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