2012/11/15

クロスセルが成功する時、失敗する時



販売手法のテクニックとしてアップセル、クロスセルというものがあります。
アップセルは、次回購入時に前回よりも価格と付加価値が高いものを提案することと定義されています。吊り下げのスーツを買った顧客へ次回来店時にセミオーダースーツをすすめる紳士服店のようなケースを言います。
一方、クロスセルは購入時に別の関連商品を提案して購入点数を増やす手法と定義されています。マックでアップルパイもいかがですか?とすすめられるケースですね。
クロスセルは新規顧客の初回購入時にも使えるテクニックなので、短期的に売上を向上させる可能性をもっています。クロスセルが成功しやすいケース、成功しにくいケースを考えてみたいと思います。

クロスセルが成功する時の顧客の心境
顧客の中で何を購入すべきか明確に決定していない場合にクロスセルが受け入れられやすくなります。旅行での食事でどれにしようかなと迷っている時に、店員の方に勧められた通りに注文した経験が誰にもあると思います。ドラッグストアや雑貨店に多い、セット購入をすすめるPOPも迷っている顧客へのクロスセルを狙って設置されているんですね。

購入商品が決まっている顧客は成功し辛い
上記の裏返しです。これはわかりやすいケースだと思います。購入しようとする商品が断固として決まっていれば、別の商品を勧められたところで心は動きません。むしろ余計なお世話と感じることもあるでしょう。私はマルイで服飾品を買うことがありますが、指名買いする商品がない限りあまり行かないようにしています。見ているだけなのに商品を勧めてくるのが嫌なのです。

手軽軸の店はクロスセルが難しい
3つの価値軸で考えると、クロスセルの成功と顧客が求める価値軸が密接に関係していることがわかります。

久しぶりなので3つの価値軸を今一度おさらいします。
3つの価値軸とは、米国経営コンサルタントのトレーシー&ウィアセーマによるポジショニング理論を私が尊敬するマーケター佐藤義典氏がさらに分かりやすく再編した理論です。企業は3つの価値軸のいずれかを選択して特化することにより、競争相手から抜きん出ることができます。

1. 手軽軸 = 安い、早い、うまいという顧客のコストメリットを最大化するモデル
2. 商品軸 = 最高級、最高スペック、超レアモノのような、商品自体の価値を最大化するモデル
3. 密着軸 = 顧客の個別のニーズに応え、最適な商品を提供(製造する場合も)するモデル

手軽軸の店は、総じてクロスセルが難しいという特徴があると思います。手軽軸の店を選択する顧客は、アクセスのしやすさ価格の安さという価値に重きをおいているわけですが、中でも価格の安さで購入する店舗を決めている顧客に、買うと決めている商品以外の商品を売るのはなかなか難しいものです。価格軸の店を利用する顧客は基本的に目的買いだからです。
私はマックをよく利用しますが、その理由は私にとってマックは安いのにそれなりの食事ができ、またそれなりに快適に過ごせる場所だからです。1回あたりの総額が500円を超えるならばもっといいものを食べますし、勉強や仕事のために利用するならスタバに行きます。そんな私からすると、アップルパイいかがですかというクロスセルにまず応じません。単価の高いバーガー類もまず買いません。毎回100円マックか単価120円の商品の組み合わせで400円以下で済ませます。
それでも手軽軸の店でクロスセルを使う企業が多いのは、手軽軸のビジネスモデルで利益を減らさずに売上を伸ばす手法が限られているからでしょう。手軽軸のビジネスモデルで売上を増やそうとしたら、値下げが一番です。なぜならそれが顧客が一番求めているものだからです。しかし、これでは企業側が持ちません。クロスセルは新たにコストを生むことがないので、成功率が高くなくとも手軽軸の店で頻繁に使われるのでしょう。

商品軸の店舗はクロスセルが有効
手軽軸と比較すると、商品軸の店はクロスセルがしやすいはずです。商品軸の商品は専門性が高かったりプレミアム感があることによって、その商品を扱う店員の信頼度を高める効果があります。それゆえに商品軸の商品を求める顧客は店員のアドバイスをもとに商品を決めることが多いので、クロスセルが成功しやすい条件を満たしていると言えます。
化粧品がこのケースの好例でしょう。高級デパートで化粧品を買うような場合、販売員の方の勧めるままに複数商品の組み合わせを買ってしまうことが多いようです。専門家である販売員のアドバイスに従おうという心理が働くのでしょう。実際は2倍、10倍の値段の化粧品を使ったところで2倍、10倍美しくはなれません。しかし、それでも顧客の満足度は高くなる傾向にあるので、商品軸とクロスセルは相性が良い組み合わせなのでしょう。

クロスセルは密着軸の構成要素
最後に密着軸との関係性を考えると、クロスセルは密着軸の構成要素であると言っても過言ではありません。別の言い方をすると、密着軸を求める顧客は、クロスセルを受けることを当然としている、求めているということです。密着軸に価値を感じる顧客は自分に最適な提案を受けることを求めているので、アップセルやクロスセルを最適な提案を受ける上での必要条件と思っているのです。自分の感性に合うという理由で贔屓にしているメンズスーツのブランドがあれば、スーツを仕立てるのが目的で来店したときにもそのスーツに合うYシャツやネクタイやコートを提案してくれることを求めているのです。逆にこうした提案がないと、この店は密着軸の店舗としての価値を失ってしまうのです。

これらの考察は私の実体験に根ざしているものがほとんどですが、全部とは言わないまでもなんとなく共感を得られるのではないでしょうか?
これらの特徴からどのように自分のビジネスに活かせそうか、考えてみてはいかがでしょう。

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