2012/11/20

機が熟すまで待つというプロモーション


ファッション業界全体が停滞気味な中、しまむらは順調に店舗と売上高を伸ばし気を吐いています。私のイメージでは、しまむらといえば地方のロードサイド店で値段がユニクロよりも安くてカジュアルではあるものの、垢抜けない田舎っぽい印象がありました。そんな片田舎でしか見かけなかったしまむらも、現在では三軒茶屋の駅前にも出店するなど、都心部でも勢力を伸ばしています。

しまむらはもともと地方で全年齢層向けに低価格衣料を提供する安さだけが特徴のチェーン店でしたが、首都圏での出店を増やすにつれてファッション性の高い若者への訴求力を高めています。そのプロモーションが見事なので取り上げてみます。

しまむらは10年近く前からテレビCMでの広告を行なっていますが、特に近年になってから5分程度の天気予報番組をもつなど、かなりの広告予算を認知度アップのためのテレビ広告に割いてきました。その甲斐あってか、2009年頃にはオシャレな若者にも認知度が高まって、しまむら愛好者の「シマラー」やしまむらの服を来ていることがバレる「しまばれ」など、よくも悪くも話題になるようになりました。

国内での若者向けファッションイベントとして知名度の高い東京ガールズコレクション(TGC)に参加して、ファッション性の高い若者にアピールするのに十分認知度を得ている状態でした。しかし2012年までTGCへの参加を控えたのです。その理由は、機が熟していなかったから。

日経MJ 2012/11/14 P.1――――――――――――――――――――――
しまむらは当時(2009年頃)、若者の需要の受け皿となる都市型店舗の開発途上にあった。東京・高田馬場の都心1号店開業は07年。商品の改良余地もまだ大きかった。
その後、09年末の三軒茶屋店を皮切りに都市型店の開発が本格化。ソリデルなど若者向け衣料が品ぞろえの核となる店も登場し、売れ域に安定感が増した。こうした状況を見届けたうえで、TGC参加を決定。もくろみ通りの販促結果も得た。
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流行り廃りのスピードが早いファッション業界で、拙速よりも機が熟すのを待ったという行動が興味深いところです。一般的に言って、認知度を高める施策は早ければ早いほど効果が高まります。広告によってあらたに認知した見込み顧客が顧客になるまで時間がかかります。その顧客から得た収益を次の広告に再投資することを考えると、早ければ早いほど福利的に効果が増すのです。少なくとも論理的には。
しかし、しまむらは拙速をよしとせず、認知を得た見込み顧客をしっかり顧客化できる土壌を整えてからTGCでプロモーションを行ったのです。尊敬するマーケター佐藤義典氏のコンセプトを借りると、切れ目のないマインドフローを構築してから顧客獲得を開始したのです。

このしまむらのケースから得られる教訓は、認知されても店舗の不足や商品の魅力不足によって購買行動につながりにくい状態では、インパクトの強いプロモーションは機が熟すまで待ったほうが良いということです。しまむらは首都圏での店舗開拓と商品開拓を進めつつもテレビ広告や雑誌広告をずっと打ってきていましたが、TGCへの初めての参加という大きなインパクトが期待できるカードは効果を最大化する準備が整うまではとっておいたのです。ビジネスにおいては原則熟慮による遅滞よりも拙速を尊ぶべきですが、戦術によっては機が熟すのを待つべきこともあるということを覚えておくべきでしょう。

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