2012/11/27

シャドープランニング: 携帯キャリアの次の一手

国内大手3社の携帯キャリアはほとんど価格的にも付加価値的にも違いがありません。AUとSoftbankが買ってNTT Docomoが一人負けなのはキャリアの優位性によるものではなくて扱っている端末(iPhone)の影響に過ぎません。これらの国内大手キャリアのうち一社が抜きん出るにはどうしたらよいのでしょうか?

携帯回線は技術による差別化が難しい分野です。そのキャリアが提供しているのはCDMAOneなのかCDMA2000なのかW-CDMAなのか、なんてことは利用者にとってはどうでも良いことで、どれだけ繋がりやすくて早くて安いのかが重要なのです。国内大手3キャリアは利用者にとっての価値ではほぼ三すくみ状態です。
MNPにより心理的なスイッチングコストが下がったので容易にキャリアを乗り換えられるようになりました。回線は所有物ではないため所有する価値を持たせにくく、コモディティであるためブランド価値を持たせることも難しいのです。ゆえに品質面でもコスト面でも情緒的価値でも差別化が非常に難しく、競合他社よりも高い値付けをすることが困難です。

今後携帯キャリアが取るべき手段は、基本的にキャリアの本質機能である回線の付加価値ではなくて、回線以外の付加価値をアドオンして収益化することが基本戦略となるでしょう。基地局の増設や通話品質の改善は、不満足による会員の流出を防ぐために強いられるネガティブな投資であって、新たな顧客を呼び込むための呼び水には成り得ません。

これらを踏まえた上での成長の芽を考えてみます。

■ PB(プライベートブランド)アナロジー
携帯端末、スマートフォンを、キャリアで企画して製造委託するという考えです。あまり詳しくはないのですが、携帯電話の販売店は基本運営委託しているので端末販売代金はキャリアに入ってこないはずです。新しい収益源として携帯電話端末を企画開発してハード販売収益を得るのも一つの方法です。

■ キングソフトアナロジー
パソコンソフト販売のキングソフトは、広告アプリを仕込んだEden TabというAndroidタブレットを販売しました。あくまでも広告アプリを仕込んであること前提で売り出しており、そのかわり広告収益の分本体代金を割り引くというモデルです。同じように、キャリアがOSに広告を仕込んで月額料金を値下げし、利益を減らさずに価格で優位性を築くことができるかもしれません。

ただし、ユーザーが広告の内容や頻度に不満を覚えて他社に乗り換えてしまう可能性もありますし、上手く行ったとしても競合他社が真似するのはそれほど難しくはありません。

■ コンテンツパッケージ化
コンテンツやアプリは今や自分が必要としているものを探しきれないほど巷にあふれています。例としてカレンダーツール、天気予報、電話帳、乗換検索などのビジネスツールをパッケージにしたオールインワンパッケージを安価に提供するのは需要があると思います。選択肢が増えすぎると、必要な物をピックアップして自分用にカスタマイズしてくれるサービスへの需要が発生します。プロフィット・ゾーン経営戦略のポストでも紹介したスイッチボード利益ですね

■ ソリューションビジネス化
既に実現している部分も多いですが、買い替え時のデータ移行請け負いやクラウド・ストレージの提供などです。しかし、コンシューマーの要求(=ソリューションによって解決されるべき課題)は機種本体の機能性や回線のつながり易さといった技術的な改善に集まりやすいため、ソリューションの提案が難しいのが現実です。企業であれば、使用感よりも目的の達成に主眼が置かれるため、ソリューションが提案しやすいんですよね。

■ 決済端末化
EdyやWaonのような電子マネーがこれだけ普及しているのに、携帯電話での決済が電子マネー決済のメインストリームにならなかったのが不思議です。おサイフケータイはある程度普及していますが、新たにカードを持たせるEdyやWaonよりも、もともと持っている携帯電話での決済のほうが普及しそうなものなのですが。

唯一NTTドコモはNTTデータのような大手開発会社をグループ会社に持っていて、しかもNTTデータはカード決済システムCAFISの開発・運営実績があるのです。携帯電話の決済端末化を本気で推し進めていればスタンダードを取れる可能性もあったでしょう。


いろいろ頭を捻ってみましたが、回線プラスアルファの付加価値提供も容易ならざる道です。今後それぞれの会社の差別化が進むとすれば、他の多くの業界が歩んできた細分化という道なのかもしれません。万人に同じ回線サービスを提供する今のような形態ではなく、ロースピードローコストのブランド、ハイスピードハイコストのブランドを立ち上げて、より小さなセグメントを狙い撃ちするマーケティングを行っていくのかもしれません。

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