2013/01/30

実例プラットフォーム戦略ビジネス集


プラットフォーム戦略ビジネス

前回はビジネスにおけるプラットフォームの意味合いとその価値について書いた。

今回はビジネスの世界で成功している(しそうな)プラットフォーム戦略を一つ一つ見ていこう。


■ Appleはエコシステムと利便性で顧客をロックイン

Appleはプラットフォーム戦略のドン。
iOSという魅力的なデバイスと、アプリと音楽の流通経路であるiTunesを垂直統合して一大エコシステムを築いている。
その強固さでは右に出るものはいないだろう。

Appleのプラットフォーム戦略の恐ろしいところは、Appleのエコシステムから離脱することによる資産(有料アプリや音楽、ブックなど)の損失だけではない。
iOS―iTunes/iCloud―Macという統合された環境の過剰な利便性がこのエコシステムから抜けにくくする。
iTunesで音楽やアプリを購入すれば勝手に所有してるiOSデバイスや他のMacで同期されるし、バックアップもユーザーが何の意識もせずに勝手に取られている。
一度この甘やかされた環境に浸ってしまうと、何もかもバラバラで自己管理なMicrosoftやAndroidのプラットフォームに移るのは苦痛になってしまう。
こうして完成されたApple信者(私含む)はこのプラットフォームで搾取され続けるのだ。


■ 顧客のニーズをすべて満たせるスペースを作る楽天

楽天といえば楽天市場が分かりやすいECモールのプラットフォームだ。
このプラットフォームに出店する小売業者はなんと4万店。
利用者は7000万人とも8000万人とも言われる。

これだけでなく、楽天はさらにWebでやりたいことを全てできるプラットフォームを目指しているようだ。
旅行の予約はもちろんのこと、証券口座も開けるし引越の見積も取れるし、Webデザインの発注まで可能なのだ。
この超巨大プラットフォームはどこまで成長するのか楽しみだ。


■ ダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ

前回のポストでも登場頂いたダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ。

この企業のプラットフォームが面白いところは、コンシェルジュサービスをベースとして誘導する先の飲食店が全て自社グループだということだ。
そして、顧客がロックインされるメリットとしてダイヤモンドダイニンググループで使えるマイルポイントシステムがある。
100業態・100店舗というアセットがコンシェルジュサービスとマイルポイントシステムを支えている。
一社完結しているという意味では、プラットフォーム戦略の例外と言えるかもしれない。


■ ネットプロテクションズの会員化

ネットプロテクションズは、多くのECサイトで採用されているNP後払という決済サービスを提供しているユニークなビジネスモデルの企業。
ユーザーがECサイトで後払い決済を指定して購入すると、まずネットプロテクションズがECサイトに支払い、そのあとユーザーが商品到着後にネットプロテクションズに支払うという仕組みだ。
この会社にとっては、ECサイトがまず第一の顧客で、ECサイトを利用する消費者も同社の第二の顧客ということになる。

ネットプロテクションの創業は2000年だが、2006年に全く同じビジネスモデルで後払いドットコムというサービスが生まれた。
唯一無二のビジネスモデルに競合が生まれたというわけだ。
しかも後発らしく、ネットプロテクションズよりも安価な手数料率の設定だ。

しかし、ここでプラットフォーム戦略の出番だ。
ネットプロテクションズの柴田社長によると、ネットプロテクションズの後払いを利用した顧客を会員化することを狙っているという。

後払いを利用した顧客を会員化したあとにどのようなビジネスプランを描いているのかはわからない。
しかし、会員化されたプラットフォームを作り出して消費者にとっての付加価値を上げ、消費者がNP後払いを好むように仕向ける。
すると、必然的に消費者が選ばない後払い.comを離れてECサイトはネットプロテクションズに戻ってくるというわけだ。


■ タイムズ24は駐車場をプラットフォームに

これは少し番外編になるかもしれないが、タイムズはコインパーキングをプラットフォームにしてカーシェアリングという別のビジネスを展開している。
アライアンスパートナーは土地と車を提供するオーナー。

タイムズ24はコインパーキングをプラットフォームにして顧客をロックインしているかというと、決してそうではない。
むしろ全く逆で、カーシェアリングは車を持たない顧客層を取り込むビジネスモデルだ。
プラットフォームを活かした、とてもユニークなビジネスモデルだ。 



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プラットフォーム戦略は何のため?

プラットフォーム戦略

プラットフォームという言葉を最近みなさんもよく耳にするのではないだろうか。
特にAppleがiOSデバイスとiTunesで包囲網を引いてきたり、SNSやソーシャルゲームの発展に伴ってプラットフォームという言葉が使われる機会が増えてきた気がする。

このプラットフォームというやつは、ビジネスの世界では誰もが手に入れようとする「宝の地図のありか」のようになっている。
なぜなら、一大プラットフォームを築いた企業は大きな収益と競合優位性を保つことができるからだ。
プラットフォームを築くことができた企業がどのようなメリットを享受したか見てみよう。


ちょっとその前に、プラットフォームという言葉の意味をご存知だろうか?
実は私もはっきり理解しているとは言いきれないので、一緒にお勉強しましょう。

Wikiによると、プラットフォームのもともとの意味は「鉄道駅、倉庫、自衛隊駐屯地などに備わる、列車・トラック・運搬用トレーラーの、旅客の乗降や貨物の荷役を行うための台状の設備」とある。
ここから派生して、何かの土台となるものを何かとプラットフォームと呼ばれるようになった。
IT用語で言えば、特定のソフトウェアやシステムが稼働する環境全体をひっくるめてプラットフォームと呼ぶし、ビジネスでは様々な小売業者が出店できるECモールをプラットフォームを呼ぶ。
かと思えば、どんな小売業もコレがなければ始まらないクレジットカード決済もプラットフォームと呼んだりする。
そしてSNSも、そう、もちろんプラットフォーム。
よく考えれば考えるほど、定義があやふやでいろんなものがプラットフォームに当てはまってくる。


少なくともビジネス用語で言われるプラットフォームは、他のサービスのベースとなる基盤・環境であるということ以外に、核となる企業を中心としたアライアンスが見られること、顧客の囲い込みが狙いだということが共通している。

必ずアライアンスがあるというのはイメージがつきやすいだろう。
ECモールを提供する企業は出店する小売業者から出店費用や販売手数料を受け取り、販売スペースを提供する。
ECモールというプラットフォームを提供する会社は、小売業者というアライアンスパートナーとそこで買い物をする消費者があって初めてビジネスが成立する。

顧客の囲い込みが狙いとはどういうことだろうか。
ユーザーはひとつのプラットフォームと類似のプラットフォームを行き来する自由はあるが、時間やお金といったリソースの制限により、どちらかのプラットフォームに傾倒することになるのがプラットフォームビジネスの特徴だ。
それゆえ、グリーとDeNAは必至にソーシャルゲームのナンバーワンプラットフォームを獲得しようと熾烈な競争を繰り広げている。
グリーとDeNA両方の仮想通貨に課金するほど金銭的・時間的ゆとりのある人はそう多くない。


では、ビジネスの世界で成功している(しそうな)プラットフォーム戦略を見ていこう。
・・・と思った所で意外と長くなってしまったので、次回につなぎます。


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2013/01/29

飲食店もソフトパワーで差別化の時代へ。ダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ


事業目標が100店舗・100業態という大胆な成長モデルを描いて達成したダイヤモンドダイニング。
事業戦略がダイナミックで先進的な取り組みを行なっている居酒屋のグループ企業だ。


飲食店をとりまく環境は楽ではない。
消費者の嗜好の多様化に合わせて飲食店も多様化してきた。
特に居酒屋やバーにその傾向が強い。
昭和な香りのする居酒屋からオシャレなバルやワインバーまで選択肢が豊富になった。

もう一つの変化として、会社員の宴会や、デートや合コン、女子会をターゲットにするなど、居酒屋を利用する用途で店舗を差別化しようとしている店舗が増えた印象がある。

その一方で、正しいターゲットを呼び込むことが困難になってきた。
選択肢が多すぎるのだ。

実際のところ、飲食店の店舗数はピークだった93年以降減り続けているが居酒屋は増加傾向にあるそうだ。


そんな中、ダイヤモンドダイニングが面白いサービスを提供し始めた。
宴会コンシェルジュというサービスだ。
http://www.diamond-dining.com/event/concierge/

宴会幹事がダイヤモンドダイニング宴会コンシェルジュへ連絡すると、人数や日時、希望の料理・予算を伝えると要望にあった店舗を探して予約してくれる。
宴会幹事の苦労や不満を逆手に取って、集客手段にしようという面白い試みだと思う。
当然選択の対象となるのはダイヤモンドダイニングの店舗だが、100店舗・100業態という豊富なバリエーションと店舗を有する同社だからできた新たなサービス形態だ。

宴会の幹事になって店選びに苦労した人も多いはず。
ぐるなびなかで探していても良い条件の店を探そうとするとキリがなくなってくる。
宴会コンシェルジュに頼んで店を選定してもらうと、悩む必要がなく手っ取り早いし、「コンシェルジュが選んでくれたんだから」と店舗に対する参加者の不満もしのぎやすくなる効果もあるかもしれない。


しかも、宴会幹事がぐるなびや食べログのようなグルメSNSじゃなくて宴会コンシェルジュを利用するインセンティブの与え方がまたニクイ。
というのも、ダイヤモンドダイニングでは様々な商品と交換できるDDマイルというものを結構な高交換率で提供しているが、ダイヤモンドダイニングを利用すると宴会の会計のポイントが全て宴会幹事に付与される。
http://www.diamond-dining.com/ddmile/

そのポイントを使ってプライベートでダイヤモンドダイニング系列の店舗を利用したり商品と交換できるという仕組み。
店舗の数ではグルメSNSに太刀打ち出来ない代わりに、幹事への付加価値で幹事を集客しようというわけだ。


「飲食店は立地だ」と言い放つ人が多いように、飲食店の差別化は非常に難しいんだろう。
私自身は飲食店の利用者でしかないから、飲食店経営者の苦労はわからない。
しかし、ダイヤモンドダイニングが宴会コンシェルジュという新たなサービスを手がけたように、飲食だけではない別の付加価値で勝負する時代になってきているのではないだろうか。
その一つの応えがコンシェルジュのようなサービスなのだろう。











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2013/01/28

企業のビジョンはなぜ浸透しないのか 2


前回のポストではIKEAの企業ビジョンがなぜ素晴らしいのかということについて触れた。
何が優れているかといえば、ビジョンとビジネスモデルが一致しており、ビジネスがビジョンを実現するためにあるからだ。

今回はなぜ大半の会社でビジョンやクレドはただのスローガンになってしまうのかについて考えてみたい。


■ビジョンが現実と合っていない

基本的な問題として、ビジョンが現実とそぐわない場合はすぐに忘れ去られてしまうことになる。

企業が長い年月ビジネスをしていれば、ビジネスモデルも徐々に変わってくる。
そのビジネスモデルの変化や市場の変化、消費者のライフスタイルの変化が訪れると、自ずとある企業が掲げたビジョンが時代遅れになってしまうことがある。

松下幸之助氏の水道哲学もかつては素晴らしいビジョンであったが、あれだけ素晴らしく未だに語り継がれるビジョンであっても、やはりもう現実にはあっていない。
今は大量生産大量消費は認められず、本当に必要な物を必要な人に届けることが日本において正しくなった。
ビジョンはこうした環境の変化に合わせて変化しなければいけない。


■作り方が間違っている

まず第一に、ビジョンの作り方を間違えている場合が多いと思う。

多くの場合は経営者が企業を立ち上げる時にビジョンを設定するはずだ。
それはそれで正しい。
ビジョンを持っている方が利益だけを追い求める企業よりも成功するはずだから。

しかし、経営者の作るビジョンが必ずしもその企業に合っているとは限らない。
何十年と会社が続くうちに、その企業が本来使命とすべきことと掲げたビジョンが乖離していくるかもしれない。
その時に、創業者はビジョンをもう一回考えなおす必要がある。
事業と乖離してしまった創業時のビジョンを大切にしすぎてしまうと、結局従業員がビジョンなんてただのお飾りだと考えてしまうのかもしれない。


それから、会社のオーナーがコロコロ変わってしまう企業も世の中にはたくさんある。
こうした企業の経営者は本質的にはサラリーマン社長だ。
サラリーマン社長がビジョンを打ち立てるのはかなり難しいと考えたほうがいい。

自分の会社でない以上、どこか最後まで責任を持ちきれない、心の隙のようなものが多くのサラリーマン社長にはあると思う。
従業員が心の何処かで「この社長はサラリーマン社長だなあ」と思うような社長に「この会社のビジョンはこうだ!」と言われても、心の底からついていけるだろうか?

ビジョンを策定するには、経営者が本心からこのビジョンを達成したいと思っているんだな、という信頼が必要。
でもサラリーマン社長にはその信頼を築くのは難しく、長い時間がかかるのだろう。


ビジョンというのは、従業員の気持ちを一つにまとめるために大変重要なツールだ
ツールというと世俗的に聞こえるかもしれませんが、実際にビジョンがしっかりしている会社では従業員の意欲も満足度も高く、商品やサービスも充実していることが多い。
だから顧客に対しても最高の商品やサービスが提供できる。

もっと世の中には素晴らしいビジョンを掲げる企業が増えていって欲しいと思います。
 

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2013/01/26

企業のビジョンはなぜ浸透しないのか 1


前回、エクセレントカンパニーには優れたビジョンがあること、人にもビジョンが必要であることを書いた。
前回の投稿→ http://www.everydaybizidea.com/2013/01/blog-post_26.html
もう少しだけビジョンの話をしたい。


前回もエクセレントカンパニーの代表として登場してもらったIKEA。
IKEAのビジョンは「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるよう、できる限り手ごろな価格でご提供する」という価値観だった。

あなたはこのビジョンを見てどう思うだろう?
正直なところ、結構平凡だなぁと思ったんじゃないだろうか?

実際、IKEAか掲げるビジョンの言葉自体は華美なものでも荘厳なものでもない、平凡な言葉で平凡なことが綴られている。
しかし、IKEAがビジョナリカンパニーたる所以は、ビジネス戦略がこのビジョンを実現するために組み立てられ、ビジョンがビジネスの指針となっているからだ。
両者が矛盾せず、相互作用をもたらして企業の価値を高めている。

より多くの人々にホームファニッシングを楽しんでほしいという願いは、実際的には所得の低い人でも家の狭い人でも家具選びを楽しんで欲しいという意味だ。
所得の多い人はIKEAがなんとかしようとしなくても、富裕層向けの高級家具店でマホガニーの木目を活かした高級ダイニングテーブルを買いに行けばいい。
だからIKEAが奉仕すべき相手は所得層の低い顧客なのだ。

IKEAは徹底的に価格を下げてることにこだわった。
彼らの言葉を借りると、まずはプライスタグをデザインしてから製品を作る。
ターゲットとする顧客が明確なので、購入できる価格帯が決まる。
だから価格が決まった状態で商品企画が始まる。

価格が安い製品だからといって、デザイン性や機能性を蔑ろにすることはなかった。
デザインや機能が劣る安い製品では、顧客はホームファニッシングを楽しめない。
仕方なく安い製品で妥協するという事になってしまう。
だからIKEAは安価でもデザイン性と機能性に優れた製品を作ることに妥協しなかった。

価格が安いのにデザイン性も機能性も優れている。
この商品開発力が競合と差別化するIKEAの強みとなった。
ビジョンを突き詰めた結果、強い優位性を築いたのだ。


このようにIKEAのビジョンとビジネス戦略には密接な関係がある。
ビジネスで選択に迫られたら、ビジョンに問えばいいのだ。
常にビジョンがビジネスと一体だから、IKEAの従業員も自然とビジョンに従った行動を取ることになる。

では、IKEAのようなエクセレントカンパニーではない企業ではどうなのだろうか。
もしみなさんの会社がエクセレントカンパニーではないのなら、自社のビジョンがどういう扱いになっているかを思い出していただきたい。


恐らく額縁に飾った浮いた存在のようになっているのではないだろうか?
なぜほとんどの企業ではビジョンがただの綺麗事やスローガンになってしまうのか?

この理由については次回のポストで考えてみたい。



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ビジョンは慌てて作るものじゃない


あなたの会社はビジョンを持っていますか?
大手企業やベンチャー企業ではほとんどどこでもビジョンを掲げていると思う。
企業のホームページを見ると、大抵は沿革だけでなく企業理念のページも用意されている。
さらに理念に熱心な経営者はクレドを作り、社員にクレドカードなどを配っているかもしれない。

世界に名だたる企業を見ていると、優れた企業にはどうも優れたビジョンが不可欠なようだ。

あのウォーレン・バフェットが投資しているジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは世界的にも有名なクレドだ。

要約すると、ジョンソン・エンド・ジョンソンの第一の責任は顧客に対する責任、第二の責任は従業員に対する責任、第三の責任は地域社会に対する責任、そして最後に株主に対する責任がやっと四番目に書かれている。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは毎年手堅い決算を上げている。
株主価値にうるさい米国にありながら、顧客と社員と地域社会への奉仕を徹底した。
その結果、株主に大きな価値を提供しているというのだ。
企業の理想的な姿と言えるんじゃないだろうか。

エクセレントカンパニーは優れたビジョンを仕組みや制度に組み入れ社員に浸透している。
企業の行動がビジョンと矛盾していないから社員も顧客も取引先もその企業を信頼できる。
その信頼があるから、社員はその企業の一員であることに誇りを感じ、最大のパフォーマンスを発揮できる。
どうもこれはエクセレントカンパニーのゴールデンルールのようだ。


今年で創業70年を迎えるが、年に10%以上の成長を続けているIKEAもこのゴールデンルールを体現している優れた企業の一つだ。
その成功のエッセンスがIKEA Wayといわれるビジョンに凝集されている。
それは、「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるよう、できる限り手ごろな価格でご提供する」という理念だ。

このIKEAのビジョンは如実に低価格で優れたデザインの製品を強みとするビジネス戦略に反映されている。
その結果として、創業数十年たった今でも高い成長率を誇っている。


驚いたことに、IKEAのビジョンは創業当時から掲げられていたというわけではなく、なんと創業から30年経って漸く生み出されたビジョンなのだそうだ。
ベンチャー企業では理念からスタートする企業が少なくないが、今は世界のエクセレントカンパニーであるIKEAも始めはビジョンを持たないただの小さな家具屋に過ぎなかったのだろう。

IKEAは30年経って漸く自分たちの会社の存在意義を自覚した。
今はビジョンがまだ無くても焦ることはない。
自分たちの役割に徹していれば、やがてビジョンが見つかるのだろう。

そして、これは個人にとってのビジョンも同じなのだと思う。
今は自分がどうあるべきかというビジョンが見つかっていなくても、自分の役割に徹しているうちに見つかる。
今目の前にあることに集中すべしということだ。


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2013/01/25

非正規雇用を変えて人材市場を発展

前回のポストでは、要介護者や子供がいることでフルタイムで働けない女性労働者を活用すべきだと書いた。
活用されるべき人材は、介護や子育てがある女性労働者だけじゃなくて、就職氷河期で正社員になれずそのまま非正規雇用を余儀なくされている人や、望んでフリーエージェント的な働きをしている人も含まれている。

そして、こうした人材を活用することが、人材ビジネス市場での新たなビジネスチャンスになる。

正社員として働けない人材をうまく活用するには、基本的な方向性として正社員を減らして複数名のプロフェッショナルでその仕事を分担することになる。
だけど、単純に正社員の仕事を二人や三人のアルバイトに分けるのはただの悪しきワークシェアで、余計貧しい人を増やしてしまうだけだ。

一人の正社員の仕事を複数の機能に分け、それぞれその道のプロフェッショナルに任せる人事システムを作るには、業務設計を変えていく必要があるだろう。
ここに人事の仕組みを作るためのコンサルテーションや、新たな人事システムを可能にするITシステムが必要になってくる。

採用活動では、これまでと違う企業と求職者のマッチングメディアも生まれるだろう。
ビジネスとは言えないが、労働に関連する法律を改訂するための活動も欠かせない。


先日リクルートジョブズとリブセンスの違いとそれぞれの優位性について書いた。
http://www.everydaybizidea.com/2013/01/vs.html

これらの非正規雇用を中心とした人材募集広告メディア企業は、今後こうしたビジネスに舵を切って行くのではないだろうか。

2013/01/23

働ける女性を救えば日本経済が救われる!

高齢化が進行している日本では、女性労働力のロスがとても多い。
厚労省の調べでは、2012年の日本の就業者数は約6300万人、そのうち女性は約2800万人。
女性労働差のうち、介護が理由で離職・転職したのがなんと年間12万人(2006年)にものぼり、女性の離職・転職者数は増加基調だ。
しかも、まだまだ働ける50代以下が80%を占めているのだ。
roudou
これはいったいどれだけ日本経済にとってマイナスなのだろうか?
私の経験から、女性は非常に優秀な労働者であることが多い。
一般論ではあるが、男性は長期的視点での戦略立案や論理的思考が女性よりも優れている傾向がある。
一方、女性のほうが求められたアウトプットへのコミットメントが強く、期日までに求められたことをきっちり成果として出すことに優れていると思う。
それに、行動力でも女性のほうが成果につながる努力をひたむきに実行している傾向があるように感じる。
とにかく、私の周辺には優秀な女性が多かったのだ。
そんな女性たちが、自らの意志に反して描いていたキャリアの道から逸れて、労働市場からもはじき出されてしまうのはなんという不幸だろう。
本人にとっても、企業にとっても、果てには日本経済にとっても不幸なことだ。
せっかくホワイトカラーとして優れたスキルを持ち結果を残してきた人でも、一度非正規雇用になると単純労働や事務職にならざるを得ないのが今日の労働市場だ。
特定業種で豊富な経験や実績があってもそれを活かす職場にたどり着ける可能性はとても低い。
スキルや適性があっても非正規だからといってハナから候補から外してしまい、スキルが足らないミスマッチな人材でも正社員として長時間会社に奉仕出来る人を採用するという考え方は本当に正しいのだろうか?
倫理的な視点だけじゃない、効果・効能という視点からしても果たして正しいのだろうか?
私としては、今の人事システムや会社の仕組みの枠に合う人材(正社員として働ける人)の中から最も実績を出せそうな人を選ぶのではなく、最も実績が出せそうな人と働き方や契約を調整するのが理想的だと思うのだ。
人事システムや人事規定に柔軟性を持たせることによって、要介護者の家族を持つ女性だけでなく小さな子を持つ女性やダブルワーク、フリーエージェントといった様々な価値観の人々を活かせるようになる。
多様で柔軟な形態で企業が人を採用できるようになると、必要なポジションにぴったりフィットしたスキルセットを持つ人を採用しやすくなる。
すると、今よりもスペシャリストが増えていくだろう。
スペシャリストを適材適所で活用しやすくなると、今度は企業が人材の力により実績を伸ばせるはずだ。
こうして要介護者を持っても子を持っても働き続けることができるような人材市場になれば、女性は自らのキャリアを伸ばし続けることができる。
すると、バリバリのキャリアウーマン(表現が古い・・・)が結婚して子育ての間に仕事から離れたために、子離れしてさあ働こうと思っても単純労働力としてしかみなされない、という不幸な状況も防げるのだ。
結果、人々のポテンシャルを最大限活かせる社会ができあがるのではないだろうか。
ロジックではこうした考えに同意してくれる人事担当の人もいるだろう。
しかし現実には困難だとも言うだろう。
だが、ここにこそ次世代の人材ビジネスの種がある。
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高級ワインはブランドの最たるもの



私事ですが、最近大変ワインにはまっています。
といっても、始めたばかりなのでさほど高いワインはまだ飲んだことがありません。

ワインは勉強すればするほど、もっと知りたいことが増えてくる奥深い世界です。
産地や葡萄の品種によって味が全く異なるし、同じ産地でもワインを作る蔵元によっても味わいが異なってくる。
さらにはヴィンテージ(収穫年)によっても全く異なってくる、というあくなき追求の世界なのです。

ワインは一本数百円のテーブルワインから、一本百万円以上するロマネ・コンティのような超高級ワインまで非常に幅広い銘柄が存在しています。
それぞれの値段の違いが何かといえば、ずばりブランドの違いなのです。
いろいろな商品にブランドというのは存在しますが、ワインのブランドというのは様々な商品のブランドの中でも特に価値を持つものだと思うのです。


共に数十万円の値がつくルイ・ヴィトンのバッグとロマネ・コンティの赤ワインの違いは何でしょう?

一方はバッグという形に残る製品であり、もう一方は飲料という形に残らないものです。
別の言い方をすると、前者は耐久消費財ですが、後者は使えばすぐに無くなる消費財なのです。

私がロマネ・コンティの価値が相対的にルイ・ヴィトンより高いと考える理由はここにあります。
かたやバッグは「物」であるのに対し、ワインは一過性の「経験」にすぎないのに、バッグと同じように数十万円という値がついてしまう。
これは、物とくらべて相対的に、希少性や生産にかかる時間といったブランド価値が高いということです。

もう一つロマネ・コンティがルイ・ヴィトンよりもブランド価値が優れていると感じるポイントは、ルイ・ヴィトンは自らがブランドを語ってきたのに対し、ロマネ・コンティは人に語られてきたという点です。
ルイ・ヴィトンは膨大なマーケティングフィーを毎年かけてブランドを維持している。
しかし、ロマネ・コンティを生産するドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ社はほとんど広告には予算を割いていないはずです。

自分たちが語るのではなく、人に自分たちの価値を語ってもらう。
これが、究極のブランドのあり方だと思います。

ワインがなぜこれほどまでにブランド価値を有するかというと、ひとつは自然環境がワインのできのかなり大きな割合を占めてしまうからでしょう。
いくら優れたワイナリーであっても、ダメな葡萄から最高級ワインは生まれない。
人の努力が及ばない領域だからこそ、その希少性が輝く。

もう一つは、ワインを一本生産するのに最低数年は寝かすという手間にあるのでしょう。。
醸造されたばかりの新酒と何十年も熟成したワインでは、後者のほうが実際よりも感じる価値は高くなります。


このように、ワインはブランド価値によって価格が大きく異なる商品の一つです。
自然環境に立脚した差別化の手段を真似ることは困難ですが、経験にこれだけのお金を払う人がいるということに勇気づけられるのではないでしょうか。


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2013/01/21

魚を2倍売る方法


商品を変えなくても、価格を変えなくても、売る場所を変えなくても、プロモーションの方法を変えるだけで、魚という爆発的に売れることも売れなくなることもないコモディティ商品が2倍も売れてしまうというお話を紹介しましょう。

首都圏で商業施設内の魚売場を展開するある水産業者は、鮮魚店のプロモーションを変えることで特定の魚の売上を2倍にすることに成功した。
何か特別なことをしたというわけじゃない。
彼らがしたのは、顧客の目線で顧客が知りたい情報を分かりやすく伝えるというだけのこと。
基礎中の基礎。マーケティング101で学ぶことだ。

普通の魚売り場では、その魚がどこ産で価格はいくらなのか程度の最低限の情報だけが表記されている。
そんな業界にあって、顧客目線のプロモーションをすると2倍売れてしまうのだ。


日経MJ 2013/1/21 P.14―――――――――――
首都圏の百貨店などを中心に約50の鮮魚店を展開する東信水産(東京・杉並)は「調理時間」や食材の"ストーリー"など、新しい切り口に基づく売り場展開を始めた。鮮度や産地など魚自体の特徴を打ち出す従来の売り方では顧客のニーズに応えられないと判断。商品区分を顧客の関心に沿ったものに見直すほか、実際に魚を買った顧客の声を紹介するなどして、魚料理に馴染みの薄い層の開拓も狙う。
――――――――――――――――――――――


東信水産の成功の秘密は、顧客がどういう気持で商品を眺めているかを考え、それに沿った陳列をしたことにある。
具体的には、調理にかかる時間や、調理の方法で分類して魚を陳列した。
これは温めるだけのソテー用で5分で食べられます、とか、これは10分くらいの調理が必要なムニエル用、といった陳列だ。
自分が買い物に行った時のことを考えると、確かに思わず手が伸びそうだ。


魚を選ぶ買い物客の気持ちはどんなだろう?
少なくとも2種類の人がいる。

今日はあの料理を作ろうと思って、目的買いをする人。
こうした人にとっては、魚の名前と産地と値段が書いてある札さえ見やすくディスプレイしてあればそれでOKだ。

もう一種類の人々は、料理の献立が決まらないままなんか魚料理食べたいなぁと考えながら眺めている人たちだ。
実は潜在的な需要を持つこの顧客層の存在に東信水産は気づき、彼らのニーズを射止めた結果2倍も売れたのだ。


東信水産が潜在的需要を持つ顧客層を取り込めたのは、次の2つのポイントに気付いたからだ。

一つ目のポイントは、顧客の目的を細分化することによって「何を作ろうか決めていない人々のニーズ」を発見したことだ。
売り手としては、「鯛の煮付けを作りたいわ。新鮮な鯛をちょうだい」という具体的な要求をしてくれるお客さんのほうが印象に残るだろう。
だが、なんとなくぼんやり魚売り場を眺めて立ち去っていく人たちのほうがよっぽど多いだろう。
そんなお客さんが何を考えているのかを察知し、陳列方法を変えたことで、何を作ろうか決めてない人々にとって便利な売場に変えたのだ。

二つ目のポイントは、お客さんの魚料理の知識や習熟レベルを過信しないということ。
毎日魚を三枚におろしている鮮魚売り場の店員にとっては、魚を見れば料理の献立が自然と浮かんでくるかもしれない。

でも、私のように魚料理を作れない人からすると、魚が食べたくても献立が浮かばないから諦めるのはよくあることなのだ。
だから、この切り身は刺身用とかソテー用とか書いておいてもらえると、魚料理初心者はとても助かる。
売り手は自分がプロだからこそ、素人の悩みに気付くことができないことを理解しなければならないのだ。
 
 
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どこか違う?大手と町の個人リサイクルショップ



今日、読み終わって本棚の肥やしになっていた本が何冊かあったので、近所のブックオフに売りに行ったのです。
ほとんどが新書で14冊売って660円。
まあこんなものかと思ったのですが、私が行ったブックオフは衣類のリユースショップが一緒になっているタイプで、思わず6000円ほど衝動買い。
なんだか上手くブックオフの思惑に乗せられてしまった気がしなくもないが、リサイクルショプは売るにも買うにも凄くお得感がある。

ブックオフのような大手のリサイクルショップが最近増えているけれど、町のリサイクルショップも最近増えているような感覚がある。
昔よりも廃品回収車が頻繁に近所を回っている。
ネットでリサイクルショップで検索すると、結構高順位で脱サラリサイクルショップ解説マニュアルみたいな情報商材も見かける。


私は町のリサイクルショップをほとんど利用しませんが、ブックオフのような大手チェーンとビジネスモデルがどう異なるのかが気になったので、少し考えてみよう。
町のリサイクルショップの対比がブックオフでいいのかと言うと、ブックオフは本業が本とDVDなので少し違うが、ハードオフや衣料のリユースショップも増えているので同業と考える。


■ 客層が違う

ブックオフは客層が広い。
地理的な広さだけではなく、年齢層もそうだ。
マンガ本が沢山あるから子供から家族連れまでいるし、DVDやゲームもあるので若者の層も多い。
さらに、本を読む習慣を持っている人が多いのは中高齢の人々なので、意外とこの年齢層のお客も多いのだ。
今日私が衝動買いしてしまったブックオフ系の利用リユースショップは、男性、女性、若者から中年くらいまでの種類豊富な衣料がラインナップされているので、こちらも顧客層に対して間口が広い。

一方、町の個人リサイクルショップは地理的要因により客層が固定されている。
利用するのは主婦層や中高年のお客が多いだろう。
さらに、個人リサイクルショップは特定のジャンルに特化していることも多いので、またそれによって顧客層が狭まる。


■ テーマ特化

町の個人リサイクルショップは比較的オーナーの趣味が強く反映された専門的な店舗が多い。
例えば、オシャレな輸入家具に特化した店舗やアンティークを専門とした店舗、アース系の古着屋なんかがそうだ。
個人オーナーの店は、オーナーの趣味や理想とする店舗を作りたいという思いいれがあるので、こうした傾向が強いのだろう。
そして、自然と顧客層や品揃えを広く揃える大手チェーンのリサイクルショップとの住み分けになっている。


■ 買取システム

ブックオフは買取カウンターでの買取が商品の入荷になっている。
本の場合、本の内容は査定の対象になっておらず、本の状態だけで査定するというのはみなさんもご存知であろう有名な話。
この査定システムでは、誰も読まないが状態の良い本に高値が付く可能性があり、長期在庫化してしまうかもしれない。
リスクを回避するためか、買取価格としては全般的にかなり低い。

一方、町のリサイクルショップはお客からの持ち込みもあるし、廃品回収車で買取に回るパターンもある。
さらに、ショップによっては業者からの仕入れることもあるようだ。
これらの手段のなかでも、廃品回収車で回って商品を仕入れるのは効率がよさそうだ。
売り手からすれば、わざわざショップまで持っていかずにすむのなら、本当に安い価格で引き取ってもらってもいいものが家にいくつもあるだろう。
粗大ごみじゃなければ捨てられないようなものであれば尚更。
楽してモノを減らしたいという売り手と、できるだけ商品を安く仕入れたいというリサイクルショップの思惑が一致するwin-winの関係になる。

リサイクルショップは、商品の仕入れが肝だ。
だからブックオフでは売り物の商品よりも買取商品のチラシを配るし、ブックオフで商品を買うと必ず売り物があったら売ってね、と言われる。
そして、リサイクルショップのオーナーは平日昼間に廃品回収車で時間をかけて商品を探しているのだ。



今後、デフレの影響でもっと大手リサイクルチェーンが増えるのだろう。
環境にはいいことだが、経済的には製造や小売をにマイナスのインパクトがある。
とはいえ、需要があるのだから仕方がない。
個人店が大手リサイクルチェーンに対抗するには、特化型や地域型で差別化していくことになるのだろう。




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2013/01/19

新旧対決!リブセンスVSリクルートジョブズ


正社員募集広告の業界では、マイナビの毎日コミュニケーションズやリクナビのリクルートジョブズとリクルートキャリアなど、人材大手の活躍が目立つ。
だが一方で、非正規雇用募集広告の領域では、リブセンスなど新しいベンチャー企業の活躍が目立つ。

前回リブセンスについて取り上げた記事では、リブセンスが既存の非正規雇用募集メディアから破壊的イノベーションで顧客を奪っていることについて書いた。
2012/12/22 リブセンスのしたたかなビジネスモデル
2012/12/22 リブセンスのビジネスモデルは破壊的イノベーション

私も含め一般大衆は分かりやすい勢力図が好きなので、旧帝國が新しい革命家たちに滅ぼされる図よろしく、革命家ベンチャーが一方的に旧帝國大手をキリキリ舞いにさせていると思いがちだが、決してそうではない。
たまたまリクルート内部の人から事情も聞けたので、少しリブセンス対リクルートジョブズの新旧対決について書いてみたい。


まず、現状の比較だ。
リブセンスが23億円の売上見込でリクルートジョブズが670億円の広告取扱高を誇る。社員数ではリブセンスがアルバイト含め約80名、リクルートジョブズが約1900名。
リブセンスはアフィリエイトモデルのウェブ専属媒体。
リクルートジョブズは紙媒体とウェブ両方を活用したハイブリッドな広告代理店モデル。


リブセンスは主に2つの武器で人材募集広告業界に一石を投じた。
一つは、成功報酬型のビジネスモデル。
これまでの広告枠の販売モデルと違い、採用が決まらない限り費用は発生しないので、企業は気軽に採用広告をうてる。
もう一つは、SEO。
リブセンスは紙媒体を持っていないので、いかに「アルバイト+〇〇(地名)」という検索ワードで自社のウェブメディアに求職者を集めるかが重要だ。
SEOに関する深いノウハウを持っていたため、リブセンスはアルバイトと地名の検索ワードで大体トップ表示される。


一方でリブセンスの弱点は垂直的なビジネス展開ができないことにある。
ローコストオペレーションのため、顧客との接点が薄い。
顧客のビジネスを理解していないから、新たな価値提案が難しいのだ。
別の言い方をすると、顧客コネクションという資産がない。

その結果、同じビジネスモデルを他の分野で提供する水平的展開が事業拡大の手段になる。
例えば実際にリブセンスが事業展開している住宅情報や中古車情報などだ。


逆に、リクルートジョブズは膨大な営業社員を有し、顧客企業とのコネクションを持つ。
つまり、顧客コネクションという資産を有している。
顧客コネクションを有しているリクルートジョブズは、顧客に働きかけて新しい価値提案が可能なのだ。

新しい価値提案とは、例えば正社員の代わりに複数の非正規雇用者でワークシェアリングすることだ。

国内の人材市場は基本的に縮小していくことが運命づけられている。
海外へのアウトソーシングや生産年齢の現象のためだ。
人材系の企業が新たなビジネスチャンスを開拓するには、採用する企業側に採用の変化を促すしかないだろう。
例えば、フルタイム働くことができない子育て中の母親や、要介護の親を持つ人々の積極的雇用だ。
一人の正社員の仕事を分割して2人以上のパートタイムや業務委託の人材を採用するのが今の日本社会に沿った雇用のあり方だ。

こうした企業側の行動変化を伴う新しいビジネスモデルの開拓には、顧客企業との密接な関係性が不可欠。
だからこそ、顧客コネクションという資産を持っていることが重要になる。
リブセンスは水平に事業展開するしかないが、リクルートジョブズは垂直的展開が可能なのだ。


しかし、ビジネス展開の優位性の違いは決して固定的なものではない。
リブセンスは売上規模でいえばリクルートジョブズの30分の1だが、社員数では20分の1で、ビジネスモデルの割に社員数が多い。
上場のために採用を増やしたことと小規模ゆえの管理部門の効率性の低さがあるのかもしれないが、もしかしたら顧客企業との接点を持つための営業社員を抱えたり、新規事業の企画メンバーを増員して新たなビジネス開拓を目指しているのかもしれない。

新旧対決は今後も目を離せない。


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追伸: 60秒キャンペーンを体験してみた


マックの60秒キャンペーンのことはさんざん投稿してるのにまだ体験したことがなかったので、今日の昼に行ってみた。

なんか店員のかた多くないですか・・・?
このキャンペーンのために若干増員しているようだ。
私が行ったのは昼には早めの11時過ぎだったので、余裕で間に合ってしまった!

ハンバーガー無料券ゲットならず!と思ったら、なぜかコーヒーS無料チケットを貰った。
期間は2/7まで。


間に合わなければ期間限定のバーガー無料券。
間に合っても期間限定のコーヒーS無料券。

やっぱり狙いは口コミによる来客増とリピート率アップにあるようです。


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2013/01/18

プロはこう見る。マクドナルドの60秒キャンペーン



日経MJにコラムを持っているフリーアナウンサー・八塩圭子さんも1/18の寄稿でマックの60秒記事に触れていた。
マックの60秒キャンペーンの目的についてコメントしている記事だ。

ちなみに、この60秒キャンペーンに関する記事はもうこれで3つ目になるがご容赦願いたい・・・。


八塩氏のコラムによると、60秒キャンペーンの目的は次の3つ。
1. エンターテイメント性
2. 口コミ効果
3. 売上の増加

分かりやすいシンプルなキャンペーンなので、私が想定した目的と大体同じポイントが上げられている。
しかし、一部「うん?」というのもある。

一つ一つ見ていこう。


1. エンターテイメント性

退屈な待ち時間が、一分間でできるかどうかハラハラドキドキのゲーム性が生まれる。
いつもだったら、イライラ早く出てこないかな待っている時間が楽しい体験になる。
しかも間に合わなければハンバーガーの無料券まで貰える。

イライラ時間が楽しい時間に変わり、マクドナルドに食べに行った経験にプラスのイメージが重なることになるだろう。
顧客体験を向上させて、マクドナルドのファンを作るということも目的に含まれていたなら、なんとも計算高いプランニングだ。


2. 口コミ効果(話題にせずにはいられない)

今は体験を簡単に共有できる。ツイッターやFacebookで。
60秒キャンペーンが始まると、良くも悪くも体験記が書き込まれたそうだ。

やはりというか、検索をしてみると60秒に間に合ったけど作りが雑とか包装が悪いとかネガティブなコメントが多いらしい。
まあ、うまく60秒に間に合っちゃってデキも良ければ特に書き込むことがないから当然といえば当然。

八塩氏は良いも悪いも含めて口コミを起こしたことに価値を見出している。
確かに万人が良いと認めることは口コミにならない。
ゴミ拾いのボランティアが話題にならないように。

人が思わず話さずには入られない体験にはイベント性が必要だ。


3. 売上が爆発的に増える???

最後に、1秒の短縮で8億円売上が上がるという、日本マクドナルド社長・原田氏の発言を受けて、爆発的な売上増を効果として上げている。
マクドナルドは注文を受けてから3分30秒で提供することを目安にしている。
計算通りだったら1200億円も売上増になる。そんなバカな。

もちろん八塩氏も1秒縮まるごとにリニアに8億円ずつ売上が上がるとは思っていないはずだ。

それどころか、1秒縮まることによる売上増効果は相当小さいと思う。
売上が増えるとしても、マクドナルドに行こうとしたけど混んでる(と予想される)ので諦めた人たち分の機械損失が回避される程度だ。



それよりも、やはり待ち時間をポジティブな顧客経験に変えたことと、口コミ効果によるプライミング効果が大きいと思う。

お腹がすいたなぁ、お昼何食べようかなぁ。そう思った時に候補として上がることが飲食店の最初の関門。
良くも悪くも話題になるということは、この最初の関門を乗り越えやすくなるということ。 


待ち時間をポジティブな体験に変えるゲーミフィケーション。
思わず人に体験を話したくなるイベント性。

あなたのビジネスだったらどんなキャンペーンができる? 
 
 
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2013/01/17

差別化のメッセージが消費者に刺さらない!ARROWSの車内広告


電車のドアの上にある広告で、良く富士通のスマートフォン「ARROWS」の広告を見る。
「ヒューマンセントリックエンジン」という人間工学に基づいた機能で、使い勝手の良さにフォーカスしている。

初めて見たときは良い意味で驚きだった。
これまで日本のエレクトロニクス企業は差別化にならないスペック自慢の広告に終始していたからだ。

操作した時の心地よさというスマートフォンの価値軸は、すでにiPhoneが開拓していたのでARROWSの専売特許というわけではない。
それでも広告内容をみると、ヒューマンセントリックエンジンの機能は悪くなさそうだ。
スマートフォンのディスプレイの端っこを触ってしまっても反応しないとか、周りの騒音に合わせて通話音量が上がるとか、鞄の中に入っていると着信音が大きくなるとか。

少なくとも他のスマートフォンではアピールしていないポイントをついていて、他のスマートフォンと差別化できている。

じゃあ売れているのか?というとそれほどでもないようだ。
ランキングを見るとiPhoneを持っているSoftbankではなんとか8位、AUでは圏外。
AndroidのみのDocomoでもなんとか3位だ。


ARROWSの売れ行きがイマイチなのはなぜだろう?


元も子もない言い方をすると、富士通肝いりの使い勝手の良さは、スマートフォン選びに際してさほど重要な問題ではないからだろう。
あったらいけどなくてもいい機能。
それよりデザインだ、電池の持ちだ、ディスプレイの大きさだ。
それが大半のユーザーの本音ではないだろうか。

鳴かず飛ばずだったシュリッツビールを全米一位に押し上げた広告をご存知だろうか。

ビールの製法という、消費者にとっては大して重要ではないことを大々的にアピールして消費者の支持を得た事例だ。
ARROWSのヒューマンセントリックエンジンも消費者にとって大して重要ではない(失礼!)ことをテーマとした広告だ。

なぜシュリッツビールの広告は大きな成果を上げたのにARROWSの広告は効果がでないのか?

おそらく、ビールは味以外の差別化する要素がないコモディティだからだ。
だからこだわりの製法という新たな価値をアピールする広告に大衆が反応したのかもしれない。

一方、スマートフォンはすでに普及しつつあるが、他の製品と差別化する要素はたくさんある。
だから使い勝手という価値は無視された、ということではないか。


スマートフォンが本当にコモディティ化していれば、富士通の広告は上手く行ったのかもしれない。
タイミングの重要さを感じさせる事例です。


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