2013/02/25

050PlusとFUSION IP-Phoneに見る戦略的防衛戦の難しさ



050Plusとは、NTTコミュニケーションズが提供しているスマホ向けIPフォンサービスだ。
IPフォンはVoIPというプロトコルを使った音声通信で、インターネット回線を通じて音声の転送を行う電話といったところ。
インターネットはデータ転送の料金が安いため、IPフォン同士であれば無料なのが当たり前だし(例: LINE、Viber、Skypeなど)、IPフォンから固定電話・携帯電話への通話も割安になる。

050Plusは月々300円の固定費を払うと、固定電話へ3分8.4円、携帯電話へ1分16.8円でかけられる。
SoftBankの通話料が1分42円なのと比較すると、はるかに安い。

050PlusはNTTコミュニケーションズの肝いりの事業のようで、昨年行なっていた大々的なキャンペーンやエグザイルのCMなどで記憶に新しい方も多いのではないだろうか。
CMやキャンペーンへの力の入りようを見ると、NTTコミュニケーションがいかにこの事業に力を入れているかが垣間見える。
登録者数も2012年11月時点で90万人に達しているらしい。
減り続ける固定電話契約数を穴埋めすべく、新たな事業の柱の一つとして考えているのかもしれない。


FUSION IP-Phoneの攻勢と050Plusの防戦

スマホ向けIPフォンサービスを大々的に提供しているサービスはまだ少なく、大量の宣伝広告費をかけたキャンペーンのお陰で050Plusは順調に加入者を伸ばしていた。
宣伝で知名度を上げ一気にデファクトスタンダードを狙ったようだが、そうは問屋が卸してはくれない。
050Plusのサービスが開始した2011年7月から1年を待たずFUSION IP-Phoneのサービスが開始されたのだ。

FUSION IP-Phoneは後発らしく、050Plusの弱点を痛烈に突いてきた。
月額費用を0円にし、通話料だけで課金する料金体系で切り込んできたのだ。
しかも、通話料では固定電話への料金は大敗しているが、他の携帯電話への通話料金は同料金。
今時プライベートの携帯電話から固定電話へ通話するケースが少ないので、固定電話への通話料金は割りきったプライシングだろう。
後発だけあって、050Plusに対する顧客の不満を突く戦術が散りばめられていることが分かる。

FUSION IP-Phoneは圧倒的にキャンペーンや広告による露出が少ないが、これは料金を抑えて月額固定費を顧客へ請求せずに済むよう販管費を抑えているのだろう。
050Plusがあれだけ宣伝していれば、スマートフォン向けIPフォンという市場が切り開かれ、自然と050Plusの一番の対抗馬であるFUSION IP-Phoneにも脚光が当たることを見越しているのかもしれない。

一方、050Plusはあれだけ広告宣伝を打っている以上、回収のために月々300円というストック収入はなかなか切れないのだろう。
それに2000年に設立されたベンチャー企業であるフュージョン・コミュニケーションズとNTTコミュニケーションズでは土台のコスト構造も違う。

050Plusは通話料の安さでスマートフォン向けIPフォン市場を切り開こうとしたが、もっと安さを追求できる後発のFUSION IP-Phoneに攻め入られ、守勢に立たされている。
NTTコミュニケーションズは自分たちの強みはコスト効率性ではないのに安さで勝負を仕掛けてしまったことによるしっぺ返しを食らっている。
彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず、だ。


今日の学び

・新たなサービスを世に出す時、自分たちよりそれを上手くやれるライバルがいないか周りを見回せ!
・新たな市場の後発二番手は、トップ企業の宣伝広告にタダ乗りしろ!


孫子曰く、攻めるときは敵の守りの薄い虚を突け、というが、フュージョン・コミュニケーションズはまさにNTTコミュニケーションズの虚を強撃した。
後から考えてみれば、NTTのコストよりよっぽど上手くできる企業があるだろう、しかも参入障壁がさほど高くないVoIPなんだし、としたり顔で指摘したくなる。
だが、新しいサービスを世に大々的に生み出そうという興奮状態にあるときに冷静な判断をするのは難しい。
だからこそこういったケースを頭の片隅にストックしておこう。


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photo credit: Tambako the Jaguar via photopin cc

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