2013/02/15

成熟カテゴリーから脱出するためのマーケティング2


成熟してしまった商品カテゴリーの中で、自社製品を輝かせるにはどうしたらいいのだろう?
そんな問いに答える3つのブランディング戦略のうち、一つが「リバースブランド」だということは前回のポストで説明した。



リバースブランドとは、通常その商品カテゴリーの中では当然消費者に提供されている機能や価値を当たり前のように除去し、代わりに消費者が期待してもいなかった価値をたっぷり提供するブランドのことだ。
IKEAはその代表格だ。
配送もしない(しても高い)、組立も自分でしなければいけない、組立も簡単じゃない。
しかし、北欧の洗練されたデザインファニチャーが驚くほど安い価格で手に入る。
ちょっと高価なソファを買う値段で、センスのいいリビングファニチャー一式が揃ってしまうのだ。


今日は残りの2つのブランディング戦略を見て行きたい。
もちろんこの理論はハーバード・ビジネススクール教授のヤンミ・ムン氏の著書「ビジネスで一番、大切なこと」で解説されていることの焼き直しなので、興味を持ったのなら是非原典を読んでほしい。


ブレークアウェーブランド
ブレークアウェーブランドは、その名前からはちょっとどういうものか想像しにくい。
単刀直入に説明すると、本来の商品カテゴリーとはことなる枠組みを消費者へ提示し、消費者に違う商品として認識してもらうブランディングだ。
余計分かりにくくなっただろうか?

実例と共に考えると分かりやすい。
原書でも使われているAIBOの例だ。
AIBOとはなんだろう?ロボット?ペット?おもちゃ?人間が越えてはいけない禁忌の壁?
恐らくほとんどの人が犬型ペットロボットだと答えるだろう。

ではロボットにはどんなイメージがあるだろうか?
主人の依頼に対して忠実に、確実に役目を果たす万能機械のイメージではないだろうか。
少なくとも、そのロボットが有している機能の範囲では、いつも100点の結果を出してくれるという期待を持つだろう。

ところがAIBOの人工知能は発売当時はまだまだ未熟で、想定とは違う反応を示したり、全く反応を示さなかったりもした。
これは「ロボット」としては致命的な欠格で、リコールして回収するレベルかもしれない。

しかし、AIBOを買った人たちの反応はどうだっただろうか?
彼らはまるで本物の「ペット」を相手にするように、想定と違う反応を返すAIBOを気まぐれだと思ったり、反応を示さないことに対して今は機嫌が良くないんだと言って、顔をほころばせた。
本当の犬を見るようなやさしい目で。


これがブレークアウェーブランドの威力だ。
消費者に、本来とは違う別のカテゴリーだと思わせて、得意な商品だと認識させる。
あるいは消費者の頭のなかに新しい部屋を作り、新しいカテゴリーだと認識させる。
ブレークアウェーブランドに成功した商品は、そのカテゴリーの中で唯一の商品になるのだ。


時計という成熟したカテゴリーからファッションというカテゴリーに移住したスウォッチもブレークアウェーブランドだ。
1983年に発売されてから現在まで、自ら切り開いたファッションウォッチというカテゴリーに君臨し続けている。
ブレークアウェーブランド戦略はこれだけ大きな成功を遂げる可能性を秘めている。


ホスタイルブランド
ホスタイルは英語で「hostile」とつづり、敵意のある、とか敵対する、という意味を持つ。
ホスタイルブランドはその意味の通り、良くも悪くも(ほとんどの場合は悪い)消費者に対して激しい感情を引き起こさせ、自社製品に消費者の目を向けさせる手法だ。

分かりやすい例をあげると、イタリアのファッションブランド、ベネトンだ。
ベネトンはブランド広告のクリエイティブに骸骨を持った兵士やエイズ患者の写真を使うなど、ショッキングな映像と自社のブランドを紐付ける広告活動をしてきた。
最近の例だとこんなのがある↓↓↓

商品があふれ、商品の数だけ広告にあふれている現代では、まずは消費者の意識に上り、さらに記憶してもらうということがとてつもなく難しくなっている。
消費者の要求に応えれば応えるほど他の競合製品との差別化要因が失われ、結果的に消費者から忘れ去られていくという皮肉な状態だ。

そんな中では、まずトゲトゲしい敵意のある感情でも構わないから、まずは消費者に強い感情を引き起こそうというのがホスタイルブランドの戦略だ。
もちろんただ単純にショッキングであればいいという訳ではない。
ベネトンの広告はある種の政治的なメッセージも含まれているが、それはその広告を見ても(むしろ、そんな広告だからこそ)ベネトンを着たいというリベラルな人を顧客としたいからだ。
ショッキングな広告のメッセージに賛同してくれる人がベネトンが求める顧客なのだ。


Appleもホスタイルブランドの代表格だ。
iPhoneのホームボタンは何時までたっても一つだし、NFCも搭載されない。
マウスのボタンも何時までたっても一つだ。
Appleの製品に説明書なんて入ってないし、初心者ガイドなんて期待すべくもない。
それでもAppleが使いたい人が使えばいいという明確なスタンスは、傲慢だけれども最高にクールだ。
Appleユーザーどうしでは、「分かってるね」という何か言い知れない連帯感を感じるのだ。



成熟してきた商品カテゴリーから抜きん出るための3つのブランディング戦略について解説してきた。
無論、成熟カテゴリーから抜け出す方法が3つしかないと言っているわけではない。
しかし、自社の製品をなんとか差別化したいという悩みがあるならば、これらの方法を検討してほしい。



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photo credit: Urban Woodswalker via photopin cc

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