2013/03/30

利益モデル4. スイッチボード利益モデル その1



今回はスライウォツキー利益モデルの4番目、スイッチボード利益モデルについて考えてみたい。
実はこの4番目のスイッチボード利益モデル、最近のWeb系ビジネスモデルで中心的な仕組みとなっている利益モデルで、犬も歩けば棒に当たるという勢いで実践的ケースに出くわすのだ。
その理由の一つは、以前よりも垂直統合型企業が減り、一つひとつの企業が特定の分野でスペシャリストにならなければ生き残れないというビジネス環境にある。
この辺りは後半で論じてみようと思う。

Web系のビジネスに携わる人達にとっては必修科目とも言える利益モデルなので、しっかり理解していただきたい。

コンテンツ

  • スイッチボード利益とは何か (今回)
  • スイッチボード利益ビジネスの事例 (その2)
  • システム価値の自己増殖
  • スイッチボード利益企業のコアコンピタンス
  • Web系スイッチボード利益企業の次の展開

スイッチボード利益モデルとは何か

■スイッチボード利益モデルの特徴

そもそもスイッチボードという単語はいまいちピント来ないよ、という方が多いだろう。
スイッチボードは日本語で配電盤という意味で、コトバンクによると「電源と負荷との間にあって電気回路の開閉や電気系統の切換えを行うための設備」という説明だ。
生粋の文化系である私にはよく分からないけれど、複数の線路間の切り替えスイッチみたいなもので、スイッチを操作することで右から来る電車を意図した左のレールに、左から来る電車を意図した右のレールへ仕向けるような仕組みだ。
この記事のトップにある図を見ていただければイメージしていただけるだろう。

ではこのスイッチボードというアナロジーがビジネスのコンテキストでどのような意味合いを持つのかというと、スイッチボードの役割を担う企業は売り手と買い手を仲介することで両者に付加価値を提供する。
売り手が単独で顧客を探すよりも多くの潜在顧客と出会うことができ、買い手が単独で商品を探すよりもより良い商品、より良い取引条件、より信頼できる企業を見つけることができるというベネフィットを提供する。
それがスイッチボード利益企業の特徴だ。

■スイッチボード利益ビジネスモデルはBtoCオンリーなのか?

スイッチボード利益企業はいわゆるマッチングを手がける企業だ。
マッチングするのはある商品カテゴリーの売り手と買い手であることが多い。
例えばレストランとレストランを探している顧客のマッチングサイトである「食べログ」や「ぐるなび」が良い例だ。

マッチングサイトと言うとBtoCのイメージが強いかもしれないが、決してBtoCでしか成り立たないというものではない。
例えば楽天では、ITを中心とした単発外注案件のマッチングを中心とした「楽天ビジネス」を展開しているし、リクルートはITソリューションのマーケティング支援サイトの延長としてマッチングの機械を提供している「キーマンズネット」がある。

関連エントリー:
2012/9/4 「ポータルサイトビジネスをBtoBにも適用できない?」
2012/9/6 「ポータルサイトビジネスをBtoBにも適用できない?2」
2012/9/7 「ポータルサイトビジネスをBtoBにも適用できない?3」

■利益を得る方法

スイッチボード利益モデルについてはある程度理解いただけたと思う。
最後にこの利益モデルがどのように利益を生み出すのかを考えてみたい。

マッチングを行うスイッチボード利益企業は基本的に製品を販売していない。
主な収入源は2つ、売り手が(稀に買い手も)マッチングに参加することによる会員費と、マッチング成功時に得る手数料収入だ。
「ぐるなび」や「食べログ」はレストランから月額数万円の会員費を取り、さらにプロモーションのメニューを用意し、希望するレストランへ有料で販売している。
前述の「楽天ビジネス」は確証はないが恐らく成立した取引の数%が楽天に入るという形になるだろう。

手数料はマッチングによって成立した取引の数%〜高い場合には50%程度と大きなばらつきがある。
製品販売などでは手数料が低く、情報商材やセミナーなどの無形サービスでは数十%というのが相場になっている。
売り手企業の販売価格に占めるマーケティングコストの割合が反映されているようだ。

ひとつ補足すると、一昔前まではマッチングというよりも広告枠の販売という形で売り手と買い手を結びつける広告企業が多かった。
しかし、広告枠販売の場合、利用する企業としては先行投資になってしまい、効果が出ないとただの無駄金になってしまっていた。
時代の要請か、広告枠販売ビジネスは徐々に減少し、ネット広告を中心とした実績報酬型の広告が増えてきている。
こうしたビジネス環境の変化もスイッチボード利益モデルの繁栄に貢献しているようだ。


次回はスイッチボード利益モデル企業の事例を見ていこう。


関連エントリー:
2012/4/1 「利益モデル4. スイッチボード利益モデル その2」


関連エントリー:
2012/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3




 

ソニー損保はどうして不満の声を堂々とトップページに掲載するのか?



自動車保険を選ぶとき、あなたは何を基準に選択するだろうか?
私の場合、まずネット専業の保険屋から選択する。
手続きがネットで完結できるので簡単というのもあるが、構造的にコストが安いので低価格でもいざというときに支払いを渋る可能性は低いと考えられるからだ。

自動車保険の更新だったので、今契約している保険屋以外も検討していたのだが、ソニー損保が顧客の不満の声を堂々とトップページに掲載していることを発見したのだ。
中身を見ると、確かに編集されたものでもない顧客のナマの意見と思わしき内容が掲載されていたのだ。
あまつさえ、Yahoo知恵袋へのリンクまでご丁寧に張ってある。
自殺行為ではなかろうかと余計な心配してしまうが、これから保険を購入しようという顧客の気持ちを引き寄せようとする戦略が見え隠れする。


普通、企業が発信する商品紹介ページでは、顧客の満足の声ばかりが掲載されていてネガティブな評価は掲載されていないのが当たり前だ。
一ヶ月飲み続けるだけで5kg痩せただとか、値段の割に高級感があるだとか、一本入れるだけで燃費が20%改善しただとか、本当に企業発信のそんな情報が信用できるだろうか?
数千円の商品のような衝動買いして失敗しても大して痛くないレベルの商品であれば、そんな怪しい情報でも騙されたと思って買ってしまうかもしれない。
だが保険のように、単価も数万レベルだし、いざ事故が起きた場合の信用度も考えなければならない商品ではそう簡単に企業発信の都合の良い情報だけでは意思決定できない。

ソニー損保が顧客の満足の声も不満の声も同等にナマの状態で掲載しているのは、利用者に十分な情報が与えられているという感覚を持ってもらうためだろう。
十分な情報を与えられると、消費者は自分の目で判断して選択するというオプションが生まれる。
コレが重要なのだ。

前述のような好都合な情報だけでは順当に考えると買う以外の選択肢がなく、選択するというオプションのなさが「買うという意思決定をして良いのだろうか?」という不信感を招く。
ソニー損保は十分な情報を消費者に与え、自分で判断する余地を与えることによって信頼感を得ている。
不思議な話だが、不都合な情報を提供することによって信頼感を得るのだ。

こうして意思決定した顧客は良質な顧客である可能性が高い。
自分で判断したという感覚が強いので、ソニー損保のシンパになるのだ。
そこには自己責任感が働いている。
自分の家族や友人に薦めたりすることも多いだろうし、他の保険を考えている知人にはソニー損保を擁護して営業社員の役割を勝手に買って出てくれるかもしれない。


グラフの通り、ソニー損保は1999年に営業を開始してから、直近5年間でもほぼ年率10%の成長を続けている。
顧客の不満の声がこの成長に結びついているのだとしたら、なんとも面白い構造じゃないか。

2013/03/29

真っ当な方法で真っ当に成功するメーカー アイリスオーヤマ


アイリスオーヤマという会社をご存知だろうか。
名前は知っているけれど、何を売っているのかよく分からない、だけど部屋を見回すとアイリスオーヤマの製品を使っている。
そんなイメージを持っている人もいるのではないだろうか。
同社はいろいろなカテゴリーの商品を企画・開発している、商品開発力に優れたメーカーベンダー(製造業と卸売業の機能を持つ企業)だ。


アイリスオーヤマの企業経営は、世界の工場と呼ばれなくなって久しい日本の製造業が生き残る一つの道筋を示している。

世界の工場が日本から中国や東南アジアへシフトし、コストパフォーマンスに優れた製品という市場では、日本の製造業が勝てるカテゴリーは日々減り続けている。
そんな環境下で製造業が生き残る方法は、米国にヒントがある。
Appleのようにブランド価値を高めてコモディティ製品をブランド製品に転換させるか、コカ・コーラのように製造業というよりもマーケティングに特化した企業になるか、自動車業界のようにロビー活動で国内市場を政治的に保護させるかだ。

だが、そんな環境下にも関わらず、アイリスオーヤマはアジア諸国が得意とするコストパフォーマンスに優れたコモディティ製品で、5年間で年率10%の成長を遂げている。


アイリスオーヤマがコストパフォーマンスの高いコモディティ市場で勝ち続けている理由は、単刀直入に言うと顧客が欲しいと思う商品をこの値段なら買いたいと思う価格で提供できているからだ。
愚直なほど全うな製造業と言えないだろうか。
かつての国内製造業社は、行動成長期という景気要因と、人件費の安さと円安という環境要因によって、これが自然にできていた。
だが、人件費が高く円高な今の環境では容易ではない。

アイリスオーヤマが今でもこの王道の製造業を貫くことができるのは、2つの要因による。

一つは圧倒的な開発力だ。

アイリスオーヤマの主力製品は、LED電球やプラスチック製チェストだ。
どちらの商品も中国やアジアから輸入した商品と同等以上に安く、それでいて品質が高かったり、利便性に優れている。
製品が優れている上に価格が安いのだから、目利きの主婦がこうした商品を手に入れ、口コミで広がっていく。

こうしたコストパフォーマンスと機能に優れた商品を次々と生み出すアイリスオーヤマには商品開発力を高めるための秘密がある。

アイリスオーヤマは全社員の8%程度に及ぶ、200名もの開発者がいるという。
そして、チームで動くというよりは一人の開発者が企画から設計、値付け、販売まで一気通貫で携わる。
普通の製造業では開発はチーム制というのが一般的だろう。

一人が一気通貫で携わるセル方式の開発により開発スピードを高めることができる。
企画会議も裏ネゴなしの数十分のプレゼンで Go or Not Goが決まるスピード意思決定だ。
こうして年間1000アイテムの新商品を生み出す仕組みを作り上げている。


もう一つの要因は、アイリスオーヤマ自身が自分たちを「業態メーカーベンダー」と表する事業モデルだ。
メーカーベンダーとは、メーカーが問屋の機能を持った業態を意味する。

ユニクロやZARAのように製造小売業という業態が珍しくない今、メーカーが問屋機能を持つのはそんなに珍しくないのでは?と思うかもしれない。
しかし、アイリスオーヤマのように幅広いカテゴリーの製品を製造しているメーカーが問屋機能を手がけるのは困難だ。

各地に営業所を置くという多大なコストをかけてでも問屋機能を手に入れた一つの理由は、ユーザーインアプローチを徹底する為だ。
ユーザーインとは、マーケットインよりも一人ひとりの生活者によりそって困りごとを解決するための商品を作るという、大山社長の造語だ。
値段の付け方もコスト積み上げ式ではなく、生活者の値ごろ感に合う値付けをしてから開発を進めるという。

小売店にもアイリスオーヤマの販売員を配置し、生活者の声を拾い上げることで開発のヒントを得て、セル方式開発でスピード感を持って開発するというのが勝利の方程式だ。

2013/03/27

このままでいいのか?転換を求められる日本の家電メーカー


ソニー、シャープ、パナソニックの日本の家電メーカー御三家は昨年1兆6000億円という大赤字を出した。
すでに新聞、週刊誌、ブログで散々サンドバックにされてオーバーキルな状態だが、それでもやはり消費者が欲しい、あるいは買わずにはいられないという製品価値を創り出す能力が不足していると感じる。


日本の家電製造メーカーの製品価値創造力に疑問を感じたのは、最近バラエティ番組のアメトーークでやっていた家電芸人の回だ。
この番組では家電が大好きな芸人たちが集まって、いろんな家電製品の良さを面白楽しく語る番組なのだが、その中で紹介されている製品を見ていると、欲しいなとかこれ気になるな、と思うのが大抵外国製品なのだ。

その代表格が、ダイソンの掃除機(番組には出ていなかったが)と自動掃除機ロボットのルンバだ。

ダイソンはサイクロンテクノロジーという既存のテクノロジーと異なる方法で、吸引力という掃除機の最も重要な機能を突出させることでブランド価値を創り出した。
そこには余計なごちゃごちゃした付加機能や説明の要らない存在感がある。

ルンバは掃除の仕方を全く変えてしまった。
誰もが夢見ていたのになかなか実現されなかったことを実現させてくれた。
初めて魔法を叶えてくれたブランドへの消費者のロイヤルティは、しばらく色あせることはないだろう。


価格と製品機能の総合力ではやはり日本の家電は強いと思う。
円安によって日本の家電製造業の株価が回復してきたのも、今の円高が収まれば価格と製品機能のバランスが良くなり、競争力が高まるという考えからだろう。
逆に言えば、価格が高ければ中国・韓国製の家電製品のほうが総合力が高まり、競争に敗れてしまうというコンセンサスが投資家の間でできあがっているということだ。

日本企業が目指すべきは、価格と機能の総合力ではなくて、ダイソンの掃除機のような突出した機能によるブランド価値や、Appleのようなデザインや情緒的価値によるブランド価値主導の企業経営だろう。


日本の家電メーカーは今出血を止めるためにリストラを進めている。
これはある程度利益改善に効果を生み出すだろうが、成長のための一手を打たなければ縮小のループに陥ることは目に見えている。
リストラが一巡したら日本の家電メーカーは過剰な宣伝広告をやめ、ブランディングに力を入れるために企画やデザインといった機能に集中投資すべきだろう。

photo credit: Eirik Newth via photopin cc

利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その4


4回にわたってしまったマルチコンポーネント利益モデルだが、商品型マルチコンポーネント利益モデルの例を提示して締めとしたい。

コンテンツ

・マルチコンポーネント利益モデルとは何か (その1)
・製品ピラミッド利益モデルとの違い (その1)
・二種類のマルチコンポーネント利益モデル (その2)
・チャネル型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その2) (その3)
・商品型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その4)


商品型マルチコンポーネント利益モデルの例

異なるチャネルで顧客が価格弾力性を示すことに注目したのがチャネル型マルチコンポーネント利益モデルだったが、商品によって異なる利益率を設定する余地があることに注目したのが商品型マルチコンポーネント利益モデルだ。
チャネル型では同じ商品がチャネルによって価格が異なるので、利益率が高いチャネルでの販売数を最大化するのが感心事だった。
商品型では企業が販売している商品は複数同時に売れる商品であることが主で、その中で利益率が高い商品の販売数をいかに増やすかがキーになる。

スライウォツキーが上げている商品型マルチコンポーネント利益モデルの例がパソコンだ。
家電量販店にしろホームページからのダイレクト販売にしろ、PCを購入しようとすると何かと付属品やアップグレードパーツを勧められることが多いのはみなさんもご存知だろう。
パソコンに対するある程度の知識がないと、販売員のセールストークでついつい周辺機器も買わないと後々困ったことになるんじゃないかと勘違いしていしまい、割高な商品を買ってしまったりする。
ある程度パソコンに対する知識がある人でも、こと保証になると故障率を考えるとお世話になる可能性は低いのに3年延長保証を購入してしまったりする。
実はこの割高な付属品や延長保証がパソコンメーカーの利益に大きく貢献しているのだ。

パソコン自体は競合製品が多く、ハードスペックは数値での比較が容易なため、どうしても利益率は限界まで削らざるをえない。
しかし、一度購入の段階まで結びつければ、一度財布を開い顧客は便利だとか安心だという理由で割高な追加周辺機器や保証を購入してくれるため、企業が利益を確保できるのだ。


他の例として、サービスの領域でも何か良い例がないかと考えてみると、スポーツジムが商品型マルチコンポーネント利益モデルを体現しているようだ。

スポーツジムでは一般的に月極の会員権を販売している。
スポーツジムへ通っている方はご存知かと思うが、結構細かく会員区分というものがあって平日限定の会員や夜間だけといった制限付きの費用が安い会員から、いつでも利用できてタオルやウェアのレンタルが無料で他の店舗でも利用できるプレミアム会員まで、レンジの広い会員権を用意している。
最も安い会員と最も高い会員の月会費の違いは実に2倍近くに達する。

価格は2倍もするが、じつはよく考えてみるとスポーツジムにとって両者のコストにほとんど違いはない。
スポーツジムの経費はほとんどが固定費だ。
広い敷地を必要とするので賃借料が高く、マシン設置やプールなどの設備投資もそれなりにあり、メンテナンス費用や運営費用は顧客の利用頻度にあまり影響されないほとんど固定費のような存在だ。
すると、顧客一人あたりのコストというのは殆ど変わらないため、損益分岐点を越えてさえいればあとは全て利益になる。
仮に最も安い会員費が8000円/月でもっとも高いプレミアム会員が16000円/月だと仮定し、固定費が一顧客あたり5000円で変動費が20%だとすると、安価な会員権を購入した顧客の粗利率は17.5%でプレミアム会員はなんと49%に達する。

さらに、スポーツジムでは個人トレーナーによるサービスや、スタッフによるマンツーマントレーニングが提供されている。
これらの追加サービスは、月会費という固定的な売上を上げているにもかかわらず、さらに利益を積み上げる商品だ。
しかも、個人トレーナーはスタッフが兼務していることが多いため、やはり販売によるコスト増加は非常に小さくて済む。


これらの例を見ていただければ、一つの商品だけでなく複数のグレードの商品、つまりマルチコンポーネントを提供することが利益につながることをご理解いただけただろう。
自分や自社のビジネスにもマルチコンポーネント利益モデルが適用できないか、ぜひとも考えてみて欲しい。


前回記事:
2013/3/24 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その1
2013/3/25 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その2
2013/3/26 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その3


関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 



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2013/03/26

利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その3


今回はチャネル型マルチコンポーネント利益モデルの続きからだ。


コンテンツ

・マルチコンポーネント利益モデルとは何か (その1)
・製品ピラミッド利益モデルとの違い (その1)
・二種類のマルチコンポーネント利益モデル (その2)
・チャネル型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その2) (その3)
・商品型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その4)



チャネル型マルチコンポーネント利益モデル (の続き)

チャネル型マルチコンポーネント利益モデルを採用しているビジネスをもう一つあげてみよう。
商業施設や駅前で靴修理の店舗を300店弱展開しているミスターミニットだ。
靴修理というニッチな市場だが、120億円弱の売上をあげている。

ミスターミニットのチャネルはこれまで商業施設や駅前の店舗というシングルコンポーネントだったが、2012年2月から新たなチャネルを追加した。
それは、佐川急便とアライアンスを組んで、佐川急便が顧客の自宅まで修理する靴を回収しに訪問し、佐川急便の物流倉庫内でミスターミニットが修理し、また佐川急便が顧客の元へ返送するという「楽リペ」だ。
店舗というこれまでのチャネルとは全く違う通販型サービスだ。

壊れた靴を駅前や商業施設の持ってくるのはかさばるので非常に利便性が高いサービスなのだが、価格は店頭と同じ価格に設定しているという。
佐川急便への委託料とリペアセンターの場所代を考えると高く付きそうだが、顧客が店舗へ自分で持ち込む必要がないため2足以上同時に頼むケースが多く、客単価が店舗より高くなっているというのだ。
一つのセンター内で集約したリペアセンターを作れば同じ靴の数を修理するのに必要な面積は、店舗をいくつも持つよりも少なくて済むだろう。
それに、駅前や商業施設と比べてはるかに賃料も安い。
この新たなコンポーネントでは客単価が倍になり固定費が下がるので、店舗チャネルよりも大幅に利益率が高くなると考えられる。


ちょっと概算をしてみよう。
120億円で300店舗なので、1店舗平均4000万円くらいの売上だ。
靴のリペアには職人の手がかかせず、人件費が売上の40%を占めているのだという。
他に、原価(材料費など)が10%、賃料が15%、その他間接費が15%といったコスト構造だろうか。
この計算だと営業利益率は20%程度と仮定する。
これが楽リペになると、客単価が200%になるが賃料の1/3、その他間接費も1/3程度削減できるだろう。
すると、佐川急便への回収・配送料金で売上15%のレベニューシェアだったとしても、客単価が店舗と比較して170%、コストが140%になるので、1顧客あたりの利益率は30%まで跳ね上がる
概算に過ぎないが、間接費が削減できるチャネルを持つことで、これだけ利益にインパクトを与えることができる。

では楽リペに集中投資して店舗をたたんでしまえば良いではないか、と考えたくもなるが、これは失敗につながる可能性が高い。
店舗にはミスターミニットと楽リペを知ってもらうためのマーケティング的なバリューがある。
駅前に店舗を展開しているので、いざ自分の靴が壊れた時にどこで直そうかと思案する際に「あ、あの駅前に靴修理している店舗があったな」と想起しやすくなる。
そして店舗で修理するときに楽リペというものの存在を知れば、次に壊れたらコレを利用してみようという気にもなるだろう。

マルチチャネル型ではそれぞれのチャネルが果たしている役割を十分に理解して、それぞれのチャネルの戦術を検討しなければならない。
コカ・コーラが小売店の利益率が悪いことに気づいても小売店での販売から手を引かないのも、自分たちの戦略をチャネルまで浸透させるためにボトラーズを購入したのも、繊細にチャネルをミックスする必要を感じたからに他ならない。


前回記事:
2013/3/24 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その1
2013/3/25 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その2
2013/3/27 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その4

関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3



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2013/03/25

利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その2



マルチコンポーネント利益モデルでは、複数の異なる製品やサービス、そしてチャネルによって利益率にばらつきがあり、これらをマネージメントして利益を最大化する。
製品ピラミッド利益モデルに似ているが、製品ピラミッドは異なる顧客層に対して異なる利益率を有する別の商品を提供するが、マルチコンポーネント利益モデルでは同じ顧客に対して異なる利益率の商品を提供する。
ここまでが前回までで見てきた内容だ。

コンテンツ

・マルチコンポーネント利益モデルとは何か (その1)
・製品ピラミッド利益モデルとの違い (その1)
・二種類のマルチコンポーネント利益モデル (その2)
・チャネル型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その2) (その3)
・商品型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その4)


二種類のマルチコンポーネント利益モデル

マルチコンポーネント利益モデルとは何か、の解説で疑問を感じたところはなかっただろうか。
私もスライウォツキー氏の書籍を読んでいてこの部分を理解するのに時間がかかったのだが、 マルチコンポーネント利益モデルには大きく異る2つの系統のマルチコンポーネントモデルが存在している。

その二つとは「商品型マルチコンポーネント」と「チャネル型マルチコンポーネント」である。
前回例に上げたコカ・コーラは、小売店、レストラン、自動販売機など販売チャネルによって利益率が異なるので、チャネル型マルチコンポ―ネント利益モデルである。

チャネル型マルチコンポーネント利益モデルは各チャネルの利益率を明確に把握し、それぞれのチャネルをどのようにミックスすれば利益を最大化させることができるのか、その公式を解き明かすことがミッションになる。
重要なのは、決して最も利益率が高いチャネル一本足打法になってはいけない。
この例は、実際の例で考察しよう。


一方、利益率が低いが購買意思決定に関わる重要な商品と一緒に購入される重要度が低いが利益率が高い商品を販売するのが商品型マルチコンポーネント利益モデルだ。
これは例えば、利益率の低いパソコン本体と利益率の高いアップグレードパーツ、製品保守のセット販売が分かりやすい例だ。

端的に言ってしまえば顧客が主力商品を買い、それに付随する魅力的なオプション商品を開発することがこのモデルのミッションだ。
しかし、商品型マルチコンポーネントの難しさは、競合が追従できないオプション商品の開発と非直接的な競合との勝負にある。

これらの利益モデルの違いは、実際の例を見て解説しよう。


チャネル型マルチコンポーネント利益モデルの例

チャネル型の最も分かりやすい例は前にもあげたコカ・コーラだ。
コカ・コーラの商品は誰でも知っているコーラ一種類だが(実際にはダイエットコーラや他の清涼飲料水を販売しているが)チャネルは小売店、レストラン、自動販売機の3つに分かれている。
3つのチャネルで売っているものはもちろん全てコーラなのだが、価格が全く異なる。

日本の小売店でもコーラは一缶数十円で販売されていることがザラにあるが、自動販売機では必ず120円で売られている。
ファストフードやレストランになると、一杯200円程度とさらに高価格で売られていることが分かる。
これらのチャネルによる価格の違いの結果、それぞれのチャネルの利益率は全く異なる。
小売店では1オンス2セント、レストランでは1オンス4セント、自動販売機では1オンス6セントとバラつきがあり、利益率が最も低い小売店と最も高い自動販売機では3倍の差になっている。


ちょっと切りどころが悪いのだが、次回はチャネル型マルチコンポーネント利益モデルの別の例から再開したい。
みなさんもよく駅前で見ているかもしれない青い看板のあのお店だ。


前回記事:
2013/3/24 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その1
2013/3/26 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その3
2013/3/27 利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その4

関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 



2013/03/24

利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その1



今回はスライウォツキーの利益モデル22のうちの3番目、マルチコンポーネント利益モデルだ。
この利益モデルは製造業が比較的取り入れやすく、そして実際に活用されていることが多い利益モデルだ。

これまでの利益モデルの説明方法と同様、まずはこの利益モデルがどのようなものかを説明してから、実例を見てみよう。

コンテンツ

・マルチコンポーネント利益モデルとは何か (その1)
・製品ピラミッド利益モデルとの違い (その1)
・二種類のマルチコンポーネント利益モデル (その2)
・チャネル型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その2) (その3)
・商品型マルチコンポーネント利益モデルの例 (その4)

マルチコンポーネント利益モデルとは何か

この利益モデルのキーとなるのは、もちろん「マルチコンポーネント」という言葉なのだが、恐らく言葉を聞いただけではピンと来ないだろう。
ここでのコンポーネントの意味は、企業が扱う個別の製品やサービス、そして個別のチャンネルを表している。

どの企業も、単一の商品を単一のチャネルで販売するだけで事業が成り立っていることは少ない。
多くの企業が複数の製品やサービスを扱っているか、複数のチャネルで営業活動をしているか、はたまたその両方に関わっているだろう。
マルチコンポーネントとはつまり、複数商品やチャネルを扱っているという状態を意味する。

じゃあマルチコンポーネント利益は複数の商品やチャネルを扱うべきだと言っているのかというと、そうではない。
各コンポーネントの利益を計算してみると、ユニットあたりの利益額はコンポーネントによって大きく異なる。
だから、各コンポーネントの利益を把握して上手くマネージメントしようというのがマルチコンポーネント利益モデルの要諦だ。


製品ピラミッド利益モデルとの違い

マルチコンポーネント利益モデルは、見ようによっては製品ピラミッド利益モデルと同じなのではないかと感じるかもしれない。

製品ピラミッド利益モデルを思い出すと、顧客セグメントやニーズに合わせて階層が異なる製品を提供し、一人の顧客のニーズの変化を全て受け止められるラインアップを揃える戦略だった。
そして、最高階級の製品が利益全体の半分ほど稼ぎだす最大の利益ポイントであった。

複数の製品やサービスを提供して利益をコントロールするという意味では製品ピラミッド利益モデルに近いのは間違いない。
しかし重要な違いは、製品ピラミッドでは製品の違いが顧客セグメントとニーズの違いを示していたのに対し、マルチコンポーネントではコンポーネントの違いイコール顧客の違いではないということだ。

製品ピラミッドの戦略においては、ピラミッドの下層階級の商品は安価でカジュアルなスウォッチのような商品で、初めてその商品を買うようなビギナー層、若年層といったセグメントをターゲットとしていた。
そして高階層の商品は成功した大人の証であり、重厚でハイクラスなオメガの腕時計はエグゼクティブクラスをターゲットとしていた。

しかし、マルチコンポーネントは必ずしも商品の違いが顧客の違いを意味しない。
マルチコンポーネント利益モデルの好例として必ずスライウォツキーが引き合いに出すコカ・コーラを例に考えてみよう。

コカ・コーラの商品はといえばもちろんコーラで、商品はシングルコンポーネントなのだがチャネルがマルチコンポーネント化している例だ。
コーラの代表的なチャネルには小売店、レストラン、自動販売機の3つがあるが、それぞれのチャネルでの利益が大きく異なっている。
小売店では1オンスあたり2セント、レストランは1オンスあたり4セント、自動販売機は1オンス当たり6セントという利益の出方になっている。
小売店と自動販売機では3倍の利益の差があり、それはつまり小売価格の違いを意味しているのだが、小売店で買う人がお金のない若年層で自動販売機で買う人がエグゼクティブクラスの中高年ということはありえない。
消費者はそれぞれのコンポーネントに対して状況に応じて異なる価格を支払うのだ。

まとめると、マルチコンポーネント利益モデルではコンポーネントによって顧客セグメントが異なるということはなく、同じ顧客が異なるコンポーネントに対して異なる価格弾力性を示す。
商品によって顧客セグメントが異なる製品ピラミッドとの違いはここにある。


「利益モデル3. マルチコンポーネント利益モデル その2」へ続きます。




 


2013/03/23

宝くじは国民が喜んで増税を受け入れる最高の仕掛け



あなたはロト派?それともジャンボ宝くじ派?
一発当てれば1〜3億円が手に入るというまさに夢の様なくじ。
私の聞いた話でも、当選金を有効活用して不動産を購入し、賃貸収入をあてに自由気ままな自営業をしている幸せ家族がいる。
なんとも夢のある話じゃないか。


だけど私は宝くじを買わないし、一度も買ったことがない。
全く割りに合わないと考えているからだ。

宝くじの収益、つまり購入金額の総額のうち、胴元の取り分(テラ銭)の割合はどれだけあるかご存知だろうか。
実は、全購入金額のうち当選金として購入者に還元されるのはわずか45%に過ぎないのだ。
半分以上は胴元である地方自治体と地方自治体から天下りを受け入れて業務委託を受けている公益法人の手元に入る。

一方、競馬や競艇のようなギャンブルは75%が当選金として購入者に還元される。
競馬や競艇は宝くじと違い課税対象なのだが、課税を加味しても還元率は58.5%であり、ギャンブルのほうがよっぽど期待値が高いということだ。


私個人としては宝くじは絶対に買わないが、公益ビジネスとしてこれほど優れた仕組みはないといえる。
宝くじ公式サイト(http://www.takarakuji-official.jp/)によると、宝くじ事業による収益金は1兆円にのぼる。
当選金支払いや手数料などで60%が経費となっているが、残りの4割の4000億円が地方自治体の元に入り、公共事業に使われている。

恐るべきはその購入者の裾野の広さだ。
宝くじ協会の調査によると、宝くじ購入経験がある日本人は約8000万人と推定されている。
実に日本人の7割に近い人が購入している。

さらに、ロトくじなどの数字選択式くじを1年以内に購入したことのある人は30%近くに達する。
宝くじを月一以上の頻度で買う人も13%に達していて8人に1人の計算だ。
こんな頻度でこれだけ多くに人に購入されている商品は、生活必需品を除いたらほとんど見つからないだろう。


宝くじを購入するということは、実際には喜んで増税を受け入れているということにほかならない。
10枚3000円のうち1200円が公共事業に使われるている。
紙切れと引き換えに人々が喜んで税金を納める天才的な仕組みを作ったのは素晴らしい。
ある意味、ビジネスとしての究極形と言えるのではないだろうか。









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2013/03/22

クラウドソーシング時代のサバイバル術


最近「クラウドソーシング」というキーワードで個人の力をビジネスに活かす試みが活発になってきている。

これまでは企業が外注する業務の全体からすると個人に委託する割合は少なく、少なくともリモート(在宅)で仕事をしている個人相手に外注することはデザイナーや翻訳家のような一部のケースを除いてはあまりなかったことだろう。
それが、企業からリモートへの個人の外注を取り次ぐ仲介業者、クラウドソーシング仲介企業の出現で変わってきている。


日経MJ 2013/3/21 P.3――――――――――――

インターネットを通じて企業が不特定多数の個人らに仕事を発注できる「クラウドソーシング」が広がっている。専業が急成長しているほか、ネット大手も参入。発注内容は単純業務にとどまらない。専門的なノウハウや販促策のアイデアを募る。商品開発やマーケティング戦略の根幹を担う例も出つつある。「自前主義」の呪縛から逃れ、低コストで付加価値を生む外注戦略がネット時代の成長のカギを握る。

――――――――――――――――――――――

クラウドソーシングのメリット・デメリット

外注先が個人の集団に広がることは、外注する企業とそれを受注する個人にどのような影響を持つだろうか。

外注する企業にとっては、ある意味非常にメリットが大きいだろう。
まず、大幅なコスト削減になる。

外注先が個人であれば、外注先が企業のときと比べてコストが大幅に削減出来る可能性が高い。
なぜなら、個人には企業特有の間接費がほぼかからないので、純粋な人件費が価格のベースになるはずだからだ。
言ってみれば、社内の誰かに仕事を頼むよりも論理的な価格は下がることになる。
間接費の大きさと外注先個人の単価にもよるが、3〜5割のコスト削減になるのではないだろうか。

しかも、リバースオークション形式で外注を掛けることになれば、さらにコストは圧縮することができる。
個人にリバースオークションで外注するほうが、複数企業に相見積もりを取るよりも対象者が多いし、意思決定も個人の方が早いので価格が下がりやすいだろう。

さらに、B to Cビジネスの企業にとっては消費者の声をダイレクトに聞くことができるチャンスでもある。
ある企業のなかで何年も何十年も同じプロダクトやサービスと関わっていると、全く公平に自社の商品を見ることが困難になる。
消費者の声を聞くためにインタビューやマーケティングリサーチをすることはできるが、消費者を商品開発の舞台へ迎えるのは難しいだろう。
日経MJの記事にもあるが、マーケティングや商品開発にもクラウドソーシングを通じて個人を参加させて成果が出ているようだ。


個人にとってのメリットはどうだろうか?
一番はじめに思いつくのは、ワークスタイルのオプションが増えるということだ。

クラウドソーシングならば、自分が得意で好きな仕事を好きなときに好きな場所で受けられる。
もちろん、需要があればという前提にはなるが。

仕事をしていたが、子供が生まれて家庭に入った女性や、介護など様々な理由で在宅ワークする個人にとっては利用価値が高い仕組みだろう。
また、スキルを学び、そのスキルを活用してプロフェッショナルとして仕事をしたいという人にも向いているのかもしれない。


クラウドソーシング時代の落とし穴

クラウドソーシングはには個人に働き方の新たなオプションを与える一方、そこで働く個人を付加価値の低い単純作業労働者にしてしまう可能性がある。

たしかにクラウドソーシングは個人に働き方の新しいオプションと、自分のスキルを活かした働き方を提供するシステムではある。
しかし、市場参加者が増えてクラウドソーシングのマーケットができ上がると、既存のマーケットと同じように市場原理が働く。

クラウドソーシング市場の中で個人が気をつけなければいけないのは、自分の提供できるスキルや付加価値がコモディティであるかどうかだ。
市場参加者が増えると、それまでは需要に対して供給が少なかったため引く手数多で契約金額も高かったスキルの供給が増え、暴落してしまうかもしれない。
コモディティ化の恐怖だ。

クラウドソーシングの落とし穴に落ちない方法

自分がコモディティになってしまうことを防ぐには、いくつか手段がある。
一つは、個人としてキラ星になることだ。
黙っていても企業から三顧の礼で仕事を頼みにくるような存在になることだ。

そんな存在になるためには、複数のスキルを組み合わせてニッチ分野のスペシャリストになるか、インフルエンサー/キュレーターという企業にとって利用価値の高い存在になることだ。
もう一つは、クラウドソーシングの胴元になることだ。
自分がビジネスオーナー・資本家となって、個人として市場に参加しないこと。
個人はクラウドソーシング市場の駒であり、搾取される存在だ。
なぜならその市場を所有しているビジネスオーナーと資本家がそうルールを定めたからだ。
人が作った市場を泳ぎきる自信がないのなら、胴元に身を寄せるのも一つの選択肢だ。







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2013/03/21

利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その3


製品ピラミッド利益モデル解説の3記事目。
一回で終わらせるつもりが思いのほか長くなってしまったが、今回は製品ピラミッドをどこから築くべきかという事に触れて、製品ピラミッド利益モデルの総括としたい。

コンテンツ

   * 製品ピラミッド利益モデルの構造(その1)
   * 製品ピラミッドが適用できるビジネスは?(その2)
   * 製品ピラミッドはどこから築くべき?


製品ピラミッドはどこから築くべき?

ある企業が製品ピラミッドを築くことで利益を増大させようと考えた時、その企業はどのような手順でピラミッド建設を進めるべきだろうか。
実際に製品ピラミッド利益モデルを構築した企業に学んでみよう。


■□エントリーブランドから組み立てる□■
エントリーブランドの製品からスタートして製品ピラミッドを作ることに成功したのがスウォッチ・グループだ。
スウォッチ・グループの成り立ちは非常にややこしいのだが、正確にはスウォッチからスタートしてオメガのようなラグジュアリーを開発してきたというわけではない。
1983年にスウォッチを販売開始して以来好調であったスウォッチと、他のスイスラグジュアリーブランドが1998年に合併した結果、スウォッチの上に中級ブランド、高級ブランドという階層が生まれたのだ。

スウォッチが幸運であったのは、中級ブランド、高級ブランドが製品・顧客・ブランドの全てを引き連れて合流してきたということだ。
普通あらたなブランドを構築し、市場で定着させようとしたら数年以上かかるし、それが高級ブランド志向であればあるほどブランド構築に必要な時間は長くなる。
しかし、既存ブランドを組み合わせて製品ピラミッドを作り出せば、ピラミッド構築のための時間が大幅に削減される。

スウォッチのケースを見ると、エントリーブランドからスタートして中級、高級ブランドを立ち上げてピラミッドを築くことができそうだ。
ただし、スウォッチ・グループのように合併やM&Aで中級・高級ブランドを獲得しない限り、ブランド開発のための膨大な時間と資金がかかることになるだろう。


もう一つ、マテル社のバービー人形を取り上げてみたい。
マテル社の製品ピラミッドでは、競合他社よりも安い子供向けバービー人形がファイアーウォール製品としてエントリーブランドに位置づけられていて、昔バービー人形で遊んだコレクターズ向けの200ドル程度の高価なバービー人形シリーズが利益を上げる高級ブランドを構成している。
バービー人形が発売された1959年ごろは、マテル社の経営者も子供向けの安価な商品をファイアーウォールにして市場を独占し、大人向けのコレクターズ商品で利益を出そうなどとは考えていなかっただろう。
昔バービー人形で遊んだ大人達という資産を発見したことにより、コレクターズ向けバービー人形というドル箱商品の発想に結びついた。
マテル社のバービー人形も、エントリーブランドから高級ブランドを生み出した成功例といえるだろう。


■□高級ブランドから組み立てる□■ 
市場の中で高級ブランドの位置づけからスタートし、エントリーブランドも立ち上げて製品ピラミッドを構築して上手くいったケースもあるようだ。

例として提示したいのが、プロミュージシャン向けのオーダーメイドギターを作成しているESPだ。
プロアーティスト向けのESPブランドから開始し、エドワーズ、グラスルーツという廉価版ブランドを展開している。
特にビジュアル系のアーティストに強く、ビジュアル系プロバンドに憧れるギター小僧ギター少女の初心者を5万円前後のグラスルーツで取り込み、10万円〜程度のエドワーズへ導き、最終的にプロレベルになればESPの数十万のギターに到達するという仕組みだ。
ファイアーウォールブランドであるグラスルーツは、製品単体の価値では他を圧倒するほど安いわけでも品質が良いわけでもないが、ビジュアル系バンド御用達という付加価値でもって特定セグメントの顧客を取り込み、ファイアーウォールとしての機能を全うしている。

ESPのように本体である高級ブランドを毀損しないよう廉価版ブランドを全く別名のブランド名で開発すれば、高級ブランドからスタートして製品ピラミッドを構築することは十分に可能なようだ。


結論としては、製品ピラミッド利益モデルを構築するにあたって、決まった手順というのはなさそうだ。
エントリーブランドからスタートして高級ブランドを開発する場合には、高級ブランドの顧客は誰でどのようなベネフィットを提供するのかをしっかり考えてからブランド開発をしないと、下の階層から上の階層に繋がらないちぐはぐなピラミッドになりかねない。
一方、高級ブランドからスタートしてエントリーブランドを新たに開発する場合も、新たに開発するブランドが今の高級ブランドを毀損しないように注意すること、そして高級ブランドと一致する顧客をターゲットとしたエントリーブランド開発が必要だ。


前回記事:
2013/3/18 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その1
2013/3/20 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その2

関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3



 








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2013/03/20

利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その2


前回の投稿では製品ピラミッド利益モデルの説明をした。
→ 2013/3/18 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その1

提唱者のスライウォツキーも「ザ・プロフィット」の中で述べているが、製品ピラミッド利益モデルを適用できるビジネスはさほど多くない。
正確には、適用できるビジネスが少ないと言うよりも、製品ピラミッドというシステムをしっかり構築できる戦略と戦術に優れた企業が少ないというべきだろう。

ピラミッドの最下層で価格競争力に優れた製品を提供してる企業は沢山あるが、ピラミッドの最上部にある利益率の高い高級ブランドも合わせて持っている企業は少ない。
また、最下層のエントリーブランドの価格競争力やブランド力が中途半端でファイアーウォールとしての機能が弱く、競合の侵入を許してしまっていることもある。
逆に、高価格帯の高級ブランドだけを所有しており、庶民的な製品ラインを持っていない企業も沢山ある。
こうした企業は皆製品ピラミッド利益を得られる可能性を秘めていながら製品ピラミッドを築くという戦略を持っておらず、みすみすもっと利益を上げられるチャンスを逃しているのだ。


今回は、製品ピラミッド利益モデルが適用できるビジネスについて考察してみたい。

コンテンツ

   * 製品ピラミッド利益モデルの構造(その1)
   * 製品ピラミッドが適用できるビジネスは?
   * 製品ピラミッドはどこから築くべき?(次回)


製品ピラミッドが適用できるビジネスは?

製品ピラミッド利益モデルが構築できるビジネスに何か共通点はあるだろうか?
しっかりと階層化された製品ピラミッドを築けている企業の例は、スウォッチの時計、マテルのバービー人形、GMの自動車、Fenderのギターなどだ。
いずれの製品ラインナップにも共通するのは、B to Cの製品であるということだ。

製品ピラミッド利益モデルで成功している企業がB to C企業である理由は、このモデルが前提とするある一つの条件があるからだ。
それは、製品階層ごとに異なるニーズを持って商品と向き合う顧客層が存在しているということだ。

例としてガソリンを考えると分かりやすい。
ガソリンは軽油、レギュラー、ハイオクという3段階の商品が用意されているが、どの商品を選択する顧客も基本的なニーズは変わらない。
つまり、車を動かしたいというニーズだ。
どの油種を選ぶかは乗っている車に左右されるが、ガソリンに対するニーズの違いで左右されるというわけではない。
だから、軽油よりハイオクの方が極端に利益率が高いということもない。

一方、製品ピラミッドのモデルケースとしてよく取り上げられるスウォッチ・グループを取り上げてみよう
スウォッチ・グループが有する製品ピラミッドのエントリーブランドはファッション性に優れ、価格が安いスウォッチだ。
初めてスウォッチが販売されたころは、消費者にとっての時計は一つか二つ、しっかりとした高価なものを長く大切に使う宝飾品のようなものだった。
しかし、スウォッチは洋服のコーディネートの一部であるように毎日付け替えることができる優れたデザインといくつも購入できる低価格で、時計を初めて購入する若者を取り込んだ。
そして初めてスウォッチを購入した若者が成長と所得の増加とともに次のステージに進むことを促すように、ミドルレンジ、ハイレンジ、プレステージ・ラグジュアリレンジのブランドが用意されている。

スウォッチ・グループはベーシックレンジであるスウォッチを含め、4つのブランドレンジとそこに含まれる18のブランドを有している。
それぞれのブランドレンジの商品を購入する顧客は皆違うニーズと特徴がある。
ベーシックレンジのブランドを求めるのは初めて時計を購入する所得の少ない若者。
ミドルレンジ、ハイレンジは社会人になり、今までの安くてプラスチッキーな時計を卒業し、少ししっかりした時計を持ちたい青年。
プレステージ・ラグジュアリレンジはビジネスで成功して所得も高く、自分たちの成功を時計で表現したい大人な男性、というように。

スウォッチ・グループの製品ピラミッドに取り込まれる人々のニーズを見ていただければわかるが、上層に行けば行くほど製品の本質的価値(時間を伝える)よりも情緒的価値(良い時計を持ちたい、成功の表現)に重点が移動していることが分かる。
誰もが認める情緒的価値があるからこそ、不当とも言えるほど利益率が高い製品でも人々は購入する。
一人の顧客が時間とともに製品ピラミッドを登っていくようにデザインされていることも重要だ。

B to Bでは純粋に価格と機能のバランスで製品が選択され、情緒的価値が重視されることはない。
さらに、顧客の予算に合わせて複数のブランドやラインナップが存在することはあるが、顧客が会社の成長とともにより高価格なブランドへ進むということもない。
これが製品ピラミッド利益モデルがB to Cでしか見られない理由だ。


ここまで見てきたように、製品ピラミッド利益モデルが適用できるのは、
1. B to Cモデルであること
2. 情緒的価値により購買意欲を喚起できる商品であること
が前提となる。


次回は製品ピラミッドをどこから築くべきかについて考えてみよう。


同テーマのエントリー:
2013/3/18 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その1
2013/3/21 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その3

関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3



 








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2013/03/19

利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その1



今日はスライウォツキーの利益モデルその2、製品ピラミッド利益モデルについて考えてみよう。
製品ピラミッド利益モデルとは、その名の通り製品ラインナップでピラミッド構造をつくり上げるモデルだ。
ラインナップでピラミッドを作るということは、お分かりの通りそれだけ製品の数が多い大企業向けの利益モデルだ。

本記事では製品ピラミッド利益の構造について解説し、どのような業界やビジネスに向いているのかを考えてみたい。
そして最後に、製品ピラミッドをどこから築くべきかについてもふれてみる。

コンテンツ

   * 製品ピラミッド利益モデルの構造
   * 製品ピラミッドが適用できるビジネスは?
   * 製品ピラミッドはどこから築くべき?


製品ピラミッド利益モデルの構造

製品ピラミッドとは、この記事トップの画像のようにいくつかの階層に分けた製品ラインナップを作り込む利益モデルだ。
この階層が示すものは何かというと、顧客のセグメントだ。
もっと有り体に言うと、その製品に対して顧客が払える額によって分けられたブランドを意味する。
つまり、製品ピラミッドとは低価格・エントリーブランドから超高級ブランドまで、一気通貫のブランド群を作り上げる戦略だ。


なぜ製品ピラミッドを構築すると利益が出るのか説明しよう。
話を単純化するため、ピラミッド構造を3階層とする。
エントリーブランド、ミドルブランド、高級ブランドの3つだ。

先に利益を生み出す仕組みについて種明かしをすると、製品ピラミッド利益モデルが生み出す莫大な利益は、その大半が高級ブランドから生まれる。
販売数で言えば、ピラミッドの図の通りエントリーブランドが最も数が出て、その次にミドルブランドが続き、高級ブランドの販売数が最も小さい。
しかし、製品ピラミッドの頂点に位置づけられた高級ブランドの製品は、エントリーモデルの数倍〜数十倍の価格設定がされ、利益率も同じくらい高いものだからビジネス全体の利益の大半を稼ぎだしてしまうのだ。

では、エントリーブランドは何のために存在するのだろうか?
ピラミッド型利益モデルのエントリーブランドは、販売している数の割に利益への貢献が低い。
むしろ全体の利益率を下げている存在とも言えよう。
しかし、エントリーブランドが重要なのは、未来の上得意顧客とその商品ジャンルとが初めて出会う場所だということ。

あなたはあるジャンルの商品を初めて買うとき、どんな商品を買うだろうか。
趣味としてギターを始めたいな、と思ったときにいきなりFender USAの50万以上する60年代のストラトキャスターを買うだろうか?
せいぜい初心者向け価格である3〜5万のFender Japan製のストラトキャスターを買うだろう。
だが初めて買った商品は安くとも、人間初めて買ったブランドには忠誠心を感じやすいもので、同じ家系の高級ブランドに流れやすいもの。
Fender Japan製ストラトキャスターを購入した人は、次にFender USAを買い、さらには最高級のFender USAビンテージにたどり着く可能性が高くなるのだ。


エントリーブランドの重要性は顧客との出会いの場ということにとどまらず、もう一つピラミッド型利益モデルを構成する重要な核となっている。
その役割とは、ファイアーウォールとしての機能だ。
ファイアーウォールとは元来、火の侵入を防ぐ壁のことだが、ピラミッド型利益モデルの文脈では競合他社が侵入してくるのを防ぐ防御壁という意味合いで使われる。
ピラミッド型利益モデルにおけるエントリーブランドの最も重要な役割は、価格の安さで競合他社をはねのけ、そのジャンルの商品を初めて買う顧客を競合他社の手に渡さないことだ。

高級ブランドで大半の利益を上げているので、エントリーブランドで無理に利益を稼ごうとする必要はない。
エントリーブランドは新規顧客を開拓することだけに特化していれば良くて、あとは自動的に顧客がピラミッドを登って利益をもたらし続けてくれる。
だからこそ、エントリーブランドで競合他社に負けることは許されない。


ミドルブランドはファイアーウォールであるエントリーブランドと収益を稼ぎだす高級ブランドの中間に存在するブランドだ。
だが決してどっちつかずの中途半端な存在などではない。
エントリーブランドから高級ブランドへ向かう間に魅力的なミドルブランドが欠けてしまうと、顧客は容易に他の選択肢に飛びつき戻ってこなくなってしまうかもしれない。
それを防ぐために、ミドルブランドは抜け漏れがないよう、しっかりと高級ブランドへ橋渡しをする役割を全うできるブランドでなければいけない。


まとめると、製品ピラミッドの狙いはエントリーブランドで高級ブランドの顧客予備軍をできるだけ多く招き入れ、顧客の経済的・人間的成長とともにミドルブランドへステップアップし、最終的には高級ブランドへ辿り着いてもらうことなのだ。
そしてなるべく多くの予備軍を確保するため、エントリーブランドは品質を維持しつつ利益度外視の価格で競合を市場からシャットアウトする。
それがこの製品ピラミッド利益モデルのカラクリなのだ。

続きは次回の投稿で。


同テーマのエントリー:
2013/3/20 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その2
2013/3/21 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その3

関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3



 








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2013/03/18

利益モデル1. 顧客ソリューション利益モデル その2



前回に引き続き、顧客ソリューション利益モデルについて考えてみたい。

コンテンツ


   * ソリューションとは何なのか?(その1)
   * 顧客ソリューション利益モデルとは何か?(その1)
   * 顧客ソリューションモデルが適用できる業界・業種

顧客ソリューション利益モデルが適用できる業界・業種

顧客にとってソリューションの付加価値は、自社の業務を知り尽くしたソリューション提供者が、業界のプロとして最適な製品やサービスを組み合わせてくれることだ。
つまり、企業が別の業界の製品やサービスを必要としている場合には業界・業種関わらず顧客ソリューション利益モデルの可能性がある。

例えば、流通業者にとってITシステムは最適な配送計画に必要不可欠だが、流通業者はITシステムのプロではない。
最適な配送をするために必要な要件は理解しているが、それを実現するためのシステムの実装はその道のプロに任せざるを得ない。
さらに、配送を最適化するためのプログラムを作るだけでなく、それを24時間365日安定して稼働させるシステムの構築と保守も必要になる。
これを実現するためにITシステムはソリューションベンダーという業種が存在しているのだ。


顧客ソリューション利益モデルはロジック的にどの業界でも活用できる利益モデルだ。
なぜなら、単体の商品を販売している事業者だけで成り立っている業界は無いからだ。
要求が厳しい顧客があれば、業界の製品やサービスを組み合わせることで付加価値を上げるソリューションの存在価値が生まれる。

しかし、業態によってはソリューション利益モデルを採用するのは難しいケースがあるのは確かだ。
例として上げられるのが、レストランなどの飲食業だ。
無論、飲食業界という広い視点で見れば、開業したい人に厨房調理器具や内装とインテリアをワンストップで提供するソリューションビジネスということも考えられる。
しかし、コンシューマーを顧客とするレストランを営んでいる事業者が利益改善のためにソリューション利益モデルを取り込もうとするのは難しい。
その理由は、コンシューマーはソリューションを必要とすることが少ないからだ。

先にも述べたように、ソリューション利益モデルは最初に赤字を垂れ流してでも顧客の経済性を徹底的に理解し、ベストなソリューションを提供して後から利益を回収するというモデルだ。
ソリューション利益モデルが成り立つのは、課題が解決されることによってもたらされる利益がソリューションに支払う価格を超えていることになる。
しかし、コンシューマー一人ひとりにそれだけの時間とコストを掛けて利益が回収できるビジネスはあまり多くない。
よほど上位0.1%の富裕層を相手にするビジネスでなければ成り立たない。


とは言うものの、そんな飲食業でもソリューション利益モデルに近いモデルがある。
ダイヤモンドダイニングのコンシェルジュサービスだ。

参考:
2013/1/29 飲食店もソフトパワーで差別化の時代へ。ダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ
2012/10/16 ダイヤモンドダイニングに見る明確なフロントエンド商品とバックエンドエンド商品

ダイヤモンドダイニングのコンシェルジュサービスは自社のレストランに誘導するためのフロントエンド商品であり、ソリューションとは少し役割が違う。
しかし、顧客ソリューション利益モデルの「型」知っているとこうした発想もできるということだ。


前編:
利益モデル1. 顧客ソリューション利益モデル その1



 








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2013/03/17

利益モデル1. 顧客ソリューション利益モデル その1


スライウォツキーの利益モデル、その1が「顧客ソリューション利益モデル」だ。
顧客ソリューション利益モデルとは、ただ製品やサービスを販売するのではなくソリューションを提供することにより、利益を生み出すというビジネスモデルだ。

ソリューションという言葉ほど、一人ひとりが異なる意味で使っているビジネスワードはない
多くの企業が「当社は最適なソリューションを提供します」と言いながら、ソリューションの意味が分かっているのだろうか?という場合がままある。
まずソリューションとはなんぞやということを考えてみたい。

コンテンツ

顧客ソリューション利益モデルについては、次の3つのパートに分けて説明してみたい。

  • ソリューションとは何なのか?
  • 顧客ソリューション利益モデルとは何か?
  • 顧客ソリューションモデルが適用できる業界・業種

ソリューションとは何なのか?

たまに勘違いされるのだが、ソリューションとは製品とサービスの組み合わせた商品という意味ではない。
たしかにソリューションは製品とサービスがセットで提供されることがほとんどだ。
だが、製品とサービスをパッケージ化することがソリューションなのではない。
お客様の問題解決をしようとした結果、製品とサービスの組み合わせが必要になってしまうのがソリューションだ。

また、ソリューションを単一の製品とサービスを組み合わせたパッケージ商品をソリューションと呼んでいるケースも見受けられるが、これも正しくない。
スライウォツキー氏の顧客ソリューション利益モデルの考え方では、ソリューションが企画型のパッケージ商品であることはありえない。
なぜなら、ソリューションは顧客ごとに異なる業務を徹底的に理解し、一社一社に最適な商品(ソリューション)を顧客ごとに構築することだからだ。


顧客ソリューション利益モデルとは何か?

顧客ソリューションモデルは言うまでもなく、ソリューションを提供することによって利益を享受するという利益モデルだ。
まず、一般的なビジネスモデルとの違いを、利益獲得の仕方の違いから説明しよう。

商品を調達して販売するという一般的な販売ビジネスでは、商品を1ユニット販売すると利益(限界利益)が発生する。
販売ビジネス全体の利益は販売した商品の利益率×販売した商品数という事になる。
期中に限界利益が積み重なり、固定費を超えた時点から経常利益が出始めるというモデルだ。



図を見ていただくと、利益曲線がリニアに増えていくのが分かる。
これは単純化しすぎた例ではあるが、商品の仕入れ販売ビジネスの利益の増え方はこの図の通りである。

ただし、仕入れ販売ビジネスの問題は、この利益曲線を作り出すのが難しいということにある。
単純な製品販売になると、よほど優れた製品でなければ差別化が難しく、競合製品との価格競争により思うように利益が出ないことがほとんどだ。
しかも、時間経過に従って利益率がどんどん落ちてくるのが現実なのだ。


顧客ソリューションモデルでは、顧客からの受注はいくつかのフェーズに分けられ、最初のフェーズでは赤字を出しつつも最終的に利益を回収するというビジネスモデルだ。
まずは新たな顧客との取引を始めるためのフロントエンド商品を販売する。
フロントエンド商品は顧客がためらわずに購入できるものでなければならず、その商品を利用するのに顧客が多大な労力を必要としないということと、利益率が薄くて構わないから商品と価格のバランスが競合製品よりも優れていることが条件だ。
取引が始まった新規顧客にソリューション営業を送り込み、顧客の課題を調べあげ、その課題を解決するソリューションを作りこむ。
前提として、自社のソリューションが課題を解決することで、顧客が自社に支払うコストよりも大きな改善が見込めることが最低条件だ。
この時点ではソリューションの作りこみに対して顧客へ対価を請求できないので、コストだけが積み上がっていくことになる。

最終的にバックエンド商品であるソリューションの契約を獲得すると、利益曲線が上向き始める。
ソリューションの価格はソリューションのパーツそれぞれのコストを束ねたより大きいものであることが条件だ。
また、一度そのソリューションを利用し始めることによって、顧客が容易に別のソリューションへスイッチできないので、安定的に利用料を得ることができる。
一方、最もコストが掛かるのはソリューション開発段階なので、限界費用が下がり、時間が経過するほど利益が積み重なることになる。



図の通り、顧客ソリューション利益モデルでは、ビジネス開始当初から利益曲線はマイナスの領域にあり、取引が増えて経過するほど利益率が改善して行く。
そして重要なのが、前に上げた仕入れ販売ビジネスと違ってこの利益曲線をキープしやすいということだ。
ソリューションは顧客個別のフルオーダーメイドなので、顧客は別のソリューションへ容易にスイッチすることができない。
フルオーダーメイドされたソリューションはあまりにしっかりとビジネスモデルの中に組み込まれていて、ソリューションの変更には多大な事業プロセスの変更が伴うからだ。
これがソリューション利益モデルが高い利益率を上げるカラクリだ。 


次回は顧客ソリューション利益モデルが活用できそうな業界について見てみよう。


後半:
利益モデル1. 顧客ソリューション利益モデル その2


 








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2013/03/16

エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営

エイドリアン・スライウォツキーは、私が敬愛するビジネス戦略論の大家の1人だ。
「プロフィット・ゾーン経営戦略」や「ザ・プロフィット」では豊富な事例とともに利益モデルの重要さを説いている。
利益モデルとは一般的に言われるビジネスモデルに近いものだが、ビジネスモデルは付加価値の移動とキャッシュの移動を図解しているのに対し、利益モデルはビジネスモデルの中で利益がどこでどのように生まれるかに焦点を当て、解き明かそうという試みだ。

どの業界でも大手企業は長らくシェアを競い合う熾烈な競争を繰り広げてきたが、シェア拡大、売上拡大にこだわるあまり利益管理が等閑になっていることが少なくない。
しかし、シェア拡大=利益率向上という図式がいつの間にか成り立たなくなっており、黒字倒産ならぬシェアナンバーワン倒産のような事態を招いてしまっているのである。
スライウォツキー氏は企業の間違ったシェア追求経営に警鐘を鳴らし、利益が生まれるゾーン、すなわちプロフィット・ゾーンを意識した経営をすべきだとしている。

では、シェア拡大が利益率拡大に繋がらなくなてしまったのはいつからなのだろうか?
契機は需要と供給の逆転だ。
需要が大幅に供給を上回っていた時代、米国や日本で言えば第二次大戦の復興期には、企業が製品を作れば作るほど売れていくという夢のような時代があった。
いわゆる売り手市場だ。
このころは技術イノベーションによる製造技術の向上や製造コストの削減が利益率に直結していた。
だから単純にモノが売れれば売れるほど利益が積み重なり、サプライヤーに対する交渉力が高まって利益率も改善した。

だが、人々に十分にモノやサービスが行き渡った頃から状況は変わってきた。
顧客のニーズは多様化し、企業の都合でデザインされ作り上げられた商品は見向きもされず、真に顧客のニーズを捉えて顧客の利益を高める商品しか売れなくなってきたのだ。
多様化した顧客のニーズを捉えようとすると必然的にセグメンテーションが細かくなる。
細分化されたセグメンテーションへ以前のように誰にでも合うOne Size Fits Allのような商品を提供していても売れなくなるのは当然であった。

そこで生まれたのがプロフィット・ゾーン経営という考え方だ。
細分化された顧客のニーズに合わせて商品を開発して売るだけでは、利益が得られない。
だからビジネスデザインにあらかじめ利益を生みだす仕組み、つまり利益モデルを組み込んでおくのだ。

スライウォツキー氏は、書籍によって違うのだが、22か23の利益モデルを定義している。
しばらくこのスライウォツキー氏の利益モデル一つ一つについて記事を書いていきたい。


2013/3/18 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その1
2013/3/20 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その2
2013/3/21 利益モデル2. 製品ピラミッド利益モデル その3


関連記事:
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3








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