2013/03/14

白戸家に秘められたソフトバンクの恐るべきブランディング構築力



ソフトバンクの白戸家のCMと聞けば、誰でもすぐに思い出せるインパクトの強いあのCMだ。
白い犬のお父さん、黒人のお兄さん、不条理なストーリーなど、白戸家のCMと聞けばすぐにいろいろな場面が思い出されるのではないだろうか。
缶コーヒーのBossとコラボレーションするなど、思わず引き込まれる仕掛けがある新ストーリーを次々と繰り出し、CMが流れると「今回はどんなストーリーなんだ?」とついつい意識を傾けてしまうのではないだろうか。

白戸家を起点としたソフトバンクのブランディング構築力は研究に値する。
ブランディングCMとキャンペーンは、性質上ダイレクトレスポンスを狙ったものではないので売上に対する貢献度を計測するのは非常に難しい。
しかし、白戸家のブランディングは長期にわたってソフトバンクの携帯シェア率に貢献し続けるはずだ。
今回はこのソフトバンクが仕掛けるブランディングの妙技に注目してみたい。


家族というモチーフを最初に使い始めたソフトバンク

今では白戸家に続けとばかりにドコモの「ドコモ田家」、AUの「巨人の星家」シリーズが昨年から相次いで始まったが、最初に家族というモチーフに焦点を当てたのはソフトバンクだ。

家族というモチーフに焦点を当てた理由は何だったのだろう?
恐らく家族にテーマにした理由は、単純に老若男女問わずに興味を持って貰いたいということだろう。
一般的に言って、ターゲットを絞らないというのはマーケティング的には悪手だ。
適切なターゲットを括って、ターゲットに響くメッセージを送るのがマーケティングの基本的な機能だ。
それでもソフトバンクが家族というターゲットを絞らないテーマを採用した理由は、息の長いブランディングを目的としているからではないだろうか。
数十年というスパンで見た時、人は子供から大人になり、子供を産み育てておじいちゃんおばあちゃんへと階段を登っていく。
どの年齢の時に見ても違和感なく、反感を覚えずに見れるのは「家族」というテーマくらいのものだろう。
無論、対象顧客が全年齢の男女であるという事実も無視できないことではあった。
しかし、ソフトバンクは「家族」という普遍的で退屈なテーマをインパクトのあるクリエイティブにする手法を持っていた。


凡庸を非凡にする手法

白戸家シリーズは全体的に不条理だが、白い犬のお父さんという最大の異物がこのCMにはある。
白い犬が普通にお父さんとして渋い声でしゃべるというだけで、一発で記憶に残るインパクトを持っている。
白い柴犬?は広く愛される動物ではあるものの、凡庸でインパクトにかけるのだが、お父さんという役割を与えられることで常識に反する不条理が生まれ、記憶に定着しやすくなる。
これがソフトバンクが使った心理的なトリックだ。

「白い犬のお父さん」を採用した効果は、記憶に残るインパクトだけにとどまらない。
白いくてふわふわした可愛らしい犬が威厳のあるお父さんの野太い声というミスマッチが子供をCMに釘付けにし、さらにそのカワイさから若い女性にもウケるのだ。
子供に受ければ大人が釣れ、若い女性に受ければ男性が釣れるというのがこの世の道理。
こうしてソフトバンクは家族という普遍的で凡庸なテーマに、白い犬というこれまた単体で見れば普遍的で凡庸なキャラクターを組み合わせながら、大きなインパクトを持つ世界観を創りだした。


ソフトバンクの白戸家ブランドの目的

では最終的にソフトバンクの白戸家CMによるブランディングの目的はなんなのか?
明らかにダイレクトレスポンス(購入という行動を引き出す直接的な働きかけ)を狙ったものではない。
CMを見ていれば分かるが、商品やサービスの説明は申し訳程度にしか入っていない。
モノによってはほとんど商品とサービスの説明をしていないバージョンすらある。
ソフトバンクは明らかに白戸家のCMで購買意欲を刺激しようとしていない。

白戸家CMの真意を一言で言ってしまえば、「イメージ向上」だ。
すごーく単純に聞こえてしまうかもしれないが、これがブランディングの最終目標であり唯一の目標だ。
人が複数の選択肢から何かを選ぶとき、どれだけ精緻に比較をしても、結局感情で決めることが多い。
良いブランドイメージを持っていれば、それだけ消費者が自社を選択してくれる確率が高まるということだ。

突然ですが、今日の昼は何を食べましたか?

直近の食事の献立を思い出して、ビタミンB群が足りないからサラダを食べようなどと考えただろうか?
少し思考を巡らせたとしても、結局栄養素が偏っているのがわかっていても食べたいものを食べたり、時間を掛けたくないからという理由でカップラーメンを食べたりしていないだろうか。
論理的に今私が食べるべきメニューを考案しても、感情がそれに従うことは少ない。

とくに携帯電話なんてキャリア間の値段の差がほとんどない横並び状態のコモディティだ。
となると、いざ消費者が選択するときにそのキャリアに持っているイメージが意思決定の感情に大きな影響を持つことになるだろう。
競合より良いブランドイメージがあれば、同等レベルのサービスさえ提供していれば負けることはなくなる。
競合が良いサービスを開発しても、後追いで同じようなサービスを提供すれば負けないのだ。
圧倒的なブランド価値は防衛戦を展開する特権を与える。
これがナンバーワン企業がブランド獲得に躍起になる理由の一つでもあるだろう。


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