2013/05/30

希少価値を保つために出荷制限を宣言するフェラーリ会長



フェラーリのモンテゼモロ会長は8日の記者会見で、中国でフェラーリが売れすぎている傾向にあるので販売を抑制する方針を打ち出したという。

モンテゼモロ会長は希少価値がフェラーリの重要な価値の一つであり、町中を走るフェラーリが多すぎるとそれはもうフェラーリではない大衆車に成り下がってしまうという考えなのだ。

ブランド価値の最終形にあるフェラーリ

車自体の性能もさることながら、「フェラーリ」という言葉に秘められたブランド価値によって、ちょっとしたファミリーマンションに相当する2500万〜4000万の価格で売れるフェラーリのスポーツカーはブランドの最終形態にあると言っても過言ではないだろう。

ブランドの最たるものは、ブランド価値それ自体が購入動機になるものだ。

一般的な定義で言えば、「ブランド」はその会社と商品が提供してきた価値の積み重ねによって生まれるポジティブ(たまにネガティブ)なイメージだ。
イメージが蓄積されて、そのブランドの名称とイメージがひとつになった時にブランドはひとりでに輝きだし、そこにプレミアムが生まれる。
そうなるとブランドの名前を冠していることが、その商品を購入する目的となるのだ。


モンテゼモロ会長の言葉は端的だが、フェラーリが積み重ねてきたイメージを明確に把握していて、コントロールしようとしている。

モンテゼモロ会長:
「年に500台も売れては独創的な存在たりえない」
「フェラーリの限定感は商品価値の基本だ。われわれは夢を売っている」

2013/05/28

利益モデル17. 景気循環利益モデル


スライウォツキーの利益モデル17番目は「景気循環利益モデル」だ。
景気循環利益、と聞いてもいまいちピンとこないと思う。
このモデルは、景気循環の影響を強く受ける企業、例えば鉄鋼業や建設業、自動車や化学工業のような業界でなぜ一部のナンバーワン企業は利益を確保し続けることができるのかを説明しているモデルだ。

2つのコントロールポイント
景気循環利益モデルで利益を出している企業は、2つのコントロールポイントのどちらか、もしくは両方を上手く制御することで利益を得ている。
その2つのコントロールポイントとは、コストと価格だ。

コストコントロールによる利益
好景気のときに競合他社よりも大きな利益を得て、不景気のときに他社が赤字でも自社は損益分岐点を超えるにはどうすれば良いだろうか。
答えはシンプル。他社よりもコストが低ければ良い。
同じ価格の商品を作るのでもコストが安ければ利益が大きい。

好景気で増産増産という流れの時でも製品1ユニットあたりのコストの増加を抑え、不景気には速やかに人員削減などでコストを引き締めることができれば利益を確保することができる。
新技術の登場などでよほど業界自体が壊滅的な状態でない限り、一番コストを切り詰めることができる企業が利益を出せないはずがない。
このコストコントロールにより景気循環利益モデルで利益を上げている好例はトヨタだ。

価格コントロールによる利益
価格をコントロールすることで利益を確保しようという試みは、日本人にはあまり馴染みのない考え方かも知れない。
好景気時には他社に先駆けて価格を上昇させて競合他社よりも高い利益を確保し、景気が下り始めるといち早く価格を下げて販売量を増やしてこれまたやはり競合他社よりも高い利益を確保する。

取り扱っている製品が差別化しにくいものであればあるほど、価格コントロールによる微妙な利益の蓄積が競合他社との大きな差になる。
スライウォツキー博士いわく、ダウ・ケミカル社が価格コントロールにより利益を確保することに秀でているそうだ。


関連エントリー:
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 



利益モデル16. 価値連鎖ポジション利益モデル


スライウォツキー17番目の利益モデルは「価値連鎖ポジション利益」だ。
価値連鎖ポジション利益モデルは、スライウォツキー博士が提唱する「プロフィットゾーン」の概念そのものとも言える重要なコンセプトなので、是非覚えておいていただきたい。

コンテンツ

  • 価値連鎖ポジション利益とは
  • プロフィットゾーンの変動

価値連鎖ポジション利益とは

価値連鎖(バリューチェーン)におけるポジショニングに優れた企業は、その業界におけるバリューチェーンの中で最も利益率の高い領域でビジネスをしている。
一つの業界をとってみても、その業界の全てのバリューチェーンに等分に利益が配分されるわけではない。

何らかの製品、例えばハンドバッグを例に取ってみるとすると、『皮革生産業者 > 皮革卸売業者 > ハンドバッグ製造業者 > 卸売業者 > 小売店』というバリューチェーンになるだろう。
このバリューチェーン全体で100億円の利益が出ていたとして、それぞれのバリューチェーンに等しく20億円ずつ利益が落ちているとは限らない。
むしろ、ほとんどの場合いくつかのバリューチェーンに利益の多くが偏在していることになるだろう。
ハンドバッグ業界のことはよくわからないが、高級品であるほど製造業者と小売に、低価格品では全体的に利益が少ないが卸売業者と小売に利益が比較的多めに落ちているのではないだろうか。

この偏りがとても大きいのがパソコン業界だ。
パソコン業界はハードウェア部品が多く、周辺機器も多いため、全体が複雑なバリューチェーンの構造を持っている。
だが、多くの利益はプロセッサーとソフトウェアに偏在している。
国内メーカーがHDDやメモリの製造から手を引いたように、最も付加価値の高いバリューチェーンを除いてはほとんど儲からないような仕組みになってしまっているのだ。

プロフィットゾーンの変動

この価値連鎖ポジション利益で留意すべき点は、プロフィットゾーン(相対的に多くの利益を生み出す場所)は競争環境によって有機的に変動するということだ。
この変動は時間とともにプロフィットゾーンをあちこちに移動させる。

10年前はプロフィットゾーンに浴して儲かっていた会社も、プロフィットゾーンが移動してしまったことに気づかずに既存のビジネスモデルを回し続けることで潤沢にあったはずの剰余金を食いつぶしてしまった例が山ほどある。
価値連鎖ポジション利益に限ったことではないが、プロフィットゾーンの変動に合わせて有機的に戦場を変えていくことが経営者には求められるのだ。


関連エントリー:
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2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
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2013/05/26

利益モデル15. 取引規模利益モデル

スライウォツキー利益モデルの15番目は「取引規模利益モデル」だ。
取引規模利益モデルはその名の通り、取引の規模が大きいほど利益も大きくなるということを意味する単純なモデルである。
意味するところは単純だが、このモデルを活用しようとするのはなかなか簡単ではない。

コンテンツ

  • 取引規模利益モデルとは
  • 取引規模利益を得るために必要なこと

取引規模利益モデルとは

もしあなたが雑貨屋だとして、顧客がボールペンを買いに来たとする。
顧客が500円のノック式ボールペンを購入した場合と、クロスの20,000円のボールペンを購入した場合、どちらが利益率、そして利益額が高いだろうか?

仮に原価はどちらも60%だとしよう。
するとノック式ボールペンの粗利は200円、クロスのボールペンは8,000円にもなる。
あとは経費がどれだけかかるかだが、ディスプレイにかかる什器や場所以外は特に変わらないだろう。
だから一つの取引が大きくなる商品ほど利益額も利益率も大きくなるというのがこのモデルの意味するところだ。
誰にでも分かる単純極まりない話だ。

さらに、ペン一本に対する什器や場所の経費は販売数が増えれば増えるほど減少してくるので、販売数が多ければ多いほど小さくすることができる。
だからできるだけ大きな取引をできるだけ多くこなすことが取引規模利益モデルの基本的な戦略になる。

取引規模利益を得るために必要なこと

規模が大きい取引を沢山こなせば良いというのは分かりやすい話だが、それを実現するのは非常に困難であることはビジネスパーソンなら誰にでもすぐに分かることだろう。

大きい取引に集中するということは自社のリソースがパンパンになるほど大きい案件のリードがあることが前提になるし、大きな案件にリソースを投入するために小さいディールを切るという決断をしなければならない。
そうは言っても、手が回らなくなるほどの大型案件のリードばかり持っていたら何も困らないし、そうじゃないから小さい案件でも拾わなければならないんだよ、という怒りの声が聞こえてきそうだ。
それは全くもって正しいクレームだ。

だから取引規模利益は小さいディールを切ることで安定した収入源を断つリスクを追う場合もあるし、大型案件がモノになるまでの忍耐を必要とする。
取引規模利益を求めるならばこのリスクと忍耐をコントロールできなければならない。


取引規模の大きなディールを集めるためには何が必要だろうか。
細かことを言えばいろいろあるかもしれないが、収束させると「買わずにはいられない商品」か「顧客との関係の深さ」のどちらかになるだろう。

顧客が欲しくてたまらない商品を作れば、高い金額でも顧客は購入するというのは分かりやすいコンセプトだろう。
その会社にしかない技術、特許、または人材でつくられた商品はやはりその会社からしか購入することができない。

次に顧客との関係の深さという要素はどうだろうか。
これまたとてもシンプルな話だが、商品が競合他社と大きく変わらないのであれば、信頼関係の深さが大きな取引を獲得するための差別化要素となり得る。
ここで言う関係性とは一義的なものではなく、営業訪問した回数も顧客を接待した数もこれまでの取引の数や質も、顧客との関係を深める全ての要素を足した総和である。

さらに、ただ信頼関係があるだけではなく信頼関係によって引き出した顧客の情報に基づいて製品やサービスを個別カスタマイズすることも成功につながる重要なファクターだ。


関連エントリー:
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2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 


データドリブンマーケティング(DDM)


つい先日、私はニューヨークで開催されたネット+広告関連のカンファレンスに参加した。
4日間開催されるイベントなのだが、その中でも気を惹かれたデータドリブンマーケティング(Data Driven Marketing; DDM)のセッションについて備忘録的に簡単サマライズしてみよう。

DDMとは
DDMを簡単に説明すると、データで示された方向性に従ってマーケティングキャンペーンを構成することだ。
昨今ではただのデータではなくてビッグデータを活用したマーケティングを指すことが多い。
ビッグデータではこれまでのベーシックなデータ、例えば顧客の性別や年齢、居住地に加えて購買履歴、ソーシャルメディアでの活動といった様々なデータソースを活用する。

ビッグデータを使用するときの注意点としては、ビッグデータは相関関係を示すだけで因果関係を示してくれないということだ。
それも当然で、因果関係を調べるには様々な条件がコントロールされた環境下での実験を行わなければならない。
だが、相関性だけでも十分にマーケティングに有益情報を与えてくれる。

DDMの目的
DDMはどのような情報をマーケターに与えてくれるだろうか。
ケーススタディによると、DDMの主要なメリットは次の4つだ。

1. 機会を見つける
DDMで人々のインサイトを調査することによって、新たなビジネス機会を見つけ出す事ができる。
例えば、ある贈答用フラワーを扱っているEC事業者は、それほど親しくない友達同士が相手の誕生日に小さな贈り物をする習慣を見つけ、少額で花を贈ることができるソーシャルギフトを始めた。

2. トップラインを最大化する
売上を最大化することもDDMのメリットの一つだ。
まだ売上を上げられていないセグメンテーションに対してどのようなメッセージを送るべきかをDDMは教えてくれる。

3. カスタマーリレーションを深める
自社の商品を購入してくれた顧客をトラックするにはBtoBビジネスでは営業が訪問すればいいが、BtoCビジネスではアンケートなど手段が絞られていた。
だが、アンケートではサンプルが絞られているし、企業からのアンケートに答えているということでバイアスが掛かってしまう。
ここにソーシャルメディアをソースとした情報が追加されるともっと顧客の生の声が聞こえてくる。

また、TwitterやFacebookを活用することで、顧客へフォローすることもできるようになった

4. プロダクトディベロップメントに活用する
3.のカスタマーリレーションシップにも似ているが、ビッグデータを分析することで顧客のインサイトを得ることができる。
このインサイトは確実に正しいとは言えないのだが、少なくとも仮説を立てることはできる。
そのインサイトを製品やサービスの開発に活かすことで、より顧客ニーズにあった商品を世に送り出すことが可能になるのだ。


photo credit: mrflip via photopin cc

2013/05/25

グローバル最適されたニューヨークのサービスとローカル最適された日本のサービス


高級レストランでも庶民的なレストランでも、小売店でもコンビニでも、海外に出てサービスを受けると質の低さに驚かされることが多い。
かなり高級なレストランなのにナイフやフォークが投げ出されるようにテーブルに置かれたり、ミネラルウォーターをコップに注ぐようにワインをグラスへ注いだり、ガムをくちゃくちゃ噛みながらのレジ対応が目に付くのだ。

これは観光で訪れる人のみならず、長年現地に住んでいる人すらそう思うようだ。
いまカンファレンスで訪れている、アメリカの大都会ニューヨークでは尚更そう感じる。


とは言いながら、日本のサービスと比較してサービスのレベルが低いという文句をいうのは少し間違っている気がする。
海外で受けるサービスの不満を感じるとき、日本で生まれ育った人ならその比較対象は日本のサービスだ。
日本のサービス業は少しローカル最適化されすぎており、日本人のサービスに対するメジャーメントもローカル視点がすぎるので他国のサービスがみんな質が低く見えてしまうにすぎない。

例えばレジで「いらっしゃいませ」と挨拶してお辞儀をするのは日本では当たり前だが、この対応と比較してガムを噛みながら「Hi」ぐらいしか言わないニューヨークの店員を態度が悪いと思ってはいけない。
いらっしゃいませとお辞儀するのは、あくまでも日本の小売店というコンテクストの中において正しい行動様式であり、ニューヨークの小売店というコンテクストの中においてはただの奇異な行動だ。
コンテクストが違うのであればそもそもメジャーメントが変わってしまうので、厳密に言えば国家間、文化間での接客態度の比較は不可能だ。


とまあ、海外のサービスに文句を言う日本人の態度を少し諌めたのだが、そんな堅苦しい話はどうでもいい。
私が本当に気になっているのは、海外のサービスを受けて「やっぱり日本のサービスはいいよね〜」という予定調和的反応をする日本人に私は危機感を感じる。

日本のサービスは確かにガラパゴス化されていて、海外の人からも丁寧だと称賛を受けることが少なくない。
それは悪いことではない。

しかし、日本人が自国のサービスに対してのメジャーメントを海外に持ち込むことが違和感を感じるのだ。
日本人でもサービス満足できる飲食店というコンセプトのレストランを海外でオープンしたいのであればそれで構わないのだが、メジャーメントがガラパゴス化している限りその日本人は決してグローバルな視点を持つことができないということ。

かつてもてはやされた日本の製造業もどんどん存在感が小さくなっている。
この原因はグローバルな大衆向け製品を大衆が望む価格で生産できなくなったことにある。
高品質へのこだわりがあることは間違いではないが、高品質高価格路線企業は一つの業界に同時に5社も6社も存在できない。


高品質高価格のローカル最適されたメジャーメントも必要だが、グローバル最適されたメジャーメントも同時に使いこなせるスキルが、これから海外で活躍する日本人に必要なのではないだろうか。


photo credit: Gustavo Minas via photopin cc

2013/05/24

ソーシャルメディアビジネスの現実


TwitterやFacebook、Tumblr、mixi、foursquare、LINEにLinkedin。
数え始めるとキリのないこのソーシャルメディアの数々。
あなたはいくつのソーシャルメディアを使っているだろうか。
アカウントを持っているだけのものも含めたらかなりの数になるのではないだろうか。

ソーシャルメディアは今人々の生活に入り込み、まさに満開の時期を迎えているように見える。
欧米や日本だけでなく東南アジアでも多くの人々がソーシャルメディアを使いこなし(むしろ新興国の若者のほうが使いこなしている)、Facebookだけで世界の人口の1/6がソーシャルメディアに参加している。


私は人材系の会社で新規事業企画の仕事をしているが、その関係でニューヨークで開催されているソーシャルメディアのカンファレンスに参加した。
ソーシャルメディアはものすごい勢いで世界を席巻してきていて日進月歩で物事が進んでいるのでどれだけ新しいインサイトが得られるのかと楽しみにしていたのだが、ソーシャルメディア自体のビジネス化、そしてソーシャルメディアをビジネスとして使うことの難しさを目の当たりにした。

マネタイズの方法が制限されている

まずソーシャルメディ自体にはマネタイズの方法が1つ2つに限られているということだ。
ほぼ唯一かつ最大の方法が広告だ。

世界最大のFacebookでもマネタイズはほとんど広告に頼っている。
ニュースフィードに広告を挟んだり、その人の趣味嗜好やライフスタイルに合わせたコンテンツマッチング広告を載せたりと広告の手法にはあの手この手のイノベーションが行われているが、マネタイズの方法が広告の一本足打法であることには変わらない。

つい先日TumblrがYahooに買収されたというニュースがWEB界隈では大きな話題になっていたが、今のところソーシャルメディアを開発するアントレプレナーの目的は独立してマネタイズをすることよりも大手企業にバイアウトしてもらうことになっている。

ただ、いくつかのソーシャルメディアでは別のマネタイズを試している。
ニコニコ動画はユーザーからの課金で成り立っているし、LINEは広告ではあるものの企業からの固定収入を確立し始めている。



今のところ事業としてソーシャルメディアと関わるのはマネタイズの問題から難しいが、これからも目を離せいない領域でもある。


photo credit: Mukumbura via photopin cc

2013/05/22

NYの物価は高すぎる


仕事でアメリカ合衆国はニューヨークまで出張しているのでちょっと走り書き程度に。

しばらくマンハッタン島に滞在しているのだけれど、まーあ物価が高い。
ホテルは安くても$250くらいするところが殆どだし、まともに食事をしようとすれば一人$50くらいは当たり前のようにかかる。
銀座で働いているけれど、銀座と同等かそれ以上に高い。

特に驚いたのは朝飯に食べた、フレンチトーストにオムレツとチーズとベーコンをはさんだ、聞くだけでお腹いっぱいになりそうなサンドイッチだ。
量は日本では確実に2人前はあろうかというボリュームではあったが、100%オレンジジュースと合わせてなんと$16.5もしたのだ。
いくら銀座でも朝食でそんな値段になることはない。

つい最近の世界各国の物価比較でもまだ東京が1位になっていたけれど、マンハッタン島に絞れば東京より確実に物価が高いだろう。
こんな島に生きていたら、それはチップなしでは生活できないだろうなぁとアメリカのチップ文化に妙に納得してしまった。

photo credit: Werner Kunz via photopin cc

利益モデル14. ローカルリーダーシップ利益モデル その2


ローカルリーダーシップ利益御モデルの続き。
前回のエントリーでは、特定地域や都市で一気に店舗展開しローカルリーダーとなることでどのように利益を上げるかについて書いてきた。

参考: 

コンテンツ
  • ローカルリーダーシップ利益モデルとは (その1)
  • ローカルリーダーシップ利益モデルの実例

ローカルリーダーシップ利益モデルの実例
有力な全国チェーン展開企業は店舗を増やす中でローカルリーダーシップ利益モデルを活用してその地位を手にしているケースが多い。
一つの好例はスターバックスだ。

スターバックスは今年中にも日本国内で1000店を突破する予定だ。
名実ともにトップレベルの規模を誇るスターバックスは、1996年に初めて銀座で日本国内に出店して以来ドミナント出店で出店エリアを開拓してきた。

ドミナント出店とは、狭い商圏に複数店舗一度に出店することで競合を参入しにくくさせ、店舗が固まることで物流コストを下げる効果もある出店方式だ。
カフェという業態は脱サラで起業する人も多い参入しやすい業種だ。
だからこそ、ドミナント出店で商圏を飽和させながら出店するのが最も勝ちやすい出店方式なのだ。

また、あるエリアにポツンと単体て新しい店舗をつくってしまった場合、その店舗に納品するためだけにトラックを動かすことになり、非常に物流コストが高くなる。
店舗を一度に複数出店してしまえば、単純な話、物流の固定費はその店舗数で割った金額へと大幅に下げられることになる。

さらに、ある地域へまとめて出店することによりスターバックス店舗と看板をよく見かけることになるので、認知度アップへの効果もあっただろう。


実はスターバックスが日本でとった戦略と同じ戦略を別の企業も活用している。
それはセブンイレブン・ジャパンだ。

セブンイレブンもドミナント戦略を取ることにより店舗数と出店エリアを拡大してきた。
ちょっと注意深くセブン・イレブンの出店状況を確認すると、一つセブンイレブンを見つけるとほぼ確実に近場に別の店舗が見つかる。
非常に単純であるし、いまから新たな飲食業のチェーン展開をするとしても活用できる重要な戦略だ。


関連エントリー:
2013/5/19 「利益モデル14. ローカルリーダーシップ利益モデル その1
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 


2013/05/21

ドッグランは何故増えている?


ドッグランという言葉が当たり前のように使われるようになったのはここ数年のこと。
それに呼応するようにドッグラン施設が増えている。

特に最近増えているのはこれまで犬を連れて行かないのが基本だった施設だ。
例えば、ホテルや旅館、それからショッピングセンターのようなショッピング施設だ。
今でもペットはNGなホテルや旅館が大多数だが、一部のホテルや旅館ではペットと旅行できることを売りにしている。
また、ショッピングモールのような商業施設でもドッグランを設置するようになり、ペット連れの人が増えている。


ドッグランはなぜ増えてきているのだろうか?

私は犬を飼うことに対する価値観の変化に起因していると考えている。

近年、犬を飼う家庭の数は増加トレンドにある。
2004年にはその10年前よりも飼い犬の登録数が1.5倍に増えているという。
また、犬を飼うという行為に対しての定性的な変化も見られる。
昔は犬といえば外に放し飼いにしておくことが多かったが、昨今では小型犬ブームもあり室内で飼うようになり、服を着せたりトリミングにお金をかけて可愛がるように飼い主の行動が変化してきている。
犬を自分の子供のように可愛がる飼い主が増えてきたのだ。


なぜドッグランが増えてきたのかという問に戻ると、こうした犬の飼い主の量的、質的な変化からドッグランへの潜在的なニーズが高まってきていることが分かる。
すると、ホテルや旅館にドッグランを設置するのは犬を置き去りにできないがゆえに旅行を控えてきた飼い主を呼び込むためのツールであると想像できる。
また、商業施設にドッグランを設置するのは、集客のためと滞在時間を伸ばすためだと考えられる。
さらには顧客を商業施設のペットショップへ送客するために、ペットショップが運営しているケースもあるかもしれない。

photo credit: Sebastián-Dario via photopin cc

2013/05/19

利益モデル14. ローカルリーダーシップ利益モデル その1


スライウォツキー利益モデルの14番目は「ローカルリーダーシップ利益モデル」だ。
このモデルは、全国規模でシェアが高いチェーンであってもローカルでの経済性を獲得しなければ利益を上げられないことを教えてくれる。
全国展開を目論んでいる企業が、いくら全国シェアを伸ばしても利益があがらない罠を避けるために留意すべき利益モデルだろう。

コンテンツ
  • ローカルリーダーシップ利益モデルとは
  • ローカルリーダーシップ利益モデルの実例
ローカルリーダーシップ利益モデルとは
生活に密着したいくつかの業態、例えばスーパーやホームセンターのような小売店の利益はローカルでの経済性がモノを言う。

まず第一に原価の低減があげられるだろう。
小売店と取引するメーカー、問屋、サービスの納入業者は全国規模のベンダーだけでなく、その地域もしくは都市単位でのローカル企業も少なくない。
こうしたベンダーにとっては相手が全国でどれだけシェアを持っているかではなく、地域または都市でどれだけ店舗数が多く、取引量が見込めるかが値引きのポイントになる。
ローカル企業のとってはローカルでシェアの高い企業ほど値引きがしやすい。

次に地域の人々のマインドシェアを占めることによる経費の削減だ。
まず、ローカルで強いチェーンはその地域の人々のマインドシェアを握ることができる。
例えば、コンビニと聞けば北海道ではセイコーマート、関東ではセブンイレブン、関西ではローソンと答える人が多いだろう。

店舗を特定のエリアに集中することで、その店舗の看板や店名を目にすることが多くなる。
顧客の目に触れる回数が増えれば増えるほど、マインドシェアが高まる。
スーパーやコンビニのような商圏が狭く地域性が高い業態であればあるほどこの傾向は強いだろう。

これは、ある範囲の地域に1店舗しかない企業が同じ地域に100店舗持つ企業と同じ認知度を得ようとするには膨大な宣伝広告費に投資しなければいけないという事を意味している。
1店舗を持つのが全国の有名チェーンであったとしても、宣伝広告費は高くつくことだろう。
無論この認知度の差は宣伝広告費だけでなく客足に影響し、売上ひいては利益に大きな差をつけることになる。

経費の削減は宣伝広告費にとどまらない。
ある狭い地域に店舗数が集中していれば、店舗が分散している企業よりも物流コストを下げることができる。
また、小売店にパート・アルバイトの募集・採用はつきものだが、知名度があることによって応募者を集めやすいという利点がある。


説明してきたような原価と経費の削減効果は数%程度のものだろうが、利益率が10%を割ることが少なくない小売業界では経営安定性に与えるインパクトは少なくない。


次回は実例をいくつか見てみよう。


関連エントリー:
2013/5/21 「利益モデル14. ローカルリーダーシップ利益モデル その2」
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 


2013/05/17

利益モデル13. 専門品利益モデル


スライウォツキーの利益モデルの13番目、「専門品利益モデル」はニッチ商品によって利益を得ることを説明したモデルだ。
正直この一言で片付いてしまうくらいシンプルなモデルだが、もう少し詳しく見てみよう。

コンテンツ

  • 専門品利益モデルとは
  • 専門家利益モデルとの違い
  • ブロックバスター利益モデルとの違い

専門品利益モデルとは

専門品利益モデルが意味しているのは、すなわちニッチ商品で利益を得る仕組みだ。
ただし、ただのニッチ商品ではなくて、専門性の高い商品で競合がおいそれと類似商品を投入できない事情がなければならない。

競合相手が簡単に商品を投入できるのであれば高い利益率を保持し続けることはできないし、競合が参入する気も起きない程度の市場では利益の絶定額は小さすぎる。
だから、専門品利益モデルの商品は専門性が高いがゆえに競合が参入できないものでなければならない。
この専門性を担保してくれるのは、特許であることもあれば、自社の技術力である場合もあるし、法による参入障壁の場合もあるだろう。
このため専門品利益モデルの対象となるのはほとんど化学製品やその他高い技術力が要求される商品になるだろう。

専門家利益モデルとの違い

よく似た名称の利益モデルに、利益モデルの9番目「専門家利益モデル」がある。
専門品利益モデルとの違いは、その名の通り企業ぐるみで専門分野に特化するのが専門家利益モデルであるのに対し、商品レベルで専門品に特化するのが専門品利益モデルだ。
言葉遊びのようではあるが、ある企業が専門家企業であると同時に専門品で利益を上げることも少なくないことだろう。

余談ではあるが、ユニークでニッチな文房具商品で有名なキングジムという会社がある。
一番有名なのは「キングファイル」と「テプラ」だが、手書きメモを簡単にiPhoneに取り込める「ショットノート」やテキストメモ専用端末の「ポメラ」がある。
キングジムの商品はどれもニッチではあるが、模倣が難しい専門品ではない。
企業としても文房具を中心に扱っているが、特筆すべき技術や知見をもつ専門企業でもない。
しかし、強いていうならばニッチな文房具商品を世に出す専門企業と言えるだろう。

参考:
2012/10/30 キングジムの特化戦略

ブロックバスター利益モデルとの違い

利益モデルの6番目、「ブロックバスター利益モデル」を覚えておいでだろうか。
ブロックバスター利益も専門品利益と同じように、ごく少ない製品がその企業の利益の大半を稼ぎだすモデルという点で類似性がある。

参考:
2013/4/10 利益モデル6. ブロックバスター利益モデル その1

両者が異なるのは、ブロックバスター利益商品は一般大衆やマジョリティを占める人々を対象とした製品なのに対し、専門品商品はニッチなニーズを持った顧客を対象とした製品であることだ。

関連エントリー:
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 




ソリューションビジネスの大安売りに苦言を呈す



ソリューションビジネス。
この言葉は本来顧客の課題をヒアリングし、ゼロベースで顧客の課題解決に最適な方法論を探し出し、それを顧客に提供することだ。
ソリューションを提案する上で自社製品より他社製品が優れていればそれを提供するのが正しい。

だが今のソリューションビジネスのマーケットはどうだろう?
ほとんどソリューションと呼ぶに値しないソリューションが溢れかえっている。

ニーズをヒアリングして最適な商品を勧めるだけでソリューションと呼ぶ。
プロダクトに導入サービスを付けるだけでソリューションと呼ぶ。
顧客の課題をほとんど理解せずに自社のソリューションを提案する。
顧客へのヒアリングはソリューションに組み込むプロダクトを選定するためではなく、自社のプロダクトの設定値を確認するために行われる。

どの例も最近のソリューションビジネスと自ら銘打つ企業にありがちな例だ。
だが実際はどれも当然の営業行為やちょっとしたサービスにすぎない。


顧客に問題が無いわけではない
真の解決はいくつかのトライアルを経て時間をかけなければ簡単に見つけられるものではない。
だが、ソリューションを決める前のデューデリジェンスにお金と時間をかける企業は少なく、それらしい絵が描れていて安価なソリューションがあれば飛びついてしまうのだ。
これが結果的にソリューションマーケットの質を下げる遠因になっている。
もちろんソリューションビジネスプレーヤーが溢れかえり、安かろう悪かろうな企業が出てきたことも問題ではあるのだが。


と、まあソリューションという言葉の大安売りに噛み付いてみたのだが、ただの営業努力やちょっとしたサービスをソリューションと呼ぶことにビットが立っているのではない。
それをドンドン事業化してしまうエグゼクティブや意思決定の行われ方こそが問題だ。

薄っぺらいソリューションは、社内をごまかすことはできても顧客をごまかすことはできない。
しょぼいサービスや営業努力にお金を払う価値がないことを顧客はよく知っている。
だが、社内の意思決定者は、「これまでの古いビジネスモデルは捨ててこれからはソリューションビジネスで行きましょう!」なんて言われると、よく考えもせずに口車に乗せられてしまうのだ。

断言するが、十分にビジネスプランを考えられていないソリューションビジネスはまぐれで上手くいくことはない。
プレイヤーが多いから顧客の目は肥えている。
その会社にしかできない付加価値がなければ顧客はソリューションを評価しないのだから。

ビジネスプランのないソリューションビジネスはやってはいけない。
ソリューションビジネスで辛酸を舐めた者からの提言だ。


photo credit: Scott Adams via photopin cc

2013/05/15

利益モデル12. ブランド利益モデル


スライウォツキー利益モデルの12番めは「ブランド利益モデル」だ。
この利益モデルは誰にとっても、いかにも明白だろう。
誰でも高い価値を持ったブランドは大きな利益を上げる事を知っている。

では、いかにしてブランドは企業に利益をもたらすのか考えてみよう。

コンテンツ

・ブランド利益モデルとは
・ブランドの構築
・ブランドの毀損


ブランド利益モデルとは

ブランド利益モデルとは何か?
端的に言うと、ブランドがあることによって、その商品が本来の価値以上の価格で顧客に喜んで購入してもらえることだ。
本来価格とブランドのプレミア部分で上乗せされた価格の差額が全く原価のかかっていない利益になる。

ではそもそもブランドとはなんなのだろうか?
ブランドとは、その商品が提供する本質機能の付加価値よりも高い対価を顧客が支払う魔法と表現できよう。
その魔法は様々な形態をとる。

あるメーカーの製品は長年壊れることなく機能し続け、また万が一壊れたとしてもメーカーが誠意を持って修理してくれたとしよう。
この事実が多くの人の参照を受け、人々に頭の中にこのメーカーは信頼できる生産者であるという固定観念が生まれる。
これこそがブランドだ。

魔法の源は信頼できる製品にかぎらず、必ず時代の最先端を行くデザインであったり、イノベーションを追求し続ける態度だったり、顧客満足度を最優先する価値観だったりする。
どんなものであれ、ある製品やメーカーに関して顧客の頭の中に積み重なった一貫したイメージがブランドだ。


ブランドの構築

現代ビジネスにおける魔法、ブランドはどのように築かれるものなのだろうか。
つい前の項目でも述べたが、ブランドはある商品やメーカーに対して一貫したイメージを顧客の頭の中に作り出すことだ。

ブランディング手法が確立されていなかった過去においては、長年顧客に誠意を持って接することが一番のブランド構築法であった。
しかし、これは非常に時間のかかる努力だ。

ブランド構築の方法論が確立してきた現在は、雑誌やマスメディアへ短期間に連続して露出し、フラッシュのようにブランドイメージを顧客の頭に焼き付ける手法も往々にして使われるようになった。
以前のエントリーでも書いた、クロックスのブランディングもこれだ。


ブランドの毀損

ブランドイメージを顧客の頭の中に創りだすのは時間がかかり、困難だが、それに引き換えそのイメージを破壊するのは一瞬だ。
ブランドを構築する方法がいくつかあるようにブランドを破壊する方法もいくつか存在している。

分かりやすい例が商品の供給過多によるブランド毀損だ。
クロックスは最大の売上と利益をあげた翌年に、商品の供給過多によってブランドを毀損し、大きな損失を出した。

関連エントリー:
2013/5/13 ブランディングのすぐそこにある罠 クロックスが見た地獄 1
2013/5/14 ブランディングのすぐそこにある罠 クロックスが見た地獄 2

値下げによるブランド毀損もある。
ブランド品の売上が下がってきたからといって価格を下げるような愚策を打つと、さらにブランドの価値を下げ、本格的なブランド破壊につながる。

ブランドの扱い方については専門書を読んでいただきたいが、ブランドはそれだけ繊細で取り扱いに注意が必要だということだ。


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2013/05/14

ブランディングのすぐそこにある罠 クロックスが見た地獄 2



前回のエントリーから引き続き、クロックスのブランディングについて。

関連エントリー:
2013/5/13 ブランディングのすぐそこにある罠 クロックスが見た地獄 1

前回はクロックスがいかにして日本でクロックスのブランドを作り上げ、他のゴムサンダルの7倍の値段で売れるようになったかについて書いた。

せっかく気付き上げたブランドをクロックスは一度破壊してしまうという愚を犯すのだが、これはクロックスに特有な失敗ではない。
どのようなブランドも同じような失敗を犯す可能性があるという警鐘を鳴らすため、クロックスの犯したミスを探求してみよう。


ブランディングを破壊する罠

2002年の創業以来倍々ゲームで売上を伸ばし続け、2007年に売上8.5億ドル、純利益率で20%というサンダルの製造販売で驚異的な数字を叩きだしたクロックス。
だが、この時既にブランディングで大きな過ちを犯していた。

毎年倍々に売上を伸ばしていたクロックスは、全世界で急激に拡大するクロックス支持者へ製品を届けるために急いで生産ラインを拡大していた。
また、ラインナップを増やし、より多くのあらたなファンを取り込もうとしていた。
経営陣は毎年で製品の生産量を2倍にして売上を2倍にすることに成功していたが、これがいかに大変な努力だったのかは製造業の経験がなくともうかがい知れよう。


しかし、この急激な生産ラインの拡大がブランドを大きく毀損し、2008年には売上が7.2億ドルへ減少し2億ドル近い純損失を出すことになった。
もちろんリーマン・ショックの影響もあっただろう。
だが、それ以上に町中に溢れかえったクロックスのサンダルは、一瞬にしてクロックスのサンダルを「クールなサンダル」ではなくしてしまったのだ。
ブランド毀損の影響は後を引き、2009年には6.5億ドルまで売上を下げることになった。




このクロックスの失敗例にあるように、ブランド価値の高い商品あはスレッショルドを越える商品供給が行われると一気にブランドの魔法が解けてしまうことがあるのだ。
そしてそのスレッショルドを見極めるのがとてもむずかしい。
特に商品が絶好調で飛ぶように売れている間は。

クロックスほど見事に短期間でブランディングを成功させられる企業は少ないだろう。
だが、ブランディングに関わるマーケターは、クロックスの恐ろしいブランド毀損という事例を覚えておいたほうが良いだろう。


ちなみに、クロックスはわずか2年でこの窮地から再建に成功し、10億ドルを越える売上まで再成長していることを付け加えたい。

ブランディングのすぐそこにある罠 クロックスが見た地獄 1



ブランドというのは企業に利益をもたらす最も有効な無形資産の一つだ。
ブランド力が優れてさえいれば、同程度のノンブランド製品の数倍から数十倍で販売することが可能になる。
ユーザーの頭の中だけに存在している価値のために、ユーザーが喜んで正味価格の数倍の値段を支払う魔法なのだ。

皆さんも自分以外の人がこの魔法にかかってしまっている製品を幾つか思いつくのではないだろうか。
何百万円もするオメガやタグホイヤーの高級時計、ユニクロの4倍もするカルバンクラインのボクサーパンツ。
中でも私が不思議に思っていたのが、品質的には大差ないコピー品がホームセンターで5,600円で買えてしまうのに、4000円とか平気でしてしまうクロックスのサンダルだ。

7倍の値段で売れるクロックスのブランディング

クロックスのサンダルが忠実なブランド支持者を集めた理由には、ブランド価値の精密コントロールがあった。

まず、クロックスは機能的な価値が出発点であった。
クロックスの素材はクロスライトという高機能樹脂で作られており、体温に反応して足の形に合わせて変形するため立っている時の疲労を軽減する。
斬新なデザインで、ひと目でクロックスと分かるデザインであるだけでなく、アウトドアでもインドアでも活躍する機能的なデザインだ。

そこに、クロックスは情緒的な価値を追加した。
具体的には、日本では30代女性をメインターゲットとしてブランド価値を上げるマーケティング活動を徹底して行った。
なぜなら、日本上陸初期に購入者を調べたところ、機能的価値に反応した30代女性が実に購入者の50%を占めていたことが分かったからだ。
既婚率が高い30代女性は、機能的でありながら、他のゴムサンダルとはちょっと違うオシャレ感があるクロックスを選択したのだ。

この結果を得てクロックスは、30代女性をメインターゲットに据えてブランド価値を高めることを決めた。
そして、セレブ系のファッション雑誌にクロックスを掲載してもらうために、宣伝広告費をどんどん投入した。
一方、あまりセレブ感のない庶民的な雑誌は徹底的に嫌厭した。

こうしてクロックスは、類似品の7倍の値段で売れるブランドを創りだしたのだ。


しかしそんなクロックスもブランドの罠に嵌り地獄を見るのだが、これについては次回触れよう。

2013/05/12

利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その3


スライウォツキー利益モデルの11番目、「デファクト・スタンダード利益モデル」の続き。
今回はデファクト・スタンダード利益モデルの実例を見てみよう。

デファクト・スタンダード利益モデルの説明で散々Windowsを例にあげたので、今回の実例説明では別の事例を紹介したい。


コンテンツ


  • デファクト・スタンダードの定義 (その1)
  • 顧客ロックイン(ベンダーロックイン) (その1)
  • プラットフォーム化による不労所得資産化 (その2)
  • デファクト・スタンダード利益の実例


デファクト・スタンダード利益の実例

ARM社

ARM社はモバイルデバイスやその他の様々なプロセッサ(中央演算装置)の設計を専門としたIP(Intellectual Property)企業だ。
モバイルデバイスやスマート家電に使われるような組み込み型プロセッサの開発に優れており、高効率・低電力CPUの分野で大きな強みを持つプロセッサのアーキテクチャを開発し、その開発したプロセッサの設計図をライセンス販売しているのだ。
顧客はもちろんコンシューマーではなく、Appleやサムスンなどのエレクトロニクス製造業者だ。
インテルやAMDのような普通のプロセッサー製造企業は自社でプロセッサの開発と生産を行うが、ARMの場合はこのうち開発だけを担っており、プロセッサの設計図を製造会社にライセンス販売している。


ARMはモバイルプロセッサの設計開発のデファクト・スタンダード企業となっている。
このビジネスモデルはARM社にどのような利益をもたらすのだろうか?

ARM社の設計を採用したプロセッサはAppleのiPhone、iPadやAndroidのNexusなど、モバイルデバイスの多くのメインプレーヤーたちに採用されている。
昨今この市場は大きく伸びているが、Appleが伸びようがAndroidが伸びようが、両者に採用されているARM社はどのみち勝手に売れていくのだ。
しかも、ARM社のコスト構造はほとんどが研究開発費という固定費で、ほとんど限界費用が発生しない。
このため、モバイルデバイスのような伸びるマーケットに採用されていれば自動的に売上=利益が積み上がっていくという強力な利益構造を作り出している。

モバイルの急速な市場の拡大により、ARM社はこのビジネスモデルで約900億円の売上のうち営業利益が440億円と、50%に迫る凄まじい営業利益を上げている。


ARM社はどのように生まれたか

今でこそモバイルデバイスのプロセッサをほぼ独占し、スマート家電でもシェアを拡大する同社だが、ARM社のビジネスはどのように生まれてきたのだろうか。

ARMプロセッサは今から30年前にAcorn社のマイコンのプロセッサとして開発が始められた製品であった。
開発が進むうちにARMプロセッサはそれが搭載されているマイコンより人気が出てしまい、1990年にAcorn社のARMプロセッサ開発部隊がスピンアウトしてARM社が設立された。
ARM社はAppleとVLSIテクノロジーも資本参加しており、Apple初のパームトップ「Newton」などにもARMプロセッサが採用された。
こうした流れの中で、ARM社はモバイルデバイスに特化した高効率・低電力CPUとして専門性を高めてきた。


ARM社の設立の歴史からも分かるように、決してデファクト・スタンダード利益モデルというのはなかなか狙ってできるものではない。
Windowsはシェア拡大を目指し結果的にWindowsの帝国が生まれ、その中で独裁政治を行ないデファクト・スタンダード利益を享受している。
一方、iOSやAndroidは初めからプラットフォーム化を前提としてビジネスがデザインされている。
そして、ARM社は歴史的な流れでモバイルデバイス向けプロセッサの専門企業になることが定められ、ビジネスをリインベンションしてデファクト・スタンダード利益型の事業を行うようになったのだ。



関連エントリー:
2013/5/11 「利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その1」
2013/5/11 「利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その2」
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 



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2013/05/11

利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その2



スライウォツキー利益モデルの11番目「デファクト・スタンダード利益モデル」の続き。
その1ではデファクト・スタンダード企業がどのように顧客自社のエコシステム内にロックインするかについて書いてきた。

関連エントリー: 

今回のエントリーでは、デファクト・スタンダード企業が得られる戦略のオプションについて考察してみたい。

コンテンツ
  • デファクト・スタンダードの定義 (その1)
  • 顧客ロックイン(ベンダーロックイン) (その1)
  • プラットフォーム化による不労所得資産化
  • デファクト・スタンダード利益の実例


プラットフォーム化による不労所得資産化
デファクト・スタンダード企業がC(コンシューマー)にしろB(企業)にしろ、エンドユーザーから利益を上げるのは想像に易い。
事実上の標準になった製品は周辺製品とのエコシステムが生まれ、利便性が高まるので新たなユーザーを惹きつける。
また、別の製品に乗り換えるのは乗り換えコストが高くなるため、既存ユーザーの再購入意欲も高い。
これは前回のエントリーに書いた通りだ。

だが、事実上の標準を獲得した企業はもっと幅広選択肢を得ることになる。
それは、標準となった規格をプラットフォーム化し、そのプラットフォーム上で発生ビジネスに課税するがごとく利用料を得ることができる。

例としてiOSを引き合いに考えてみよう。
iOSはAndroidという強力な競合がいるので、モバイルOS業界のなかでデファクト・スタンダードという程の存在ではない。
しかし、iOS利用者数は全世界で数億人もおり、プラットフォーム化する上でのクリティカルマスとして十分な数存在しているため、iOSという市場でのプラットフォーム独占企業とも言い換えることができる。

AppleがiOS市場で手にした莫大な収益はどこから生み出されただろうか?
プロフィットゾーンはAppleが作成した有料アプリ(KeynoteやPagesなど)ではなく、他のモバイルアプリデベロッパーが販売した有料iOSアプリだ。
Appleは全ての有料アプリから30%の売上を徴収しているという。

一度デファクト・スタンダードを構築し、標準となった規格のプラットフォーム化に成功したならば、自分たちは手を動かさずともそのプラットフォーム上でビジネスを展開するパートナーたちが利益をあ上げてくれる。
パートナーたちはデファクト・スタンダード企業に上納金を収めることで顧客が集まる場所を確保できる。

プラットフォーム化は不動産のような不労所得を得るのと同義なのだ。


次回のエントリーではデファクト・スタンダード企業の事例を紹介する。

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利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その1


スライウォツキーの利益モデル、その11番目は「デファクト・スタンダード利益モデル」だ。
このモデルでは自社が業界のデファクトスタンダードになることで、様々な利益を獲得することを目標としている。
業界の標準ということは、業界のトップになる、もしくは業界で非常に重要な地位を占めることになるので、大手にしか関係ないと思われるかもしれない。
しかし、自社のポジショニングの定義の仕方次第では大企業でなくてもデファクト・スタンダード利益を活用して大きな収益をあげられる可能性を秘めている。

そんなデファクト・スタンダード利益モデルの秘密を解き明かしていこう。

コンテンツ

  • デファクト・スタンダードの定義
  • 顧客ロックイン(ベンダーロックイン)
  • プラットフォーム化による不労所得資産化 (その2)
  • デファクト・スタンダード利益の実例

デファクト・スタンダードの定義

この利益モデルがどのようなものかを知るにあたって、デファクト・スタンダードという言葉の定義が必要だろう。
デファクト・スタンダードとは、オフィシャルではないが事実上業界の標準になっていることを意味している。

相対する言葉としてはあまり知られていないが「デジュリ・スタンダード」という言葉がある。
オフィシャルなスタンダードということになるが、この場合は政府や何らかの承認機関から標準として認められている状況を意味する。
デファクト・スタンダードは、承認を何処かの機関から得たわけではないが、事実上は業界の標準になってしまっている状態を指す。

デファクト・スタンダードという概念は、様々な規格が必要とされる情報テクノロジーの発展とともに市民権を得るようになったもので、比較的新しい考え方だ。


顧客ロックイン(ベンダーロックイン)

デファクト・スタンダード戦略の一番基本的かつ重要な効果は、顧客をロックインすることにある。
別名ベンダーロックインとも呼ばれるが、その意味するところは一度デファクト・スタンダード製品を使い始めると他のベンダー製品に乗り換えるのが難しくなるということだ。
乗り換えが難しくなるのは二つの理由による。

・丸ごと入れ替え 
第一の理由は、デファクト・スタンダード製品から離れようとすると、一つひとつの製品だけでなくシステム丸ごと入れ替えなければならなくなることにある。
この例はパソコン業界の中のWindows OSを例に考えると分かりやすいだろう。

いまでこそモバイルOSやMac OSが台頭して来たが、1990年台から2000年台のコンシューマーPC市場はほぼWindowsマシンで支配されていた。
多くの便利なPCソフトや周辺機器はWindowsだけに対応していて、マイノリティー志向のMacユーザーやもっとマイノリティーのLinuxユーザーは周辺機器どころか普通に使うのだけでも多くの専門知識を必要とするデバイスだった。

WindowsユーザーがWindows PCからMacやLinuxに移ろうとしても、今まで使っていたソフトウェアや周辺機器が使えないことが多く、全て買い換えなければならなかった。
つまり、Windows PCから別のプラットフォームに乗り換えることは、システムを乗り換えるということを意味しているのだ。

しかもソフトウェアと周辺機器の操作方法を一から学び直さなければならなず、金銭以外の負担が大きい。
こうした複数のネガティブな要素が重なり、ユーザーがデファクト・スタンダードのプラットフォームから乗り換える障壁になっている。


・エコシステムが発達することによる利便性の強化
ユーザーがデファクト・スタンダードのプラットフォームから離れることをためらうのは、めんどくさいというネガティブな理由だけではない。
スタンダードを中心としたエコシステムが発達することにより、ユーザーの利便性が高まる。
その利便性ゆえにユーザーがデファクト・スタンダードに喜んでロックインされるということもある。

これもWindowsを中心としたエコシステムで考えると分かりやすい。
Windowsはあまりにも業界のスタンダードとして強すぎたので、どの周辺機器メーカーもソフトウェア開発会社も安心してWindowsプラットフォームにのっかることができた。
コンシューマー向けのソフトがWindows向けにはどんどん充実してきたが、MacやLinuxは利用者が少なく業務用利用も多かったため、コンシューマーが使いやすくて楽しめる土壌は育たなかった。

たとえタダでMacやLinuxをあげるよ、と言われても本格的にWindows環境から離れたい人はいなかっただろう。
今ではなく90年台〜2000年台の話だが。
それだけエコシステムが優越していると、デファクト・スタンダード企業はリテンション(顧客維持)に営業経費を掛けずとも、ユーザーはとどまってくれるものなのだ。


続きはその2へ。



関連エントリー:
2013/5/11 「利益モデル11. デファクト・スタンダード利益モデル その2」
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 



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リブセンスの祝い金の二つの意味

リブセンスは若干25歳にしてマザーズ上場を果たした村上太一社長で有名な、求人情報ウェブ「ジョブセンス」を運営している会社だ。
既存のアルバイト・パート向け求人情報誌の常識を打ち壊す、成果報酬モデルをベースにしたビジネスモデルで業界大手の企業に切り込んだ。

成果報酬のため成約率が低くなる代わりに、業界大手とはちがって営業社員を置かないことで販管費をかけないビジネスモデルで大企業の鼻を明かした。
なんとも昨今の起業家のお手本とも言えるような戦い方ではないだろうか。
この戦い方が見事だったもので、このブログでも以前取り上げたことがある。


リブセンスの面白いところは成果報酬の他にもう一つ、「採用祝い金」という仕組みがある。
中でも「採用祝い金」という制度があり、この制度がジョブセンスで二つの意味で重要な役割を果たしている。
この二つの重要な役割について取り上げてみたい。


1. 求職者の流入

これまでの求人メディアで、アルバイト・パートに応募して採用されると祝い金が出るなんてシステムがあっただろうか?
求職者にとって、求人メディアに対してほとんどこだわりはないはずなので、同じバイトであれば祝い金のあるジョブセンスから申し込みたいはずだ。
もし私が求職者だったら、他の求人メディアで見つけたバイトであってもジョブセンスで探し、ジョブセンスから申し込んだだろう。

採用祝い金は募集するバイトによって差があり、500円〜数万円というレンジがあるようだ。
たとえ数千円だとしても、求職者はジョブセンスを選ぶ可能性は高い。
求職者にたいして分かりやすいインセンティブを用意することで、求職者と掲載企業を集める。
これが採用祝い金の第一の目的だ。

ちなみに採用祝い金は別途リブセンスが採用企業に要求しているわけではない。
あくまでも成功報酬で企業からいただく金額から採用者へ分配しているだけなのだ。
他の求人メディアも同じ仕組で祝い金を提供することは可能だが、営業員という大きな販管費を抱えているから実現できない。
競合が真似できないこのスイートスポットを見つけたところが、村上太一社長のすごいところだ。


2. 報酬取りっぱぐれの防止

採用祝い金のもう一つの重要な役目は、報酬とりっぱぐれの防止だ。
掲載時点で報酬が発生する既存の求人メディアとことなり、ジョブセンスは採用決定時に企業から申告いただく必要がある。
だが、少なからぬ企業が報酬の発生を免れようと、採用決定を通知しないこともあるだろう。

採用広告の中で、メールや電話で採用申し込みをしようとしたアクションを記録する仕組みなども設けているが、100%正確ではないだろう。
そこで登場するのが採用祝い金だ。

採用祝い金は採用が決定した求職者が申し込むものだが、企業がジョブセンスへ採用決定の通知を怠ったとしても、採用者から採用通知の連絡が来る仕組みになっている。
採用企業が採用をひた隠しにしたいとしても、求職者が祝い金欲しさに採用の連絡をしてくる。
実にクレバーなしくみではないだろうか。

企業からの報酬と採用者への祝い金の金額は比例しているだろう。
だから、採用者があまり採用祝い金に魅力を感じない金額の場合はジョブセンスにとっても大した報酬ではない。
だが、報酬が大きい場合には祝い金の金額が大きいため、採用者が連絡してくる可能性が高い。
これも非常に良くできた仕組みだ。


リブセンスがもてはやされる理由は村上太一社長の若さだけでなく、既存大手の競合企業が非常に戦いにくい仕組みを作り出したことにある。
新規事業開発担当の私としても、このビジネスモデルを分析していると一種の美しさすら感じます。

2013/05/10

利益モデル10. インストール・ベース利益モデル その2


スライウォツキー利益モデルの10番目、「インストール・ベース利益モデル」の続編だ。
今回はインストール・ベース利益モデルの実例を幾つかあげて、よりこのモデルに理解を深めていただきたいと思う。
この利益モデルは汎用性が高く、いろんな分野で適用することができるだろう。

コンテンツ


  • インストール・ベース利益モデルとは
  • インストール・ベース利益モデルの実例


インストール・ベース利益モデルの実例

・電動歯ブラシ + 替えブラシ

これは前回でも説明したインストール・ベース利益モデルの実例だ。
電動歯ブラシと替えブラシがセットで初めて潜在的な価値を生み出す。
寿命の短い替えブラシの追加購入が必要不可欠なため、インストール・ベース利益モデルが成立する。

・プリンター + 換えインク

プリンターと換えインクの組み合わせも、電動歯ブラシと換えブラシの組み合わせと本質的には変わらない。
注目すべきは、プリンターと換えインクの利益モデルは代替インクによってプロフィットゾーンが侵食されているということだ。
インストール・ベース利益モデルは一度構築すると強力な利益創出の仕組みではあるが、ほころびが無いわけではない。
むしろ、リフィルは原価よりも高い価格設定がなされるものなので、常に代替製品によってチャレンジされ得ると認識しておくべきだろう。

・産業機械 + メンテナンス

リフィルやオプションパーツでアップセルをすることだけがインストール・ベース利益モデルではない。
この例のように、ベースとなる商品(この場合は産業機械)が売れることによって、必要不可欠な別製品(メンテナンス)が売れることがある。
これもインストール・ベース利益モデルの一例だ。

・開発プラットフォーム + 利用料・手数料

この組み合わせはこれまで見てきた例とは少し異なる。
この例が当てはまるのは、例えばAppleのiOSプラットフォームのようなもので、iOSという開発のベースとなる環境をアプリ開発会社へ提供し、アプリ開発業者がアプリで利益を上げるとそこから一定割合の使用料を回収するモデルだ。
iOSの開発環境そのものは無料で利用できるが、その環境で作られた有料アプリや有料アドオンは全て手数料の対象となる。
他のソフトウェア開発プラットフォームでもよく見られる利益モデルだ。


関連エントリー:
2013/5/7 利益モデル10. インストール・ベース利益モデル その1
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 

 


2013/05/07

利益モデル10. インストール・ベース利益モデル その1



スライウォツキーの利益モデル10番目は「インストール・ベース利益モデル」だ。
インストール・ベース利益モデルは、製品ピラミッド利益モデルやマルチコンポーネント利益モデルのような具体的な商品戦略に関わる利益モデルだ。
利益モデルの中でも、多くのプロダクトで使われている利益モデルであり、プロフィットゾーンに留まるための有効な打ち手であることが分かる。

早速、インストールベース利益モデルについて学んでみよう。

コンテンツ

   * インストール・ベース利益モデルとは
   * インストール・ベース利益モデルの実例


インストール・ベース利益モデルとは

インストール・ベース利益モデルは、ベースとなる土台の製品を購入してもらい、付属品や消耗品(リフィル)の販売で継続的に利益をあげ続けるモデルだ。
多くの場合、土台の製品だけでは機能を全うするものではなく、リフィルと合わせて使用することで初めて価値がある形で世に出されている。

身の回りにある分かりやすい例としては、電動歯ブラシだろう。
電動歯ブラシの振動を生み出す胴体がインストールベース(土台)製品で、ブラシの部分がリフィルだ。
電動歯ブラシの胴体だけでは言うまでもなく何の価値もないが、ブラシと組み合わせることで、歯を磨くという価値を生み出す。

ブラシは数週間から数ヶ月に一度は取り替えられるものなので、ユーザーがその電動歯ブラシを使い続ける限りブラシのリフィルを買い続けることになる。
こうしてメーカーは、消耗品から安定的・継続的に利益をあげ続けることができ、結果的にインストールベース製品の利益の数倍規模に及ぶだろう。


インストールベース本体製品は、恐らくその製造コストと比して安価に販売されている製品が多い。
私が愛用している電動歯ブラシも、本体プラス替えブラシ1本の値段が、替えブラシ2本と同じくらいの値段で販売されている。
とても本体と同じ程のコストがブラシにかかっているとは到底思えないが、我々はその製品を使い続ける限りリフィルを購入し続けなければならない。

また、リフィルだけではなくてオプション製品がラインナップされていることも少なくない。
電動歯ブラシでもスタンダードなリフィルだけではなくてホワイトニング専用ブラシなどのオプション品も提供されている。
オプション品を提供することで、共通のインストールベース本体製品を軸にもっと多くの顧客セグメントのニーズを満たすことができるのだ。


次回、インストール・ベース利益モデルの事例を深堀りしてみよう。


関連エントリー:
2013/5/10 利益モデル10. インストール・ベース利益モデル その2
2013/3/16 「エイドリアン・スライウォツキーのプロフィット・ゾーン経営」
2012/10/21 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 1
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 2
2012/10/22 「プロフィット・ゾーン経営戦略」ノート 3


 

 


2013/05/06

利益モデル9. 専門家利益モデル その2


スライウォツキー利益モデルの9番目、「専門家利益モデル」のその2だ。
前回のエントリーでは、専門領域に特化した企業がどのようにプロフィットゾーンへ留まるかについて説明した。
端的にいうと、特定領域の技術や知識に特化した企業の製品とサービスは、品質の面でもコストの面でも多角化企業を上回るケースが多い。
その結果、専門家企業は既存顧客の維持と新規顧客の獲得の面で多角化企業に勝り、利益をあげることができる。

だが、専門家として特定分野に特化していては、市場規模の壁によって簡単に成長の限界に達してしまうのではないか?という疑問が湧いてくる。
この問に対する答えを、ABB社を参考例に考えてみよう。


コンテンツ

  • 専門家利益モデルとは (その1)
  • 専門企業のグローバル・ネットワーク

専門家企業のグローバル・ネットワーク

ある製品や分野の専門家企業になるということは、自ずとその市場規模により成長の天井が定められてしまう。
また、市場自体が代替製品により侵食され、淘汰されはじめると、専門家企業ほどその被害を免れるのが難しくなっていくだろう。
専門家企業にはこうした弱点が存在しているのだ。

そんな専門家企業が専門家でありながら多角化する戦略を、スイスに本社を置くアセア・ブラウン・ボベリ社(ABB社)が体現している。

ABB社は世界100カ国以上に進出しており、日本円にして約40兆円という巨大な連結売上高を持つ多国籍重電メーカーだ。
同社は主に電力技術部門とオートメンション技術部門の2つの部門からなっており、電力技術部門は送配電関連製品の製造やソリューションの提供を行なっており、オートメーション技術部門は製造業者へ生産ロボットや制御システムを納品している。

ABB社は技術の発展に伴い複雑化する送配電会社や電力会社の要件に応えるために必要な技術を、自分たちで全て調達しようとは決して考えなかった。
それよりも買収で同じような重電メーカーを世界各国で買収し、それぞれの企業が特定の分野で特化することを求めたのだ。
つまり、世界中にABB傘下の専門家企業のネットワークを作り、顧客の要求に応える複雑なソリューションのパーツをそれぞれの専門家企業から調達したのだ。

この手法を取ることにより、ソリューションのそれぞれの要素(製品)は競合製品よりも優れている上に価格が安いという顧客メリットを実現した。
買収された企業は、原材料のグローバル調達により大幅にコストが下げられる代わりに研究開発費へ資本を回すことができる。
さらに、ABB社傘下に入ることによって営業コストとマーケティングコストを合理化することができる。
こうした製造原価と営業コストが下がったにも関わらず、製品品質も営業効率も上がったというわけだ。
顧客もこうした変化を喜ばないわけがない。


このように専門家企業のネットワークを構築することによって、プロフィットゾーンに留まったまま事業領域を広げていくことは十分に可能なのだ。
近年ではABB社のように子会社化して専門家企業のネットワークを構築することはさほど多くない。
だが、最近良く耳にする異業種アライアンスやベンチャー企業と大企業のアライアンスなどは、実は専門家利益モデルをなぞっていると言えるのだ。


2013/05/05

利益モデル9. 専門家利益モデル その1



第9番目のスライウォツキー利益モデルは「専門家利益モデル」だ。
この利益モデルは利益を稼ぐための具体的な戦略に関する利益モデルというよりは、戦略の基礎となる方針についての一つのモデルだ。
この利益モデルでその業界のプロフィットゾーンに向かうことが出来るかは分からないが、企業戦略のフレームワークとして知っておいて損はないだろう。


コンテンツ

  • 専門家利益モデルとは
  • 専門企業のグローバル・ネットワーク

専門家利益モデルとは

日本では戦後からバブルが崩壊するまでの好景気の間、大企業にとっては多角化戦略が利益を底上げするための基本的な戦略の一つであった。
多くの製造業者は単一製品から複数のラインナップを手がけるようになり、さらに複数の分野の製品を作り、やがて別の業界にも進出し巨大化していった。
こうして生まれたのがパナソニックや日立、ソニーなどの日本を代表するメーカーだが、この時代は多角化戦略がプロフィットゾーンに留まるための正解だったのだ。

しかし、一度バブルが崩壊して低成長が続くようになると、多角化はプロフィットゾーンではなくなった。
技術は進化し続け、顧客の要求はどんどん厳しくなるため、各業界の専業メーカーが総合メーカーを凌ぐようになってきたのだ。

この図式はパソコン業界がとてもわかりやすい。
パソコンが家庭に普及し始めた2000年頃、国内はNECや東芝、ソニーといった総合メーカーがしのぎを削っていた。
しかし、徐々にコンパックやDell、HP、レノボなどの外資系パソコン専業メーカーが市場に参入してくると、総合メーカーの利益は削り取られ、パソコン事業の縮小や売却を余儀なくされる状況に陥った。

専門家利益モデルでは、コンパックやDellのようにパソコンに特化して低成長、低収益業界でも利益を稼ぎだす。
専門家戦略をとった企業は、R&Dの投資対象を絞り込むことによって製品やサービスの競争力を強化すると同時に、販管費と原価を抑えることができる。
コスト削減による低価格化とR&D投資により高品質化された製品とサービスで顧客を満足させ、利益を稼ぐという正のスパイラルが生まれるのだ。

だが、市場規模が限られている以上、専門家企業は大きな拡大を狙うことはできないのではないだろうか?
この疑問にはスライウォツキーの原著「プロフィットゾーン経営戦略」にも例示されているABB社のグローバルネットワーク戦略に答えがある。


ABB社については次回のエントリーで。

美容エステ業界のクーポン中毒



あなたはグルーポンのようなクーポンサイトやホットペッパーのようなクーポン雑誌を利用したことはあるだろうか?
こうしたメディアを見ていただくとすぐお分かりになるだろうが、非常に美容・エステ関係のクーポンが多いのだ。
もちろん飲食店や英会話学校などの利用も多いのだが、美容・エステの方が多く目につく。

美容エステ業界がなぜこれほどクーポンを使用するのかについて考えてみよう。
そして、クーポンに頼りきりになることの副作用についても考察してみたい。


なぜ美容・エステ関連のクーポンが多いのか

この問いに答えるには、まずクーポンを企業が利用するメリットについて考える必要があるだろう。

企業がクーポンを利用するほぼ唯一の目的は、新規顧客の開拓だ。
八百屋やスーパーのような商圏の狭いビジネスであれば新規顧客の開拓はチラシが有効になるだろうが、美容やエステのような商圏よりも顧客層がキーになるビジネスの集客では集客のためのメディアが重要だ。
大手の企業であればファッション誌や女性誌に大々的に広告を出して集客をすれば良いが、中小企業は予算的にこれが難しい。
そこで中小企業が目をつけたのがクーポンだ。

クーポンサイトやクーポン雑誌では価格の安さを武器に多くの新規顧客を獲得できる可能性がある。
中小企業は広告に多大な投資を打つことは困難だが、顧客がクーポンを行使するたびに成果報酬ベースで広告宣伝費を捻出することは可能だろう。

美容関係のクーポンはどれも70%OFFが当たり前の状態で、さらに7割引きされた売上の半分をクーポンサイトなどに支払うことになるそうだ。
つまり、クーポンで集客した場合は正規価格の15%の売上しか入らない。
しかし、美容・エステは通常一度の来客で施術が全て完了することはほとんどなく、顧客の生涯価値(その顧客から得られる売上の総額)から考えるとこの広告宣伝費は高いものではない。

このため多くの美容・エステ関連の中小企業はクーポンサイトやクーポン雑誌を利用するのだ。


クーポン頼みの新規顧客獲得の副作用

美容・エステ関連中小企業にとって、クーポンというシステムは優れた新規顧客獲得ツールである。
だが、クーポンに頼りきることによるデメリットも厳然として存在する。

まず、他の多くの同業者もクーポンを利用することによる過当競争だ。
エステサロンや美容サロンは従業員数名の非常に小さな企業が多いため、どの企業も広告を打てるほどの宣伝広告費を捻出することが難しい。
このため、否が応にもこの業界ではクーポンを利用する企業が多くなり、競争が加熱してしまう。
そうすると値引き競争になり、どの企業もクーポン行使時の赤字は顧客の生涯価値で回収できるギリギリの金額に近づいてゆくことになる。


もう一つ副作用をあげるとするならば、新規顧客獲得をクーポンに頼りきることにより、自力で新規顧客を獲得する能力を失うことだ。
クーポンは網を張りたい顧客層に対して置網をセットしておくことが可能であり、比類ないほど便利な仕組みなのだ。
しかし、クーポンに新規顧客獲得を頼りきりになってしまうと、自分たちで新規顧客を開拓する意欲を失ってしまう。


いかがだっただろうか。
一時よりも下火になったネットメディアでも、いまだに美容・エステ関連のクーポンは非常に多い。
飽和状態に達した美容・エステ関連クーポンが、今後どのように変化していくのかを引き続きウォッチしてみたい。

2013/05/04

利益モデル8. 起業家利益モデル その3


スライウォツキーの利益モデルの8番目、「起業家利益モデル」の3つめのエントリーだ。
前回、前々回のエントリーで起業家利益モデルがどういった打ち手であるか、どうして有効なのかについて説明してきた。
このエントリーでは起業家利益モデルの実例を説明し、起業家利益モデルについての総括としたい。


コンテンツ

  • 起業家利益モデルとは何か (その1)
  • 利益に影響をもたらすベンチャー企業と大手企業の違い (その2)
  • 起業家利益モデルの実例

起業家利益モデルの実例

サーモエレクトロン社

スライウォツキーの原著、「プロフィットゾーン経営戦略」でも解説されているサーモエレクトロン社の起業家利益モデルの仕組みについて紹介しよう。

同社は1956年に創業し、さまざまな領域における科学的分析器具の販売やサービスを提供している企業だ。
2006年にフィッシャーサイエンティフィック社に合併されてサーモフィッシャーサイエンティフィックという企業になるまで、起業家利益モデルを実行することによって成長を続けてきた。

1980年台初頭、サーモエレクトロン社は業界の大手企業として認知され実績もあげていたが、おりからの不況で多くの顧客を失うという事態を経験した。
さらに、1967年のIPO以降、企業規模が大きくなるに連れて従業員が会社の成長を自分事として捉えなくなってきていることに感づいてもいた。

1982年、ハッソポーラス氏はこれらの問題を解消すべく、コア事業をスピンアウトして子会社化させるという手段を用いた。
これは、今一度事業運営を合理化し、顧客との距離感を縮めるための施策であり、また同時に社員に事業の成長を自分事として捉えてもらうための施策でもあった。

一般的な「スピンオフ」ではノンコア事業を子会社化し、その子会社の株を売却することでコア事業の資金を調達することを目的としている。
しかし、ハッソポーラス氏がとった「スピンアウト」では、子会社の株式を100%保持したままであり、資金調達を目的とした施策ではないことが分かる。
しかも子会社化したのはサーモエレクトロン社の屋台骨であるコア事業ばかりであった。
では何が目的だったかというと、社員に会社を運営する権限と責任を持たせ、起業家のように企業の成長を考えてもらうためだったのである。

ハッソポーラス氏は当時のサーモエレクトロン社の組織が肥大化し、組織運営に経営幹部や社員の時間が取られすぎていることに懸念を感じていた。
すべての従業員は皆もっと顧客との接点を増やすべきと考えていたが、現状では組織が大きくなればなるほど逆に逆に事態は悪化していったのである。
スピンオフ手法によって間接費のコストダウンはもちろん、社員の意識改革を狙っていたのである。


ソフトバンクモバイル社の例

日本の企業で例を探すと、ソフトバンクモバイル社は大企業にも関わらず起業家的な経営をしている企業の代表格と言えるだろう。
規制が多く馴れ合い状態だったモバイル通信業界でまずは価格革命で殴り込みをかけ、AppleのiPhoneをいち早く独占的に取り扱うことでユーザーを獲得した。
こうした動きはとてもベンチャー的で、馴れ合いでゆるゆる状態だったモバイル通信業界に一気に緊張を走らせた。

サーモエレクトロン社と異なるのは、サーモエレクトロン社がスピンアウトを行うことで各子会社に権限を移譲したのに対し、ソフトバンクは孫社長が意思決定の権限を留保し、全てのグループ会社のワンマン社長として君臨していることだ。
ソフトバンク内部の人間ではないので、実態は孫社長のワンマンなのかは分からないが外部から見ている限りではそう見受けられる。
そして、孫社長は自分をスピード感あふれるリスクテイカーなベンチャー企業として振舞っているため、あれだけ大企業になったにも関わらずソフトバンク全体がベンチャー企業のようなスピード感と躍動感を保持し続けることができる。


2013/05/03

利益モデル8. 起業家利益モデル その2


スライウォツキーの利益モデルその8、「起業家利益モデル」の続き。
前回のエントリーでは起業家利益とはどんなモデルか、どのような状況下で有効に活用できるかについて書いた。


起業家利益モデルとはなんぞやということについて簡単に振り返ってみよう。
これまでの利益モデルとは異なり、起業家利益モデルは具体的なビジネス戦術ではなく起業家的企業運営によって利益を捻出するモデルであった。
このモデルを有効に活用すると、(1)大企業が市場を占有しているシェアを奪う、(2)大企業が手を出せないリスキーな新市場に打って出る、(3)ローコスト運営で利益を生み出す、ということが可能になる。

このエントリーでは、上記であげたような利益をなぜ起業家利益モデルでは実現できるのか、大企業の官僚組織と起業家組織の違いという視点で解き明かしてみたい。

コンテンツ
  • 起業家利益モデルとは何か (その1)
  • 利益に影響をもたらすベンチャー企業と大手企業の違い
  • 起業家利益モデルの実例

利益に影響をもたらすベンチャー企業と大手企業の違い
大企業とベンチャー企業の違いは多々あれど、生み出す利益を違えるのはどのような特徴の違いによるものなのか考えてみよう。

組織構造の違いがもたらす間接費の違い
単純かつ明確な違いは、コスト構造の違いだ。
製品原価という意味では調達量が多く交渉力がある大企業の方が上かもしれない。
しかし、起業家は大企業と違い間接費をできるだけ抑えることで利益の嵩上げを図る。

大企業はしばしば立派な自社ビルや最先端のデスクセット、豪華装備の会議室などに過剰なコストをかける。
人材に対してのコストも同様で過剰なことが多く、年功序列や「配慮」のために余計なポストを作って人件費を高止まりさせている。

一方、起業家は古くて見た目は悪くても立地の良いビルを賃借し、もらってきた机や中古設備で利益に直結しないオフィスコストを抑える努力を怠らない。
人材についても、余計なポジションを極力作らずなるべく階層が少なく風通しの良い組織を維持しようとする。
良くも悪くも人件費は平均的に低く抑えられている。

こうした目に見えやすいコスト感覚の違いばかりではない。
官僚的大企業は意志決定を下すまでに何度も何度も大人数が参加する会議を繰り返し、満場一致で賛成できる妥協点を見つけ出すのに多大な時間を浪費する。
ここには言うまでもなく、何度となく繰り返された会議に参加した社員や経営幹部の膨大な人件費が浪費されている。
更に質より量が求められる資料作成に社員は忙殺され、修正が入るたびに経営会議事務局は校正と丁合いを行わなければならない。

一方で起業家組織では重要なデータやポイントだけ簡単にパワーポイントにまとめられ、あとはホワイトボードで説明するだけで良いのだ。
冗長な説明や事前の根回しは忌避され、一度の会議で結論は下される。

単純化しすぎたストーリーによる対比かもしれないが、こうした要素が積み上がって大企業組織と起業家組織の間には大きな間接費の違いが出てくるのだ。


コミットメントの違い
もう一つ特筆すべき起業家組織が大企業を上回る利益をあげる要因は、起業家組織のほうが社員一人ひとりが会社の成長に対して能動的であることだ。

大企業では個人が会社の成長に貢献してもそれが報酬とリンクする割合は低い。
たとえストックオプションを提供していたとしても、大企業であるがゆえに自分の努力が株価の上昇につながる割合は非常に低い。
これに対して、ベンチャー企業では自分の努力がダイレクトに会社の利益に反映されやすく、自分の努力で株価を上げてストックオプションで利益をあげられるかもしれない、という期待感をリアルに持つことができるだろう。

このような社員を鼓舞するインセンティブも起業家組織が利益をあげる土壌になっている。


社員の意識という点では、コミットメントについても触れなければならないだろう。
ベンチャー企業では必然的に社員の数が少なく、一人ひとりの社員が大きな裁量と責任を背負って仕事をしなければならない。
裁量と責任を背負って仕事をするプレッシャーには耐えられない人もいるかもしれないが、これは仕事に対するコミットメントとやりがいにつながる重要な要素だ。
それに、実戦は何にも勝る教師であるため、人材も早く成長するだろう。

官僚的大企業では反対にコミットメント不足の人材が蔓延している。
必要以上に階層が多かったり、権限が明確に規定されてしまっていることへの反動だろうか。
無論大企業の中にもコミットメントが高く、献身的に企業へ貢献しようとする人はいるが、こうした人々も社内政治にくたびれて燃え尽きがちなのも事実だ。


総括すると、起業家利益モデルは低コスト運営による利益のかさ上げと、社員の企業成長に対する意欲とコミットメントから大企業を凌ぐ利益をあげられるのだろう。
これが起業家利益モデルの目的であり目標なのだ。

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