2013/05/04

利益モデル8. 起業家利益モデル その3


スライウォツキーの利益モデルの8番目、「起業家利益モデル」の3つめのエントリーだ。
前回、前々回のエントリーで起業家利益モデルがどういった打ち手であるか、どうして有効なのかについて説明してきた。
このエントリーでは起業家利益モデルの実例を説明し、起業家利益モデルについての総括としたい。


コンテンツ

  • 起業家利益モデルとは何か (その1)
  • 利益に影響をもたらすベンチャー企業と大手企業の違い (その2)
  • 起業家利益モデルの実例

起業家利益モデルの実例

サーモエレクトロン社

スライウォツキーの原著、「プロフィットゾーン経営戦略」でも解説されているサーモエレクトロン社の起業家利益モデルの仕組みについて紹介しよう。

同社は1956年に創業し、さまざまな領域における科学的分析器具の販売やサービスを提供している企業だ。
2006年にフィッシャーサイエンティフィック社に合併されてサーモフィッシャーサイエンティフィックという企業になるまで、起業家利益モデルを実行することによって成長を続けてきた。

1980年台初頭、サーモエレクトロン社は業界の大手企業として認知され実績もあげていたが、おりからの不況で多くの顧客を失うという事態を経験した。
さらに、1967年のIPO以降、企業規模が大きくなるに連れて従業員が会社の成長を自分事として捉えなくなってきていることに感づいてもいた。

1982年、ハッソポーラス氏はこれらの問題を解消すべく、コア事業をスピンアウトして子会社化させるという手段を用いた。
これは、今一度事業運営を合理化し、顧客との距離感を縮めるための施策であり、また同時に社員に事業の成長を自分事として捉えてもらうための施策でもあった。

一般的な「スピンオフ」ではノンコア事業を子会社化し、その子会社の株を売却することでコア事業の資金を調達することを目的としている。
しかし、ハッソポーラス氏がとった「スピンアウト」では、子会社の株式を100%保持したままであり、資金調達を目的とした施策ではないことが分かる。
しかも子会社化したのはサーモエレクトロン社の屋台骨であるコア事業ばかりであった。
では何が目的だったかというと、社員に会社を運営する権限と責任を持たせ、起業家のように企業の成長を考えてもらうためだったのである。

ハッソポーラス氏は当時のサーモエレクトロン社の組織が肥大化し、組織運営に経営幹部や社員の時間が取られすぎていることに懸念を感じていた。
すべての従業員は皆もっと顧客との接点を増やすべきと考えていたが、現状では組織が大きくなればなるほど逆に逆に事態は悪化していったのである。
スピンオフ手法によって間接費のコストダウンはもちろん、社員の意識改革を狙っていたのである。


ソフトバンクモバイル社の例

日本の企業で例を探すと、ソフトバンクモバイル社は大企業にも関わらず起業家的な経営をしている企業の代表格と言えるだろう。
規制が多く馴れ合い状態だったモバイル通信業界でまずは価格革命で殴り込みをかけ、AppleのiPhoneをいち早く独占的に取り扱うことでユーザーを獲得した。
こうした動きはとてもベンチャー的で、馴れ合いでゆるゆる状態だったモバイル通信業界に一気に緊張を走らせた。

サーモエレクトロン社と異なるのは、サーモエレクトロン社がスピンアウトを行うことで各子会社に権限を移譲したのに対し、ソフトバンクは孫社長が意思決定の権限を留保し、全てのグループ会社のワンマン社長として君臨していることだ。
ソフトバンク内部の人間ではないので、実態は孫社長のワンマンなのかは分からないが外部から見ている限りではそう見受けられる。
そして、孫社長は自分をスピード感あふれるリスクテイカーなベンチャー企業として振舞っているため、あれだけ大企業になったにも関わらずソフトバンク全体がベンチャー企業のようなスピード感と躍動感を保持し続けることができる。


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