2013/07/31

業務設計のできる人、できない人の違い



新規事業を立ち上げるのならば、業務設計を行うスキルが必要不可欠だ。
業務設計とは、与えられたリソースであるインプットから要求されるアウトプットを出すまでのプロセスを、エラーが起きにくく、最短で実行でき、想定されるイレギュラーに耐えうるフローを描き出す作業のこと。とても複雑な作業であり、唯一の正解はない。状況が変わればそれに即したフローへとプロセスを組み換えなければならない。

スタートアップベンチャーなら事業設計も何もなく、CEOも社員も一緒くたに何から何までやればいい。しかし、企業の中の新規事業屋は常にフロントオフィスへ業務を渡すことを念頭に置いておかなければならない。業務を渡すということは、業務設計書を渡すと言うのに等しい。業務設計がなぜ新規事業開発に必要なのかはわかっていただけただろうか。

BPOやBPR、ITコンサルなどで顧客企業の業務設計を日常的に行なっている人からすれば簡単なことかもしれないが、新卒から営業一筋の営業マンや財務畑のカカシのような特定の職種にずっと携わっている人にとっては凄く難しいスキルであったりする。私が聞いたり目にしてきた人たちの中で、業務設計のできない人々はどんな人達なのか分析してみたい。もちろん、自分への戒めの意味が込められているのは言うまでもない。


鳥の目で全体を俯瞰できない

本エントリーの一番初めに業務設計の定義について書いた通り、業務設計のゴールは与えられたリソースで滞りなくあるインプットから要求されるアウトプットを出すことだ。業務を設計するポイントは、制約事項(人員など)を踏まえた上で要件(アウトプットまでの時間、要求品質など)のバランスを取ることだ。ここに業務設計のアートがあるといっていいだろう。

制限条件と要件のバランスを取るために必要不可欠なのは、鳥の目で全体を俯瞰する能力だ。ある業務のフローを作ろうとすると、あちらを立てればこちらが立たず、あちらを万全にすればこちらに漏れがでる、という複雑な知恵の輪を解いているような感覚に陥る。優れた業務設計者は、満たせる要求やコスト、そしてリスクのバランスを取って最大公約数的なフローを描く事ができる。

鳥の目で全体を俯瞰する能力に欠ける人は、一連のフローの全体最適を行えず、一部分だけ完璧な部分最適や、そもそもてんで話にならないフローしか描くことができない。

蟻の目で細部まで見ることができない

鳥の目で全体最適を行いひとつひとつのプロセスを緻密に並べたとしても、各プロセスの想定時間やコスト、歩留まり率などが全く想定と異なっていたとしたら、それは絵に描いた餅にすぎない。実際にその業務を走らせたら、時間通りにアウトプットされないわ、出てきたものは要求品質に満たないわで、大変なことになるだろう。これが何を意味しているのかというと、全体のフローを最適化できる鳥の目と同時に、一つ一つのプロセスをきめ細やかに見る蟻の視点も必要ということだ。

蟻の目では、一つのプロセスを手順レベルに分解してチェックできるだけの注意力が必要だ。例えば、発注書を送るというプロセスも蟻の目で細かく分解していくと、

共有データの発注書ファイルを開く

顧客の企業名、部署名、担当者名、電話番号、発注商品名・型番、商品単価、発注数、小計、税込合計額を記入する

A4サイズ横向きでカラー印刷する

購買部長に発注書の自社名の横に押印してもらう

共有データの送付状テンプレートを開く

日付、顧客名、時候の挨拶、同封物品名を修正してA4縦でモノクロ印刷する

社名入り封筒に宛名書きし、送付状と発注書を3つ折りにして封入し、糊付けして〆印を打つ

社内配送センターへ持って行き、経費チャージ先コードを伝え、切手を貼ってもらい発送する

と、このように数多くのステップが含まれる。さらに社名入り封筒が欠品していたら、という想定されるイレギュラー時の対応を検討し、郵便局の回収が何時なので発注プロセスを開始する最遅の時間は何時に設定する、というような詳細な設計を行う。この作業には蟻の視点が不可欠なのだ。しかし、「右手でマウスを握って右に2cm動かして右手人差し指で左ボタンを1回クリックして0.15秒以内にもう一度左クリック」というように細ければ細かいほど良いというものでもない。意味のある適切な粒感で行う必要がある。

物事の粒感を揃えることができない

蟻の目の例で見たとおり、細かければ細く見るほど精度の高い業務設計ができるかといえばそうではない。鳥の目が行き過ぎて、「購入要求→発注→納品」というフローは全く意味を成さない。どちらの視点も、その業務に要求される条件によって、適切な粒感という物がある。

例えば、全体最適を測るためにどの粒度の鳥の視点を持つべきかは、例えば業務に関わる部署の数や人数によっても変わってくるだろうし、インプットからアウトプットまでの時間制限や求められる品質にも左右される。

蟻の視点の粒度を決める要素は、例えばその文書の使用目的だ。ある経理処理に関わるフローを、経理に精通した人が見て作業に入れるレベルが求められているのか、ズブの経理素人が見て作業に入れるレベルが求められているかで、説明の細やかさが全く変わってくる。業務設計書に加えて手順書を作るという判断もあるだろう。

物事の粒度を正しく捉える能力はセンスもあるが、何より経験値が重要だ。こればかりはやってみて失敗して、そこから学ぶしかない。失敗すれば、「この設計書じゃわかんねー」とか責め立てられるさだめにあるのだが、謙虚に受け止めて次に活かす真摯な態度が必要だ。



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新卒採用と中途採用



大企業の人事からすると、新卒から育てた社員が中途採用しかしていないようなフリーライダー企業に取られると、一から投資して育てたのに、と残念に思うのだそうだ。
しかし、社員教育に投資したからといって、その社員の成長が教育投資のおかげだというのは少し違うのではないだろうか。

参考:
Business Media 誠: ビジネスパーソンの副業と、教育コストは誰が負担するのか問題について

大企業には大企業というタコツボの中でパフォーマンスを発揮する人が必要だが、それは中途社員には務まらない。

私も非常に大きな内資企業のグループ会社にいたので、巨大企業に何十年と新卒から働き続けている人々を見てきた。彼らの特徴は、皆一様に同じような考え方、判断基準を持っており、ツーカーの中で物事が自然と進んでいく。根回しという名のパワーゲームに長けているので、真っ向から意見が対立したりはしない。ある意味コミュニケーション効率が良いのかもしれないが、とにかくこうした文化で自然に生存できるのは新卒からその文化にどっぷり使っている人々だけだ。

こうした企業にとって、新卒を採用して一から育てるという苦労を買ってでたのは決して利他的な理由ではなくて利己的な都合によるものだ。村社会の暗黙の了解に等しいその企業の「常識」を、何も知らない無垢な社会人一年生に教えこませて疑いを持たせないように仕立て上げる。中途社員は「常識」を冷静に、批判的に見て楯突くかもしれないので危険極まりない存在なのだ。

かと言って、新卒社員は一人前の仕事ができるようになるまで時間がかかる。だから大企業は新卒社員のために大きな金と時間を投資する。
新卒採用メインの大企業人事は、こうして手塩にかけて育てた新卒が他所に取られるのが嫌なのだそうだ。特に新卒を全く取らないフリーライダー企業に。しかし、新卒大量採用大企業は自社の価値観に疑問を持たない人材を必要としているのに対し、フリーライダー企業はスキルと経験のある人を求めている。自社の価値観に違和感を感じ、スキルを持った人材が、その人を必要としている企業に採用されるのはwin-winではないか。

2013/07/29

宝島社の雑誌が媒体価値を上げたカラクリ


宝島社という出版社がある。
慢性的な不況にある出版業界の中で、ご多分にもれず宝島社も右肩下がりの決算を続けていた。2006年までは。
2007年、創業社長である蓮見社長が一番誌戦略を打ち出して見事V字回復させた。

東洋経済ONLINEより

一番誌戦略は非常に高い戦略性を持った一貫性のある打ち手だった。
雑誌の収益モデルは特殊で、雑誌自体の販売による収入と、雑誌に掲載する広告からの収入の2本の収入ラインがある。
雑誌ビジネスで利益を上げるには、雑誌の売上部数を増やす、販売単価を上げる、雑誌の製造コストを下げる、広告本数を増やす、あるいは広告単価を上げる、というどれかの結果に結びつく打ち手を打つことになる。
宝島社は雑誌のおまけを充実させると同時に雑誌を下げ、媒体価値(≒売上部数)を上げることで広告本数と広告単価を高めて利益をあげる戦略を採用した。


媒体価値を向上

雑誌の媒体価値とは、言ってしまえば広告出稿企業がその雑誌に広告を出すのに支払う対価のことだ。
宝島社の雑誌は、12誌中7〜8誌がトップシェアを誇るという。
つまり、広告主にとって宝島社の7,8の雑誌はもっとも広告料を高く支払う価値があるということ。

2007年まではほとんどトップシェア雑誌がなかった宝島社をここまでの地位に導いたのは、雑誌のおまけにあった。
しかし、おまけをつけたことだけでトップシェアを獲得できるほどの差別化につながったわけではない。
右肩下がりまっただ中の2004年当時から宝島社は雑誌におまけをつけていたのだ。


値下げと価値の高いおまけの両輪

おまけをつける戦術が花開いたのは、雑誌に価格弾力性を持たせて値下げしたこと、そして他社が追従できないクオリティの維持という両輪で他社の追従を跳ね除けたことにある。

どういうことかというと、前述のとおり一番誌戦略の本筋は広告本数と広告単価を上げることにあるので、雑誌の価格は原価が回収できる程度の価格で構わない。
それよりも価格を下げることで出来るだけ多くの人に購入してもらうことが重要であった。
なぜなら発行数を増やすことで広告を出稿する先の雑誌として価値が高まるからだ。
さらには、書籍も雑誌も返品コストが出版社にとって重い負担になっているのだが、人気を博して雑誌の返品率が下がれば損益分岐点もさがる。

おまけのクオリティで勝負

値下げは確かに販売数増の原動力になったが、価格を下げるだけで売れるほど雑誌業界は甘くない。
もう一つ付け加えると雑誌におまけを付けるだけで売上ナンバーワンに慣れるわけでもない。
なぜかというと、雑誌におまけを付けるのは競合他社が簡単にマネできる戦術だからだ。

宝島社のおまけがなぜ強力な差別化要素になることができたのかと言うと、宝島社のおまけは『雑誌価格よりも価値がある』という最も基本的かつ他社が対抗するのが難しい付加価値提供に成功したからだ。
宝島社のおまけ担当者は有名ブランドと製造工場の間を飛び回り、読者が驚くようなおまけを提供し続けた。
価値の高いおまけが雑誌をブランド化し、その価値の高いおまけを作るノウハウは宝島社の雑誌を差別化させる原動力になったのだ。

エイベックスの「"志"一括採用」は志望者と企業のマッチングを高めるか?

エイベックス・グループ・ホールディングス 採用ページから


日本国内で音楽分野のトッププレイヤーであるエイベックス・グループ・ホールディングス。
知名度や若者への人気もあり、優秀な新卒の採用にさほど苦労しそうにない会社だが、新卒一括採用をやめて「"志"一括採用」なる採用を行うことを自社HPで発表したという。


この制度の特徴は、29歳未満という年齢制限を除き、他に何ら制限をしていないことにある。
学歴も、職務経験も、国籍も関係なく、過去にエイベックスの選考に落ちた人であっても、29歳未満で2014年4月から働くことができれば誰でも応募することができるのだという。

目的は、新卒一括採用のような硬直化した一発勝負の採用試験では、実力はあるのに試験をパスできないような人を再発見したり、新卒大学生という枠からはみ出てしまった実力者を発見することにあるようだ。


選考プロセスも、SPIと面接3回のようなテンプレ新卒採用試験とは一線を画している。
つい先日の7/24にエントリーを打ち切り、まず7/29提出締め切りの書類選考を行う。
8月に説明選考会を行い、パスした人はエイベックスのビジネス講座を受ける。
9月に予選プレゼンを勝ち抜いた人がさらに9月中にビジネス講座を受け、9月か10月に改めて決勝プレゼンでふるいにかけられる。
さらに3ヶ月ほどインターンを経て、12月に最終プレゼンを行い、同月に内定が出るというスケジュールだ。

採用者数は明らかにされていないが、応募者の入り口が非常にオープンで待遇も悪くないので、応募者が多く倍率はとても高くなるのではないだろうか。


実力は見えるが負担の大きい選考プロセス

"志"一括採用の採用プロセスを見たときの一番初めの印象は、応募者への負担が大きいというものだ。
これだけ長い時間をかけて応募者の適性を見ることができれば、たしかに学歴や職務経験で切らずとも本人の適性を吟味した上で採用することができるだろう。

だが、逆に言えばそれだけ採用者の負担が大きい。
詳細は分からないが2ヶ月間のビジネス講座受講と3ヶ月のインターンがあり、時間的な拘束が大きい。
さらに、ふるいとなるプレゼンを3回も行うので、プレゼン準備にかける時間の負担も少なくないだろう。
もしも、最後の選考で落とされてしまった場合を考えると、なかなか笑えない。


受験者の負担という問題はあれど、現在の硬直した新卒一括採用の現実に一石を投じるという意味ではとても良いシステムだといえる。
ただし、今現在は通常の新卒一括採用の対象外だったり、あまり質の高くない受験者の集まりになってしまう可能性がある。
理想を言えば、ほとんどの企業がこのような長期に渡り受験者の適性を見抜けるような採用プロセスを適用し、本当に行きたい企業にだけ志願者が集まるような仕組みになれば、企業と受験者のマッチングは高まるだろう。
今後、エイベックスの投じた一石が輪を広げていくことを期待したい。

2013/07/28

情報が流れる順番


新しい事業を興すのなら、そのマーケットがどういう状態であるのか、競合他社の数や強さはどの程度なのか、などの情報をまず取得することが不可欠だ。
なので、事業立ち上げの最初のタスクはリサーチから始まるのが一般的だ。
起業の場合も同じで、経営者がその業界のことを調べ尽くしていないと、失敗に終わる可能性は高くなるだろう。

情報には流れる順番というものがある。
そして、一般的に私たちがビジネスに関連する情報を取得する新聞や雑誌というのは、実はこの流れの中では一番最後の方に属する情報ソースなのだ。
全ての情報に関して必ずこの流れが正しいという訳ではないが、一般的な情報の流れというものを紹介したい。


国の政策

まず一番最初に一番大きなインパクトが生まれるのは国の政策だ。
無論全てのビジネスが国の政策ありきで生まれる訳ではない。
だが、国の政策に合っているビジネスを展開しようとすれば大きな追い風を受けられるし、逆風になるようなビジネスは大きなハンディを追うことになる。
これは、日本国内の話だけではなくて、海外市場に進出するときも同じ事に留意しなければならない。

国の政策でここ数年で盛り上がっているのは、やはり次世代エネルギー関連市場だ。
国は様々な形で次世代エネルギー関連事業への支援を行なっているが、国がエネルギー関連事業への支援の意向を最初に示した時点でその時流に乗れていれば大きなメリットがあっただろう。
多くのビジネスチャンスは国始動で始まるのだ。


シンクタンクや総研

国の政策が文書やHPに掲載されて出回ると、次に反応するのはシンクタンクや総研という名がつくような総合研究所だ。
シンクタンクや総研は、新たな国の施策の情報をキャッチすると、その分野に関するレポートなどを作成する。


銀行や総研レポート

新たな政策がある程度一般化してくると、次に反応するのは銀行だ。
銀行はその政策の周辺事業への融資枠を増やすなどの形で反応する。

一方、総研は研究レポートを発行する。
一部数十万円する研究レポートは総研のメインの収益事業であり、そのレポートを必要とする企業が一定数以上なければならない。
このため、研究レポートは新しい政策や新しいマーケットがある程度浸透してからでないと発行されることはなく、国の発信からのタイムラグはかなり大きい。


新聞・雑誌、ウェブメディア

リサーチで情報調査をするときに一番最初にあたるであろう新聞や雑誌、ブログなどのウェブメディアは、実は最初の国の発信から大きなタイムラグがある。
タイムラグは大きいものの、その政策が意味するものやマーケットへのインパクトなどが有識者によって解説されていることが多いので、分かりやすく行動につながりやすい情報に加工されている。

しかし、他に先んじて時流に乗ろうとするのであれば、新聞雑誌の情報を待っていては遅い。
情報の流れる順を遡り、それがビジネスにどういったインパクトがあるのかを解釈して対応しなければならない。

2013/07/27

社会課題解決の鶏と卵



新たな事業を打ち立てたいという動機の一つに、社会問題を解決したいという高い志もあるだろう。
社会問題を解決するような事業をしたい場合、ビジネスモデルを考える上でとても難しい問題に出くわす事がある。
それは、クライアント(直接の顧客)とカスタマー(顧客の顧客)がある場合、どちらの課題を初めに解決すべきかという判断だ。

そもそも社会問題が発生しているということは、クライアントとカスタマーの利害が一致していない状況であるということだ。
解決したければ両者の課題を解決する必要があるのだが、どちらのペインを先に取り除けばマイナススパイラルが正のスパイラルに変えられるかという判断が難しいのだ。


分かりにくいので具体例をあげよう。
女性雇用のM字カーブ(10代後半から20代前半の雇用率が高く、子育て世代の女性雇用率が下がり、子育て完了世代の女性雇用率がまた上がる現象)を解決したいとする。
解決したいのは子育て世代の女性をどうやって就業させるかという問題だが、そのためには企業に対していかに子育て世代の女性の採用に魅力を感じてもらうかがキーになってくる。
だが、ここに大きな負のスパイラルが存在する。

企業の立場からすると、子育て中の女性には短い就業経験しかなく、スキルがないためスキルを必要とするポジションには採用しづらいと感じていることが多い。
一方、子育て中の女性からすると、スキルが必要なポジションに採用されないからスキルが身につかず、簡単な事務仕事にしか採用されないと感じている。
どちらの立場の意見も尤もなことで、卵か先か、鶏が先かの議論になってしまう。

一網打尽にこの状況を解決するのは恐らく難しい、というか双方の利害が複雑に絡まっていて、一撃必殺のような解決は不可能だと言っていいだろう。
だが、絶望することはない。


こういう時は、部分的な改善であっても一番効果がある改善案からまずは実行していく。
例えば、コールセンターのようなビジネスは子育て世代の女性と親和性が高い。
他者とのコミュニケーションに長け、相手を慮って物腰の柔らかい対応が出来る人が多いからだ。
こうしたターゲットカスタマーを採用しやすいビジネスを始めて、そこから採用した人々のスキルアップを手助けし、そこでさらに専門性の高い仕事をしてもらうなり、別の会社へ転職するなりして支援すればいい。


志高く、難しい問題を解決しようとすればするほど、問題は複雑でベストな解決策が見えない。
そんな時は、まずベストではなくても状況を良くするベターな事業を始め、そこからもう一つ上のステップの課題解決を狙っていくしかないだろう。


photo credit: Moosicorn via photopin cc

2013/07/25

コスモス薬品の正攻法は綺麗な財務諸表に現れる




ドラッグストアは競争の激しい業界の一つだ。
日本国内どの地域にもその地場で強いチェーン店のドラッグストアがある。

コスモス薬品は、九州に根付いたドラッグストアのチェーン店だ。
売上高は3300億円で、マツモトキヨシ、サンドラッグの1位2位につ次ぐ3位集団5社の一角を占めている。

コスモス薬品IR資料

コスモス薬品は九州で培った低コストオペレーションによる安売りを武器に、他の3位集団競合他社を勢いで圧倒している。
直近5年では毎年約50店舗以上増やし、毎年10%以上店舗数を増やしている。
週に1店舗オープンしている計算だ。

店舗数も売上も大きな成長を示しているが、その戦略はとてもシンプルなドミナント出店戦略だ。
急拡大を目指すときにありがちなM&Aを使った店舗網拡大手段は決して取らないのだそうだ。

ドミナント出店戦略は、米ウォールマートやスターバックスが採用した出店戦略で、知っている人も多いかもしれない。
チェーン店はある狭い地域で自社チェーン店舗の商圏が重なるくらい多くの店舗数を、短い期間で一気に出店する戦略だ。
コスモス薬品も自社チェーンの店舗間の競合をあえて引き起こしてでもドミナント戦略を実直に実行しているのだと言う。

その目的は、第一に物流コストを下げること。
ある地域に固まって店舗があれば、物流トラックは離れた店舗を回るよりも効率よく配送することができ、コストが下がる。

次に、店舗自体の宣伝効果が高まる。
都内ではスターバックスが一駅に何店舗も出店していることを発見する。
それだけ店舗数が多くなると、店舗の看板自体に宣伝効果が生まれるため、宣伝広告にさほどお金をかけずとも広告効果を得られる。
チラシのコストを下げる効果もあるという。

コスモス薬品IR資料

M&Aでの拡大と違い、ドミナント戦略で地道に力をつけてきたコスモス薬品の財務諸表は、それを反映してとても健全な状態を示している。
店舗数推移に近い比率で売上高も伸びているが、それに合わせて経常利益も同じ水準を保って伸びてきている。
更には、フリーキャッシュもやはり同じ水準で伸びてきており、拡大すればするほどキャッシュも増えて出店余力が高まるという好循環に入っている。


M&Aであればもっと速いペースで一気に拡大できたかもしれないが、反動でキャッシュフローの流動性が落ちたりして成長が一過性になってしまう場合もある。
コスモス薬品の成長は、まず真っ当な拡大戦略があるのであれば、M&Aのような劇薬に手を出す前に徹底的にその戦略を推敲すべきである事を示している。

ドミナント戦略の関連エントリー:

遅れる日本のグローバル化

世間ではグローバル化を急げ急げとは言われているけれど、企業や個人レベルで日本のグローバル化の遅れに危機感を感じている人はとても少ない。
無論、グローバル化は善で、ガラパゴス化は悪だと二元論で断ずるのは正しくない。
だが、少なくとも営利企業として、あるいは営利企業の一員として社会に関わっていくのであれば、グローバル化は避けられないことは誰もが理解しているはず。

具体的に日本企業のどういった部分のグローバル化が遅れているかというと、ほとんどあらゆる企業においてインバウンド(外から内へ)とアウトバウンド(内から外へ)の両方が不足している。


まずは外から内へというインバウンドのグローバル化を考えてみよう。
新規事業開発を行なっている私が一番最初に思い当たるのは、新規事業のパートナーを選定する際に、自然と国内以外の企業は候補から外れているのではないかということだ。
いろいろな要素を検討してみた結果、コミュニケーションコストが高いので国内企業を選定したというのなら分かる。
だが、ほとんどの事業開発者は海外企業をパートナーとして検討すらしないのではないだろうか。

これはビッグノーノーだ。
パートナーが英語圏、もしくはグローバルカンパニーであったほうが事業のスケーラビリティが圧倒的に高い。
英語で規格化されている製品やサービスは、当然ながら日本語規格の商品よりもはるかに多くの国でそのまま投入できる可能性が高い。
そして、英語という世界共通語とITを活用してリアルタイムに世界中へマーケティングやセールスを行い、そのフィードバックを受けてビジネスに反映することができる。
世界で成功したいなら、グローバル企業をパートナーとするのは必須条件だろう。

ここで、日本マーケットに進出してくるグローバル企業に対する防衛は必要だが、世界にわざわざ出ていかなくても日本マーケットでやっていける、という反論もあるかもしれない。
しかし、今後数十年後そのマーケットがそのままの形で存在している保証なんてあるのだろうか。
自分に都合の良い未来を想像して何もしないのは、まさにアリとキリギリスのキリギリスだ。


勇気を出して海外企業と初めてやり取りしても、恐らく商習慣と圧倒的な差異を感じて上手くいかないのではないだろうか。
その上手く行かなささえも学びの対象で、次回のグローバル企業との交渉に活かすべき教訓となる。


次に内から外へのアウトバウンドを考えてみよう。
日本企業の問題点は、海外への情報発信不足だ。

日本の中小企業、特に精密部品の製造業者は世界に誇れる技術を持っていると言われているが、世界に自社製品を知ってもらうために英語ホームページを用意している企業が少ない。
日本企業と取引をしたい、アライアンスを組みたいという海外は結構多いのだが、英語で情報開示をしている日本企業が少ないためそもそもパートナーを探すことができない、という悩みを抱えているという。

ホームページの翻訳程度なら大してお金をかけずにできるはずだ。
それでも英語ホームページを持たないのは、海外企業から取引を希望されても困るという消極的な態度からだろう。


海外企業との取引のハードルが高いのは事実だ。
送金手数料は高いし、英語で契約をドキュメントするのも大変だし、ビジネスの進め方も異なる。
そういった海外企業との取引を躊躇する真っ当な理由もあるが、日本企業が海外とのやり取りを拒む一つの理由はやはり英語アレルギーだろう。

日本人のビジネス英語論はいたるところで語り尽くされているので今さら私がどうこう言うつもりはない。
ただ、英語でのビジネスコミュニケーションを恐れていても何も始まらない。
最初はお互いに通じなくて変な空気になったりするかもしれないが、それを身振り手振りや図を書いて解決するのも必要なスキルだし、立派なコミュニケーションだ。
とにかく失敗前提でもいいからコミュニケートすることが大切だ。

Volvoは世界中で、社内公用語は'English'ではなくて'Bad English'だそうだ。
これから初めて世界に出る企業は、'Bad Bad English'の心意気で行こうじゃないか。

2013/07/24

他とは違う喫茶室ルノアールの価値提供


カフェでも喫茶店でもラウンジでもない「喫茶室」ルノアール。
最近流行りのシアトル系カフェやドトールやベローチェのような比較的安価なカフェとも違う、独特の存在感を示している。
スターバックスのような綺羅星のごとき企業ではないが、独特の渋みのあるビジネスで他の競合カフェ・喫茶店と差別化している面白い企業だ。


なぜいまさら創業から49年目となるルノアールを取り上げたかというと、最近、といっても数カ月前に私が引っ越した今の家の近所にルノアールがあるのを発見したからだ。
今までにも1,2度行ってみたことがあったのだが、何となくおっさんの喫茶店という印象しかなかった。
だけどせっかく近所に引っ越してきたという縁もあるので久しぶりにブラっと寄ってみることにした。
このブログを書くために愛用のMacbook Airを持って。


作業のための空間

そんな訳で久しぶりにルノアールに来てみて初めて、なぜルノアールが一等地にばかり長いこと店舗を構えることができるのかを理解したのだ。
ルノアールは黙々とパソコンで資料を作るなり、商談をするなり、読書をするなり、お客が何らかの作業に徹する場所として明確な意味を持った喫茶”室”だったのだ。

私が立ち寄った時にも本を読んでいる人や、パソコンに向かって作業をしている人たちばかりであった。
そんな人達ばかりだから大声で話している人もおらず、また、店員も不必要に歩き回らないので落ち着いて作業できる。
私もブログの原稿を書くのに随分はかどった。


首尾一貫したビジネスモデル

ルノアールのビジネスモデルは他の喫茶店と特に違いがない、一般的な喫茶店のビジネスモデルだ。表面上は。
しかし、バリュープロポジション(価値提案)が明確で、全ての要素がそのバリュープロポジションを支持するために存在している。

ゆったりとしてクッション性の高いソファーやチェア、少し照度の低い証明、静かなジャズなどのBGM。
そのどれもが、ゆったりとくつろいだり作業したりする空間としてのルノアールを演出している。

一番感心するのは店員の接客だ。
前項でも書いたように、店員が早くお客を返そうという素振りをおくびにも出さない。
それだけでなく、定期的に冷たい水と暖かいお茶を運んできてくれる。

だが、私がもっとも感心したのは、店員の静かで大人しい接客態度だ。
ルノアールの店員の接客は、他のカフェチェーンだと恐らく落第点を付けられるであろう大人しさなのだ。
しかし黙々と作業に興じるお客さんたちの中にあって、元気な接客は不必要。
店員がテキパキと活発に接客をしてると、なんとなくゆっくり過ごしにくくなるだろう。
だから、この接客スタイルがルノアールには大正解なのだろう。


一人ひとりのお客の滞在時間が他のカフェと比べると大幅に長いであろうルノアール。
残念ながら回転率は競合と比較して低い数字だろうが、回転率の悪さを価格に転嫁している。
ホットコーヒーの価格を比較すると、スターバックスの6,7割増と非常に高い。

だが、この価格設定もまたルノアールのバリュープロポジションに貢献しているのが見事だ。
見た目の価格がとても高いので、大声でおしゃべりするような「子供」は寄り付かず、静かに空間を満喫する「大人」が集まるのだ。
あらゆる要素を「大人がくつろいで黙々と作業に興じる空間」という中心的価値観に照準を合わせて配置すると、自然とそれぞれの要素が正の循環を生み出すという好例だ。


カフェでも喫茶店でもない「喫茶室」というネーミングには、ここはコーヒーを飲むためだけの場所にあらず。作業のためのスペースです、という意味合いが込められている。
長年利用者の期待に応え続けていることは、財務指標に現れている。
毎年非常に安定した売上高をキープし続け、経常利益も安定し、新しい業態に投資してチャレンジし続けている。

設立から約50年の老舗ながら、客としても、ビジネス解析対象としても興味深い企業だ。

2013/07/22

大手参入がクラウドファンディング業界に与える変化 2



今Web界隈では最もHotな話題の一つであるクラウドファンディング(長いので、以下「CF」)。
2回に渡ってこの新しいマーケットと、このマーケットに起こりつつある変化について考察してきた。

関連エントリー:

本エントリーでは、既に大きな顧客ベースを持つ企業が参入した場合にCFのビジネスモデルを質的に変化させる可能性について思い当たったことを書いてみたい。

ビジネスの質的な変化

数百万人以上の巨大なユーザーベースを持つ企業がCFマーケットに参入したとしよう。
CFプラットフォームを提供している企業は小さなベンチャー企業ばかりなので、大きなユーザーベースを持つ参入企業は強気に総合系CFプラットフォームで仕掛けてくる可能性が高い。
総合系CFプラットフォームとは、特定の分野に企画を絞ったりしない、なんでもござれ型のCFプラットフォームに私が便宜的につけた名前だ。

大手の参入が活発化すると、既存プレーヤーが特定分野に特化・ニッチ化することで生き残りを図るであろうことは前回書いた。
さらに、ニッチ化したCFプラットフォームが質的変化を遂げるのではないかと私は予想している。


CFのビジネスモデルを単純化すると、プラットフォーム上で企画者が企画をプレゼンし、出資者から資金を集め、企画実行を通して変化したモノをリターンとして出資者へ返すビジネスモデルだ。
リターンとして出資者へ提供されるものは、出資額プラスアルファの金銭リターンであったり、感謝の粗品であったり、その企画が達せられることによる社会の変化であったりと、多様である。
このリターンに注目してビジネスモデルを最適化することによって、あたかも新しいビジネスモデルであるかのようにCFは変化するだろう。


例えば、勉強会や講演会のCFプラットフォーム。
勉強会を主催したい人がCFプラットフォームを使って自分の企画する勉強会を提案する。
その勉強会に興味がある、参加したいという人は出資という形でその講師を支援する。
十分な資金と賛同者が集まれば、無事勉強会を開催できるというわけだ。

講師はお金と受講生をCFプラットフォームの力を借りて集めることができる。
しかも、自分が主催する勉強会を開催する前から反響を得られるというメリットもある。


他にも、サブスクリプションコマースのプラットフォームという発展の仕方もあるかもしれない。

ご存じない方もいるかもしれないので、サブスクリプションコマースについて国内で成功している『SAKELIFE』を例に簡単に説明する。
ユーザーはSAKELIFEに毎月数千円支払い、代わりにSAKELIFEが選ぶオススメの酒を数本、毎月ユーザーへ届けるというサービスだ。
日本酒にあまり詳しくないが、これから嗜みたいユーザー、あるいは日本酒をよく飲むが、新しい日本酒と出会いたいというユーザーのニーズに応えるサービスだ。

CFのビジネスモデルは、サブスクリプションコマースとよく似たビジネスのフレームワークをしている。
ユーザーはいくらか資金を拠出し、企画者が企画(選定)し、実現したリターン(オススメの日本酒)をユーザーへ返す。
この仕組をCFプラットフォームに移せば、例えば田舎の農家がCFプラットフォームを通じて毎月資金提供を受け、出資者へ毎月新鮮な野菜を送り返すというビジネスが実現できる。
農家の収入も安定するし、出資者も安価に新鮮な野菜を食べることができる。
win-winかつ長期的な支援ができるという、理想的な仕組みなのではないだろうか。


クラウドファンディングの新しさは、目標や企画はあるけれど資金を集める方法が分からない個人を支援できる点にある。
企画もあり人脈もあって自分で資金を集める方法を知っている人はベンチャー起業なりNPO起業なりすればいい。
だが、良い企画と実行力を持っていても資金を集める方法や賛同者を集める方法を知らないがために実現できていないことが、まだまだ世の中には多いのでないだろうか。
そんな個人をエンパワリングしてくれるのがクラウドファンディングという仕組みだ。
私は社会的にも経済的にもプラスのインパクトを持つクラウドファンディングという仕組みに大いに賛同するし、とても期待している。 



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2013/07/21

大手参入がクラウドファンディング業界に与える変化 1



前回のエントリーでも書いたが、クラウドファンディング(長いので、以下CF)は恐らく今年から来年にかけて大きな発展を遂げるであろう新進のWebビジネスである。
今はプレーヤーがスタートアップベンチャーばかりだが、これからサイバーエージェントを始めとする大きなユーザーベースを持つ企業が参入し、マーケットが大きく変化するだろうと私は見ている。

参照:

本エントリーでは、大手参入によって起こるであろう変化を考えてみたい。


細分化

前のエントリーでも触れたが、現時点で日本国内だけで両手に余るCFプラットフォームが存在している。
まだ100億円以下である日本国内のマーケット規模を考えると随分多い。
これはCFプラットフォームが、Webシステムを組めさえすれば簡単にスタートできるサービスであることに起因しているだろう。

だが、一部のプラットフォームを除くと、どのCFプラットフォームも特定の分野に特化していない総合的なCFサイトになっている。
無論、経営者の方針や得意不得意があってか芸能人の企画が多くなったり、東日本大震災復興系の企画が多いなど、なんとなく自然な住み分けができてきている。


サイバーエージェントのような大手が参入してくると、いま総合CFプラットフォームとして定着しているプレイヤーがしだいに特定分野に特化され、細分化されていくのではないかと考えている。
サイバーエージェントは少なくとも百万人以上のアクティブユーザーを抱え、ユーザーの属性や志向も多岐に渡っているため総合系CFプラットフォームに向いている。
企画を提案して出資を募る側はできるだけ多くのユーザーが存在するプラットフォームで集客を行いたいので、総合系のプラットフォームで出資会員が1万人のところと100万人のところがあれば、言うまでもなく大手のプラットフォームに流れてくることになるだろう。
企画が沢山集まれば、自然に出資者側も大手サイトにより集まる事になる。

規模に劣る既存の総合系CFプラットフォームはニッチ分野に特化していって、大手総合系CFプラットフォームに対抗することになるだろう。
もしかしたら現在のトッププレイヤーくらいなら総合系CFプラットフォームとして残っていけるかもしれない。
だが、ほとんどの現行CFプラットフォームは何らかのジャンルに特化して、特定分野のコアなユーザーをターゲットにするしかないだろう。
それだけWebビジネスでは巨大なユーザーベースを持っていることがクリティカルなアドバンテージになる。

他にも既存プレイヤーが生き残る方法があるとすれば、金融機関やビジネスコンサルファームなどとのアライアンスでCFの本質的な価値向上を図る方法があるかもしれない。
出資者が出資に躊躇するとすれば、その企画の妥当性や出資者に信頼が置けるかどうか判断できないという点にあるだろう。
だからこそ、専門家やプロフェッショナルによる信頼性の証明があれば、出資ユーザーベースが小さくても出資率の高いプラットフォームになることができるかもしれない。
とは言え、簡単に真似できる方法でもあるので差別化の要素としては弱いかもしれないが。


さらに大きなビジネス的な変化が訪れると思うのだが、それは次回エントリーにて。

関連エントリー:
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クラウドファンディングに訪れる変化



クラウドファンディングという新しいプラットフォームが密かに広がり始めている。
ホリエモンが特別顧問になるだとかいう冗談が出ていたCAMPFIRE(キャンプファイヤー)やREADYFOR?(レディーフォー)といったサービスを筆頭に、日本でも徐々に知名度を上げている。
とは言うものの、世界で5000億円程度の市場規模といわれるクラウドファンディングも、日本国内ではまだまだ100億円にも満たない小さな市場だ。


まだまだ黎明期のクラウドファンディングだが、国内でサービスを提供しているのは全てWeb系のITベンチャー企業だ。
黎明期だけあってそれぞれのサービスは明確な差別化がなされていない。
だが、それでもCAMPFIREには著名人の主催する企画が多く、READYFOR?には東日本大震災のボランティア関係の企画が多いという自然な住み分けがなされている。
経営者の方針の違いだろうか。


しかし、このマーケットに大手が参入し始めようとしている。
Amebaブログを提供しているサーバーエージェントか、クラウドファンディングへの進出に名乗りをあげたのだ。
今年の5月にサイバーエージェントクラウドファンディングという企業を立ちあげ、今年の夏を目標にクラウドファンディングプラットフォームの提供を開始しようとしている。
既存プレーヤーよりも数年遅れての参入にはなるが、その知名度や、ブログやSNSとの連携させることで一気に規模を広げることができる可能性がある。

こうした新しいWebサービスを始めるときには、何よりベースとなるユーザー数が重要だ。
ユーザーが多ければクラウドファンディングを求める人も多いし、投資してみようという人も多く、結果場が盛り上がり外部からの流入も増えるだろう。

現在Amebaユーザーは約3000万アカウント存在しているということなので、ユーザーベースは十分な数存在している。
ただ、1周間のアクティブユーザーは100万人程度との話もある。
それでも十分な数ではあるが。

一つ懸念すべきはAmebaのユーザー層かもしれない。
印象としてAmebaを使用しているユーザー層は、中高生、大学生が他のブログサービス(例えばこのブログで利用しているblog.jp)よりも多いようだ。
クラウドファンディグはその投資という性質から18歳以上、20歳以上というレーティングが設けられるだろうから、Amebaのユーザーで投資ができる人の割合はかなり減るかかもしれない。


AmebaのようなWebベンチャーのジャイアントが参入してくると、クラウドファンディング業界に大きな変化をもたらすことは間違いない。
大手参入によって引き起こされるであろう業界の変化は次回のエントリーで考察してみたい。

関連エントリー:
2013/7/21 大手参入がクラウドファンディング業界に与える変化 1


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2013/07/19

ITのメリットを忠実に活用したMoneytree


連携して集約するという機能はITが最も得意とするところであり、ITが世の中にもたらす最も基本的な付加価値だ。
iPhoneアプリ家計簿のMoneytreeもITの基本的な価値を忠実に家計簿に投影したシステムだ。


詳細はMoneytreeのサイトを見ていただくといいが、端的に言うとMoneytreeは自分が契約している銀行口座やカード会社と連携し、入出金などの動きがあれば自動的にそれを記録してくれるiPhoneアプリだ。


Moneytreeに登録した銀行口座やクレジットカードにお金の出入りがあると、自動的にその情報を取得して保存してくれるので記録漏れの心配がない。
現金直接手渡しでの収入がない限り、出と入りは確実に記録に残り、簡易的な家計簿として使える超便利アプリだ。

社会人になったら誰でもお金の管理は自分でしなければならない。
しかし、いざ家計簿をつけてみようとしてもなかなか続かないのが現実だ。
レシートをためておいて月末に一気にやろうとしても、量が多すぎて断念してしまったり、毎日こまめにつけようと思ってもそれはそれで面倒で続かない。
レシートを誤って捨ててしまったりすれば、その時点で一気に続ける気がなくなってしまう。
多くの人が一度は家計簿をつけようとしたが、断念したことがあるのではないだろうか。

ちなみに私はiPhoneのアプリで家計簿をつけている。
iPhoneはいつでも持ち歩いているので何かを購入した時にすぐ記録を残せる。
この即時性のお陰で私はなんとか家計簿をつける習慣が身についた。
しかし、恐らく自覚しないまま抜けている買い物もあるだろうし、公共料金や携帯代金の支払いなど自動的に引き落とされたりカード会社にチャージされるものは記録が抜けがちだ。

Moneytreeは銀行口座とカード会社という主なお金の入口と出口の情報を記録してくれるので間違いがない。
ただ、「○月×日に口座から1万円下ろした」程度の粗い情報なので、自分のお金の使い道をチェックするには心許ない。
だが、ほとんどの人にとってはお金の出と入りが管理出来れば十分ではないだろうか。


冒頭でも書いたが、今までバラバラだったものと連携し、ひとつに集約してくれるという利便性がITの持つ基本的で最大のメリットだ。
そのメリットがMoneytreeでは複数の銀行口座やカード会社と連携してアプリ上にひとまとめにする、という形で活かされている。

いままでこのブログで取り扱ってきたITを使ったビジネスモデルは、その多くが連携と集約によって成り立っている。

例えばEC。
家電や書籍のような消費財や車や家などの耐久消費財でも、全国の店舗の店頭価格を簡単に比較できるサイトが人気を集めている。

売り物が物質的な製品だとは限らない。
Cyta.jpでは一芸を持った講師の情報を集約し、検索して講座を申し込むことができる。

全国にある製品やサービスを集約し、顧客へ検索のインターフェースを提供し、決済を提供する。
これがITの黄金率だ。

そして、スライウォツキーはこの利益モデルをスイッチボード利益モデルと呼んだ。


2013/07/18

英語力と給与の関係


英語と給与の関係というのは、新卒採用とコミュニケーションスキルくらい密接に関係があると巷では思われてきた。
エグゼクティブ向け転職サイトを運営するビズリーチの調査で、英語力と給与の関係が白日のもとに晒された。
やはり英語と給与は明確に正の相関関係にあったのだ。

平均年収で見ると、英語を話さないエグゼクティブの年収は976万円、基礎会話レベルになると1003万円で1000万円の大台を超える。
そして、ビジネスレベルになるとグンと伸びて1174万円になり、ネイティブレベルになると1354万円に達する。
実に、ノンイングリッシュスピーカーとネイティブスピーカーの間には400万近い年収の差が出てしまうのだ。
まさに通訳一人分くらいの給与の差になってしまう。


一点留意すべきは、これはあくまでもエグゼクティブレベルのビジネスパーソンの平均年収であるということだ。
恐らく、もっと一般社員レベルの平均給与であれば、ここまでの差にはならないだろう。

ただ英語ができるだけの人は少なくない。
ただ英語ができる人は通訳にはなれるかもしれない。
だが、ビジネスの場において英語はあくまでもツールに過ぎず、ITスキルや営業スキルのようにビジネスの決め手となるようなスキルにはなり得ない。

また、ビジネスができる人に通訳をつければ、英語ができてビジネスができる人と同等の仕事ができるように思えるが、決してそうではない。
交渉の場とか、打ち合わせの場を切り取って考えれば同等かもしれない。
しかし、英語ができてビジネススキルがある人は、自分のビジネスに常に英語の情報を活用することができるし、世界中の人材と交流し人脈を作れる。
通訳は常に横に侍らせておく人材ではないのだから、やはり英語ができるビジネスパーソンとビジネスパーソン+通訳では総合的なビジネス力に差が出てきてしまう。


私の持論としては、英語に興味があって居ても立ってもいられないか、英語が使えなければ死んでしまうくらい必要に迫られなければ上達しない。
もしくは、自分で学習するというスキルを身に着けている人でなければ、大人になってから習得するのは難しい。
まずはビジネススキルをうんと身につけよう。
そうすれば、その過程で自己学習スキルが身につくか、英語を覚える必要に迫られ、習得できる可能性が高まるだろう。

can=可用性とwant=必要性のフレームワークによる事業開発判断


ある事業を企画に起こし、テストマーケティングを行い、さあ事業化するかしないか、という段階に来たとする。
あなたが事業企画部のマネージャーだとして、何を基準にGoサインを出す?

先に答えを言えば、唯一かつ最適なたった一つの基準というものは存在しない。
状況の数だけ、企業の数だけ、組織の数だけ正解がある。
そのビジネスに求められている役割や位置づけによって判断基準は変わる。

以前、この問に答えるための判断軸の一つとして、スケーラブル(拡張性がある) or プロフィタブル(高収益)という判断軸があることを説明した。

参考エントリー:
2013/6/28 スケールできるのか、高収益化できるのか

スケーラブルかプロフィタブルか、という問は必然的に利益がその判断の中心にあることが分かる。
その事業に利益を最も重視する場合にはスケーラブルかプロフィタブルかという判断軸を使うべきだということだ。

しかし、企業がまだベンチャーのステージにあったり、将来的に新しい柱となる事業を作りたいのであれば、売上を判断の中心に置くべきかもしれない。
その時の判断軸の一つとして、can(可用性)とwant(必要性)による判断というのはどうだろうか。


canあるいは可用性というのは、その事業を本当に運営することができるのか、という問に答えることになる。
事業を運営することができるかどうか、という問に答えるには、さらにいくつかの個別具体的かつ事業運営に大きなインパクトを与えかねない状況を想定した問に回答することになる。
例えば、

・その商品を欠品無く調達することができるか?
・その事業プランに想定されている売上推移と営業・マーケティング戦略はロジカルに繋がっているか?
・売上予測と想定された潜在顧客シェアが異常値になっていないか?(極端な話、潜在顧客100%が購入しないと達成できない目標になっていないか)
・アライアンスパートナーは今の条件に満足しているか?

などのように、事業プランがそもそも成り立たない前提に根ざしていないかをチェックする。
一連のバリューチェーンを描いて、各バリューチェーンに対して批判的な質問をぶつけることで網羅性を担保できるだろう。


一方、wantあるいは必要性の判断では、クライアントが本当にその商品を購入してくれるのだろうか、という問を徹底的に考えることだ。
このとき、自社の商品を買ってくれるのはどのようなカスタマー、またはビジネスであるか、またその顧客の頭の中で競合する商品はどんな商品かを考える。
いわゆる3C分析だ。

例えば、もし自社のビジネスと競合するビジネスを比較してみて、自社のビジネスには安売り狙いでロイヤルティの低いバーゲンハンターしか呼び込めないのであれば、事業性がないと判断できるかもしれない。
また、競合が参入しやすいビジネスなのだとしたら、競合が雨後の筍のように参入してきた際にどのように差別化するか、また差別化できるのかも検討する。


canとwantの軸はそれ自体は非常に大枠なので、具体的な分析方法を教えてくれるフレームワークではない。
だが、分析のピントをずらさないための軸としては使いやすいのではないだろうか。

2013/07/16

ドコモツートップ戦略の失敗 本当の地獄はこれからだ



ドコモは2013年5月からSONYのXperiaとサムスンのGalaxyのツートップ戦略を展開してきた。
ツートップ戦略を簡単に説明すると、本体値引きのための原資をツートップの2機種に集中投下して他の機種よりも大幅に割り引くという戦略だった。

ドコモの目論見通り、この2機種は大いに売れた。
ただし、ドコモの中では、という点を付け加えなければならない。


さらに値引き原資を集めるためだろうか、ドコモは携帯販売店へのインセンティブを停止していたのだが、それが結局裏目に出た。更に契約流出を招く結果になった。
ドコモしか販売していない店舗であればともかく、auとSoftbankも扱っている販売店であれば当然ドコモを積極的に販売しなくなる。
しっぺ返しを受けてしまったのだ。
ドコモからの転出超過は6月に14万6900件を記録した。

たまらず今月になって販売店へのインセンティブは復活させたようだが、同時期に直接ユーザーの利用料を割り引くキャンペーンを行なっていたため、トータルで販促への資金流出が増えてしまうという結果になった。


ドコモのツートップ戦略をはじめ、販売店のインセンティブ停止、ユーザーの利用料割引キャンペーンと、全て裏目裏目に出てしまった。
結果が出た後にdisるのはフェアではないので一連の戦略のキャンペーンをどうこう言うつもりはないが、ドコモの本当の地獄はまだまだ続くのではないだろうか。

私がなぜドコモの地獄が続くと考えるのか説明しょう。
ドコモの企業としてのプライド、そしてしばらくiPhoneを扱う予定がないという現状から考えると、恐らく今後もしばらくはツートップ戦略を展開していくことになるのだろう。
メーカーとの付き合いとして、当然ながら毎回SONYとサムスンをツートップに押すわけには行かない。
毎回別のメーカーの機種をツートップを推すことになるだろう。

2013年の夏モデルはツートップ戦略の初回ということで、元々ドコモで最も売れていたXperiaとGalaxyを扱った。
しかし、次回以降は必然的に人気が3位以下の製品シリーズを扱わざるを得ない。
果たして次回のツートップモデルが今回と同じだけの契約数を獲得することができるだろうか?と考えると、いかんせん心許ない。
売れ筋のXperiaとGalaxyの次モデルはツートップの値引き対象から外れ割高になり、大幅な販売数減少に見舞われるだろう。

しかもツートップ戦略のおかげでツートップ以外の夏モデルは存在感が薄くなってしまった。
影の薄くなった製品が次回ツートップに据えられても、果たしてXperiaとGalaxyほどの人気を博すのだろうか。
更にiPhoneの次期モデル発売と重なれば、その結果は目も当てられないことになるのではないだろうか。


ドコモが勇気を持ってツートップ戦略を白紙にするとしても、他の話題性のあるキャンペーンを行わなければこれからも契約流出が続くだろう。
押すにしても引くにしてもドコモは難しい局面にいる。
国内ナンバーワンキャリアとしての底力を期待したい。

キャンプ場経営について考えてみた


この三連休にキャンプへ行ってみたのだが、小学校の夏休みが始まるタイミングのようで、どこも大盛況だった。
そのお陰でテントサイトが空いているキャンプ場がなくて、危うく野宿することになりそうだったのだけど・・・
とはいえ、これだけ繁盛するのは子供が夏休みの間だけ。
そんな繁閑の激しいキャンプ場経営というものについて少し考えてみた。


キャンプ場の経営はホテル経営と似ている。
キャンプ場という資産を所有しているため、資産取得・補修のための減価償却費を含む固定費が大きい。
このため、どれだけ資産を回転させることができるかが収益性を決めるビジネスだ。

資産を高回転させるためには、できるだけ利用率を高めなければならないのだが、キャンプ場はメイン顧客が子供連れの家族であり、夏休みや夏季の土日、ゴールデンウィーク以外の集客は難しい。
また、屋外での宿泊という特殊な条件も相まって冬季はほとんど来客がない状態だ。


キャンプ場の収益を安定させるにはどのような施策が必要だろうか?

まず初めに考えるべきは立地だ。
立地の重要なポイントは、自然と触れ合う機会の少ない大都市から利用できる範囲内にあること。
キャンプは自家用車で来客する顧客が多いから、大都市から数時間以内に到着できる距離感であることが望ましい。
さらには冬季も営業出来る程度に温暖な気候であれば、通年である程度顧客を得ることができるかもしれない。

次に考えるべきは、客単価の向上だ。
キャンプ場の単価は他の宿泊施設とくらべて安い。
サービスで差別化して高価格化するのも難しい業態なので、客単価を向上させるためには他施設を併設するのが良いだろう。

ありがちなのは、釣り堀やアスレチック施設だ。
河川の近くならカヌーやボートのレンタル事業、岩場が近ければボルダリングやロッククライミング施設を組み合わせることで、新たな客層を呼び込むこともできる。


いろいろ考えてはみたものの、やはり稼働率をキャンプ場の稼働率を上げるのは限界がある。
身も蓋もないが、本業の傍らにハイシーズンの休日だけ運営するというのが正しいのかもしれない。

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ゲームは退化して進化した


私は6歳頃に初めてファミコンに触れてから、だいぶ接触濃度は薄くなったものの継続的にゲームを楽しんできた。
ゲームはモノによっては芸術性もストーリー性も高くプレーする価値のあるゲームもあるとは思うが、基本的に何も生み出さない非生産的な時間の使い方であり、同じ非生産的活動でも教養の学習のように価値があるとも思っていない。
もし、ゲームをプレーせずに済むのならそのほうが良いと思っているのだが、ふとしたきっかけからゲームを始め、やたらのめり込んでいしまう悪い癖を持っている。

さて、そのゲームなのだが、ここ10年程度で大きく変わったと感じる。しかも、悪い方に。
何が変わったかというと、謎解き要素や技術を高めて対戦で勝利するというようなゲームが多かったのだが、最近はプレイヤーの操作が極端に単純な、いわゆる'ボタン押しゲー'のようなゲームが増えてきたのだ。

この傾向は、モバイルゲームの領域で顕著だ。
最近この手のモバイルカードゲームをプレイしてみたのだが、プレイヤーは大雑把な方針を考えるだけで、あとはボタンを押すだけで淡々とゲームが進んでいく。
それでいて、プレイヤーは数時間おきにこまめにアクセスしなければなかなかゲームが進まないし、プレイヤーの強化もままならないという仕組みが随所に作られているゲームであった。
あたかも短い期間でも多い頻度でゲームにアクセスさせ、意図的に中毒のような状況にプレイヤーを追い込もうとする仕掛けだ。

更には、巧みに自分の分身であるプレイヤーを強化したい、他のプレイヤーに認められたいという気持ちを煽るように、短時間で強化するためにアイテムや普通のプレーでは手に入らない強力なアイテムを課金する。
こうした課金アイテムは射幸心を煽ってレベニューを最大化するために'ガチャ'形式で提供される。
つまり、レベニューを最大化するために心理学的要素を利用して最適化されたゲームを作っているのだ。


無論、エンターテイメント性、芸術性、ストーリー性をユーザーに楽しんでもらうためのゲームもまだまだ作られているが、単純でレベニュー最適化されたゲームのほうが多くのプレイヤーの支持を集めつつある。
こうした中毒性の高いモバイルゲームは、ビジネスとしては合理的で利益率の高いビジネスになっているが、社会にとって基本的にポジティブよりもネガティブの方が大きく思えてならない。
いくら儲かっても、社会にとってネガティブなビジネスは存在しないほうが良いと私は思っている。

2013/07/13

「シェア」は経済合理性から生み出される新しいビジネス


日本は高度成長期になると、一般庶民は生活に必要な物を全て手に入れ、次に贅沢品を購入し始めた。
やがてバブルが弾けて経済成長が停滞した状態に入ると、生活必需品は基本的に低コスト商品を購入し、品質にこだわるべき一部の商品は高級ブランド品を購入するという購買パターンに落ちつていてきた。
ある意味、購買行動が成熟したと表現することも出来るだろう。


その購買行動が生み出したビジネスが、『シェア』や『レンタル』というビジネスだ。
よほど必要不可欠なものでなければ、高価耐久消費財はシェアされるようになってきたのだ。
カーシェアリングがその最たるもので、いままでカーレンタルといえば車で行けない場所でも車を利用したい、あるいは経済的に車を所有できないから借りたい、というのが一般的なニーズだった。
だが昨今では、カーシェアリングを利用する人々の動機は、購入する経済的余裕はあってもコストパフォーマンスや利用頻度を考えるとシェアのほうが経済的である、という合理的な考えに端を発している。

この経済合理性からシェアするという考えは様々な分野に広がっている。

その一つの例が、登山グッズのレンタルだ。
登山用の高機能ジャケットやパンツ、登山靴やゴアテックスの雨具は、身に付けるものだしこれまでの感覚で言えば購入するのが当たり前であった。
しかし、今では富士山に昇る毎年30万人の登山客の内、10万人がレンタルで済ましているという。
一年に数回山登りをする私からすれば、自分用の登山装備を持ちたいと思うのが当たり前だが、もっとライトな登山客からすればわざわざ所有する意味に乏しいというのは頷ける。


同じような思想は家を借りるという行動にも見える。シェアハウスだ。
日本では数十年前から存在していた賃貸の形態ではあったが、数年前からまた徐々に脚光を浴び始めている。
何を隠そう、私自身シェアハウスに一時住んでいた。
今では居住地という、究極的にパーソナルな要素であっても、合理性が優位に立てばシェアされるということだ。

こうしたシェアの文化は若い人たちを中心に、違和感なく受け入れられ始めている。


こうした経済合理性ありきの購買行動は、時に商品の購入を妨げ、日本の産業を弱くするように見えるかもしれない。
恐らく若年層の所得低下によって生まれたビジネスであるということも事実だろう。
しかし、シェアによって軽減されたコストは、若い人たちの別の購買行動につながっているはずだ。
それにシェアするということは、資源の浪費を防ぐ行為でもある。
『シェア』は、大量生産・大量消費の時代が終わり、新興国の新しい価値観に呼応して生まれたビジネスなのだ。

2013/07/12

大企業は攻めよりもまず守り


私は社員数千人のいわゆる大企業で新規事業開発の役割を担ってはいるのだが、大企業のアナトミーに理解が深まるほど新規事業よりも大切なことがあることに気づく。
大企業の戦略として新規事業開発よりも先に来るのは、既存事業の防衛だ。


私の考えとしては、大企業にとって新規事業開発は重要なことだと思っているし、新規事業を作り出すことをライフワークだと感じている。
それでも、まず既存事業の防衛が第一なのだ。

第一に、新規事業開発の予算はどこから来ているのかと言えば、それは既存事業の生み出す利益にほかならない。
既存事業が大きく毀損して利益が失われれば、企業は新規事業の開発をしている場合ではなくなってしまう。
普通の企業なら恐らくすぐに新規事業予算を凍結して本業のリカバリーに全力を注ぐ経営判断がなされるだろう。

だが、中小企業にとっては少しストーリーが異なるかもしれない。
一つの事業で事業が成り立っているような中小企業では、その既存事業のマーケットそのものが消滅してしまう、あるいは極端に縮小してしまうということがありえる。
そんな時には、会社の存続のために全リソースを既存事業ではなくて新規事業に注ぐこともありえるだろう。


次に、大企業は新規事業によって得られるものよりも失うもののインパクトが大きい。
新規事業は「千に三つ」と言われるくらい、その企業にとって意味のある事業を立ち上げるのは難しい。
意味がある、とは売上や利益がPLにある程度の影響を及ぼすインパクトを有するということだ。
しかも事業として安定稼働に乗せるまでには、事業の大きさにもよるが数年単位の時間がかかる。

一方、自社のメインである事業ドメインで、これまでと全く違う方法で顧客に非連続的な付加価値の飛躍をもたらす破壊的イノベーションがもたらされると、短い期間で一気に利益を失う可能性がある。
そして多くの場合、この変化は不可逆で失ったマーケットを取り戻すことは困難だ。

新規事業が上手く立ち上がったとしても、いいところ全社売上の10%に達するのに3〜5年程度だろう。
だが、破壊的イノベーションによる毀損は、1,2年で売上の30〜50%になることもありえる。

つまり、インパクトの大きさと発生確率を掛けあわせた期待値が、新規事業の創出と既存事業の破壊では全く非対称なのだということ。
特に、業界でトップシェアを占めているような企業は、それ以上にシェアを伸ばすことは非常に難しいのに、失うのは非常に簡単だ。

大企業の経営者は既存事業の防衛にかけるリソースを低く見積もってはいけない。


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プロジェクトマネジメント101 その3


全三回にわたって解説してきたプロジェクトマネジメントのプランニングフェーズ。
最後の第三回は、プロジェクト計画の二つのフェーズ、タスクの洗い出しとガントチャート化を解説する。



2-1 タスクの洗い出し

プロジェクト計画二つのフェーズのうちの一つ、タスクの洗い出しを説明しよう。

タスクの洗い出しを開始する前に、まず前提としてプロジェクト定義の段階で目的と目標を正しく定めていることが大前提になる。
プロジェクトのゴールである目標が間違っていれば、その目標からブレイクダウンしたタスクをいくら一所懸命に実行しても辿り着く先は間違った目的地になるだろう。

正しく目標を設定したら、その目標から出発して最も粒感の大きいアウトプット(中途目標)でMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)に分解する。
目標をブレイクダウンした一番最初の粒の大きいレベルは「Work Package」と呼ばれる。


分かりにくいので一つ例をあげよう。
例えば自宅の引越しというプロジェクトを考えると、目標はいついつまでに全ての荷物を新居に移動させ、再配置が完了している状態と定義できるだろう。
このプロジェクトにおけるWork Packageは、「引越し業者の選定」「全ての荷物の梱包」「荷物の運び出しと輸送」「荷物の搬入と再配置」といったところだろう。

この例では、切り口は時系列だ。
切り口は時系列にかぎらず「5W1H」であったり、「部門」であったり、「プロセス」や「地域」であったりする。
こうした切り口の選択はプロジェクトによって最適なものが異なるのだが、この選定は経験を積んで慣れないとなかなか難しいものだ。


Work Packageを分類したら、Work Packageを目標としてそれを達成するために必要な作業を全て細かく洗い出す。
この時どれだけ精緻にタスクを洗い出すことができるかがポイントで、ここで大きなヌケモレが出てしまうと、後から大幅なスケジュール変更が必要になってしまう。
この1つひとつのタスクは「Activity」と呼ばれる。

一度Work PackageのActivityを一式洗いだしたら、時系列に並べたActivityを逆に遡ってみたときに違和感がないかどうかで確認するとヌケモレが出にくくなる。

2-2 タスクをガントチャートに

タスク(=Activity)をすべて洗い出したら、最後にタスクをガントチャートに落とし込む作業を行う。

まずは工数見積だ。
タスクをリスト化した表にそれぞれのタスクの予想工数を入力していく。
タスクの粒感によっては分単位や時間単位の工数見積をすることもあるかもしれないが、通常ビジネスでは人日単位での見積になるだろう。
やったことのないタスクの工数をどうやって見積のか、というのは永遠の命題とも言える疑問がここで湧き上がるのだが、ある程度リーズナブルな数字でエイヤーでやるしかない。

次に、依存関係を洗い出す。
Work Package内のActivityの依存関係は比較的分かりやすいが、Work Package間の依存関係は注意して確認する必要がある。
Work Package間の依存関係を見逃すと、後からスケジュールが大幅に遅延する事態になり兼ねないのでよく注意しよう。

最後に、依存関係に注意しながらガントチャートにタスクを並べる。
コツとしては、依存関係にないタスクはどんどん並列処理していくことだ。
全体のプロジェクト期間を短縮することができるし、タスクが遅延した場合のリカバリーの余裕も出てくる。

また、クリティカルパスを把握しておくことも重要だ。
クリティカルパスとは、同時に進行している依存関係で繋がった一式のタスク群の中で、もっとも時間がかかる一式のタスクのことを指す。
クリティカルパスの中のタスクが遅延すればプロジェクト全体の遅延に繋がるが、クリティカルパスでないタスクの遅延はクリティカルパスの工数を超えない限り、プロジェクトのスケジュールには影響を及ぼさない。
これを逆手に取って、クリティカルパスでないタスクを新人の人材育成などに活用することもできるだろう。

関連エントリー



2013/07/11

プロジェクトマネジメント101 その2


前回のエントリーでは、プロジェクトマネジメントがなんぞやという話と、プロジェクト定義書の作成について解説した。
プロジェクト定義書はプロジェクトの全体像を、背景を含めて文書化したものであった。

今回のエントリーはプロジェクトを実際に動かす上で必要不可欠な、タスクリストとスケジュールの作成についてフォーカスしてみたい。
とは言うものの、長くなったので2回に分けて解説する。


2. プロジェクト計画

プロジェクトの全体像をプロジェクト定義書に落とし込んだら、次はプロジェクト計画の作成だ。
計画とは何だろうか?

プロジェクトマネジメントの世界で使われる計画という言葉は、最小単位に細分化された一つ一つのタスクとそれらのタスクをスケジュールに落とし込んだ資料を意味する。
言うまでもないことではあるけれど、最小単位のタスクとは言っても「右手を前方へ15cm動して、次にレバーをONにする」というレベルの話ではない。
なんらかのアウトプット(成果物)を出すための、一連の作業という定義が一番しっくりくるだろう。
一つ一つのタスクには何らかの文書やメモなどのアウトプットが伴うか、例えば合意を形成する、承認を得る、などの状態変化を伴う。


プロジェクト計画を二つのフェーズに分けるとすれば、タスクの洗い出しフェーズと、タスクをスケジュール化するフェーズに分かれる。
これら二つのフェーズについては次回のエントリーで細かく見てみよう。

プロジェクトを計画した結果、通常はタスク表(若しくはWBSと呼ばれるリスト)とガントチャートの二つの資料がアウトプットとして作成される。

タスク表

タスク表は大項目・中項目・小項目のような3階層程度の階層構造で、全てのタスクをリスト化したものだ。
小項目のタスクを全て完了することが、一次上の中項目の必要条件であり、中項目のタスクを全て完了することが、さらに一次上の大項目の必要条件となっているのが普通である。
そして、大項目が全て満たされると、目標が完了するという構成を持っている。
この構造全体をさして、WBS(Work Breakdown Structure)とも呼ばれる。

タスクとタスクの間には依存関係を持つものもあり、依存関係はタスク表上で明示的に表記される。


ガントチャート


ガントチャートは横軸に日時をとり、それぞれのタスクの実行スケジュールと工数を矢印で表現したスケジュール表だ。
横軸の矢印の長さは工数の長さを示している。

Microsoft Projectなどのアプリケーションを使用すると、自動的にタスク間の依存関係を調整してスケジュールを引いてくれるので便利だ。


なぜプロジェクト計画を立てるのか

プロジェクトにおいて最も重要なのは、プロジェクト完了日までに目標を達成することだ。
とは言うものの、全てのタスクが完璧にスケジュール通りに運ぶプロジェクトはほとんどお目にかかることはない。
そんなプロジェクトがあるとすれば、必要以上に完了日に余裕があるプロジェクトだったのだろう。

それでも精緻にタスクを洗い出して緻密なスケジュールを組むのは、ある一連のタスクの納期が遅延した時に、それがどれだけプロジェクト全体にインパクトを及ぼすのかを知ることができるからだ。
ガントチャートによって見える化していれば、そのタスクの遅延がそもそもプロジェクト全体の遅延を引き起こすのか否かを知ることができる。
もしも遅延しているタスクがクリティカルパス(複数同時進行している一連のタスク群の中で最も時間がかかる一連のタスク群)であった場合、タスクの遅延がダイレクトにプロジェクトの遅延になるが、クリティカルパスと関係ないタスクであれば全く影響を及ぼさないこともありえる。


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2013/07/09

プロジェクトマネジメント101 その1


前回のエントリーで、プロジェクトマネジメントスキルがなぜ新規事業開発にとって重要なのかを書いた。

参考:

なぜ突然プロジェクトマネジメントの重要性を喧伝するに至ったかというと、実に単純な理由で先日プロジェクトマネジメントの研修を受けたからなのだ。
研修で学んだことはアウトプットして実践しなければ身についかないとういことで、研修で学んだプロジェクトマネジメントのプランニングの基本について、簡単にまとめてみたい。

基本的に自分自身のためのメモに過ぎないが、読んだ方に多少なりとも示唆があれば幸いだ。


プロジェクトマネジメントという言葉を定義する

プロジェクトマネジメントは、プロジェクトをマネージ(管理)するための技術だ。
では、そもそもプロジェクトとは何なのか。

プロジェクトとは、ある目的を達成するために計測可能で期限が定められた目標を立て、限られたリソースをフル活用して目標を達成し、目的を実現させる営みのことだ。
プロジェクトマネジメントは目的の実現のために正しい目標を立て、限られたリソースで期限内に目標を達成するためにの技術ということになる。

プロジェクトマネジメントの現実的な利便性

プロジェクトマネジメントは難しい技術であるし、この技術さえあればどんなプロジェクトでもサクサク完璧にこなせるというものではない。
むしろ、プロジェクトを暗礁に乗り上げさせないための最低限のフレームワークと思ったほうが良い。

決して確かな結果を約束してくれる技術ではあるが、身に着けていればいざプロジェクトを任された時に、何から手をつければ良いか分からない、どれだけの予算が必要なのか分からない、いつ頃までに完了できそうなのか検討もつかない、誰に何をしてもらえば良いのか分からず指示が出せない、という一歩も踏み出せない事態は防げる。

1. プロジェクト定義

プロジェクトの始まりではまずプロジェクトを定義することが最初の一歩だ。
このプロジェクトが何のために行われるのか、誰が関与しているのか、いつまでに行われるべきなのか、どの程度のものが出来上がっていればいいのか、そもそもなんでやらなければならないのか。
こうした基本的な問いに答えてくれるのがプロジェクト定義を資料に落とし込んだプロジェクト定義書だ。

プロジェクト定義書はプロジェクトメンバー全体の意思疎通のためにも必要不可欠だ。
小規模なイベント程度のものであれば口頭で済まされることもあるかもしれないが、数十人、数百人が関わるようなプロジェクトでは文書化された定義書がなければ、誰もが上に挙げたような問いを持ち、失敗に終わるだろう。
メンバー全体が共通の目標のために自分に課された役割を果たす土台として、共有されなければならないのがプロジェクト定義なのだ。

また、プロジェクト定義書には新たに参加したメンバーや途中からプロジェクトに携わるチームへ、プロジェクトの概要を円滑に伝えるためのツールになる。
規模によってはプロジェクトリーダーがひとりひとりにプロジェクト定義を伝えて回ることはできない。
そんな場合にしっかりと作られたプロジェクト定義書があれば、リーダーの代わりにプロジェクトの概要を新メンバー達に伝えてくれる。

1.1 プロジェクト定義書の作り方

どんなプロジェクトでも、まずきっかけとして得たい理想=目的がある。
プロジェクト定義書には目的が必要不可欠ではあるが、それだけでは不十分だ。

一般的なプロジェクト定義書に必要な項目を下記に並べてみよう。
ポイントは、内容が決定していない項目があるとすれば、決定していないという事実を伝えることだ。
プロジェクトによっては、予算や制約条件が未確定で、それらを調査することから始まるプロジェクトだってありえるからだ。

<背景>
なぜそのプロジェクトが組成されたのか、その目的を達することによって得たいことは何か、といった情報。
途中から参加するメンバーにとっては背景情報があるないではプロジェクト方針への理解度が全然違ってくる。

<目的>
このプロジェクトが完了した時に得たい現実。
数値化されたり計測可能なこととは限らない(むしろ少ないだろう)。
例えば、新しい事業を3年以内に立ち上げる、というのが新規事業プロジェクトの目的だ。

<目標>
目標は、それが達成されていれば目的が実現されているであろう、計測可能なゴールのことだ。
例えば、新しい事業を3年以内に立ち上げるという目的の目標は、3年以内にあるマーケットで10%の売上シェアを獲得する、というのが目標だ。
目標の置き方を間違えると、目標を達成して目的が実現しないという乖離が起こりかねないので、目標の置き方は非常に重要だ。

<ステークホルダー>
このプロジェクトと利害関係にある人々。
プロジェクトオーナーを始め、メンバー、協力者、受益者など。
できれば、各ステークホルダーがこのプロジェクトに参加する目的、得たい利益、などを分析しておくと、利害関係で衝突することを避けられる。

<成果物>
このプロジェクトから生み出されるあらゆるアウトプット(商品やマーケティングプラン、会議議事録なんてものまで)を予め書き出しておく。

<前提条件>
プロジェクトを実行する上で、ここまではやるけどここからはやらない、というスコープを定める。
前提条件はいくらでも洗い出そうとすれば洗い出せるが、プロジェクトに関連することだけを洗い出そう。
あるプロジェクトではマーケットは日本国内だけであると前提条件に書き加えることが必要なこともあるが、あるプロジェクトでは全く不要な場合もあるだろう。

<制約条件>
このプロジェクトで使えるリソースの制限や、スコープを制限する外的要因をここで記述する。

<期限>
目標が満たされている状態がいつまでに達成されていれば良いのか、日時を定める。

<予算>
どれだけ人、モノ、金が使えるのか、上限額を記述する。

<スケジュール概要>
詳細なスケジュールはプロジェクト計画で記述されるが、大まかなマイルストーンがプロジェクト定義書にも記述されているべきだろう。


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2013/7/11 プロジェクトマネジメント101 その2
2013/7/12 プロジェクトマネジメント101 その3
2013/7/8 新規事業開発にもプロジェクトマネジメントの考え方を



新規事業開発にもプロジェクトマネジメントの考え方を



建築やソフトウェア開発に携わらない人であっても、ビジネスパーソンにとってプロジェクトマネジメントの考え方はとても有用だ。
それが新規事業に携わる人となれば、必要不可欠な知識・スキルと言っても過言ではないだろう。

新規事業には大別すると、3つのフェーズがある。
ビジネスの種を見つけてパイロットやテストマーケティングを実施する0から1を生み出すフェーズ、そこである程度将来性がありそうなビジネスを1から10に事業化するフェーズ、立ち上がった事業を10から100に育てるフェーズ。
それぞれのフェーズが一つ一つのプロジェクトであり、全てのフェーズでプロジェクトマネジメントの知識のあるなしで結果が全く変わってくるだろう。
だから、新規事業開発に携わる人にとって、プロジェクトマネジメントは必要不可欠なスキルなのだ。


なぜプロジェクトマネジメントの知識が新規事業開発に必要なのか?
この問に答えるために、まずプロジェクトマネジメントという言葉を定義してみよう。

プロジェクトマネジメントとは、ある目的・目標を与えられたリソースや条件下で決められた期間内に達成するための技術だ。
この定義に照らし合わせると、新規事業開発の3つのフェーズそれぞれがこの定義で言うプロジェクトであることが分かる。
0から1のフェーズは、テストマーケティングを完了してビジネス化に値するかを判断することを目的・目標に置いたプロジェクトであるし、1から10に事業化するフェーズも社内にその事業を運営するための仕組みを作ることを目的・目標としたプロジェクトだ。

また、プロジェクトマネジメントは社内の複数部門だけでなく、外部パートナーも含めたプロジェクト運営方法についての示唆もある。
新規事業の開発には外部パートナーも関わることがとても多いので、体系的な知識を有しておくことは外部パートナーと円滑にプロジェクトを勧めるために間違いなくプラスになるだろう。


そして、たとえ新規事業が小規模でほとんど一人で立ち上げるような場合であっても、プロジェクトマネジメントの知識を活用して効率を上げることができる。
プロジェクトマネジメントは、ゴールと納期、そして数々の制約が定まった状態でベストな結果を得るための技術だ。
たとえ一人事業であったとしても、自分がその条件下で最大限のアウトプットを最短で達成するためのフレームワークを教えてくれる。


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2013/7/9 プロジェクトマネジメント101 その1
2013/7/11 プロジェクトマネジメント101 その2





2013/07/07

ANAのO2O戦略


ネットやスマホを活用したプロモーションとして、O2O (Online to Offline)という言葉はマーケターだけでなく、一般的に定着してきたのではないだろうか。
O2Oという言葉は一般化したものの、効果的かつ効率的で、再現性のあるO2Oのベストプラクティスはまだまだ模索中の段階と言えるだろう。

今現在において最もありがちなO2Oマーケティングは、割引クーポンを配布することで顧客に購買行動を促すプロモーションだろう。
ぐるなびやホットペッパーなどのクーポンサイトも、グルーポンのようなフラッシュマーケティングも、安売りで自店舗に顧客を呼び込むためのO2Oの手段だ。

クーポン型のO2Oは、百貨店のバーゲンセールやスーパーの特売と同じ弱点を持つ。
バーゲンや特売は一時的な売上増には繋がるが、バーゲンハンターと呼ばれる価格反応性が高い顧客が集まっただけで、バーゲンが終わればすぐに売上が元に戻ってしまう。
継続性がないのだ。
それ故に、一度バーゲンや特売を行なってしまうと、麻薬患者のようにバーゲンや特売をせずにはいられなくなってしまう。

クーポン型のO2Oでも全く同じ禁断症状が発生してしまう。


一方、最近ANAが開始したO2Oキャンペーンは、特売禁断症状になるような安易なクーポン配布は行わず、企業ブランディングの向上と集客キャンペーンの両面で参考になる事例だ。
以下引用でANAの取り組みを追ってみよう。

日経MJ 2013/7/5 P.3――――――――――
全日本空輸(ANA)のコミュニケーションサイト「ソーシャル・スカイ・パーク(SSP)」が消費者と活発なやり取りを続けている。サイトへの投稿数は前年比20〜30%増。 (中略) ANAのマイレージクラブの会員で、フェイスブック(FB)かツイッターにアカウントを持っていれば、だれでも利用できる。サイトの運営側は毎週「今年のボーナスは何に使う?それともためる?」などのお題を出す。利用者はこれに答える形で投稿すると「ANASKYコイン」が25〜100コインもらえる仕組み。1コインは1円とし、10円単位で旅行代金に充当できる。
――――――――――――――――――――

ANAマイレージポイントは、今のところANAか提携航空会社のフライトに登場するか、クレジットカードのポイントで貯めるのが基本的な貯め方だ。
だが、飛行機を使って旅行やビジネストリップする人ばかりではないし、クレジットカードをほとんど使わない人も多いため、ANAマイレージポイントは実は顧客リーチが狭いと言えるだろう。
しかし、SSPの施策では大幅にハードルが下がって、ほとんど誰でもポイントを貯めることができるようになった。
SSPの問いに回答し続ければ、だいたい半年で5000ポイント貯まるそうなので、それなりに利用者としてもボリューム感のある値引きになる。


ANAの取り組みの賢い点は、長期間SSPでコミュニケーションをとり続けることでポイントが貯まるという点だ。
何となく一回二回気まぐれで回答する人はいるかもしれないが、それを継続できる人はあまり多くないだろう。
だが、回答を続けてそれなりのポイント数を貯めた人は、高確率でANA機に搭乗しポイントを利用しようとするだろう。
そして、引き続きSSPとコミュニケーションをとってポイントを溜め続けるロイヤルカスタマーになり続ける可能性は高い。

ANAのO2O戦略は単純なフラッシュマーケティングのようなすぐに結果の出る施策ではない。
時間はかかるし、最後まで回答し続けてくれるカスタマーの絶対数はあまり多くないだろうが、ロイヤルティの高いANAファンを作り出す実践的な仕組みだ。
航空券のような単価が高く、LCCという強力な手軽軸(安くてコストパフォーマンスが高い価値提供者)のライバルが存在する条件下では、ロイヤルティの高いファンを獲得するメリットは高い。

O2O戦略は、いや、全てのマーケティング戦略は、ANAのSSPのように自社のポジショニングを鑑みた戦略であるべきだろう。

アジア新興国を高度成長期の日本と思って見てはいけない理由




安価な労働力の調達先として、また、新たな有望なマーケットとして東南アジアに進出する日系企業が増えている。
そんなアジア進出を考えている日系企業の中にも、少なくない日本人の意識の根底にアジア諸国は数十年昔の日本である、という固定観念が染み付いているような印象を受ける。
だが、アジアへ進出しようとしている人たちほど、このような先入観を捨てなければならない。

発展のパターンが違う

今のアジア諸国は、数十年前の日本とは発展のパターンが異なる。
世界中の外資企業の海外生産拠点として引っ張られるように発展している。
多少外資の影響があったとはいえ、国内企業中心に発展した日本とはちょっと状況が異なる。

また、同様にサービス業も外資企業の影響で、強制的な発展を遂げる。
分かりやすい例がオフショアセンターとしてのコールセンターやIT企業の開発拠点だ。
これらの業態はインターネットが生まれたおかげで発生した業態であるため、日本が高度成長を迎えた時には決してなかった発展の仕方だ。

外資系チェーンの参入も日本の高度成長期の時代よりも激しくなっている。
当時よりも飲食チェーンや小売のチェーンが発達しグローバルな展開をしているため、発展途上国に少し発達した都市が生まれれば、すぐに隙間を埋めるように出店攻勢をかけるのだ。

こうした状況の違いによって、日本の高度成長期とは違うパターンを今のアジア諸国は辿っている。


新しいテクノロジーへの対応

若い国はひとりの若い青年のように、新しいテクノロジーへの適応が早い。
アジアの新興国では所得が低くともスマートフォンなどを通してネットへの接続ができている。

アジアの若者はネットを活用して海外の最新情報を手にし、知識は先進国とさほど変わらなくなっている。
さらに、ネットや外資がいち早く進出してくるため、所得が低くとも意外な製品やサービスへの購入意欲が高い
例えば、フィリピンでは健康に注意を払うオフィスワーカーが増え、所得と比較すると高額な月額$20-30のスポーツジム&スパに結構な割合の人が登録するのだという。


photo credit: Stuck in Customs via photopin cc

2013/07/06

新規事業開発の型1. 防衛的参入


新規事業開発や起業にも、ガイドラインとなる型が必要なんじゃないだろうか。
以前から私はそう思っている。

新規事業や起業には、既存の事業に縛られない斬新なアイディアが必要だ。それは間違いない。
しかし、全くまっさらな何もないところから新規性に富み、かつ事業化に耐えうる事業企画を生み出すのは難しい。
どれだけ斬新で奇抜なアイディアであっても、ビジネス化できないようなアイディアでは意味が無い。
だからこそ、起業家や事業開発に関わるビジネスパーソンは、事業アイディアの発想や絞り込みのガイドラインとなる事業開発の型を身につける必要があると思うのだ。

そういうわけなので、事業開発の型を実ビジネスに見出してナレッジ化していくシリーズをここに宣言したい。
スライウォツキーの利益モデルに近いものだが、スライウォツキーはどちらかと言うと利益を最大化を目的とした事業戦略の型、私が提唱したいのは事業開発を成功率を上げるための型だ。
名付けて「新規事業開発の型」シリーズ。
実ビジネスに型を発見するたびにエントリーを追加して、徐々に引き出しを増やして行こうと思う。


記念すべき一つ目の型は「防衛的参入」だ。


防衛的参入とは?

初っ端から消極的にも思える型の名称なのだが、よく見られる新規マーケットへの参入方法だ。
この新規参入の型を有効活用できるのは、特定の業界のトップ、ないし最大手の企業に絞られる。

業界のトップ企業がその座から転げ落ちるにはいくつかのパターンがあるが、一番ダメージが大きい形で転落するのが破壊的イノベーションをバックに業界へ殴りこみをかけたベンチャー企業に蹴落とされた時だ。
実例を挙げよう。
オンライン書籍販売でAmazonに市場を奪われ、事業買収の噂話も出ている元米国最大手書店のバーンズアンドノーブルだ。
Amazonが立ち上がって急速に販売数を伸ばしながらも、バーンズアンドノーブルを始めとした米国の大手書店はAmazonなんてコンピューターオタクが利用するだけのニッチなビジネスと高をくくっていた。
Amazonという全く書店業界のゲームを変えるビジネスに対して正しく危機感を持っていれば、圧倒的なブランド価値を持っていたバーンズアンドノーブルにはいくらでも反撃のチャンスはあっただろう。
しかし、バーンズアンドノーブルがようやく危機感を覚えて参入した頃には、もはやAmazonはそのユーザビリティと利便性を武器に完全に顧客をガッチリと掴んでいて手を付けられない状態になっていた。


防衛的参入は、破壊的イノベーションを携えたベンチャー企業への対応策として最大手、または準最大手企業が真っ向から同じビジネスモデルで事業を立ち上げる事業開発戦略を意味する。
その参入方法は新たに子会社を設けるか、似たような事業モデルを展開していた事業会社を買収するというのが主だった方法論だ。

防衛的参入は言うまでもなく元の事業とカニバって(共食いして)しまう。
だが、新たな参入者に全てのパイを奪われるぐらいなら、子会社に食わせてしまったほうがいい。
その破壊的イノベーションが旧来のビジネスモデルを完全に食いつぶしてしまう勢いなら、その子会社に全ての経営資源を移すという選択肢も確保できる。
古いビジネスモデルが完全に駆逐されてしまうとしても自社は生き残る、ということを最終目標に置いた事業開発戦略だ。

防衛的参入の例

防衛的参入が実際に行われた例として私たち日本人にとって身近なのは、ANAやJALのLCC参入だろう。
ANAもJALも自社の顧客を奪い、旅客運賃に下げ圧力をかけるLCCは苦々しく思っていただろう。

しかし、ANAもJALもLCCが一定の顧客を獲得するだろうと読んで、早めにLCC子会社の設立や海外LCC航空会社とアライアンスで既存のビジネスモデルの宿敵と手を携えた。
結果的に予想していたよりもLCCへ顧客が流れなかったので、一部LCCとのアライアンス解消という流れも見受けられるのだが、既存大手の対応策としては素早く適切だっただろう。
下手に高級路線なんかに舵取りしていたら、空気ばかり輸送することになり、損益分岐点の高い航空会社のことだから破綻していたかもしれない。

業界トップからほと遠い企業ならほとんど検討することもない「防衛的参入」だが、大手企業に務める人は意識しておくべきだろう。

2013/07/05

クルトガが教える「業界の常識」の弊害


業界で消費者のニーズとされていることが、すでに時代が変わって本当のニーズではなくなっているかもしれない。
業界に携わっている人ほど業界で常識とされている消費者ニーズに引きづられて、本当のニーズが見えなくなっている。
シャープペンシルに対する業界の常識を覆し、本当の消費者ニーズを捉えてシェアトップに踊りでたのが三菱鉛筆の「クルトガ」だ。


クルトガの売りは、業界が認識していた従来の消費者ニーズである「書いていて疲れない」という点ではない。
クルトガが解決したのは、今まで多くの人が感じていたものの誰も解決してくれなかった、芯が斜めに削れてきて文字が太くなってくるという問題だった。
三菱鉛筆はシャーペンの内部に筆記時の運動で芯が回転する機構を組み入れ、斜めに芯が削れる前に芯を回転させることでこの問題を解決したのだ。


シャーペンの既成品を見ているとわかるが、少し高価なシャーペンのほとんどは持ち手に工夫がされていて、指が疲れないということにトッププライオリティが置かれている。
どのメーカーもシャーペンのフラッグシップモデルでは書いていても疲れにくいことで競い合っていた。
だが、持ち手の違いによる書きやすさ競争は高度になりすぎて、もはや消費者にとっては違いが分かりにくい、さして重要ではない差別化要素になっていたのではないだろうか。

三菱鉛筆が解決したのは、業界が常識としている書きやすさ・疲れなさの裏に隠れていた「見えざる未解決の課題」であった。
恐らく、どのメーカーもニーズとしては認識していたはずだが、クルトガによってこの長年の課題が解決されたのは、日本でシャープが初めてシャーペンを販売してからほぼ100年も後だったのだ。

なぜ利用者の誰もが感じていた不満を解決するのにこれだけかかってしまったのだろうか?
一つには技術的な問題があったのかもしれない。
素人の私には分からないが、筆記運動に呼応して回転する機構を作るのは非常に技術的に高度なのかもしれない。

しかし、根本的には消費者の問題意識の理解不足があったのだと思う。
書きやすい持ち手の形状は開発しつくされてもはや個人の好みの問題に過ぎず、消費者の問題意識は「文字が太くなる」というポイントにフォーカスが移っていたのに三菱鉛筆以外のメーカーはそれに気が付かなかった。
それはシャーペンの仕様だと高をくくっていたのかもしれない。

だが、持ち手の改良競争は、スポーツカーやスポーツバイクの馬力競争のように意味がないとわかっていつつも抜けられないチキンレースになっていたのではないだろうか。
持ち手の改良競争からプライオリティをシフトできなかったのだろう。
同じような間違いは、他の業界でも間違いなくそかしこで起きていることだろう。


本当の問題は見過ごされていることがある。
業界の常識に隠れて見えなくなっていることもある。
また、わかっていても競争のための競争から抜けられず、プライオリティを変えられないでいる。

そんな失敗、あなたの会社も犯していないだろうか?

2013/07/04

3Dプリンターの普及によって起こる変化



3Dプリンタという新たな技術革新の波が起きている。
3Dプリンタを使用すると、CADなどでデザインしたオブジェクトをプラスチック樹脂や石膏で立体的な物体を造形することができる。
材質は選ぶが、誰でも手軽にデザインさえ出来れば「製造」することができ、製造業のあり方を根底から変えるかもしれないとされている。

既に3Dプリンターは数万円〜数十万円と、個人レベルでも手に入れることができる価格まで下がってきている。
この新しい技術の変化が、市場にどのような影響をあたえるか、考察してみよう。


まず製造業へ与えるインパクトを考えてみたい。
私としては、3Dプリンターが製造業へ与えるインパクトは小さいと考えている。

問題は3Dデザインをできる人材はさほど世の中に多くなく、個人が自分が必要な物は自分でデザインして3Dプリンタで造形する、という文化は簡単には根付かないだろう。
もしかしたらiPhoneケースのような単純な形のものは、テンプレートが出まわってユーザーが裏面だけ自分でデザインするということはありえるかもしれないが。
実際、今のところ3Dプリンターは製造業者がプロトタイプの作成に使うことが多いようだ。

それからコストと時間だ。
3Dプリンターは恐らく家庭用プリンターと同じで、製造工場での製造コストに比べると、印刷コストが高くなるはずだ。
すると、身の回りの一般的な商品はやはり既成品を購入するのが最も安価で、3Dプリンターで造形するのはもっと趣味性が高く豊富なバリエーションが付加価値を生む製品になるだろう。
今のところ、オタク趣味な人たちがフィギュアを作って販売していることが多いようだが、3Dプリンターはまさにフィギュアのような製品にはぴったりだ。


次に、3Dプリンターを中心とした新たに生まれるだろうエコシステムについて考えを巡らせてみよう。
3Dプリンターが影響を与えるのは個人だ。
まず、アートな人たちや、デザインに長けた人たちが自分の作品を展示したり販売するために使うことから普及すると思われる。

すると、Web上で個人が作品を展示して、その場で購入できるプラットフォームが生まれてくるだろう。
通常のECプラットフォームとは異なり、作品の作者がデザインに込めた思いを色々語れるようなブログに近い形のものかもしれない。
ブログ上ですぐにクレジットカード決済できるようなブログパーツのサービスも考えられるだろうか。

2013/07/02

海外企業との交渉 コツとタブー 4



3つのエントリーにまたがってお送りしてきた海外企業との交渉特集。
いよいよ今回のエントリーでまとめとしたい。
最後のエントリーでは、海外企業との難しい交渉を乗り越えるためのコツをいくつか紹介して筆を置きたい。


■難しい交渉を乗り越えるコツ■

・言葉や条件は徹底的に解釈を合わせる

前回のエントリーでもありがちな失敗としてあげたのが、定義やい解釈のズレによる交渉の停滞だ。
相手側とこちら側である単語や文書の解釈に相違がある場合、その解釈のズレを解決しない限り先へは進めない。
無理に進もうとすれば、あとになって大爆発するかもしれない爆弾を抱えたまま行進していることになる。

この問題への解決策はとても単純だ。
解釈の争点となりそうな言葉やフレーズをとにかくその都度解釈を合わせていく、という作業を徹底するのだ。

このとき、必ず後から見返せる形でエビデンスを残すことをサボってはいけない。
日本人と日本語の交渉であったとしても解釈を巡って言った言わないという水掛け論になるのはよくあることだ。
これを文化の違う人々と違う言語で解決させるのは非常に骨が折れる。

だから、解釈の争点になる単語やフレーズはエクセルか何かでリスト化して、必ず相手と共有することを徹底しよう。

・課題リストの交換

あなたが海外との交渉初心者だからといって、経験豊富な相手が自分に合わせて取り計らってくれることを期待してはいけない。
あなたの交渉相手はあなたと同じくらい異文化とのコミュニケーションに慣れていないのかもしれない。
だからこそ、異文化の相手との交渉は間違いが起きないよう地味なことをコツコツと積み上げる努力が不可欠。

課題リストの交換もその一つだ。
課題リストには交渉相手への要求や交渉相手からの要求、解決しなければならない問題を記述した表だ。
この表には、課題の内容が一目でわかる項目名、誰が見ても意味がわかる詳細記述、課題のステータス、解決予定日が最低限必要な項目だ。
さらに、双方のやり取りをサマライズして日付を入れて追加していくと、どのような議論が行われていたかが第三者にも分かるエビデンスとなる。

口頭でも電話でも、交渉したのならばその後に必ず交渉内容を課題リストにアップデートして相手と交換しよう。

・共通の敵を作る

この方法は下手を打つと相手の信頼を失ってしまう危険性も持ちあわせるが、それでもとても有効なテクニックだ。

タフな交渉を行なっている際に、そのタフな状況を生み出している原因を直接交渉に参加していない人や部門に押し付ける。
すると、心理的に自分と交渉相手が同じテーブルの反対側に向き合って座っていた関係性から、無理難題を言う誰かと対峙して同じ側に並んで座っている関係性に変えることができる。
自分の取り分を少しでも増やすために競う敵から、共に問題を解決するための仲間に変わるのだ。

このテクニックがなぜ重要なのかというと、窓口担当者であるあなたの信用を守るからだ。
あなたが社内の意見を代表として述べているただの代理人だとしても、あなたの口からタフな要求が繰り返し発せられれば、相手はあなたと交渉するときに身構えてスキを見せないように常に戦闘的な態度をとるだろう。
あくまでも同じ目的を持って共通の課題を解決したい仲間だ、という印象を相手に持ってもらうために自分も第三者に無理難題を押し付けられているという構図を交渉相手に見せるのだ。
するとあなたへの信頼は高まり、あなたの提案や意見にも交渉相手が耳を傾けやすくなる。

その第三者は例えば自社の上司だったり、コンプライアンス部門だったり、バリエーションが考えられるが、いずれにせよ自社の人にしておくことが無難だ。
だがこのテクニックを使い過ぎると、ただの調整能力のない無能だと取られる可能性のある両刃の剣でもあるのだ。


私が経験則から得た海外企業との交渉で重要なポイントを4回に渡って書いてきた。
少しは参考になっただろうか。
海外企業相手と言いながら、国内企業が相手の場合となんら変わらないじゃないか、と思われたかもしれない。
その印象はまったく大正解で、相手が海外ならなおさら基本的なことを確実に行うことが大切なのだ。

photo credit: screenpunk via photopin cc

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