2013/07/06

新規事業開発の型1. 防衛的参入


新規事業開発や起業にも、ガイドラインとなる型が必要なんじゃないだろうか。
以前から私はそう思っている。

新規事業や起業には、既存の事業に縛られない斬新なアイディアが必要だ。それは間違いない。
しかし、全くまっさらな何もないところから新規性に富み、かつ事業化に耐えうる事業企画を生み出すのは難しい。
どれだけ斬新で奇抜なアイディアであっても、ビジネス化できないようなアイディアでは意味が無い。
だからこそ、起業家や事業開発に関わるビジネスパーソンは、事業アイディアの発想や絞り込みのガイドラインとなる事業開発の型を身につける必要があると思うのだ。

そういうわけなので、事業開発の型を実ビジネスに見出してナレッジ化していくシリーズをここに宣言したい。
スライウォツキーの利益モデルに近いものだが、スライウォツキーはどちらかと言うと利益を最大化を目的とした事業戦略の型、私が提唱したいのは事業開発を成功率を上げるための型だ。
名付けて「新規事業開発の型」シリーズ。
実ビジネスに型を発見するたびにエントリーを追加して、徐々に引き出しを増やして行こうと思う。


記念すべき一つ目の型は「防衛的参入」だ。


防衛的参入とは?

初っ端から消極的にも思える型の名称なのだが、よく見られる新規マーケットへの参入方法だ。
この新規参入の型を有効活用できるのは、特定の業界のトップ、ないし最大手の企業に絞られる。

業界のトップ企業がその座から転げ落ちるにはいくつかのパターンがあるが、一番ダメージが大きい形で転落するのが破壊的イノベーションをバックに業界へ殴りこみをかけたベンチャー企業に蹴落とされた時だ。
実例を挙げよう。
オンライン書籍販売でAmazonに市場を奪われ、事業買収の噂話も出ている元米国最大手書店のバーンズアンドノーブルだ。
Amazonが立ち上がって急速に販売数を伸ばしながらも、バーンズアンドノーブルを始めとした米国の大手書店はAmazonなんてコンピューターオタクが利用するだけのニッチなビジネスと高をくくっていた。
Amazonという全く書店業界のゲームを変えるビジネスに対して正しく危機感を持っていれば、圧倒的なブランド価値を持っていたバーンズアンドノーブルにはいくらでも反撃のチャンスはあっただろう。
しかし、バーンズアンドノーブルがようやく危機感を覚えて参入した頃には、もはやAmazonはそのユーザビリティと利便性を武器に完全に顧客をガッチリと掴んでいて手を付けられない状態になっていた。


防衛的参入は、破壊的イノベーションを携えたベンチャー企業への対応策として最大手、または準最大手企業が真っ向から同じビジネスモデルで事業を立ち上げる事業開発戦略を意味する。
その参入方法は新たに子会社を設けるか、似たような事業モデルを展開していた事業会社を買収するというのが主だった方法論だ。

防衛的参入は言うまでもなく元の事業とカニバって(共食いして)しまう。
だが、新たな参入者に全てのパイを奪われるぐらいなら、子会社に食わせてしまったほうがいい。
その破壊的イノベーションが旧来のビジネスモデルを完全に食いつぶしてしまう勢いなら、その子会社に全ての経営資源を移すという選択肢も確保できる。
古いビジネスモデルが完全に駆逐されてしまうとしても自社は生き残る、ということを最終目標に置いた事業開発戦略だ。

防衛的参入の例

防衛的参入が実際に行われた例として私たち日本人にとって身近なのは、ANAやJALのLCC参入だろう。
ANAもJALも自社の顧客を奪い、旅客運賃に下げ圧力をかけるLCCは苦々しく思っていただろう。

しかし、ANAもJALもLCCが一定の顧客を獲得するだろうと読んで、早めにLCC子会社の設立や海外LCC航空会社とアライアンスで既存のビジネスモデルの宿敵と手を携えた。
結果的に予想していたよりもLCCへ顧客が流れなかったので、一部LCCとのアライアンス解消という流れも見受けられるのだが、既存大手の対応策としては素早く適切だっただろう。
下手に高級路線なんかに舵取りしていたら、空気ばかり輸送することになり、損益分岐点の高い航空会社のことだから破綻していたかもしれない。

業界トップからほと遠い企業ならほとんど検討することもない「防衛的参入」だが、大手企業に務める人は意識しておくべきだろう。

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