2013/07/12

大企業は攻めよりもまず守り


私は社員数千人のいわゆる大企業で新規事業開発の役割を担ってはいるのだが、大企業のアナトミーに理解が深まるほど新規事業よりも大切なことがあることに気づく。
大企業の戦略として新規事業開発よりも先に来るのは、既存事業の防衛だ。


私の考えとしては、大企業にとって新規事業開発は重要なことだと思っているし、新規事業を作り出すことをライフワークだと感じている。
それでも、まず既存事業の防衛が第一なのだ。

第一に、新規事業開発の予算はどこから来ているのかと言えば、それは既存事業の生み出す利益にほかならない。
既存事業が大きく毀損して利益が失われれば、企業は新規事業の開発をしている場合ではなくなってしまう。
普通の企業なら恐らくすぐに新規事業予算を凍結して本業のリカバリーに全力を注ぐ経営判断がなされるだろう。

だが、中小企業にとっては少しストーリーが異なるかもしれない。
一つの事業で事業が成り立っているような中小企業では、その既存事業のマーケットそのものが消滅してしまう、あるいは極端に縮小してしまうということがありえる。
そんな時には、会社の存続のために全リソースを既存事業ではなくて新規事業に注ぐこともありえるだろう。


次に、大企業は新規事業によって得られるものよりも失うもののインパクトが大きい。
新規事業は「千に三つ」と言われるくらい、その企業にとって意味のある事業を立ち上げるのは難しい。
意味がある、とは売上や利益がPLにある程度の影響を及ぼすインパクトを有するということだ。
しかも事業として安定稼働に乗せるまでには、事業の大きさにもよるが数年単位の時間がかかる。

一方、自社のメインである事業ドメインで、これまでと全く違う方法で顧客に非連続的な付加価値の飛躍をもたらす破壊的イノベーションがもたらされると、短い期間で一気に利益を失う可能性がある。
そして多くの場合、この変化は不可逆で失ったマーケットを取り戻すことは困難だ。

新規事業が上手く立ち上がったとしても、いいところ全社売上の10%に達するのに3〜5年程度だろう。
だが、破壊的イノベーションによる毀損は、1,2年で売上の30〜50%になることもありえる。

つまり、インパクトの大きさと発生確率を掛けあわせた期待値が、新規事業の創出と既存事業の破壊では全く非対称なのだということ。
特に、業界でトップシェアを占めているような企業は、それ以上にシェアを伸ばすことは非常に難しいのに、失うのは非常に簡単だ。

大企業の経営者は既存事業の防衛にかけるリソースを低く見積もってはいけない。


photo credit: [martin] via photopin cc

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