2013/07/24

他とは違う喫茶室ルノアールの価値提供


カフェでも喫茶店でもラウンジでもない「喫茶室」ルノアール。
最近流行りのシアトル系カフェやドトールやベローチェのような比較的安価なカフェとも違う、独特の存在感を示している。
スターバックスのような綺羅星のごとき企業ではないが、独特の渋みのあるビジネスで他の競合カフェ・喫茶店と差別化している面白い企業だ。


なぜいまさら創業から49年目となるルノアールを取り上げたかというと、最近、といっても数カ月前に私が引っ越した今の家の近所にルノアールがあるのを発見したからだ。
今までにも1,2度行ってみたことがあったのだが、何となくおっさんの喫茶店という印象しかなかった。
だけどせっかく近所に引っ越してきたという縁もあるので久しぶりにブラっと寄ってみることにした。
このブログを書くために愛用のMacbook Airを持って。


作業のための空間

そんな訳で久しぶりにルノアールに来てみて初めて、なぜルノアールが一等地にばかり長いこと店舗を構えることができるのかを理解したのだ。
ルノアールは黙々とパソコンで資料を作るなり、商談をするなり、読書をするなり、お客が何らかの作業に徹する場所として明確な意味を持った喫茶”室”だったのだ。

私が立ち寄った時にも本を読んでいる人や、パソコンに向かって作業をしている人たちばかりであった。
そんな人達ばかりだから大声で話している人もおらず、また、店員も不必要に歩き回らないので落ち着いて作業できる。
私もブログの原稿を書くのに随分はかどった。


首尾一貫したビジネスモデル

ルノアールのビジネスモデルは他の喫茶店と特に違いがない、一般的な喫茶店のビジネスモデルだ。表面上は。
しかし、バリュープロポジション(価値提案)が明確で、全ての要素がそのバリュープロポジションを支持するために存在している。

ゆったりとしてクッション性の高いソファーやチェア、少し照度の低い証明、静かなジャズなどのBGM。
そのどれもが、ゆったりとくつろいだり作業したりする空間としてのルノアールを演出している。

一番感心するのは店員の接客だ。
前項でも書いたように、店員が早くお客を返そうという素振りをおくびにも出さない。
それだけでなく、定期的に冷たい水と暖かいお茶を運んできてくれる。

だが、私がもっとも感心したのは、店員の静かで大人しい接客態度だ。
ルノアールの店員の接客は、他のカフェチェーンだと恐らく落第点を付けられるであろう大人しさなのだ。
しかし黙々と作業に興じるお客さんたちの中にあって、元気な接客は不必要。
店員がテキパキと活発に接客をしてると、なんとなくゆっくり過ごしにくくなるだろう。
だから、この接客スタイルがルノアールには大正解なのだろう。


一人ひとりのお客の滞在時間が他のカフェと比べると大幅に長いであろうルノアール。
残念ながら回転率は競合と比較して低い数字だろうが、回転率の悪さを価格に転嫁している。
ホットコーヒーの価格を比較すると、スターバックスの6,7割増と非常に高い。

だが、この価格設定もまたルノアールのバリュープロポジションに貢献しているのが見事だ。
見た目の価格がとても高いので、大声でおしゃべりするような「子供」は寄り付かず、静かに空間を満喫する「大人」が集まるのだ。
あらゆる要素を「大人がくつろいで黙々と作業に興じる空間」という中心的価値観に照準を合わせて配置すると、自然とそれぞれの要素が正の循環を生み出すという好例だ。


カフェでも喫茶店でもない「喫茶室」というネーミングには、ここはコーヒーを飲むためだけの場所にあらず。作業のためのスペースです、という意味合いが込められている。
長年利用者の期待に応え続けていることは、財務指標に現れている。
毎年非常に安定した売上高をキープし続け、経常利益も安定し、新しい業態に投資してチャレンジし続けている。

設立から約50年の老舗ながら、客としても、ビジネス解析対象としても興味深い企業だ。

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