2013/07/29

宝島社の雑誌が媒体価値を上げたカラクリ


宝島社という出版社がある。
慢性的な不況にある出版業界の中で、ご多分にもれず宝島社も右肩下がりの決算を続けていた。2006年までは。
2007年、創業社長である蓮見社長が一番誌戦略を打ち出して見事V字回復させた。

東洋経済ONLINEより

一番誌戦略は非常に高い戦略性を持った一貫性のある打ち手だった。
雑誌の収益モデルは特殊で、雑誌自体の販売による収入と、雑誌に掲載する広告からの収入の2本の収入ラインがある。
雑誌ビジネスで利益を上げるには、雑誌の売上部数を増やす、販売単価を上げる、雑誌の製造コストを下げる、広告本数を増やす、あるいは広告単価を上げる、というどれかの結果に結びつく打ち手を打つことになる。
宝島社は雑誌のおまけを充実させると同時に雑誌を下げ、媒体価値(≒売上部数)を上げることで広告本数と広告単価を高めて利益をあげる戦略を採用した。


媒体価値を向上

雑誌の媒体価値とは、言ってしまえば広告出稿企業がその雑誌に広告を出すのに支払う対価のことだ。
宝島社の雑誌は、12誌中7〜8誌がトップシェアを誇るという。
つまり、広告主にとって宝島社の7,8の雑誌はもっとも広告料を高く支払う価値があるということ。

2007年まではほとんどトップシェア雑誌がなかった宝島社をここまでの地位に導いたのは、雑誌のおまけにあった。
しかし、おまけをつけたことだけでトップシェアを獲得できるほどの差別化につながったわけではない。
右肩下がりまっただ中の2004年当時から宝島社は雑誌におまけをつけていたのだ。


値下げと価値の高いおまけの両輪

おまけをつける戦術が花開いたのは、雑誌に価格弾力性を持たせて値下げしたこと、そして他社が追従できないクオリティの維持という両輪で他社の追従を跳ね除けたことにある。

どういうことかというと、前述のとおり一番誌戦略の本筋は広告本数と広告単価を上げることにあるので、雑誌の価格は原価が回収できる程度の価格で構わない。
それよりも価格を下げることで出来るだけ多くの人に購入してもらうことが重要であった。
なぜなら発行数を増やすことで広告を出稿する先の雑誌として価値が高まるからだ。
さらには、書籍も雑誌も返品コストが出版社にとって重い負担になっているのだが、人気を博して雑誌の返品率が下がれば損益分岐点もさがる。

おまけのクオリティで勝負

値下げは確かに販売数増の原動力になったが、価格を下げるだけで売れるほど雑誌業界は甘くない。
もう一つ付け加えると雑誌におまけを付けるだけで売上ナンバーワンに慣れるわけでもない。
なぜかというと、雑誌におまけを付けるのは競合他社が簡単にマネできる戦術だからだ。

宝島社のおまけがなぜ強力な差別化要素になることができたのかと言うと、宝島社のおまけは『雑誌価格よりも価値がある』という最も基本的かつ他社が対抗するのが難しい付加価値提供に成功したからだ。
宝島社のおまけ担当者は有名ブランドと製造工場の間を飛び回り、読者が驚くようなおまけを提供し続けた。
価値の高いおまけが雑誌をブランド化し、その価値の高いおまけを作るノウハウは宝島社の雑誌を差別化させる原動力になったのだ。

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