2013/07/31

業務設計のできる人、できない人の違い



新規事業を立ち上げるのならば、業務設計を行うスキルが必要不可欠だ。
業務設計とは、与えられたリソースであるインプットから要求されるアウトプットを出すまでのプロセスを、エラーが起きにくく、最短で実行でき、想定されるイレギュラーに耐えうるフローを描き出す作業のこと。とても複雑な作業であり、唯一の正解はない。状況が変わればそれに即したフローへとプロセスを組み換えなければならない。

スタートアップベンチャーなら事業設計も何もなく、CEOも社員も一緒くたに何から何までやればいい。しかし、企業の中の新規事業屋は常にフロントオフィスへ業務を渡すことを念頭に置いておかなければならない。業務を渡すということは、業務設計書を渡すと言うのに等しい。業務設計がなぜ新規事業開発に必要なのかはわかっていただけただろうか。

BPOやBPR、ITコンサルなどで顧客企業の業務設計を日常的に行なっている人からすれば簡単なことかもしれないが、新卒から営業一筋の営業マンや財務畑のカカシのような特定の職種にずっと携わっている人にとっては凄く難しいスキルであったりする。私が聞いたり目にしてきた人たちの中で、業務設計のできない人々はどんな人達なのか分析してみたい。もちろん、自分への戒めの意味が込められているのは言うまでもない。


鳥の目で全体を俯瞰できない

本エントリーの一番初めに業務設計の定義について書いた通り、業務設計のゴールは与えられたリソースで滞りなくあるインプットから要求されるアウトプットを出すことだ。業務を設計するポイントは、制約事項(人員など)を踏まえた上で要件(アウトプットまでの時間、要求品質など)のバランスを取ることだ。ここに業務設計のアートがあるといっていいだろう。

制限条件と要件のバランスを取るために必要不可欠なのは、鳥の目で全体を俯瞰する能力だ。ある業務のフローを作ろうとすると、あちらを立てればこちらが立たず、あちらを万全にすればこちらに漏れがでる、という複雑な知恵の輪を解いているような感覚に陥る。優れた業務設計者は、満たせる要求やコスト、そしてリスクのバランスを取って最大公約数的なフローを描く事ができる。

鳥の目で全体を俯瞰する能力に欠ける人は、一連のフローの全体最適を行えず、一部分だけ完璧な部分最適や、そもそもてんで話にならないフローしか描くことができない。

蟻の目で細部まで見ることができない

鳥の目で全体最適を行いひとつひとつのプロセスを緻密に並べたとしても、各プロセスの想定時間やコスト、歩留まり率などが全く想定と異なっていたとしたら、それは絵に描いた餅にすぎない。実際にその業務を走らせたら、時間通りにアウトプットされないわ、出てきたものは要求品質に満たないわで、大変なことになるだろう。これが何を意味しているのかというと、全体のフローを最適化できる鳥の目と同時に、一つ一つのプロセスをきめ細やかに見る蟻の視点も必要ということだ。

蟻の目では、一つのプロセスを手順レベルに分解してチェックできるだけの注意力が必要だ。例えば、発注書を送るというプロセスも蟻の目で細かく分解していくと、

共有データの発注書ファイルを開く

顧客の企業名、部署名、担当者名、電話番号、発注商品名・型番、商品単価、発注数、小計、税込合計額を記入する

A4サイズ横向きでカラー印刷する

購買部長に発注書の自社名の横に押印してもらう

共有データの送付状テンプレートを開く

日付、顧客名、時候の挨拶、同封物品名を修正してA4縦でモノクロ印刷する

社名入り封筒に宛名書きし、送付状と発注書を3つ折りにして封入し、糊付けして〆印を打つ

社内配送センターへ持って行き、経費チャージ先コードを伝え、切手を貼ってもらい発送する

と、このように数多くのステップが含まれる。さらに社名入り封筒が欠品していたら、という想定されるイレギュラー時の対応を検討し、郵便局の回収が何時なので発注プロセスを開始する最遅の時間は何時に設定する、というような詳細な設計を行う。この作業には蟻の視点が不可欠なのだ。しかし、「右手でマウスを握って右に2cm動かして右手人差し指で左ボタンを1回クリックして0.15秒以内にもう一度左クリック」というように細ければ細かいほど良いというものでもない。意味のある適切な粒感で行う必要がある。

物事の粒感を揃えることができない

蟻の目の例で見たとおり、細かければ細く見るほど精度の高い業務設計ができるかといえばそうではない。鳥の目が行き過ぎて、「購入要求→発注→納品」というフローは全く意味を成さない。どちらの視点も、その業務に要求される条件によって、適切な粒感という物がある。

例えば、全体最適を測るためにどの粒度の鳥の視点を持つべきかは、例えば業務に関わる部署の数や人数によっても変わってくるだろうし、インプットからアウトプットまでの時間制限や求められる品質にも左右される。

蟻の視点の粒度を決める要素は、例えばその文書の使用目的だ。ある経理処理に関わるフローを、経理に精通した人が見て作業に入れるレベルが求められているのか、ズブの経理素人が見て作業に入れるレベルが求められているかで、説明の細やかさが全く変わってくる。業務設計書に加えて手順書を作るという判断もあるだろう。

物事の粒度を正しく捉える能力はセンスもあるが、何より経験値が重要だ。こればかりはやってみて失敗して、そこから学ぶしかない。失敗すれば、「この設計書じゃわかんねー」とか責め立てられるさだめにあるのだが、謙虚に受け止めて次に活かす真摯な態度が必要だ。



photo credit: no3rdw via photopin cc

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