2013/08/31

企業が米国海兵隊に学ぶべきリーダーシップ 2

海兵隊

今回も引き続き、HBR出版の「いかに「サービス」を収益化するか」に収録されている、Jon R. KatzenbachとJason A. Santamariaの論文"Firing Up the Frontline"から、米国海兵隊に学ぶリーダーシップの2つ目のエントリーだ。


前回のエントリーでは、元の論文の5つの章立てのうち、「1. 中核となる価値観について徹底的に教育する」、「2. 全員がリーダー役をこなせるように訓練する」について書いた。今回は残りの3つの章立てについて書いていきたい。


1. 中核となる価値観について徹底的に教育する
2. 全員がリーダー役をこなせるように訓練する
3. チームとワーキング・グループを区別する
4. 成績の劣る人間に注意を向ける
5. 規律を利用して誇りをもたせる


3. チームとワーキング・グループを区別する

この論文によるとチームとワーキング・グループは明確に異なるグループの運用方法である。私も含めてだが、これら二つの違いをあまり考えずに使っている人が多いのではないだろうか。

ワーキング・グループとは、ある課題に対して知見があり解決策を知っている一人のリーダーと手足となるメンバーで構成されたチームである。メンバーはアサインされたタスクを期限までに忠実に完了することにだけ責任を持っており、リーダーはこれらチームメンバーをマネージして最終的な結果に対する責任を持つ。

一方、チームとはメンバー全員が協力して課題解決のための方法を定め、それぞれが適切なタスクを持ちまわって全員が一緒にゴールに向かっていくアプローチだ。メンバー全員がそのチームのプロセスに責任を持ち、他のメンバーのアウトプットに責任を持ち、そしてチームの結果に対して責任を持つ。

企業ではチームとワーキング・グループの機能の違いが認識されないまま、目的に合わない指揮系統のグループが作られている。特に、皆である解決へたどり着くためのチームを組成したと言いながら、実質的にはリーダーである役員のワーキング・グループ状態なのに、アウトプットの責任だけはチームメンバーにも持たされている、というような中途半端なチームが多いのが現実ではないだろうか。

海兵隊では、ライフルマンや砲撃手、砲撃助手、そしてリーダーなどのすべての役割を経験させ、チームとして振る舞わなければならない場合とワーキング・グループとして振る舞わなければならない場合を、隊員は正確に理解している。


4. 成績の劣る人間に注意を向ける

海兵隊では、落ちこぼれや役立たずを作らないことのために指揮官のリソースが割かれている。その理由は、命に危険が及ぶような状況で、自分のチームに全く役立たずのメンバーがいる状況を想像すればすぐに分かることだろう。成績が劣る人間を早めにケアしてチームの底上げを図ることは、自分たちの命にかかわる重要なことなのだ。

一方で、普通の企業では成績の劣る人間に対してリーダーのリソースを割いて底上げを図ろうとするモチベーションはとても低い。企業はできる限り優秀な人間にだけ金と時間を集中して投下しようとするものだ。

優秀な人間だけを育てて優秀でない人間はリプレイスするという人材戦略は合理的な考え方に思えるかもしれない。しかし、ひとつの企業を全て優秀な社員で固めることなど不可能だろう。どの会社も優秀な人材を採用するのに苦労している。
いつまでも優秀な人材を採用できないことに手をこまぬいているくらいならば、優秀でない人材の成長を促すために経営リソースを使うことは妥当な選択ではないだろうか。


5. 規律を利用して誇りをもたせる

一般的に、規則は社員が好き勝手して組織を崩壊させないために必要な縛りだと考えられているが、海兵隊では隊員に誇りを持たせるエンパワーメントのツールとして利用されている。

海兵隊の隊員は「自分自身が最も厳しい上官になれ」、「他の隊員に規律を守らせる同僚になれ」と教えられるそうだ。これは文字通り他の隊員に規則を守らせて海兵隊の規律を守ろうということではない。隊員は厳しい訓練をこなしていくことで、規律を守ることが自らを助け、他の隊員を助けるものであることを身を持って理解していく。その過程で規則を守ることの重要性を理解し、そして規則を守っている隊員ほどチームに貢献していることを学び、規律を守ることが誇りにつながるのだ。



優れた海兵隊員は隊の一員であることに強い誇りと自負心を持っている。そしてその組織の規律を守ることに全力である。このすぐれた海兵隊員の姿は、エクセレントカンパニーと呼ばれる一流の企業の社員と全く同じなのではないだろうか。
企業は海兵隊から組織の作り方を学べる部分が沢山あるだろう。



関連エントリー:
2013/8/31 企業が米国海兵隊に学ぶべきリーダーシップ 1





企業が米国海兵隊に学ぶべきリーダーシップ 1

海兵隊

一般的に言って、海兵隊のような軍隊に求められるリーダーシップと企業に求められるリーダーシップは全く違うものだと思われている。その際たる理由は、組織の存在理由、そしてリーダーに求められるアウトプットの質が全く異なるものだからだ。
企業は海兵隊のように命をかけたミッションではない(とはいえ一つの失敗が社会的生命を奪うこともあるが)が、海兵隊に求められるよりも複雑で不確実性が高いパズルを解かなければならないというイメージがあるからではないだろうか。

ハーバードビジネスレビュー(HBR = Harvard Business Review)が2005年に発行した「いかに「サービス」を収益化するか」にも収録されている、元マッキンゼーのディレクター、Jon R. Katzenbachと当時同社ビジネス・アナリストであったJason A. Santamariaが上梓した論文、"Firing Up the Frontline"では、いかに海兵隊の伝統的なブートキャンプやトレーニングが企業にも通ずるリーダーシップの醸成につながるかが解説されている。
とても感銘を受け、すぐに使えるナレッジでもあったので自分用のメモとしてもエントリーにまとめておきたい。

強い誇りと価値観

海兵隊員を表現するキーワードとしてよく使われる「少数精鋭(The Few, The Proud)」や「一度なったら、常に海兵(Once a Marine, Always a Marine)」という言葉は、海兵隊員のキャラクターを表している(参考: Wikipedia)。
海兵隊員は皆海兵隊であることに対して強い誇りを持っており、アメリカ国民の規範たれという自負心に満ちて責務を全うしている。この組織に対する強い忠誠心を醸成しているのは価値観の共有と規律という、企業が社員に求めるものと全く同じ要素によって作り上げられている。

海兵隊の不思議さは、4年という短い任期の間にまともな企業ではなかなか採用されないような粗野で素行が悪い荒くれ者が、組織と母国に忠誠を誓い、喜んでミッションのために命を投げ打つ人材に変貌を遂げるのかというミステリーにある。
組織に対する忠誠心と誇り、そして強いリーダーシップという、企業が躍起になって得ようとしているこれらの価値をいかにして海兵隊が新兵に植え付けているのか、元の論文の同じ以下の章立てをもって説明していきたい。

1. 中核となる価値観について徹底的に教育する
2. 全員がリーダー役をこなせるように訓練する
3. チームとワーキング・グループを区別する
4. 成績の劣る人間に注意を向ける
5. 規律を利用して誇りをもたせる

1. 中核となる価値観について徹底的に教育する

海兵隊では、採用されたばかりの新兵の教育係に着くのは、組織の中でもシンボリックな忠誠心の高い隊員達だという。
企業でも最近はクレドカードなどを配ることが多いが、クレドを配るだけではその企業の価値観を紹介しただけに過ぎない。海兵隊が価値観の紹介に留まらないのは、様々な形のイニシエーション(通過儀礼)や肉体的・精神的に追い詰められるトレーニングを通じて価値観を刷り込ませているからだ。悪い言い方をすると、やっていることはカルト宗教と変わらない。

海兵隊の新兵は、過去に起こした過ちを洗いざらい告白させられ、潔白であること、組織には忠誠を誓い嘘をつかないことをこのイニシエーションを通じて刷り込まされる。また、30キロ以上の荷物を背負って24キロの行軍という肉体的にも精神的にも追い詰められるトレーニングを行いながら、勲章を受賞した英雄的な海兵隊員の逸話を絶えず話して聞かせ、価値観を刷り込んでいる。肉体的・精神的な疲労で判断力のつかなくなった状態の隊員に価値観を刷り込むという手法は、まさに新興宗教と同じ手法なのだ。

しかし、カルト宗教と違い、教えこんでいる価値観が間違ってさえいなければ、使命感に燃える優秀な人材を創りだす方法である。

2. 全員がリーダー役をこなせるように訓練する


指揮官の負傷や死亡、その他の理由でいつ指揮官がいなくなるかわからない、という極限を想定している海兵隊では、誰もがリーダー役をこなせるようになっている。いざというときに頭をなくした烏合の衆になることは、そのチームの死を意味する。
企業ではリーダーが突然いなくなるという極限の状態をそこまで想定する必要はないと思うかもしれない。最悪別の課長クラスをあてがうなり、残ったメンバーの中から優秀な人間を繰り上げれば良いと見立てて高をくくっていることも多いだろう。だが、リーダーシップ経験のない人材が突然チームを引き継いだところで失敗の可能性が高いのは海兵隊でも企業でも同じだろう。

海兵隊では、入隊したばかりの下士官候補生に初期訓練中からリーダーシップトレーニングを行う。教官はリーダーに必要な素養を常に候補生達に語りかけ、自らの行動で率先してそれを示す。また、新米のリーダーとベテランのリーダーをペアにした「リーダーシップ・パートナーシップ」という手法でリーダーシップ能力の底上げを行うのだ。


昨今企業では組織横断のタスクフォースやプロジェクト主体の動きが多い。そんな仕事の進め方が一般化してくると、海兵隊のように全員リーダーシップを取れる状態が理想的であることは創造に難くない。誰でもリーダーシップを取れる教育システムを有していることは、他の企業に対して強力な優位性になるはずだ。

しかしながら、伝統的な企業のリーダーシップに対する考え方では、リーダーシップはトレーニングで開発されるべきものではなく個人が素質として持っているもので、その素質を持っていない人はリーダーシップ能力を開発しても効率が悪い、ないし時間の無駄であるという態度をとる。だから企業では横並びの社員の中からリーダーシップがありそうな人を選定し、選ばれた人だけにリーダーシップトレーニングを行うのが常だ。だが、この方法が本当に企業にとって一番恩恵があるリーダーシップ育成方法なのだろうか。

先に上げたように、ピラミッド型組織ありきの仕事の仕方からプロジェクト型の仕事の仕方に変わってきた今、海兵隊のようにだれでもリーダーシップを取れることのほうが価値が高いのではないだろうか。


2013/08/30

進むシェア ニューヨークでバイクシェア


ニューヨークでバイク(自転車)シェアが開始された。

ニューヨーク市内に330ヶ所のステーションと6000台のバイクがあり、好きな場所で乗り捨てができる。
レギュラー利用者の利用料は年間95ドルだが、1度に乗り続けられる時間は45分に限られている。この時間を超過すると超過料金がかかるシステムとなっており、利用開始時にデポジットが約100ドル掛かる。時間制限は循環を促す効果があり、デポジットは自転車を自宅へ持ち帰る輩が出てくる事態を防ぐための対策だろう。
旅行者も一時利用することができて一日パスが9.95ドル、一週間パスが25ドルとなっている。

ニューヨークの公共交通機関は日本と比べて割高で、地下鉄・バスともに距離に関係なく2.5ドルする。しかも、マンハッタンの道路は碁盤の目で信号が多く、一通だらけなためタクシーもさほど早くない。バイクはマンハッタンの中では恐らく最も安くて早い移動手段なのだ。

このバイクシェアはとても好評で、2ヶ月半で7万人以上のレギュラー会員を獲得している。
尚、シティバンクが全面的にスポンサーとして40億円ほど拠出しており、ニューヨーク市が運営を担当している。実に170人分の雇用が生まれているのだとか。

日本でもいろいろな分野でシェアが広がってきていることは、皆さんも身の回りで感じていることだろう。
分かりやすいのはタイムズなどのカーシェアリングだ。月額の基本利用料は1000円で、一ヶ月あたり1時間15分の利用料が含まれている。超過分は基本200円/15分で、長距離移動には向いていないが普段使いならかなり安価に利用できる。
ただし、カーシェアでは他のステーションで乗り捨てができないので、ニューヨークのバイクシェアほど利便性が高くない。恐らく同じステーションに複数車が集まってきた時の問題があるからだろう。


日本でもバイクシェアサービスがあったら普及するか思考実験をしてみたが、マンハッタンのように分かりやすくない道路事情を考えると、欧米人の一部ツーリスト以外にはあまり旅行者の利用はないだろう。
また、意外とアップダウンが多い地形、バイクステーションを設置する土地の少なさ、地下鉄の充実具合を考えると、利用者の獲得も、利用者が利便性を感じるほど十分なステーションの獲得も難しそうだ。

参考:

2013/08/29

ベトナム進出を考えている企業が知っておくべきこと

ベトナム



尖閣問題や反日デモがあってから、製造業を中心とした海外進出企業の目は東南アジアに注目が集まっている。特に、ベトナムは日本の製造業から新たな海外生産拠点として期待されている国の一つだ。
しかし、日本はどれだけベトナムの事を理解しているだろうか?先日ベトナムへ進出を考えている企業向けのセミナーへ参加してきたので、そこで得たベトナム人像をシェアしてみたい。

ベトナム人の特徴

ベトナム人の多少ネガティブな点をあげつらうことになるが、ベトナム人自らが評していたこととして冷静に受け止めて欲しい。

■先を考えない

ベトナム人は一日二日先のことは考えるが、来年どうありたいから今はこうした努力をする、といった考えかたをするのが非常に苦手な人種だという。これは決して彼らの思考能力が劣っているとかそういうことではない。あくまでも戦争が長く続いたがために、明日死ぬかもしれないのにそんなに先を考えても仕方ないという思考が根付いてしまっただけにすぎない。
この気質は彼らの就労パターンにも現れていて、今よりも良い条件の働き口があれば後先考えずにすぐに転職してしまう人が多いようだ。

■家族を大切にする

新興国全体に言えることではあるが、ベトナム人は家族を大切にし、家族と過ごす時間を最大化することに努力を惜しまない。このため、残業をしたがらない人が多いという。
こうした性質を備えた背景には、家族を基本単位とした農業中心の生活が長かったため、家族を大切にする風潮が生まれているようだ。

■階級闘争思想

ベトナム人の多くは資本家や経営者といった人々に対して隔世の念を抱いている人が多いようで、雇い主や上司という立場の人達に対して偏見を抱きやすいようだ。
また、外国に支配されていた期間も長いため、同じように外国人に対する警戒心や劣等感も高く、反発しやすい傾向にある。

ベトナム人の仕事に対する姿勢

■ブルーカラーとホワイトカラーの二極化

ベトナムでは大学卒はホワイトカラー、大学卒未満はブルーカラーというように、大学卒が否かではっきりと就ける仕事が変わるという。ブルーカラーの仕事の中でも、人口の約半分が農林水産業の職に就いている。
また、先進国的な企業文化が一般市民に浸透しておらず、新入社員向けのビジネス基礎研修のような教育機会が必要不可欠だという。講師からは、ベトナムへ進出する企業はビジネス基礎研修の機会を提供することでロイヤルティの高い社員を集められるかもしれない、というコメントもあった。

■ビジネスの基礎教育徹底

前項で挙げたように、ビジネスの基本的な教育機会が必要不可欠だ。
例えばToDoリストの使い方を教え、毎日ToDoリストに従って仕事をし、終業時に報告する、といった基本的なことを教え込み実践させることが必要になる。また、朝礼を行って気づきを発表する機会を提供することも有効だという。

2013/08/27

14町村のITシステムをまとめた神奈川県町村情報システム共同事業組合の鮮やかな手法

神奈川県町村情報システム共同事業組合という組織がある。
この組織の役割は神奈川県内にある14の町村共通の情報システム部門として安定したシステムの運用とセキュリティ向上、そしてトータルコストの削減に務めることだ。

この組合ができるまで、各町村はITベンダーへシステムの構築を丸投げしてITシステムの運用コストや改修コストが高く付いてた。しかし、各町村共通システム基盤をクラウドへ移管し、ITシステムのコストを30%削減することに成功したのだ。

高止まりする自治体のITコスト

自治体のようにITシステムの構築をITベンダーへ丸投げすると高く付く。ユーザーである自治体はビジネス要件だけRFP作成担当のITベンダーへ投げ、担当するベンダーが我田引水なRFPを買いてたっぷりピンはねした値段で受注するのがよくあるパターンだ。

共同調達、共同仕入れによるコスト削減というのはIT分野にかぎらずコスト削減の方法としてよく使われる手段だ。だが、ITシステムは単純にボリュームを増やせば安くなるという単純なものではなく、導入後の運用コストやシステム改修コストなども継続的に発生する。トータルでコストダウンを実現するにはその道のプロが味方にいなければ難しい。
神奈川県の14の町村は情報システム共同組合という14町村共通の情報システム部門とも呼ぶべき組合を組織することでこれを実現したのだ。

14町村のITを統合した鮮やかな手法

複数の組織のITシステムを統合管理する一つの組織を作ってトータルコストを下げよう、という発想はそう珍しいものではないが、これを実現するのが困難であることは簡単に想像がつく。
一番もめるのは14の町村で共通で使用するシステム基盤の仕様決定だ。各町村はそれぞれにわがまま放題の独自仕様でITベンダーに開発を委託したシステムがある。どの自治体も今利用しているシステムの機能や仕様は100%新しい共通システム基盤にも反映されていて欲しいと思うものだ。

町村情報システム共同事業組合はこの問題に対して、最初の共通システム基板の要求仕様公開にあたってはいかなる小さな要望についても削ることなく、全ての町村の全ての要求を全部のせして公開した。仕様項目数は1000を優に超え、その中には矛盾した仕様もあっただろうが、とりあえずこの大胆な手段のお陰で要件が決まらずにいつまでたってもプロジェクトが前に進まないという状況は防ぐことができた。
恐らく意見調整をしてちゃんとした要求仕様を作ろうとしたならば時間切れになってプロジェクトは空中分解していただろう。

次にプロジェクトが挫傷する可能性のあるポイントは最終仕様の決定とベンダー選定だが、ここでも町村情報システム共同事業組合は鮮やかな手段で解決した。
彼らは意思決定の場にユーザーを積極的に参加させたのだ。システム選定の場に実際にそのシステムを使用する職員を集め、システムを操作してみて最も良いと思うものに対して評点を付けさせ、得点が最も高かったシステムを選択した。
つまり、意思決定にユーザーの意志を色濃く反映させることによって、「誰かが勝手に買ってよこした使いづらいシステム」と思われることを防いだのだ。


自治体という統合するのが難しそうな14もの組織を統合して3割のコスト削減を実現した実績は素晴らしく、その手法は学ぶべきところがある。
民間企業でも稀にみるシステム統合のベストプラクティスなのではないだろうか。

2013/08/26

日本郵便の高齢者生活支援サービスはなんだかアンビバレント

日本郵便ロゴ

日本郵政グループの日本郵便が地方在住の高齢者の安否確認や食料品・飲料の買物代行サービスを今年の10月から開始するそうだ。
新聞の記事によると、高齢者の安否確認だけでなくその結果を遠方に済む家族へレポートしたり、医療機関の紹介や生活相談に応じる電話サポート窓口も開設する。

参考:


日本郵便の高齢者支援サービスへの参入のニュースは、少しアンビバレントな気持ちになる。
民間企業として収益性を高めるために新しい事業に参入するというニュースは、事業開発を生業にしている身からすれば諸手を上げて賛成する。しかし、国営時代に培った2万4千を超える拠点を活用して新たな事業に参入するということは、同じような事業に参入しようとしている、あるいは既に参入している企業を駆逐することになるのではないかという危惧がある。

民間企業が震え上がるアセット

日本郵便の企業規模と資産は普通の民間企業には全く太刀打ちできないレベルだ。毎年2兆円の営業収益を上げ、現預金で2兆円保有し、2万4千もの拠点(郵便局)と10万人近い局員を保有している。

今回日本郵便が参入しようとしている自宅在住高齢者への買物代行サービスはまだ他の企業も参入し始めたばかりの新しい事業だ。これだけ大きなアセットを持つ日本郵便が参入してきたら参入済みの企業は大打撃だろう。サービスを提供するために体制を構築するのに必要な初期投資が全く違うからだ。
郵便局は既存の郵便局と配達員を活用するはずなので参入コストが低く、この事業で回収しなければならない初期投資額が小さくて済む。サービス提供に伴う変動費も、この事業のために人員を拡大しない限りはほとんど0に近い。
だからサービス提供価格を競合よりも下げられる可能性が高いのだ。

日本郵便がこのサービスを安価に提供するようになれば、他の民間企業が参入するのは難しくなる。日本郵便が事業を独占してしまうようになれば市場の理論が働かず、正常な競争があれば実現していたであろうサービスの品質向上や価格競争が起こらないかもしれない。

社会的インパクトと民間企業としての成熟

他の民間企業へのネガティブなインパクトは無視できないものの、日本郵政が高齢者支援サービスへ参入することの社会的なメリットも無視できない。
郵便事業で得たアセットを活用すれば、この日本中から望まれている社会的意義の高い事業を他の民間企業よりも早く発展させることができるだろう。それは悪いことではないどころか、高齢者やその家族にとっては間違いなく良いことだ。買い物弱者や孤独死といった社会問題も緩和できることだろう。

そして、収益性を高めるために新たな事業へ参入するのは民間企業として間違いなく正しい選択だ。新たな事業が生まれることで雇用が増えたり、周辺産業へもプラスの効果があるだろう。特に日本郵便のような巨大企業であれば、波及効果も大きい。


日本郵便の高齢者支援サービスへの参入は賛成だし上手く行くことを期待する反面、正常な競争環境が失われないことを切に願う。

地方宿泊型BBQ施設


今年の夏は何かとBBQに行くことが多いのだが、つい先日奥多摩にある宿泊型BBQ施設に行ってきた。
奥多摩や地方の宿泊型BBQ施設は宿泊が前提となっていて、バンガローやコテージとBBQ場が併設されている施設がほとんどだ。一方、都内の町中にある都市型BBQ施設は日帰りで時間制になっている。

宿泊型BBQ施設と都市型BBQ施設は、宿泊のありなしと、食材や飲み物の提供だ。
都市型BBQ施設では施設側が食材を用意し、飲み放題サービスも提供しているところが多いのに対し、宿泊型BBQ施設では売店でちょこっと売っているのを除いて食材も飲み物も提供していない。都市型BBQ施設では手ぶらで立ち寄って気軽にBBQを楽しみたいというニーズが多いから食材も飲み物も施設側が用意するが、宿泊型BBQではお客が皆車で来場し、道すがら安いスーパーで食材も飲み物も調達してくるから施設で食材と飲料を準備する必要はないという考えなのだろう。


しかし、宿泊型BBQ施設でも食材と飲み物のセットを用意しておけば、新たな顧客の創出につながるのではないだろうか。
例えば電車で手ぶらで来場したいという、これまで宿泊型BBQを避けてきたであろう顧客層を獲得できる可能性がある。また、酒を飲んでも日帰りしたいというニーズや、宿泊した翌日も朝から酒を飲みたいというニーズもあるかもしれない。

バスや電車など交通の便の良い場所でなければ成り立たない、在庫リスクや人件費の問題でビジネスとして成立しないということもあるかもしれない。それでも場所貸しが全てのビジネスモデルから脱却できる可能性があるだろう。

マネタイズ方法を模索する模擬面.com

模擬面.comというサービスが新卒で就活中の学生たちの支持を集めてきている。
模擬面.comは2012年12月にサービスを開始した就活生向けの面接試験問題提供サイトだ。各業界の採用面接でよく聞かれる質問を紹介し、学生が自分で考えた質問の答えを先輩に添削してもらうためのシートを出力できるなどのサービスを提供している。質問を集めた業界は90にも及び、質問数の合計は1500にも及ぶという。

当初はこのサービスを3000円のエントリーフィーで提供していたが、2013年5月からは無料化され、ユーザー数の増加が早まったという。無料化の理由は明言されてはいないが、質問を集めたサイトへのアクセスだけに3000円を払う学生は少なかったのだろう。学生にとっての3000円は、面接でありがちな質問を教えてくれるというサービスとはつり合わないということだ。

収益性が課題

私の見立てでは、このサービスでユーザーから回収できる金額は、せいぜい300〜500円ではないかと思う。スマホなどの有料アプリの値段がこの程度だからだ。就活支援サービスは基本ユーザーである学生から収益を得るモデルのビジネスが少ないため、学生から就活関連のサービスで課金するのは難しいだろう。
それに、有益な情報が日常的にアップデートされるものでもないので、安価な料金を月額で設定するのも難しい。

今はまずユーザーベースの拡大に努めているようだが、今後のマネタイズの方向が難しそうだ。ネットの記事によると、学生への課金を諦めて企業側へ課金するモデルへ根本的な方向転換を行い、広告販売や就活生データの活用、人材マッチングなどの分野に踏み込もうとしているようだ。

参考

より収益性を高めるには

もし私がこのサービスに付加価値を付けるのであれば、最近海外の採用面接で利用されることが多くなってきているビデオインタビューテクノロジーを使用し、模擬面接の評価を行うサービスを提供するだろう。ビデオインタビューとは、予め設定しておいた質問に対して求職者がPCカメラの前で回答し、その動画を通して採用企業側が求職者の面接評価をするためのシステムを提供する。
このシステムを上手く活用すれば、模擬面接を学生が録画し、サービス提供会社が動画を評価してフィードバックするというサービスを実現できるだろう。

模擬面接をしっかりと第三者に評価してもらえる機会はそう多くないため、学生にとっても数千円程度支払う価値はあるかもしれない。また、このサービスから面接準備セミナーなど別商品へのクロスセリングの導線も貼りやすいだろう。


2013/08/24

「Offer Box」は新卒向けのダイレクトリクルーティング・プラットフォーム

Offer Box
Offer Boxサイトから
新卒が企業にエントリーして選んでもらうという従来型就職活動から、企業が新卒にアプローチする逆向きの採用へ。そんな逆転のリクルーティングを実現するために生み出されたサービスが、2012年9月に株式会社i-plugが開始した「Offer Box」だ。

Offer Boxでは、学生が自分のレジュメとなる公開プロフィールを登録してデータベース化される。新卒学生のプロフィールを閲覧した企業から、これはと思う学生に対して面接をオファーする。学生プロフィールのデータベース化と、企業が学生にオファーを出すプラットフォームとしての役割を担っている。


新卒向けダイレクトリクルーティング

実は、企業から求職者へという流れのリクルーティングは何も真新しいものではない。昔からエグエクティブリクルーティングの世界ではヘッドハンティングが当たり前のように行われているし、最近ではどのレイヤーの人でも参加できるビジネスSNSのLinkedinは、スカウトする人とスカウトされたい人の出会いの場となっている。
こうした企業が求職者のデータベースを検索し、望むスキルや経験を持つ人にオファーを出す採用活動はダイレクトリクルーティングと呼ばれ、近年米国を中心に存在感を増してきている。

目的はミスマッチの解消

ダイレクトリクルーティングの目的は、ミスマッチの解消にある。
採用してはみたものの、求職者が思っていた企業と違う、または企業が思っていたスキルを求職者が持っていない、といった理由で短い期間で退職してしまうことをミスマッチという。ミスマッチが発生して採用した人がすぐに退職してしまうと、中途社員一人あたり数百万かかる採用コストがパーになってしまうし、応募した人のレジュメにも汚点となって残る。
それに、日本のように一度採用した人を退職させることが難しい社会では、間違った人材を採用することが継続的に大きいネガティブインパクトを企業にもたらしかねない。

ダイレクトリクルーティングは、こうしたミスマッチの可能性を極力ゼロに近づけるための採用手段だ。スキルや経験や目指すキャリアが探している人材とマッチしている人を探し、それから人物像でふるいにかけていけば、論理的にはマッチングの制度は高まるはず。
こうした理由でダイレクトリクルーティングの存在感が高まってきているのだ。

新卒領域でも定着するか?

Offer Boxの新規性はダイレクトリクルーティングプラットフォームにはなく、中途領域以外ではほとんど使われない仕組みを新卒採用に持ち込んだ点にある。しかし、ダイレクトリクルーティングプラットフォームは中途採用領域を主戦場としているのにはそれなりの理由がある。そしてそれゆえに新卒市場では苦戦するだろうと思うのだ。

主な要因は新卒学生の差別化の難しさ。

新卒学生はバイト以外ほとんど仕事の経験がないためビジネススキルによる差別化要素が少ない。キャリア経験がゼロなのだからそれは当たり前の話だ。
だが、経験やスキルによる検索・フィルターができないのであれば、企業からすればマッチングのためにこのプラットフォームを利用するのは難しいだろう。

よほど、どこぞのあまり日本人が住んでいない国で幼少期を過ごして、文化・風俗をよく知っていて現地語も話せるといったピンポイントの要件があるのならこのプラットフォームは役に断つかもしれない。しかし、結局使われるとしても学歴で選り分けて○○大学以上の■■学部ならどんどん面接に招待する、という使い方くらいしかないのではないだろうか。

これでは結局、多くの学生がエントリーしてくる企業が学歴で選別しているのと変わらない。
ただし、選ぶほどエントリーが来ない知名度の低い企業にとってはメリットがあるかもしれない。

2013/08/23

ビジネスパーソンのインプットとアウトプットのバランス

in and out

ビジネスパーソンが自分の成長を考えるとき、インプットとアウトプットのバランスがとれているか、と自問することが重要だ。
読書や勉強、セミナーへの参加、勉強会への参加などが有効なインプットになるだろう。一方、アウトプットと言えば、試験の受験や勉強会の開催、何らかの個人ビジネスの実践などがあるだろう。ビジネスパーソンが一日の中で一番時間を使っている仕事ももちろんアウトプットの場だ。

勉強や学習に邁進するのは重要だが、たまに振り返ってインプットとアウトプットのバランスが取れているか、と自問するのは学習の効果を最大化する上でとても重要なことだ。


インプットが過ぎてアウトプットがおろそかになっていると、知識の量が増えて物知りにはなれるかもしれないが、知っているだけで実践できない頭でっかちになってしまう。
知識は実践を通じて血肉にしなければ役には立たない。習得しようとしていることが何らかのスキルであれ、思考方法であれ、何度も何度も反復練習というアウトプットを繰り返して寝ていてもできるくらいになっていなければ、いざと言うときにそのスキルや思考方法を活用することはできない。

一時コンサルティングファームで使われている様々なフレームワークに関する書籍がたくさん出版されていてベストセラーになっていたが、フレームワークを使いこなせるようになった人は少ないだろう。それは本の質が悪かったということではなく、読んだ人のほとんどがフレームワークってこういうものか、と理解しただけで満足してしまい、様々な場面でそのフレームワークを使ってみて習得しようとしなかったからだ。


一方、アウトプットが過ぎてインプットがおろそかになっていると、成長スピードが鈍化してくる。
仕事をしていれば、今までの自分の知識やスキルでは解決できない課題が現れるなんとことはしょっちゅうあるだろう。もしかしたらこれまでの方法の質やスピードや量を向上させることで解決できるかもしれない。しかし、世の中には同じ課題に既に直面し、よりよい解決方法を知っている人がいるかもしれない。そんな時にはインプットこそが重要なのだ。
英語で良く言われる表現で"Don't reinvent the wheel"という言葉がある。「車輪をもう一度発明するな」という意味だが、誰かが良い解決方法を知っているかもしれないのに全部自分で考えようとするなということだ。


サラリーマンはアウトプットが超過する傾向にある。なぜなら仕事の時間が長いし、仕事の質は本質的にアウトプット型だからだ。サラリーマンは若手のうちにとにかくインプットに励み、徐々にアウトプットの場を増やしてインプットとアウトプットのバランスを取るのが良いだろう。
年をとって、若いころに遊んでばかりいるんじゃなかった、と後悔する人は多いかもしれないが、若いうちにあんなに勉強ばっかりするんじゃなかった、と後悔する人はそうそういない。


photo credit: shortie66 via photopin cc

2013/08/21

マイナンバー制度への期待の高まり

2013年5月24日にマイナンバー制度関連法案が可決され、2016年1月からマイナンバーの利用が始まる。
個人レベルでは究極の個人情報とも言うべき番号の存在に気味悪さを感じている人も多いが、産業界ではマイナンバー特需に対する期待が高まっている。

特に制度のバックボーンを支えるIT業界ではマイナンバーへ熱視線が集まる。
システム構築費だけでも中央省庁、地方公共団体合わせて3000億円程度のビジネスになるという試算が出ている。やはりこの手の大きな話になるとNTTデータのようなITゼネコンが主幹事になるようなので、中小企業ITへの恩恵はさほど大きくないのかもしれない。

マイナンバーが民間ビジネスでの利用において、どこまで許容されるかが大きな分かれ道になるだろう。
もしも、ポイントカードレベルまでマイナンバーと紐付けることができるようになったなら、マーケティングや販促の効果が高まり大きなビジネスチャンスが生まれるだろう。今でもビッグデータを活用して1 to 1マーケティングと言われているが、本当に特定の個人に対する1 to 1マーケティングが可能になってくる。そこまで自分の個人情報が利用されてしまうのはユーザーとしては気味が悪いし、オプトアウトを可能とする措置が取られるだろうが。

私が身を置く人材業界でも様々な期待が寄せられている。
求職者をデータベースへ登録する際にマイナンバーを使えば、その人がこれまでどのような職歴を経てきたか、どのような学歴か、もっと平たくいえばどのような人生を過ごしてきたのかが分かる。その人生をアルゴリズム化してマッチング精度の高い求人情報を提供するなどの応用方法が考えられるだろう。


とは言うものの、個人としてはあまり自分の過去の経歴や購買行動がマイナンバーを通して人に知れるのはあまり気持ち良いものではない。個人情報の保護とバランスを取りつつ、日本経済へプラスになるビジネスチャンス生み出す機会となってほしいものだ。

2013/08/20

「イノベーションのジレンマ」まとめ




ビジネスパーソンなら誰しも一度は名前を耳にしたことがあるであろう、クレイトン・クリステンセンの名著「イノベーションのジレンマ」。私もオーディオブックでは何度か流していたが、初めて書籍でちゃんと読んだ。
やはり名著と名高いだけあって目から鱗が何度も落ちてきた。せっかくなので簡単なまとめを記してみよう。

本書は破壊的イノベーションの性質と、その対処法について書かれた本だ。破壊的イノベーションとは、ある目的を満たす商品やサービスの非連続的な進化だ。
非連続的な進化というと、全く新しい技術による飛躍的な進歩をイメージするが、実際は枯れた技術で実現することが多い。

例を上げると、ノートPCはより小さく携帯性が上がるベクトルとよりスペックが上がるベクトルへ持続的な進化を遂げている。しかし、ここに非連続的な進化を遂げた製品が出現した。タブレットだ。
タブレットはノートPCよりも限られたスペックや機能しかなく、長文をタイプしたりコンテンツを作成するのには向いていないが、コンテンツの閲覧という要素に絞った用途でPC市場からシェアを奪いつつある。

破壊的イノベーションはローエンドを侵食する

破壊的イノベーションの特徴は、常にその製品カテゴリのローエンド市場を席巻することにある。

同じ製品カテゴリーの大企業が既存事業とのカニバリズムを恐れて手を出せない間に、一気にローエンドマーケットを席巻する。破壊的イノベーションで成功した企業は、その原資を元によりハイエンドなカテゴリーへ移動する。そして、また別の破壊的イノベーションによって危機にさらされるのだ。

大企業が破壊的イノベーションに参入が遅れる理由

1) 資源配分の決定権は経営者でなく既存顧客と株主が握っている
経営者は、イノベーションが既存顧客のニーズに合っているか、大企業の成長意欲を満たす明確なマーケットが存在するという条件を満たさない意思決定は実質的にできない。

2) 現場のマネージャーが真っ当に誤った判断をする
経営者が破壊的イノベーションに追従せよと号令を出しても、現場のマネージャーは顧客にとって価値のあること、自社にとって価値のあることを見極めて正しく持続的なイノベーションにリソースを配分する。現場マネージャーの正しい判断により、大企業の対抗策は遅れを取るのだ。

3) 組織が破壊的イノベーションを追求するデザインになっていない
連続的な進化と異なり、非連続的進化には失敗が付きものだ。しかし、大企業は次につながる可能性のある失敗を犯したマネージャーよりそこそこの成功を収めたマネージャーを優遇する。前者はむしろ失職の可能性すらある。
こうした組織は破壊的イノベーションの追従には向かない。

4) マーケットが小さい
新しく作りだされたローエンド市場は、売上としても利益としても大企業にとって魅力的ではない。

生存確率の高い破壊的イノベーション対処法

その要素技術を持った企業を買収するか、小さなスピンオフ組織を作って独自に戦わせる。
大企業は破壊的イノベーションを追求するのに適した組織ではない。資源配分の決定権は既存顧客や株主が持っているし、普通は破壊的イノベーションに取り組んで失敗したマネージャーを評価しない人事システムになっている。さらに、破壊的イノベーションに追従してもリスクに見合った売上を上げるだけのマーケットがあるか分からないどころか、既存事業とカニバる危険性すらある。
こうした既存事業のしがらみによって、大企業の破壊的イノベーションへの取り組みは失速することが多いだろう。

独立性を与えられたスピンオフ組織ならばしがらみに囚われることなく破壊的イノベーションを追従することができる。

成功する事業とは

成功する事業に必要なことは、初めに正確な戦略を描くことではない。重要なのは、事業を始めるときに立てた仮説の間違いから学んでピボットするためのリソースを保留しておくこと。また、失敗から素早く学び、新しい戦略を立て直すスピード感と正確な打ち手と大胆さだ。

新しい製品やサービスを世に出す新規事業なら、マーケットはまだ存在していないことになる。存在しないマーケットの正しい予測を立てて正しい戦略を練ることは不可能。顧客ニーズを決め込んで過大な投資をせずに、まずプロトタイプを世に出してテストマーケティングを行い、得られた顧客の反応から素早く学んで商品に改良を加えてPDCAのサイクルを回すことが成功の秘訣なのだ。




玩具業界とキッズファッション業界の異色コラボ


ファッションに敏感な女子小学生向けキッズファッションブランドは、コト消費を強化している。以前のエントリーで紹介したようなファッションコンテストのようなイベントを通じてブランド価値を高め、消費につなげている。また、AKB48のように、服を購入することがコンテストへエントリーの条件とする、即物性の高い販促も行っている。

子供をターゲット消費者とする玩具メーカーも負けていない。
タカラトミーは、「プリティーリズム」という女子小学生向けのゲームを展開している。アバターとなる女の子にファッションコーディネートをしてステージでダンスさせるという、女の子の願望をゲーム上で実現させてカタルシスを感じさせるようなゲームだ。タカラトミーはこのゲームから派生してアニメやゲーム内アイテムを玩具で発売するなど、よくこの業界でみられる事業展開を行っているが、ひと味違うのはここからだ。

タカラトミーはプリティーリズムのゲーム内で登場するファッションブランド「プリズムストーン」を、実際のファッションブランドとして立ち上げてしまったのだ。しかも、前回コト消費を強化しているキッズファッションブランドとして紹介したRONIらとコラボレーションまでしている。
玩具業界とアパレル業界という、これまでゲームキャラクターをプリントTシャツにする程度の関わりしかなかった両者が、全く別次元の深いコラボレーションを初めているのだ。

参考エントリー: 

玩具業界とアパレル業界のコラボレーションは、今後の新しい異業種間の深いレベルでのコラボレーションがコト消費ブームさながらに増えてくる予兆なのかもしれない。
14,5歳の女の子に受けるかどうかがブームになるか否かの分かれ目だ、とモーニング娘の仕掛け人・つんくは言っていたが、その年齢はさらに低年齢化してきているのだろうか。

2013/08/18

参加型・コト消費が進むキッズファッション業界

RONIフォトコンテストの様子
RONIオフィシャルWebサイトより
2012年フォトコンテストの様子

参加型、コト消費というキーワードは最近小売業界で良く聞かれるバズワードの一つだ。特にファッション、化粧品、趣味性の高い商品の分野でコト消費が進んでいるが、その中でもキッズファッションの取り組みを取り上げてみたい。

キッズファッションブランドの「RONI(ロニィ)」では、正価で1万円以上の商品を購入するとファッションコンテストのイベントに参加できる権利を得られる。このイベントでは参加者である小学生の女の子が親と一緒に洋服をコーディネートしてメイクをし、ファッションセンスのコンテストが行われる。小学生ファッション雑誌のモデルと会えたり、自分の晴れ姿をプロカメラマンに撮ってもらえたりもするようだ。そして小学生ファッションモデルがコンテストの審査員を務めてファッションセンスでランキングを決めるというイベントだ。

親の目的はコンテスト記念Tシャツよりも、子供が自分に自信をもって振る舞えるという経験を与えることにあるようだ。カワイイ我が子を自慢したいというのもあるかもしれないが、どちらにせよ親心を捉えているようでイベントは好評を博している。
そして、こうしたコンテストへの参加という目的の消費にはお金を惜しまない。恐らく母親の中ではコンテスト参加のための購入は家計簿の服飾費ではなくてレジャー費に近い扱いになっているのではないだろうか。ここにコト消費のポイントがある。

こうしたキッズファッションブランドのコト消費への対応は各ブランド独自の取り組みにとどまらず、複数ブランド共同でファッションショーを行うこともあるようだ。


キッズファッションブランドのコト消費への取り組みはどのような結果を上げているだろうか。日経MJ(2013/8/14 P.3)のインタビューによると、前述のRONIは売上15億円ほどだが、2桁成長を続けているという。さらに正価での消化率も10%高まっており、利益に大きく貢献している。


キッズファッションという業界は、トレンドで言えば少子化のあおりを受けて下り坂であることは間違いない。しかし、コト消費を上手く絡めることで2桁成長を続けることも不可能ではないのだ。
今後、コト消費の取り組みを模倣して、イベントで顧客の奪い合いが激しくなることだろう。すると次はいかにイベントをブランド価値の向上に繋げられるかがキーになってくるのではないだろうか。

2013/08/17

NTT東日本 フレッツ光のUX


フレッツ光の思いっきり割がだいぶ安いので2ヶ月ほど前にフレッツ光へネット環境を移したのだが、NTT東日本のUXが難ありだ。ユーザー向けのサイトも紙を使った申し込みや登録も、手間ばかりが掛かって分かりにくい。
ちなみにUXとは、あるサイトやサービスの総合的な経験がユーザーにとっての総合的な使いやすさを示す言葉だ。


まずユーザーサイトの使い勝手の問題。
請求書をウェブで確認できるというよくあるサービスへ登録しようとしたのだが、なぜかブラウザ上で契約回線の確認というスクリプトが走り出す。私の環境ではどのブラウザでもこの契約回線の確認に失敗してしまい、登録が進められないのだ。
ユーザーサイトにログインしているのだから既にユーザーの特定は出来ている。新しいサービスを利用するのになぜ契約回線の確認なんぞが必要なのだろうか?ヘルプを見ても、契約回線の確認を迂回して登録する方法がなく、契約回線の確認を解決させようとするヘルプしかないので放置している。

ユーザーサイトを利用する理由は、料金の確認や登録内容の変更といった用途のはずだ。だが、フレッツのユーザーサイトではトップページにキャンペーンやらクーポンやらといった、ユーザーがユーザーサイトを利用する第一の理由でないものばかりが目立つ場所に配置されている。
アップセルにつなげたい気持ちは分かるのだけれど、ユーザーの気持ちが離れていく原因になると思うのだが。


サービスを追加しようとすると、逐一登録を紙で行わなければならないのも問題だ。クレジットカード決済の登録は仕方ないとして、それ以外のサービスでも登録用紙への記入が必要になったり、あまつさえ登録用紙の送り先がサービスごとに一々異なっていたりしている。ユーザーの負担を考えたら送付先を一ヶ所にするか、そもそも不必要な登録用紙の記入を避けるべきだろう。


もう一つ抗議したいのがメルマガ。申込時にキャンペーンのお知らせメルマガを明確に拒否したが、届く。一回全部メルマガを解除したのにまだ届く。本日2回目の全メルマガ解除を行ったが、果たしてどうだろうか。
NTT東日本の場合、いくら解除しても新しいメルマガを送り付けてくる確信犯的な楽天と違い、単純にユーザーのリクエストを正しく処理する能力が足りないのではないか。


ここまで酷評してしまったが、サポートへ電話した時の対応は悪くなかった。一般的なサービスをベンチマークにしてもうちょっとユーザーサイトの使い勝手を良くして欲しいものだ。登録用紙と送付先窓口の問題は、NTT東日本という組織を考えると解決が難しいのだろうが、民間企業らしくもうちょっと頑張ってもらいたい。

アイリスオーヤマの「島陳列」販売促進戦術




アイリスオーヤマロゴ

アイリスオーヤマと山善は、斜陽の日本の家電メーカーの中でも上り調子にある中堅家電メーカーだ。どちらの企業もこのブログで取り上げたことがあり、筆者が注目している企業だ。

関連エントリー:

アイリスオーヤマは自らを「メーカーベンダー」と名乗るように、製造だけでなく販売にも積極的に関わることによって、適正価格で、消費者が求める等身大の製品の企画・製造を可能にし、そしてユーザーの生の声を拾い上げることに成功している。特にユーザーの生の声を拾うのに大きな役割を果たしているのが「セールスエイドスタッフ(SAS)」と呼ばれる、アイリスオーヤマが販売店に派遣する販売員パートタイマーの存在だ。

SASはホームセンターなどアイリスオーヤマの主要な販売店でアイリスオーヤマ製品の商品説明や実演で販促活動を行ったり、逆にユーザーの生の声を拾い上げて製品企画へフィードバックするという役割を持っている。現在1000店舗ほどに配置され、彼女らは基本パートタイマーだ。
SASの存在は販売の促進と、よりユーザーに密着した製品の開発に繋がっており、アイリスオーヤマの成長に大きく貢献している。


そんなアイリスオーヤマが、さらに販売店でSASの販促効果を高めるための新たな試みが新聞に取り上げられている。

日経MJ 2013/8/11 P.11―――――――――
生活用品製造卸のアイリスオーヤマ(仙台市)は、ホームセンターの主要通路に目立たせて配置する「島陳列」を展開する。同社商品のみを扱う。白物家電と発光ダイオード(LED)シーリングライトでそれぞれ1000店舗に導入する。既に展開している地域では販売が増えており、年内をメドに導入店舗を増やし年末商戦で販売を拡大する。
――――――――――――――――――

什器はアイリスオーヤマが提供するようだが、島陳列をホームセンター1000店舗へ展開させてもらえるという事実からするとアイリスオーヤマの製品はホームセンターの売上・利益に貢献し、同社の発言力が高まっていることが伺える。

島陳列の戦略的要素は、マインドフロー理論における認知・興味・行動・比較フェーズで競合優位性を獲得することにある。島陳列は通常店舗入口付近など目につきやすい位置に配置され、顧客の認知を得られる。そこでSASが商品の強みを説明することにより興味が生まれ、実際に商品を見る・手にとってみるという行動を生み出す。
製品の信頼性が高く、価格的にも大手メーカーより安価で名の知れない中国メーカーと同等レベルの価格設定なので、最終的に顧客の購買行動につながる可能性は高い。

SASは競合他社と比較してアイリスオーヤマ独自の大きな差別化要素であるが、そこへさらに専用陳列什器を展開することで販売力をさらに高める。昨年から島陳列の試みは行われていて、陳列商品の売上が500%増となった店舗もあったようだ。



2013/08/16

KEIアドバンスの新規事業

高校生向けの学習塾を展開する河合塾グループ傘下のKEIアドバンスという企業がある。KEIアドバンスが大学向けコンサルティング事業を本格化するという新聞記事を見て興味がわいたので、同社と大学向けコンサルティング事業というものを少し調べてみた。

KEIアドバンスの既存事業は、高校生や大学生向けのメディア事業、大学向けのソリューション事業、大学生・社会人向け予備校、英語教育事業などがある。大学を顧客とした事業としては、大学向けの広報誌作成や入試の運営代行、願書受付〜入学の事務処理をオンラインで行えるシステム提供などを行なっている。
既存事業で育まれた大学との関係性によって個別にコンサルティングの相談を受けることがあり、需要があると判断してコンサルティング事業を本格化するのだそうだ。


KEIアドバンスの大学向けコンサルティング事業では、大学の学部新設や再編に関するアドバイスを行う。時代が求める人材要求の変化と少子化により学部新設・再編の動きは活発のようなのだが、定員割れする私立大が多いため国が審査を厳しくしたのだそうだ。そこに、コンサルティングへのニーズが生まれた。
KEYアドバンスの強みは、グループの学習塾事業で高校生の意識調査結果などから得られたデータを活用した、事実に基づいたコンサルティングだ。


既存事業から得られた知見や情報を活用して新規事業につなげる新規事業開発の形態はよく見られる。河合塾の経営から得られた高校生の客観的なデータからKEIアドバンスが大学のコンサルティングを行うのはまさのその一つであるし、他にも最近問題になっていたJRが顧客のSUICA利用履歴データをビッグデータとして販売するというのも近しい形態の新規事業開発だ。

2013/08/14

ファナック失速の危機とリスク回避事業戦略




2013年に入って、工作機械を製造しているファナックの商況が芳しくない。現在の商況悪化の大きな要因は、iPhone頼みだったロボマシン事業の不調だ。

念のためファナックをご存知ない方のために簡単に同社を説明しよう。
ファナックは製造メーカー向けに製品加工機器や製品加工用のロボットを製造販売している国内有数の優良企業だ。何がすごいかというと、その驚きの利益率だ。製造業にも関わらず、2013年度は5400億円近い売上で40%以上の経常利益を叩きだすという恐るべき超優良企業なのだ。

しかし、その超優良企業も事業戦略の見直しを迫られる危機に面している。

参考:


その危機を招いているのはタイトルにある通り、iPhoneに大きく依存していたロボマシン事業の売上減だ。
ロボマシン事業はファナック全体の売上の36%を占める大きな事業だが、昨年下期から受注が下がってきているというのだ。その一因がiPhoneのアルミ筐体を加工するのに使われるロボドリルだ。昨年まではiPhone製造を担っている鴻海が、年間869億円にのぼる取引規模を持つ安定供給先だったが、半年ほど前から聞こえ初めたiPhoneの苦境に伴い、ロボドリルの需要が減少しているのだ。


ファナックが直面している機器の原因は2つある。

まずはiPhoneへの依存度の大きさだ。iPhoneの売れ行きに全事業の16%の売上がかかっているというのは結果論ではあるが依存度が高かった。
ファナックはスマートフォン領域のバリューシステムに踏み込むのであれば、iPhoneだけでなくAndroidのライバル機種の製造ロボットでももっと存在感を示しておくべきだったのかもしれない。そうすれば、iOSのシェアがAndroidに奪われたとしても、ファナックとしては安泰であったはずだ。

次に、iPhoneが売れていたとしてもモデルチェンジによりアルミ筐体の加工工程がなくなるというリスク。時期iPhone発表では、廉価版としてプラスチック筐体のiPhoneの発売が噂されている。アルミ筐体の加工ではどれだけファナックが競争優位性を保持していても、アルミ筐体自体がお払い箱になってしまえばファナックのロボドリルは不要になる。
前述と同じ事だが、ファナックはスマートフォン領域においてプラスチック筐体の加工機械に力を入れておくべきだっただろう。そうすればiPhoneの筐体が変わったとしても対応できるし、プラスチック筐体がメインのAndroid端末にも対応できた。


ファナックの経営戦略に問題があったとは思わない。しかし、今のようにiPhoneの人気が下がることも考慮してiPhone以外のスマートフォン製造でも存在感を示しておくべきだった。
リスク回避のための事業戦略という意味では、とても有用なケーススタディだ。



2013/08/13

中堅企業の存在感が増す家電業界


家電業界はいま様々な激変にさらされている。
一つは世界に名だたる国内家電メーカーの没落。中国や韓国メーカー製家電の国内マーケット進出。そして消費者の嗜好の変化だ。

国内メーカーの状況については、今さら語る必要もないだろう。
そんな状況でハイアールやLGなど海外メーカーの国内マーケットでのシェア拡大は続いている。海外メーカーの進撃が好調な理由は、国内メーカーよりも消費者の嗜好の変化に合わせた商品提案ができているからなのだろう。機能や性能での差別化に消費者はなびかなくなり、価格と性能のバランスがとれた合理的な商品が今は求められている。


しかし、国内家電マーケットで気を吐いているのは海外メーカーだけではない。実は国内中堅家電メーカーが売上を拡大してきている。
下のグラフを見ていただこう。ヤマゼンとシャープそれぞれの家電部門の対前年比売上高伸び率を並べたグラフだ。

シャープとヤマゼンの対前年比売上高成長率比較

シャープは数年前のプラズマクラスターの大ヒットもあって比較的売上を伸ばしており、直近4年で平均4.3%の売上高伸長率だ。しかし、ヤマゼンはこう言ってはなんだが特に思い当たる大ヒット商品も無いものの、直近5年で年平均10%の高成長率をキープしている。

このような国内中堅家電メーカーは、ハイアールやLGと同じような価格と性能のバランスを重視した合理性の高い製品が多い。そして価格が安いため、家電量販店でも目立つコーナーに展示されたり、ディスカウントショップなどの高価格路線家電が弱い販路でも存在感を示している。
中堅家電メーカーにはこのまま国内勢として頑張って頂きたいものだ。一方、大型家電メーカーはこのランクの製品では利益を上げられないため、苦難は続くだろう。


小売店小型化に適応した調味料

ミニチュア

最近スーパーやコンビニで買物をしていると二つの変化に気付く。ひとつはプライベートブランドの増加、そしてもうひとつはサイズダウンされた食品(主に調味料)の増加だ。プライベートブランドはどの流通業者も取り組んでいて消費者の目につきやすい変化だが、今回はサイズダウン商品の増加に注目してみたい。
サイズダウン商品は円安や原材料高騰の影響によるものもあるが、流通小売業のある変化に伴う戦略的適応なのだ。

小型化する小売店

小売店の変化を大きな視点で捉えると、個人商店が多かった昭和の時代から、行動成長期には大型流通チェーンによる大型化が進み、そして現在「まいばすけっと」や「マルエツ プチ」のような都市圏を中心として小型店化が進んでいる。コンビニの店舗数も未だに増え続け、都市圏であれば極端な話一食分を徒歩圏で購入するような構図になってきている。
こうした変化はモビリティの獲得、核家族化、ライフスタイルの変化という時代の要請に合わせて訪れた変化だ。

顧客のライフスタイルの変化に合わせて小売店が進化してきたように、商品にも流通・小売店の変化に合わせて進化していく必要がある。
食品の小型化は小売店の小型店化に合わせた商品の変化なのだ。

店舗小型化に適応した商品戦略

小型スーパーやコンビニのメインターゲットは、老若男女を問わず、一人か二人程度でこまめな買い物をする世帯だ。このような世帯は外食も多いだろうから、今までのように家族向けサイズの調味料を販売していても使いきれいない、あるいは鮮度が落ちて味が落ちてしまうことがあるだろう。だからこそ小容量の調味料が増えているのだ。

日経MJ(2013年8月5日 P.15)によると、エバラ食品これまで最小サイズが300mlだったすき焼きのタレなどに200ml(2-3人サイズ)の商品を追加し、ヤマサ醤油は200mlサイズの商品を150mlにサイズダウンした醤油を小型店向けに出荷し始めた。1ml単位の商品単価は上がってしまうだろうが、小型化された調味料にメリットを感じる人も多いだろう。

私自身、あまり料理をしないけれどやはり醤油くらいは必要で購入するのだが、容量が350mlほどありなかなか使い切れず、すっかりすえた味になってしまった。それでも捨てるのがもったいないので使っているのだが、品質が悪化してしまった商品を消費者に使い続けられるのも、メーカーのブランディングとしてはマイナスなのではないかと思うのだ。


メーカーは直接の顧客である流通の要請に合わせるだけでなく消費者に合わせた商品改良も必要だ。だからこそ、ライフスタイルに変化が生まれるときにこそブランディングを勝ち取るチャンスがあるのではないだろうか。


photo credit: PetitPlat - Stephanie Kilgast via photopin cc

2013/08/12

スウェーデン人女子大生が発明した次世代のヘルメット



次世代ヘルメットを装着した状態
Hövdingは装着してもファッションの一部に見える
スウェーデンの女子大生が発明した次世代のヘルメットがすごい。これまでのヘルメットのデメリットであった、「カッコ悪い」「髪型がつぶれる」というペイン(困りごと)をあっさり解決してくれる。この新しいヘルメットの名前は「Hövding」。
ここまで聞くと一体どんなヘルメットだろう?と思われるかもしれない。下の画像を見てもらいたい。

ヘルメットが開いた状態
動作センサーが事故を認識し、エアバッグが開く

このヘルメットは、自転車用ヘルメットの破壊的なイノベーションだ。ちょっと近未来的なシェイプの自転車用ヘルメットにあう服装をコーディネートできないとか、普段使いだと整髪料を付けた髪がぺたんこになってしまうという従来のヘルメットのネガティブな点を全て解決してくれる。それでいて安全性も従来のヘルメットの3倍という本来の機能のエンハンスメントも行われている。

破壊的、あるいは非連続的イノベーションは、必ずしも新しい技術が先行するわけではない。むしろ、このヘルメットのように新しいアイディアと、エアバッグの技術+位置情報センサー+事故状況をシミュレートして得られたデータという既存技術の組み合わせで作り出すことが可能になるのだ。

破壊的イノベーションを生み出すには、解決されていない課題(多くの場合は当たり前すぎて問題とは認識されていない)を発見し、その課題を解決できるアイディアを出し、既存技術の組み合わせで解決する。これが愚直でありながら、確実な方法なのだろう。

2013/08/11

新規事業開発の型2. ロックイン開放型参入



新規事業をうまく軌道に乗せるための型を言語化する「新規事業開発の型」シリーズ。
今回はロックイン開放型参入について考えてみたい。

ロックイン開放型参入とは

ロックイン開放型参入とは、ある業界の大手企業が顧客を自社製品にロックインするために課している制約よって、顧客が被っている不利益を解決する製品やサービスで参入する型だ。ロックインされている顧客は全く不合理な企業側の都合による制約で不利益を得ていることが多々ある。そして、当の本人たちは不利益を被っている事実を自覚していないこともあるのだ。
このモデルでは彼らが被っている不利益を自覚させ、代替となる商品を提案し、守りに入っている大企業から顧客を奪うことを目的としている。

携帯キャリアメールの例

分かりやすい例は、携帯のキャリアメールだ。携帯のキャリアメールはキャリアを変更すると必然的にドメイン名(@以降のアドレス)が変わってしまうため、アドレスの変更を友人に伝えるのが面倒でキャリアを変えたいのに変えられないという人が多かった。しかし、FacebookやLINEなど代替コミュニケーションツールが発展することにより、キャリアメールという縛りが弱体化した。昨今キャリア間の移動が活発になってきた背景には、代替コミュニケーションツールの発達によりキャリアメールによるロックインの効力が弱まったからだろう。

参考エントリー:

携帯電話のロックインの話をすれば、2年契約縛りの利用契約も顧客に不利益なロックインの手段だ。これも最近では縛りの少ないbmobileなどMVNO事業者が現れ始めている。


ロックイン開放型参入のポイント

顧客をロックインしようとする試みは、企業にとっては当然の戦略である。業界のトップ企業は初めに莫大な投資を行い顧客を獲得し、その獲得した顧客に長く自社の商品を利用し続けてもらうことで顧客の生涯価値を高め、利益率を獲得する。顧客を新たに獲得するよりも既存顧客を保持し続けるほうが投資対効果が高く、企業は既存顧客を様々なほうほうでロックインするのだ。そのロックインの方法は得てして顧客に不利益な制約を課すことが多いのだ。
そこに、ロックイン開放型の新規事業参入がある。

ロックイン開放型参入が有効となるポイントは以下の3点だろう。

1. 顧客に不利益な方法でロックインがされている
2. 自社へ乗り換えることによる具体的なメリットを訴求できる
3. 大手企業が模倣しにくいビジネスモデルである。

まず、現状顧客が大手企業のロックインで不利益を被っていることが、この型のそもそもの前提条件だ。
2番目は乗り換える事によってどんな具体的なメリットがあるのかを説明できること。前例のキャリアメールがLINEに取って代わられたことは、「キャリアが変わってもIDは変わらないので、気兼ねなくキャリアを変えられる」というメリットが訴求できる。そして、このメリットに魅力を感じる潜在顧客が、自社のビジネスが成り立つ一定数以上いるかどうかも気にかけるべきだ。
最後に、今顧客に不利益なロックインを行なっている大企業が、簡単にこちらのビジネスモデルに踏み込めないこともポイントになる。経営資源で言えば業界の主要プレイヤーにはかなわないのだから、相手も簡単に模倣できるビジネスモデルでは簡単に押し負けてしまうだろう。あなたのビジネスモデルに手を出すと、自社の顧客がカニバって不利益を被るようなモデルであると、なかなか手が出せない。そして競合の大企業が苦渋の決断であなたのビジネスモデルを模倣する頃には顧客の流出が止まらず手遅れであるというのが理想的な試合運びである。


photo credit: stuant63 via photopin cc

ケータイメールの衰退に学ぶ教訓




まだスマートフォンが世に出回る以前、キャリアメールというのは携帯を使ったコミュニケーションの非常に重要なツールであった。だが、最近このキャリアメールの地位が低下してきている。

ガラケー時代はキャリアメールが使いやすく、使用料もパケ代固定にしていれば実質無料だったため、友人間のコミュニケーションとして電話と同じくらい重要なツールであった。MNPでキャリア間電話番号移動は可能になったが、キャリアメールのドメイン名は変更することができないため、キャリア間移動への抵抗を感じる人は多かった。

しかし、そこに登場したのがスマートフォンだ。
スマートフォンが普及し始めるとSNSやテキストメッセージツールが増えてきたし、POPやIMAPメールも大幅に使いやすくなった。これら新しいコミュニケーションツールのメリットは、キャリアメールと違ってキャリアを変更したとしても特にメールアドレスやIDを変更しなくても使い続けることができる点だ。おかげで携帯を買い換えた時に携帯買い換えました連絡を剃る必要もなくなった。

SNSやコミュニケーションツールは、携帯キャリアからすればキャリアメールのプレゼンスを奪う破壊的イノベ―ションだったが、キャリアはこの危機を簡単に見逃してしまった。キャリアは新しいコミュニケーションを開発、普及させるのに有利なポジションであるにもかかわらずだ。その結果、利用者はキャリアを変えることに対する抵抗感が薄れ、また、キャリアに縛られないようキャリアメールの利用頻度が減ることとなった。


携帯キャリアはキャリアメール変更の抵抗感をユーザーロックインの手段として活用したが、キャリアメールの不足を補い、さらにコミュニケーションツールとして完成度の高いSNSやテキストメッセージツールが現れ、ロックインの武器であったキャリアメールが無効化されてしまった。
ここから学べる教訓は、ユーザーロックインは企業戦略として重要であるが、不便さでユーザーをロックインするといずれその不便さを解消する新たな製品やサービスが現れ、取って代わられてしまう。よほど技術的に代替商品を作り出すことが難しいのでない限り破壊的イノベーションに取って代わられてしまうが定めだ。

ユーザーを不便さでロックインするのでなく、常に自分たちがイノベーションを生み出し、利便性で顧客をロックインするのが理想なのだ。携帯キャリアという規制業界で参入障壁が高い業界でもこうなってしまうのだから。

参考:
ケータイメールは死ぬのか (Business Media 誠)

参考エントリー:



2013/08/08

調子に乗って舞い上がる人あれば落とす人あり

人間、恥じ入り反省するときも必要

今日は教訓めいた話を一つ。

仕事でもプライベートでも、いろいろなことがトントンと上手く進んでいるので調子に乗ってしまってお上りさんになってしまうと、そこから突き落とす人が必ず現れる。
ほとんどの仕事が上手くいっていたのに一部の作業で不備があり、そこを強烈に指摘されて落ち込んだことが、ビジネスパーソンならだれでも経験したことがあるだろう。これは神様が自分を省みて行動や思考を改めろ、というサインを出しているのだと受け取り、しっかり猛烈に反省しよう。
ちょっとモテてきたからといって調子に乗って、彼女がいるのに他の女性に手を出そうとしているのが彼女にバレて大変な目にあったのなら、しっかり反省して行動を改めよう。

こういう時に、自分を貶めた相手を決して恨んではいけない。反省の念が自分に向かわず敵意として相手に向かえば、反省して行動を変えてよりよい人間になるチャンスを失うことになる。他人の調子に乗った行動を諌めるのは、諌める人からすれば何のメリットもなく(中にはストレス解消になる人もいるかもしれないが・・・)、諌めてくれたことは最大の親切であると言っても間違いではない。自分を落としてくれた相手を恨むのは、その人の親切心への裏切りになってしまう。

落とされたらそこから這い上がって、前よりさらに高みに行ける。それが成長だ。成長には落とされた怒りと恥ずかしさと悔しさにまみれながら掴み取るものなのだ。


というわけで、ここ最近の自分の驕りと犯した失敗を反省してしっかり成長したいと思います。。。

2013/08/07

事業をスケールアウトする具体的オプションは?


前回、前々回とサムライインキュベートのサービス、ブーケミー(bouque.me)について取り上げ、スケールできるかどうかについて書いてきた。以前も何度も新規事業はスケールできることが重要であると述べてきたが、具体的に事業をスケールするときのオプションにはどのようなものがあるのか考えてみよう。

参考エントリー:

地理的マーケットの拡大

一番わかり易い方法は、地理的なマーケットを拡大するという方法だ。一つの国で普及したサービスや製品を別の国で提供する。近頃はグローバル化が進んだため、事業を企画する段階で世界展開を前提としていることも多いだろう。

タイムリーなニュースだが、セブン銀行は米国のATMの運営・管理事業を買収し、素早く同社のユニークなビジネスモデルを米国マーケットへ展開しようとしている。

地理的なマーケットを拡大するスケールアウトは、製品の移動を伴わないウェブビジネスやソフトウェアのようなビジネスに適している。新しいマーケットへの進出にかかるコストが人件費と小さなオフィスを構える程度で済むため、手軽に新しい市場でテストマーケティングを実施し上手く行かなければ撤退できる。

類似ビジネスへのスケールアウト

ブーケミーのエントリーで提案した宴会の前払いサービスなどは、まさに類似ビジネスへのスケールアウトだ。類似ビジネスへのスケールアウトでは、既存ビジネスと類似した課題を解決する新たなビジネスを立ち上げることで、事業を拡大する方法だ。

この方法では、新たに拡大する類似ビジネスと既存ビジネスの近似性によっては、既存ビジネスでの経験で培ったノウハウやアセットを上手く活用して、より素早く効率的に新規事業を興すことができるだろう。

ターゲットの変更

これは既存事業のターゲットを新しく設定し直し、新しいターゲットに最適化した既存商品を提案する方法だ。お茶のような幅広い年齢に受け入れられる飲料や、日用品ならばこの方法が有効かもしれない。しかし、この方法はなかなか商品を選ぶのではないだろうか。なぜなら、ターゲットの属性が変われば、ニーズやペインも変わってくるからだ。

商品を変えるスケールアウト

もし顧客ロイヤルティが高い会員制ビジネスを展開しているのなら、販売する商品を変えることでスケールを出すことができるかもしれない。例えば受講者のハートをがっちり掴んでいるセミナー講師が自分の著書やセミナーのDVDを販売すれば、高確率で受講者は購入してくれるだろう。さらに、他の講師のセミナーへ送客することでアフィリエイトビジネスを行うこともできるだろう。

2013/08/06

ブーケミーはスケールできるか


前回のエントリーでは、ドタキャンで結婚式の二次会費用が足りなくなるというピンポイントでニッチな消費者のペイン(困りごと)に対し、ブーケミーは結婚式二次会費用の前払いサービスを提供することで解決したことについて書いた。ブーケミーの成功は、ウェブでのクレジットカード支払という解決手段と、ウェブやECに慣れ親しんでいる若い世代というターゲットがマッチしたことによって成立したことについても触れた。

参考エントリー:


だが、果たしてブーケミーはビジネスとして成功するだろうか?
立ち上がり始めたビジネスが成功するか否かは、ビジネスがスケールできるか、または高収益性を確保できるかが重要なチェックポイントになる。果たしてブーケミーのケースではどうなのか、考えてみよう。

参考エントリー:

スケーラブルか?

「ドタキャンで結婚式二次会費用が足りない」というペインをターゲットとしたブーケミーのビジネスモデルは、非常にニッチだと言わざるをえない。

どれだけ利用者がいるのかを考えてみる。
リクルートのブライダル総研によると、年間の婚姻組数は65万件程度。この内結婚式を挙げて二次会を行う人が大雑把に見積って1/3程度とすると、年間20万件程度の潜在利用数があるということになる。

次は単価を考えてみよう。
結婚レシピというサイトによると二次会の平均参加者は50人程度、平均会費は6,000円。つまり二次会の予算は平均すれば300万円になる。ブーケミーの手数料がいくらになるかは不明だが、二次会のドタキャン率は10%前後ということなので、10%以下で恐らく8%くらいだろうか。すると、二次会を一組獲得するごとに24万円の売上となることが予想される。

単価と潜在利用数を計算した所で、年間の予想最大売上を考えてみる。
無論、シェア率が100%であれば24万円×20万件の480億円が年間の売上になるが、そんなことはもちろん現実的にありえない。事業内容的には模倣しやすいものなので、5%程度のシェアがいいところだろうか。すると、年間の売上は24億円程だ。

収益性は高いか?

一方、利益率はどうだろうか。ウェブサービスだけあって、原価はほとんど掛からない。最も高いコストは恐らくクレジットカードの加盟店手数料率だ。トランザクション金額の5%程度になるだろう。つまり、営業収益のうち約65%がクレジットカード加盟店手数料に消えてしまう計算だ。しかし、それでも35%の利益が残り、後はコストと呼べるものはごく少なくて済むはずだ。件数が増えても大きくコストは増えないはずなので、普及して利用件数が増えれば増えるほど経常利益は35%へ近づくことになる。


ブーケミーのスケーラビリティを考えてみると、順調に行けば24億円程度の売上を上げられることがわかった。しかも利益率も高い。これはスタートアップベンチャーにとってはまずまずの売上だ。しかし、すぐに頭打ちになってしまう数字でもある。
可能性としては、このサービスを似たようなサービス、例えば歓送迎会の幹事業にも適用してスケールしていくことも可能だろう。ただし、会費を比較的集めやすい職場の同僚から会費を集めるのにこのサービスが必要になるかと言われれば、疑問符がつく。
また、マーケットを日本から海外に広げていくことでスケールすることも考えられる。しかし、結婚式の二次会が日本のような仕組みで執り行われている国がどれだけあるか分からないし、二次会参加者がどれだけ会費をウェブで先払いすることを受け入れられるかも不明だ。

こうした意味では、スケールするには難易度が高いビジネスモデルだ。

2013/08/05

ビジネス立ち上げの示唆に富むブーケミー

bouque.meウェブサイトより


サムライインキュベートは、スタートアップベンチャーへ投資しつつスタートアップに不足しがちな経営リソースを提供するというビジネスモデルの企業だ。自社もベンチャーでありながらベンチャーキャピタルとインキュベーターの機能を提供するという日本ではなかなかユニークな存在だ。
そのサムライインキュベートが提供している「ブーケミー」というサービスが、新規事業企画・開発の示唆に富んでいる。



ブーケミーというサービスは、結婚式の二次会を任された幹事向けのサービスだ。
結婚式の二次会の幹事はみな共通のある悩みを抱えている。それは、出席としておきながら当日ドタキャンする参加者の存在だ。ドタキャンはする側にも言い分があって仕方のないことではあるのだが、キャンセルした人が欠席した二次会の費用を払ってくれるとも限らないし、キャンセル分をお店が引いてくれるとも限らない。現実的には新郎新婦が不足分を負担することが多いのだとか。

ブーケミーはこの問題に対してシンプルながら強力な解決方法を提案している。
それは、二次会参加の事前出欠確認をウェブで行い、出席する人からはその場でクレジットカード決済するという仕組みだ。確かにこうすれば会費を取りっぱぐれることはまずなくなる。参加者する側としても、もともとドタキャンするつもりで参加表明するわけではないのだから心理的な障壁が高いわけでもない。見事に二次会幹事や新郎新婦の問題を解決する仕組みであって、普及する可能性はある。

さらに私が関心したのは、手段とターゲットが見事にマッチしている点だ。ネット普及率は高くてもクレジットカード利用率の低い日本では、100%全ての二次会参加者がこの仕組を使用するとは思わない。それでも結婚式二次会参加者というターゲットには非常にマッチしている手段なのだ。
結婚式参加者は老若男女問わず幅広い参加者がいる。これは当たり前の話だ。だが、二次会となるとほとんどが新郎新婦と同年代の若い友人や同僚になり、ウェブサービスの利用やネットでのクレジット決済に抵抗を持たない人が多い世代になるのだ。利用者と手段がドンピシャにマッチしたのだ。

新規性の高いサービスは、社会のペイン(痛み=課題)に対してウェブなどを利用した新しい解決方法を提案するが、利用者と手段の親和性が低くて普及しないという失敗ケースが多い。実はブーケミーの最初のサービスはご祝儀を結婚式の前にもらって若いカップルが結婚式を挙げやすくする、というものだった。しかし、やはり親戚に多い高齢層の参加者への配慮からこのサービスは選びにくかったのだろう、普及しなかったのだ。サムライインキュベートは有機的にビジネスを変更し、二次会にサービスを絞り込んだおかげで支持を受け始めた。


ブーケミーは社会のペイン(二次会のドタキャンでお店への支払い額が不足する)を定義し、大まかな解決の方向性(二次会費用を先払いにする)を考え、新しい手段(ウェブで出欠確認&ウェブで会費をクレジット決済)を当てはめるという道筋でこのビジネスを開発したのだろう。そして、ご祝儀の前払いでは手段とターゲットがマッチしなかったために一度は失敗したが、もう一度ビジネスの対象を絞り込むことで利用者と手段がマッチし、サービスが好評を得るに至った。リリースしたサービスがはじめは不評でも、軸足を変えずにピボットして成功するまで粘り強く続けるというのは新規事業の開発において重要な態度だ。

重要度が高まる採用ブランディング

採用ブランディングという言葉は近年よく使われるようになってきた言葉だ。採用ブランディングとは大雑把にいってしまえば、これから就職先、転職先を探そうとしている優秀な人材に自社を選択してもらう確率を高めるマーケティング活動のことだ。

この採用ブランディング、今に始まった活動ではないのだが、ビジネス環境の移り変わりが早まり専門性の高い人材へのニーズが高まるにつれ、最近さらに重要になってきている。新卒領域と中途領域で、採用ブランディングがどのような役割を担っているのか見てみよう。


新卒社員が入社したいと思う企業はどのような基準で決まるだろうか?
やりたいことが明確な学生であれば、それができるのに最も適した場所を選ぶだろうが、実際のところ大半の学生は自分の適性がわからず、キャリア像を持てていないので名前を見知った知名度のある会社を選ぶケースが多い。これは決して学生が責められるべきではなく、キャリアについて学ぶ機会が少ない大学生にとっては仕方のないことだ。こうした事情があり、新卒の人気ナンバーワン企業はよく見聞きするBtoC系の企業であることが非常に多い。

知名度イコール新卒人気度なので、大企業からすれば採用ブランディングはさほど大変なことではない。むしろ、本業がはかどっていれば自然と新卒採用ブランド力は上がる。問題はコンシューマーの目には触れにくいBtoB中小~中堅企業だ。BtoBの情報は学生にはほとんど伝わらないので、それこそ伊藤忠商事のような有名企業でなければ、学生への知名度はほとんどない。

新卒への採用ブランディングは中小企業にとって重要で、主な目的は知名度を高めて名前を覚えてもらうことにある。仕事の内容も面白そうだと興味を持ってもらうことが重要だ。


中途採用の採用ブランディングはどうだろうか。
中途採用においては、ほとんどの求職者が希望する職種や業界に明確な方向性を持っている。明確な意志を持った求職者達に対しては、ビジネスの内容や求められる役割、またそれに対する報酬が明確にコミュニケートされることが一番重要だ。また、求職者はビジネスの内容や役割、報酬という軸で能動的に企業を探すので、募集ポジションごとの情報の精緻さと検索しやすさが重要になる。つまり、ウェブメディアが最適だということだ。


このように、採用ブランディングと言っても一口に定義できるものではない。特に新卒向けか中途向けかという違いが採用ブランディング活動の内容を分ける。


2013/08/04

できる部下は自分で考える


前回のエントリーではできる上司について書いてみたので、今回は私が考える「できる部下」について考えてみたい。
ちなみに、私が知る限りではできる上司は元々できる部下であった人が多い。自分ができる部下だったからこそ、できる部下を選ぶ選球眼に優れている。できる部下を選ぶ目があるからできる部下を配下に引き入れ、普通の部下をできる部下に成長させ、そしてチームとしての結果を高めることができるのだ。


できる部下が普通の部下と最も異なるのは、自分で考えて行動を取ることができるという点だ。それが端的に現れるのは、上司に仕事を振られた時のアウトプットの形だ。
普通の部下は、言われたことを言われたとおりに実行して上司に提出して終わりだ。普通以下の部下は言われたことを言われたとおりにこなすことすらできない。さらに私が見てきた普通以下の部下の典型は、もし上司が納期に対して特に注文をつけなければ自分のペースで後回しにして上司に「まだできていないのか」と指摘されると、「だっていつまでにやればいいか教えてくれませんでしたから」みたいなことをヌケヌケと言い出す。

上司が納期について何も言わないのも問題だが、ただ言い忘れているだけの可能性を考えて質問することが最低限必要な部下の対応だ。
仕事の質に関して言えば、言われたことを言われたとおりに実行している間はいつまでも二流または普通の部下だ。できる部下は、自分で考えて上司の期待値を越えるアウトプットを出そうと努力する。

例えば新聞の切り抜きをスキャンして特定のフォルダに保存しておくという、非常に単純な仕事を任されたとしよう。これだけ単純な仕事であっても部下の実力を測るには十分仕事の質に違いが出る。
普通以下の部下は、納期も確認せず放置して怒られる。これは論外。別の普通以下の部下はスキャンがいい加減で文字が潰れて読めないような状態でもそれで済ませてしまう。これも論外。
普通の部下は、ちゃんと読めるクオリティで期限までにスキャンを完了させてフォルダに保存する。だが、言われた以上の事をしようとは思いもつかない。

できる部下は、切り抜きの空きスペースに新聞名や日時、ページ数を入れておく。さらにファイル名にも工夫を凝らし、どの新聞で何の記事なのかが分かり易いファイル名を作成する。上司がファイル名前をつけるときの規則性を勘案し、自分にとってではなくて上司にとって分かりやすいファイル名称で保存する。頭のいい部下は、こっちの命名規則のほうが分かりやすいですよ、と余計なことをしたくなってしまうが、実行するかどうかは上司の器をよく見極めてからだ。


このようにできる部下は自分の考えで、上司が期待するアウトプットよりも価値の高いアウトプットを出そうとする。上司の言外にあるニーズやウォンツをすくい取ることができ、それに応えることができる。
こうしたスキルは上司に対する仕事の質だけでなく、相手が顧客やマーケットであったとしてもやはり有効に活用できるスキルだ。


photo credit: Thomas Hawk via photopin cc

2013/08/03

本当にできる上司は失敗ではなく手抜きを叱責する



今日は、優れた上司はどんな人ぞ、というよくある話をしてみたい。
組織で働いている人は多くの優れた上司、ダメな上司を見てきただろう。私は幸い上司に恵まれてきていて、今の自分はかつて私が世話になった優れた上司のおかげであると素直に言える。


できた上司は部下の失敗した行動を叱らない。

部下の失敗が取り返しがつかなくなる寸前まで部下に任せ、まずい時だけ指示を出す。本当にまずい状況に至る前に手を差し伸べ、無用な叱責はしない代わりに指示を出して、その指示がなぜ重要なのか、その背景に何があるのかを説明するのが優れた上司だ。
部下は失敗という何より苦い果実を味合わされるが、そこから多くを学ぶことができる。そして問題のある状態から軌道修正するスキルと問題を起こさないための先読み思考という大きなギフトを手に入れる。


ダメな上司は、失敗から勝手に学ぶことができる優秀な部下の失敗行動を全部指摘して叱責する。これはでは部下が学ぶ機会を奪っているといって過言ではない。
優れた上司が優秀な部下を叱らないのは、失敗した行動を指摘され叱責されればその失敗行動を起こしてしまった事実だけに目が行ってしまい、どうすれば軌道修正できるか、どうすれば防げたかという考えに思考が回らなくなってしまう事を知っているからだ。優れた上司は優秀な部下の失敗行動を叱らず、助言やヒントを出して部下に考えさせ、軌道修正と同じ失敗を繰り返さないための対策を本人に取らせる。
ダメな上司は、自分に責任問題が及ぶのを恐れるのか、条件反射なのか分からないが、部下の失敗を一つ一つ挙げへつらって叱責する。中には的はずれなものも多いが、的外れっぷりを指摘しても火に油を注ぐだけだ。


優れた上司は優秀な部下を全く叱らないのかといえば、もちろんそんなことはない。優れた上司が優秀う部下を叱りつけるのは、部下がスタンダード(行動基準)を破ったときだ。
このスタンダードは、企業コンプライアンスで言う行動規範とはちょっと違う。上司がその部下に期待している行動レベルの高さ、あるいは本人が従来であれば自分に課していた仕事や行動のレベルのことだ。スタンダードを破るというのは、平たく言うと部下が上司または自分が課していた行動レベルよりも手を抜いて仕事をしたということだ。

こうした手抜き仕事をした部下は、優秀であろうがなかろうが、叱責して矯正する以外は方法がない。次に自分がスタンダードを破るような手抜き仕事をしようとした時に、ハッと怒られた記憶を思い出して踏みとどまることができるからだ。この時ばかりは叱られた記憶が最高のギフトになる。


かつての私の上司はまさにこんな人であった。この人に教わったことは多く、いつでも私が失敗経験から多くを学ぶように配慮してくれた。いつか私もこのような優れた上司になりたい。


photo credit: anicaps le forum via photopin cc

2013/08/01

テンポスバスターズは業態を変えようとしている



テンポスバスターズは飲食店が撤退した後の厨房機器を格安で買い取り、中小飲食店へ中厨房機器を販売するというビジネスモデルで大きく成長した16期目の成長企業だ。一時中古厨房機器販売というニッチなビジネスモデルで一気に成長を遂げたが、似たようなビジネスモデルで参入する競合が増えて売上の成長が停滞してきた。

しかし、テンポスバスターズは常に新しいビジネスモデルをインキュベートして、積極的にビジネスサポートフォリオを変える積極的な経営をしている。


最近の打ち手の一つはネット販売へのシフトだ。
これまで店舗販売が中心だった中古厨房機器の販売をネットへ移した。中古機器の販売に限らず、買取受付も行なっている。これまでは店舗販売を中心としていたが、リーチできる顧客が限られていた。ネット販売へのシフトは地理的な範囲に縛られずに顧客へリーチするための施策だろう。


二つ目は、PB製品へのシフト。
最近の売上成長停滞の一番の原因は競合の中古厨房機器販売への参入のようだが、テンポスバスターズは対抗策としてPB製品へのシフトを積極的に進めている。PB販売を本格化し始めたのはつい去年の2012年だが、2016年までには70%までPBブランドの販売比率を高めるつもりだ。PB製品は中古製品よりも10%ほど利益率が低いが、品揃えの充実を意識してPB製品を強化するようだ。これまでは、中古品販売だけでは製品ラインナップに穴ができてしまい、一人の顧客のニーズに全て応えられず販売機会の損失があったのだろう。

厨房製品を販売するだけでなく、ファイナンス事業を手がけているのもテンポスバスターズの特徴だ。拡大を目指す中小飲食店への包括的なサポートという位置づけだ。


次に、中小飲食店向けの集客支援ビジネスへの参入だ。
テンポスバスターズは、上記に上げた厨房機器購入のためのファイナンス事業にとどまらず、POSシステムの提供やASPシステムの提供など多岐にわたる中小飲食店サポートを行なっている。同社は7月25日に飲食店向け集客支援のプロフィット・ラボラトリーを買収し、顧客である飲食店の集客を支援するサービスを開始する。店舗構築から店舗運営支援、そして集客支援へと、顧客との接点の厚みを増していく同社の戦略が垣間見える。


テンポスバスターズのビジネス展開を見ていると、中小飲食店の総合支援ソリューションプロバイーダへと変貌しようという戦略が明確に見える。これを証明するように、昨年12月には飲食店向けのアルバイト・パート募集サイトを開始した。これらの打ち手は「テンポスはフードビジネスプロデューサーとして大手の荒波を受ける中小飲食店のための防波堤となり、共に成長していくことを目指す」という同社のミッションとも符合している。

テンポスバスターズはミッション、戦略、戦術が一本に繋がった、戦略的経営をしていると評価できる。

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