2013/08/26

日本郵便の高齢者生活支援サービスはなんだかアンビバレント

日本郵便ロゴ

日本郵政グループの日本郵便が地方在住の高齢者の安否確認や食料品・飲料の買物代行サービスを今年の10月から開始するそうだ。
新聞の記事によると、高齢者の安否確認だけでなくその結果を遠方に済む家族へレポートしたり、医療機関の紹介や生活相談に応じる電話サポート窓口も開設する。

参考:


日本郵便の高齢者支援サービスへの参入のニュースは、少しアンビバレントな気持ちになる。
民間企業として収益性を高めるために新しい事業に参入するというニュースは、事業開発を生業にしている身からすれば諸手を上げて賛成する。しかし、国営時代に培った2万4千を超える拠点を活用して新たな事業に参入するということは、同じような事業に参入しようとしている、あるいは既に参入している企業を駆逐することになるのではないかという危惧がある。

民間企業が震え上がるアセット

日本郵便の企業規模と資産は普通の民間企業には全く太刀打ちできないレベルだ。毎年2兆円の営業収益を上げ、現預金で2兆円保有し、2万4千もの拠点(郵便局)と10万人近い局員を保有している。

今回日本郵便が参入しようとしている自宅在住高齢者への買物代行サービスはまだ他の企業も参入し始めたばかりの新しい事業だ。これだけ大きなアセットを持つ日本郵便が参入してきたら参入済みの企業は大打撃だろう。サービスを提供するために体制を構築するのに必要な初期投資が全く違うからだ。
郵便局は既存の郵便局と配達員を活用するはずなので参入コストが低く、この事業で回収しなければならない初期投資額が小さくて済む。サービス提供に伴う変動費も、この事業のために人員を拡大しない限りはほとんど0に近い。
だからサービス提供価格を競合よりも下げられる可能性が高いのだ。

日本郵便がこのサービスを安価に提供するようになれば、他の民間企業が参入するのは難しくなる。日本郵便が事業を独占してしまうようになれば市場の理論が働かず、正常な競争があれば実現していたであろうサービスの品質向上や価格競争が起こらないかもしれない。

社会的インパクトと民間企業としての成熟

他の民間企業へのネガティブなインパクトは無視できないものの、日本郵政が高齢者支援サービスへ参入することの社会的なメリットも無視できない。
郵便事業で得たアセットを活用すれば、この日本中から望まれている社会的意義の高い事業を他の民間企業よりも早く発展させることができるだろう。それは悪いことではないどころか、高齢者やその家族にとっては間違いなく良いことだ。買い物弱者や孤独死といった社会問題も緩和できることだろう。

そして、収益性を高めるために新たな事業へ参入するのは民間企業として間違いなく正しい選択だ。新たな事業が生まれることで雇用が増えたり、周辺産業へもプラスの効果があるだろう。特に日本郵便のような巨大企業であれば、波及効果も大きい。


日本郵便の高齢者支援サービスへの参入は賛成だし上手く行くことを期待する反面、正常な競争環境が失われないことを切に願う。

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