2013/09/30

第8回サムライベンチャーサミット 参加雑感

9月28日にサムライインキュベート主催のスタートアップ企業や起業家の交流会、サムライベンチャーサミット(SVS)に参加してきた。2010年から年2回のペースで開催しており、今回で8回目というイベント。会場は品川グランドセントラルタワー内、マイクロソフトのオフィスを借りての開催であった。

参考:

若き起業家たちとスタートアップ企業CEO達の集まりということで、勢いや情熱がやはりあるなあと思いつつ、若干サークルのような内輪な雰囲気もあるなあと感じた。

私がこのイベントに参加したのは、単純な興味半分、もう半分は自分のビジネスに転用できそうなアイディアやパートナーを組めそうなスタートアップ企業がないか、宝探し感覚な目的があった。起業家たちが2分のピッチ形式で自分たちのサービスや近況を紹介するサムライシャウト50をじっくり堪能してきたので、その感想を少しばかり書いてみたい。

ほとんどB2CでB2Bはレア

当たり前の話ではあるのだが、スタートアップ企業のほとんどがB2Cを志向していて、B2Bのスタートアップはほとんどないんだなあ、といった印象を強く持った。ピッチ形式のサムライシャウト50で何十社かの説明を聞いたが、B2Bは片手以下の企業しかなかったはずだ。

B2Bは顧客の性質的に業界にコネクションがないとビジネスを作り出すのは難しい。実際、B2Bのベンチャー企業はその業界に長く身をおいて業界に精通しているベテランが創業者でありケースが多い。サムライベンチャーサミットに参加している起業家は20代から30代の若い人が多いようなので、自然とB2Cビジネスをやっているベンチャーが多かったのだろう。
それに、B2Bの世界ではマーケットより一歩先では進み過ぎで、半歩先くらいでないとマーケットに受け入れられ難い。だからあまり進歩的な若い起業家には向かないマーケットとも言える。

私はB2Bベンチャーのほうが成功率も生存率も高いと考えている。それに、B2Bビジネスは地味でありながら、クライアントを通して国内・国外経済や、社会的インパクトも大きい。だから自分自身がベンチャー企業を立ち上げるならB2Bビジネスが良いと思っている。

プラットフォーム志向

起業家たちの考えを聞いていると、プラットフォーム志向のビジネスが非常に多いと感じた。
どのビジネスもサービスインの段階ではあまりマネタイズについては考えられておらず、まずはユーザーを集めて大きなユーザーベースを作ることを目標にしているようだ。FacebookやLineのように、ユーザーベースを獲得してからマネタイズの方法を考えるというのが昨今のWebサービスビジネスの主流の考え方なのだろう。

昨今のWebサービスベンチャー起業家には、ユーザーベース獲得(流行りの言葉で言えば、グロースハック)できるか、そしてその後にマネタイズすることができるか、という2つの全く異なる課題に対する解決力が求められるようだ。

Webサービスありき

前項のプラットフォーム志向とかぶる話ではあるが、サムライシャウト50で紹介されているサービスのほとんどはWebサービスであった。最近話題になるベンチャービジネスはWebサービス系が多いので、すわ、これに続けという企業が続出するのは無理もない。それに、サムライインキュベートの得意分野でもあるのだろう。

自分でも新規事業を考えるときに、気付けばWebサービスありきで発想がスタートしていることがちょくちょくある。だから自分への戒めも込めて、もっと広い視点で新しい事業アイディアを想像せねばと思うのだ。Webサービスはあくまで手段であって目的じゃないのだから。

2013/09/29

新規事業開発の型3. 相乗り追加サービスで高付加価値化&高価格化


相乗りの図

新規事業の成功パターンを型化していくこのシリーズ。
今回は、シンプルなパターンでありながらおそらく成功率が高く、既存ビジネスを活用する型だ。既存ビジネスの顧客に対し同じ場所、または同じ利用タイミングに別のサービスをアドオンして新しい事業にするというパターンだ。

ウィズダムアカデミーの例

この方法で成功しているのがウィズダムアカデミーの学童保育と習い事を組み合わせた、新しい学童保育だ。普通の学童保育は親が仕事に行っている間子供を預かってくれるサービスだが、ウィズダムアカデミーはここに親がよく子供に通わせている習い事を追加した。子供を単に預かるだけではなく、そこで習い事の教育も施そうということだ。

親が習わせることの多い英会話や書道、合気道など30種類に及ぶ習い事を提供している。なお、講師は委託先パートナーから講師を呼び込んで講座を開いてもらっている。学童保育に習い事という付加価値を追加することによって、ウィズダムアカデミーはもともと月額数千円であった単価を、月額5万円と数倍の水準へ上昇させることに成功した。(日経MJ 2013/9/23 P.11)

相乗り追加サービスのポイント

相乗り追加サービスとも言うべきこの新規事業開発の型にはいくつかポイントがある。

同じ場所、同じタイミングであること

まず、追加するサービスが、同じConsuming Unit(サービス利用者)に対して同じ場所、または同じ時間に提供されるものであること。例えば前述の例でウィズダムアカデミーが学童保育とは別に習い事サービスを始めても軌道に乗せるのは難しいだろう。

第一に、集客を一からしなければならないので、集客コストがかかる。とは言え、学童保育の親にアピールすれば良いのでさほどコストは掛からないかもしれないが。それに、顧客の頭のなかで学童保育と習い事が別物だと認識されると、ブランドスイッチが起こりやすくなる。このため、学童保育に相乗りさせるよりも取りこぼしが多くなることが予想される。

もう一つはダブルコストになってしまうという問題がある。学童保育と異なるサービスとして提供するには、提供する場所、時間を別立てで用意するため、学童保育サービスの中で相乗りで提供するよりもコスト高になるだろう。

逆に言うと、別のサービスを相乗りで追加することによって、集客の時間的・金銭的コストを省くことができるし、サービス提供のコストを下げることができるのだ。

同時に提供されることがクライアントメリットになること

相乗り追加サービスのもう一つのポイントは、相乗りするサービスが相乗りされるサービスと同じ場所、同じ時間に提供されることに、利用者が価値を感じることだ。

ウィズダムアカデミーのサービスを例にとれば、学童保育の時間に習い事もしてくれるサービスは学童の親御にとっては大きな付加価値があるだろう。もしも習字な英会話などの習い事を我が子にさせようとすれば、その習い事に子どもを送りする迎えする手間が発生してしまうが。しかし、学童保育の時間に習い事をしてくれれば、習い事の送り迎えの手間が省けるので特に共働きの両親からしたら大喜びであろう。

2013/09/28

医薬品ネット販売がまたひともめしている

医薬品のネット販売は、今年の1月に最高裁が一律に副作用リスクの高い第一類と第二類の薬品ネット販売を一律に禁止する厚労省令を無効とする判決を下した。それ以来ほぼノールールで実質的にネットでの薬販売が解禁されていた状態にあった。
しかし、9月20日に開催された厚労省の医薬品ネット販売検討会では、ネットでの販売業者に対してまた保守的でドラッグストア業界を保護するような条件が加えられようとしている。

その条件は以下のとおりだ。
・医薬品をネットで販売する業者は、週30時間以上開店している店舗を有すること
・専門家(薬剤師)が店舗に常駐していない時間帯はインターネットでの医薬品販売を認めない
・専門家(薬剤師)管理のもと、梱包作業まで行うこと

これらの取り決めは実質的にネット販売のメリットである、店舗を持たないことによるコストメリットや店舗のように開店時間に縛られない買い物ができる、という特徴を殺すものだ。

医薬品ネット販売のリスクの焦点は誤った処方や副作用の強い医薬品を簡単に消費者が購入できてしまう点にあるのだから、消費者の注文に対して薬剤師が店頭と同等の確認が取れればOKであるはずだ。それなのに、店舗がなければならないというのは圧倒的ナンセンスだし、梱包作業まで薬剤師が関わる必然性は皆無であるし、薬剤師がいない時間に販売を認めない(受注できないということ?)のは一体何の意味があるのか?

インターネット販売事業者の優位性を削ぐような条件ばかりを盛り込んでいるのは守旧派勢力(ドラッグストア協会)の嫌がらせにしか見えない。消費者保護のように見せかけて、実は全く消費者の健康リスクを保護になるようなルールではない。


ドラッグストア業界はこんな方法で既得権益を守ろうとしても、世の中のトレンドはより便利な方向に動くということを忘れてはならない。新しい潮流を切り開こうとするプレイヤーを守旧派が食い止めている間にグローバルプレイヤーが国内マーケットを蹂躙するという事例がどれだけあったことだろう。
誰かがイノベーションを起こそうとするのを邪魔して既得権益を守るのではなく、自らがイノベーションを起こして新しい価値を創造することだけが生き残る方法なのだ。

参考:
9月20日 医薬品ネット販売検討会の資料

2013/09/27

消費者が全く見えていない不毛な「総額表示 vs. 税抜表示」論争


いま消費税の総額表示(消費税を含む総額を表示すること)が外税表示(消費税を含まない価格を表示すること)になろうとしていることはご存知だろうか。
スーパーマーケットや百貨店の業界団体が消費税増税の結果、消費減退に陥るのを恐れて値上げしていないことをアピールするために外税表示へ変更しようとしている。消費者からすると全く誰も望んでいない外税表示方式がなぜ採用されようとしているのだろうか。

背景

読者の皆さんもご存知かと思うが、消費税の表示方式は2004年から財務省によって総額表示が義務付けられている。
それまでは税抜価格表示の店と税込価格表示の店が混在しており、価格が比較しづらい状況にあった。消費者の利便性を損なっている側面があったため、消費税の総額表示が義務付けられたのだ。

総額表示の義務付けから9年が経過し、すっかり小売店側も消費者側も総額表示に慣れてきたのになぜ今外税表示方式の議論が再燃しているのか。
実は今年の6月に「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(価格表示特別法)」というやたら長い名前の特例法が可決された。2014年4月から2017年3月までの期間限定で、外税表示方式を認めるとする法律だ。消費増税が消費減退につながらないように、そして小売店からの反発を緩和するための「配慮」で生まれた法だ。

内税表記の無意味さ

政府の以降に応えて、というのはあるかもしれないが、これに呼応した小売業者の反応は正直理解に苦しむ。もちろん、増税をスムーズに実現するためにわざわざ外税表示を許可した財務省の考えも理解に苦しむ。確かに外税表示方式で実質的に支払金額が上がっているにも関わらずそう見せない事によって、心理的な消費減退を防ぐという効果はあるのかもしれない。だが、消費者の9割以上が総額表示(内税表示)を希望しており、外税表示を希望しているひとは無に等しい、それでも外税表示を推し進める小売業者は一体何を考えているのだろうか。

消費者が知りたいのはいつだって、結局いくら払えばそれが手に入るのか、なのだ。消費者からすれば、9割以上の消費者が反対しているのに、外税表示にするかあるいは併記にするか、なんて議論は無意味だ。

2013/09/26

ニトリのショッピングモールもお値段以上

ニトリモール

「お値段以上」の低価格家具で有名なニトリは、低価格を売りにしたモール「ニトリモール」事業を2011年10月に開始した。
ニトリモールは低価格路線のニトリらしく、テナントもユニクロより低価格路線のGUや、しまむらよりも低価格路線のアベイルなどが入っている。

小売業者がショッピングモールへ参入するケースは珍しいし、あまり成功例を聞いたことがない。だが、ニトリモールはターゲットとする顧客を絞り込んで、その顧客に合わせたテナントを呼び込んでいる。このため、ターゲット顧客のニーズをしっかり捉え、根強いリピート客を生み出し成功する可能性が高いのではないか。


一般的なショッピングモールは高価格帯のブランドショップあり、低価格のブランドショップあり、食品スーパーありと様々なショップが入り乱れている。
いろんな価格帯やジャンルのショップが入っていると、一見幅広い客層の顧客を呼び込めるように感じるかもしれない。

しかし、そんなショッピングモールは高価格路線の顧客にも低価格路線の顧客にも、帯に長し襷に短しで完全にハートを捉えることはできないだろう。どの顧客にとってもそのショッピングモールはそれなりの魅力しかなく、そこで買い物をする必然性がない。他のショッピングモールになびく可能性が高く、リピートも起こりにくいだろう。

一方、ニトリモールのテナントのチョイスは、低価格ながら商品価値が「お値段以上」の店舗を徹底して集めている。高価格路線の顧客は完全にターゲットから外し、低価格に反応する顧客を取り込もうとしていることがよく分かる。高価格帯商品を求める顧客はニトリモールでは満足しないだろうし、そもそもテナントリストを見てニトリモールへ行くのをやめるだろうが、低価格に感度が高い顧客は集めやすいだろう。


企業側の心理としては、顧客を低価格路線の顧客に絞り込むのは怖いものだ。しかし、ニトリは低価格家具の製造販売で勝ってきた経験から、顧客を絞り込んでその顧客のニーズに徹底的に応えることが飛躍につながることをよく理解しているのだろう。
ニトリモールでもニトリと同様、低価格でも「お値段以上」を求める顧客に支持されるだろうと私は予想する。

2013/09/25

願望を実現したいのなら意思ではなくてプロセスに頼るべき 2


前回エントリーでは、願望実現にはプロセス化が重要だという話をした。今回は、そのプロセス化の方法論について、私なりの考えを提示したい。

前回エントリー: 

プロセス化の手順
それでは、どうしたら願望というエネルギーを正しい努力に変換することができるのだろうか。
願望実現のためのプロセス化の手順を説明してみたいと思うが、あくまでも私が様々な情報ソース、例えば自己啓発本、成功者の自伝、師と仰ぐ人から聞いたこと、仕事術、などから良い所をピックアップし、自分なりにアレンジしたものだ。もちろん私自身は成功者ではないし(成功者のたまごのはず!?)、人様に偉そうな講釈たれる身ではないのだが、このプロセス化の方法論はとてもオーソドックスでそれほど世の中一般的な成功者のセオリーからずれていないと思う。それに、成功者の視点ではなく凡庸者の視点というのもたまには新鮮でいいのではないだろうか。

1. 目標の明確化

まずほとんどの自己啓発本でも成功者の自伝でも語られる方法論、目標の言語化・明確化だ。達成するための目標を設定しなければ、正しい努力の方法がも分からないし、達成したとしてもいつそれを達成したのかが分からない。

成功者達は目標を言語化しさえすれば成功する、という人が多いが私はそう思えない。世の中には大きな最終目標を設定し、その目標さえあれば頑張れる人もいるかもしれない。でもそんな人はそれこそ生まれもっての成功者なのではないかと思う。凡庸な人間は、日々の目先の誘惑に目を奪われてしまい、大きな目標のことなどどこ吹く風ですぐ忘れてしまうものだ。
だからこそ凡庸な人間は、日々自分を律する仕組みを必要としている。

2. マイルストーンを置き、タスクを洗い出す

大きな目標を置いたら、そこに辿り着くまでの中間ポイント=マイルストーンを設定する。
例えばリタイヤして海外に永住することを目標と置くのなら、TOEICで900点獲得する、永住する国を決める、居住物件を購入する、といったことがマイルストーンになるだろう。これらマイルストーンを置くと、具体的な日々の行動が見えてこないだろうか?

まずTOEICのマイルストーンを1年後に達成するのであれば、逆算で一日どのくらい英語の勉強をして、練習のためにTOEICテストを3ヶ月に一回受けて、という具体的なタスクが思いつく。こうしたマイルストーンとタスクを日付入りいで書きだすのがこのステップの重要なポイントだ。そして、的はずれなタスクになっていないか、冷静になって見直すことも大切だ。

3. 毎日必ず反復練習を行い、習慣化する

タスクを洗い出したら、あとはいかにそれを習慣化するかだ。

私の経験上、人は週1日とか月に3日といった行動を自分の意思だけで習慣化することはできない。例えば英語の自己学習を週3日1時間ずつやろうと思っても、恐らく続かないだろう。ではどうすればいいのかというと、必ず毎日やる。短い時間でも毎日やることが習慣化につながる秘訣だ。
週3日で1時間づつ勉強するのなら、週7日毎日30分勉強するほうが確実に習慣化に結びつくだろう。そして毎日続けるならば、雨の日も風の日も、元気な日も風邪を引いた日も、友達と朝まで飲んだ日も海外旅行に行った日も必ずやる。一切言い訳を認めず必ず毎日やるルールにすれば、そのうちその習慣となったタスクをやらないと気持ち悪くてムズムズしてくるはずだ。

ただ、あんまりガチガチに必ず毎日というルールにすると、意思の強くないほとんどの人はそのルールに絞られてやっぱり無理でした、となってしまうはずだ。だから、2日分まとめて1日遅れまではOK、といった特別緩和ルールも決めておいたほうが良いだろう。


4. 毎日反復練習したことを記録に残す(できれば公開する)

最後は毎日のタスクを記録に残すことだ。
パーソナルな日記に残すでもいいし、ブログなどで公開してもいい。

もし絶対に習慣化したいことがあるんだ、というのなら、Twitterでもブログでもなんでもいいから公開することをおすすめする。周りから見られているという感覚があると、どうしても罪悪感を感じたり、ああ、あいつもうあのタスクやめたんだ、と思われたくないので頑張り通すものだ。他人はそんなこと気にかけてもいないのだが、自分が勝手に感じるプレッシャーを上手く利用するのも大切なテクニックなのだ。


願望を実現したいのなら意思ではなくてプロセスに頼るべき 1


仕事にしても趣味にしても、あなたにはどうしても実現したいと思う憧れの目標を持っているだろうか?
例えば年収1億円を実現するだとか、グローバルプロジェクトを率いて成功に導くとか、エベレストに登頂するといった、数年、数十年、もしくは一生をかけて達成したいと思っている願望はあるだろうか。

人生を受動的ではなく能動的に生きたいと思っている人の多くはこうした願望を持っていることだろう。
願望を実現させるためには言うまでもなく継続的な努力が必要だ。しかし、残念ながら自分も含め多くの人が願望という強いエネルギーを努力に変換させることができず、一向に夢の実現に近づかないという人が多い。何もしなくても成功に近づいている生まれつきの成功者でない限り、努力を気合や根性に任せたりせずプロセス化しなければということを私達凡庸な人間は認識しなければならない。

願望を持つだけではダメ

私は自己啓発マニアではないけれどベストセラーになっている自己啓発書は何冊も読んできた。そしてどの本にも願望を実現するためのコツは大抵同じことが書いてある。
それは、実現したい願望を文字に書き出して目に見える場所に張っておくというものだ。文字に書き出して後は机の奥深くにしまっとけというバリエーションもあるが、大差はない。

まず第一ステップとして実現したい願望を明確にせよ、というものだ。願望を言語化して自分の潜在意識に刷り込むというのは、確かに必要なステップだと思う。だが、どの自己啓発の教えも潜在意識に目標を刷り込んだ後の具体的な手続きについては教えてくれない。願望を言語化さえすれば勝手に実現化するという乱暴なセオリーまで存在する。

願望を明確化すれば勝手に実現するという教えの背後には、誰でも明確な目標さえあれば正しい努力ができるという前提に基づいているが、現実そんなことはない。多くの人が願望やコンプレックスのような強いエネルギーを内に抱えたまま、そのエネルギーの正しい使い方をわからないでいるのだ。もし誰からも教わらずにそのエネルギーを正しい努力に向けることができたのなら、その人は自己啓発セミナーで食っていけるような生まれ持っての成功者だ。

ともかく、願望というのは形のないエネルギーで、一定の方向性と形を与えてやらなければなんの効果もない、むしろネガティブな作用をしかねないエネルギーだ。だからこそこのエネルギーに方向性と形を与えるという「プロセス化」の技術を我々凡人は身につけなければならないのだ。

例えば山登り

最近このプロセスを持つことの重要性をひしひしと感じたのは、趣味の山登りをしているときだった。

つい数年前に始めた趣味だけれど、テント装備で3000m級の山を何泊かしながら縦走するなど結構ハードな登山を好んでしている。初心者ながら順調にハードなコースもこなし、キリマンジャロやマッキンリーもいつかアルパインスタイルで登頂してやろう、むしろ今すぐにでもできるんじゃないか?などと考えていた。
しかし、そんな妄想ばかりしているだけで、ろくにカーディオトレーニングもしないし高所トレーニングもしていないものだから、先日日本で2番目に高い北岳に登っただけでバテバテになってしまい、縦走の予定を切り上げてピストン下山してきた。

たかだか3000メートル程度の山で何たるざまか。自分の努力の足りなさを痛感させられた。
それもそのはずで、普段は仕事の忙しさにかまけてろくにジョギングもしていなかったので、心肺機能が明らかに低下していた。おまけに前回の登山から丸々1年が経過し、その間全く空気の薄い高所に身をおいたことがなく、身体が高所慣れしていない。お陰で10歩登ったら登ったのと同じ時間休まなければ次の一歩が出ない、そんな状態だ。


私のこのみっともない事例は、いつかすごい山に登りたいという願望のエネルギーが体力づくりや高所トレーニングという正しい努力に向かわず、あの山登ってみたい、きっと登れるはずだ!という妄想にばかり浪費させられていたことを示している。そのエネルギーを体力づくりに傾けていれば、今回だって北岳から白峰三山縦走を楽しんでいただろう。

大抵の人はある願望や願いを持って、実現するための小さな努力を試してみる。だが、3日と経たないうちに小さな努力と大きな願望のつながりが見えなくて意気消沈してしまい、3日坊主で終わってしまうのだ。そして願望のエネルギーは妄想という非生産的な活動にばかり浪費されてしまう。 


次回はプロセス化の手続きについて、私なりの方法をお伝えしたい。

次回エントリー:

2013/09/24

くまモンは版権フリーとプロモーション戦略でいかに1000キャラ入り乱れたご当地キャラ戦争を勝ち抜いたか 2


くまモン

前回のくまモンの続きから。

前回エントリー:
2013/9/24 くまモンは版権フリーとプロモーション戦略でいかに1000キャラ入り乱れたご当地キャラ戦争を勝ち抜いたか 1

■くまモンのプロモーション戦略

くまモンのプロモーション戦略には他のご当地ゆるキャラよりもアグレッシブな動きが見て取れる。

Wikipediaによると、もともとくまモンは全国に熊本の魅力を伝えるためのキャンペーン「くまもとサプライズ」のために生み出されたキャラクターだ。
同じようなキャラクターは各地で生み出されているが、生み出されてとりあえずポスターを作られてイベントできぐるみが出てきて終わりという使われ方が多い中で、くまモンはメディア露出に熱心だ。

まず地場の熊本では、県内各地の幼稚園や小学校を行脚して回ったり、テーマソングとダンスが作られている。さらにご当地ラーメンやナショナルブランド商品にも意匠が使われ、熊本県民の生活に浸透しているようだ。
さらに2011年開通の九州新幹線でメインターゲットとしている関西地方でも露出を高めている。例えばよしもと新喜劇とコラボしたり、阪神タイガースとコラボしたり、など。

それだけでなく、SNSへの露出も高めている。例えばくまモンはFacebookとTwitterで公式アカウントを所有している。Twitterでは30万近いフォロワーまで獲得しているのだ。

ひこにゃんを超えたくまモン

以下のGoogle Trendを見てもらうと分かりやすいが、くまモンのトレンドは2011年後半あたりでひこにゃんを逆転している。Google Trendが必ずしも実際の人気や知名度と一致するわけではないが、参考値として利用する価値はあるだろう。

Google Trend比較


ひこにゃんはゆるキャラブームの火付け役と言われるくらい歴史のあるキャラクターなので、2006年から早くもGoogle Trendに現れている。
熊本県が「くまモン」の版権使用料フリーを宣言したのが2010年後半で、2011年後半に一度スパイクし、さらに知名度を上げて2013年の初頭に最大の知名度を獲得している。
キャラクターグッズだけによってこの知名度を得られたと説明するのは無理があるが、愛されるキャラクターと版権使用料フリーの相乗効果によってたどり着いた結果だろう。


くまモンの成功を分析すると、ご当地キャラクターにも先進的なプロモーション戦略が練られていることがよく分かる。
ご当地キャラは全国で1000種類弱存在するが、人々の脳裏に残るのはほんの一部だ。せんとくんやふなっしーのようなキワモノ系でなければ、くまモンのように分かりやすいインパクトがありながら二次利用しやすいキャラクターなど、明確な色付けをしてアピールしなければ埋もれてしまう。

これは、他のいかなるジャンルの商品でも同じことが言える。
どの業界でも1000もの競合商品が存在するジャンルはまれなのだから、ご当地キャラ戦争から学べることが多くあるはずだ。


関連エントリー:

くまモンは版権フリーとプロモーション戦略でいかに1000キャラ入り乱れたご当地キャラ戦争を勝ち抜いたか 1

くまもん

くまモンは言わずと知れた熊本のマスコットだ。
熊本という日本の中では少々マイナーな県でありながら、熊本と関係あるなしにかかわらず、いろいろな商品にその商標と意匠が利用されている。それゆえ他のご当地キャラよりも知名度が高く、意匠を利用したキャラクターグッズによる経済効果も大きい。

全国には1000近いゆるキャラがありながら、そらで思いつくキャラクターはそれほど多くないはずだ。なぜくまモンは1000もの競合が存在する市場の中で、これだけ有名になることができたのだろうか?

版権フリーのくまモン

くまモンが知名度を獲得した理由は愛嬌のあるキャラクターやいろいろな商品に応用しやすい汎用的な意匠であるなど様々な理由があるだろう。しかし、大きな理由の一つは版権の商用利用がフリーであることにあるだろう。そして、そのアドバンテージを上手く活かしたためだと考えられる。

くまモンの版権は熊本県の許可を取得しさえすれば無料で利用することができる。
キャラクターが重要な役割を占めるぬいぐるみや携帯ストラップのような商品では、全国的に知名度のあるキャラクターを利用できるというのはとても大きなメリットだ。元からある程度の知名度があるという前提は必要になるが、一度キャラクターが商品に利用され始めると、それによって知名度が上がり、もっとキャラクターを利用したがる企業が増えるというスパイラルに入る。
このポジティブなスパイラルを生み出すことを予めプロモーション戦略に埋め込み、その手段としてくまモンの版権はフリー化されたのだろう。

版権使用料フリーだけが武器か?

版権フリーのキャラクターはくまモンだけではない。
ゆるキャラ業界ではくまモンと同等の知名度を持つひこにゃんも版権使用料フリーであるし、知名度ではくまモン、ひこにゃんに遠く及ばない版権使用料フリーのゆるキャラも存在している。
同じ版権使用料フリーでありながら、知名度に大きな差が出てしまう理由はなんだろうか。

前述のポジティブなスパイラルを生み出すためには、元々の知名度と消費者から好意的なイメージを持たれていることが重要だ。愛されるキャラクターと版権使用料フリーの両輪があって初めてポジティブなスパイラルが生まれるのだ。
くまモンがこのポジティブなスパイラルを生み出す事ができた理由には、熊本県のPR部門のしたたかなキャラクター設定とプロモーション戦略があったからだ。

■くまモンのキャラクター設定が優れている理由

くまモンやひこにゃんなど、正統派(カワイイ系)のゆるキャラにはいくつかの共通点がある。

まず分かりやすい命名。
いかにひねられた名前であっても、それがどこの県や市町村なのかが分からなければ意味がない。いくらキャラクターが有名になっても、消費者の頭の中でキャラクターとご当地がセットで記憶されなければPR効果は得られない。
だからこそ、ゆるキャラの名前は分かりやすくご当地を想起しやすいものであることが重要だ。

その点、熊本はとても恵まれていた。
なぜなら、キャラクターのモチーフは動物が担うことが多いが、熊本には「熊」という文字が含まれている。だから熊のキャラクターでご当地キャラと聞けばかなりの確率で熊本を思い浮かべるはずだ。
熊本県はその県名を下手なひねりを入れずに上手く活用して「くまモン」という「くまもと」と一字違いのキャラクター名を名づけた。


人気の出るゆるキャラのもう一つのポイントはキャラクターのシンプルなデフォルメ化だ。
人気のあるゆるキャラを見ると、大体が極端にデフォルメされたある種没個性的な見た目をしたキャラクターであることが多い。それがなんとも「ゆるい」感覚を滲み出させている。

くまモンは熊をこれでもかというくらいシンプルに表現した線の少ないキャラクターであるし、ひこにゃんも猫がカブトをかぶって刀をもっただけのシンプルなデザインだ。
日本人のデザイン完成の優れたところはデフォルメ化だという人もあるが、まさにそれが体現されているのがゆるキャラだ。

没個性的でどのような商品やプロモーションに使われてもしっくり来るからこそ、版権使用料フリーという武器と相まって、いろいろな商品に登場することができるのだ。


続きはパート2にて。


2013/09/20

Amazonが日本で勝ち続けている理由


このブログを読んでいるようなビジネス好きで勉強熱心な方々は、少なからずAmazonから本やその他の家電を購入したことがあるだろう。私も月に必ず複数回利用しているヘビーユーザーだ。

Amazonは2012年に初めて日本での売上高を公開し、その売上高は約7300億円に及んでいる。一方、国内最大のECモールを運営する楽天は、流通総額が1.3兆円で営業収益が約2900億円だという。楽天自身は商品を販売しておらず、モールに出店した店舗からの手数料収入が楽天の売上=営業収益となる。Amazonの7300億円はAmazon自身の販売総額ということになるが、楽天市場と同じECモールである「マーケットプレイス」の流通額が入っていないようなので、流通総額は楽天と同程度あるのではないかと言われている。

そんな米国のみならず日本でも楽天とトップ争いをしているAmazonだが、その強みはどこにあり、どのように磨かれたのだろうか。

米国と日本で異なる強み

実は、Amazonの強みは米国と日本で異なる。

米国でジェフペゾスがドアの廃材に脚をくっつけて机をDIYしていたベンチャーの頃から、米国Amazonの強みは書籍の豊富な品ぞろえと安さにあった。受注してから本を買い付ければいいので在庫は一切必要なく、問屋から購入できる本は全てラインナップに加える事ができた。また、店舗がなくコスト感覚の厳しいベンチャー企業だったので間接費が安く、どの書店よりも高い値引き率で販売することができた。
米国Amazonは同じ方法でCDやDVD、その他の商品ジャンルも幅広い品揃えと安さで開拓していった。

一方日本ではAmazonは商習慣の違いに苦しめられた。なぜなら、日本の書籍・雑誌には再販売価格維持制度が適用され、販売者に価格決定権が存在しない。それゆえ、Amazonは強みである安価な販売ができない。だが、そこでへこたれるAmazonではなかった。
Amazonは日本国内に12の巨大な流通拠点を作り、日本中のほとんどの場所で翌日配送、一部関東圏では当日配送の高効率な流通網を構築した。しかも、ただ早いだけでなく翌日、当日に配送できるアイテムの数が桁違いだ。


米国では安さ、店に買いに行かなくてい良いという利便性などで顧客を獲得したが、日本では店に買いに行くよりも早いという別の付加価値で顧客を囲い込んだのだ。実際私もAmazonプライム会員だった頃はすぐに必要なわけでもないのに当日便をよく利用していた。
ある意味、日本国内の書籍の価格統制がAmazonをさらに強敵にしてしまったと言えなくもない。

Amazonの真の強みは品揃えや安い価格だけではなく、その地域の顧客にどのような価値を提供すべきかを正しく認識し、徹底してその価値を提供するという決断力・徹底力にあるのではないだろうか。

3Dプリントマーケット「rinkak」は製造業を設計業にする?


最近話題になっている3Dプリンター。個人でもCADなどで設計・デザインさえできれば3Dプリンターを使って簡単に商品を作り出すことができる。
言うまでもなく3Dプリンターは最近のトレンドの中でもひときわ市場からの期待が高い。

この3Dプリンター周りで生まれる新しいイノベーションにより、製造業や販売業のありかたに変化の兆しが見え始めている。


今回取り上げるのはrinkakという商品の3Dプリンタで製造された商品のマーケットプレイスだ。
このECショップに並んでいる製品は、どれもまだ製造されていない商品だ。言ってみれば、陳列されているのはタダの設計図である3D設計データにすぎない。いざ売買が行われると、その時初めて製造され、出荷される。
完全に受注生産なのでサイズや色、材質を柔軟に変更することができる。消費者は数々の個性的な商品にさらにカスタマイズを加える事によって、自分好みの商品を購入することができるのだ。

以前からファブレスメーカーという、工場を持たない製造業者という概念は存在していた。だが、rinkakが決定的に違うのは、商品を設計するだけで販売体制が整うということだ。
商品の3Dデータを作成すれば、あとはマーケットに出品して受注すればその設計データを3Dプリンターにかければ製造完了。工場を持たないどころか、メーカーは生産という工程そのものを持たない。

メーカーが設計データを出品する販売形態が広がると、販売側のECショップも役割が相当変わってくる。
ECショップは在庫を必要としないので、店舗レス、在庫レスでPC1台あればショップが完成するということになる。
その代わり、どれだけ集客できるかということがそのショップをライバルECショップの中から選別する条件になってくるだろう。


3Dプリンタと3D設計図マーケットはメーカーと販売店のあり方を根本から変える存在になった。商品は絞られるが、設計以外の全ての行程をアウトソース出来るようになったと言っても良い。
今後3Dプリンタは進化してよりいろんな種類の製品を製造出来るようになるだろう。すると多くのジャンルの商品でメーカー=設計者という時代が来るのかもしれない。

2013/09/19

誰もが待ち望んでいた部屋に設置できるTOTOの介護用水洗トイレ



TOTOが新商品の介護用トイレをリリースした。部屋の中で要介護者のベッド付近に設置可能なトイレだ。
これまではベッド付近に置ける介護用トイレは存在していたが、くみ取り式のため手間がかかるし匂いもきつく、不衛生であった。ベッドのすぐ横に設置できる水洗トイレは介護が必要な家族にはずっと望まれていた商品であったことだろう。

昔から存在していたニーズ

私自身お世話をしたわけではないが、私の祖父が歩行困難で介護が必要であった。トイレの時には必ず誰かが付き添って連れていかなければならず、介護者の負担は大きかった。かと言ってくみ取り式のポータブルトイレを部屋に置いておくと匂いが気になってしまう。
要介護者がいる家庭では部屋に置ける水洗トイレに対するニーズは間違いなく存在していたはずだ。だが、漸く今になって商品化されたのは何故なのだろうか。

一番ネックになっていたのは、部屋に水洗トイレを置くことはできないという固定観念ではなかっただろうか。
絶対こんなのがあったら便利なのにな〜、という発想は誰もがすることだろうが、実現を本気で考えられる人は少ない。部屋の中に上下水道の引いてくることなんて戸建てでしかできない。そこまでする人はいるはずがない。そういう思い込みが開発者にもあったのではないか。

部屋のなかにトイレ用の下水配管を引くのは確かに難しかったのかもしれない。しかし、排泄物を粉砕して流すことで細い塩ビパイプを使用できるようになり、大掛かりな工事をしなくても済むようになった。恐らくこれは新技術というわけでもないだろう。
問題を解決する方法は既にあったのに、介護ベッド付近に設置する室内水洗トイレという明らかに存在していたニーズを満たすことはできなかったのだ。

この介護用水洗トイレ。値段はなんと50万以上する上に別途工事費用が必要だ。もちろん戸建てでないと工事はできない。それでも購入したいという人は少なくないのだろう。


この水洗トイレに限らず、今ある技術や方法を組み合わせることで解決できる未解決のニーズは沢山あるのではないだろうか。それだけ新事業の可能性は残されているということだ。

2013/09/18

ソニーはどこへ行った? ノイズキャンセリングヘッドフォンで感じるソニーDNAの迷走


カフェで読書や勉強をする時、通勤中に電車の中で英語のリスニング学習をする時、集中力を削ぐ周りの雑音を軽減してくれる魔法のアイテムがある。ノイズキャンセリングヘッドフォン(イヤフォン)というやつだ。
この魔法のアイテムは周りの騒音をマイクで取り入れ、それを打ち消す周波数を音楽と一緒にイヤフォンへ送ることで周りの騒音を打ち消してくれるのだ。完璧ではないが、だいぶ騒音が減りその効果に驚く。大きな家電量販店で試すことができるので気になる方は試聴してみると良い。

さて、私もカフェでの勉強や通勤中のオーディオブックをよく利用するので、漸くノイズキャンセリングイヤフォンに手を出してみた。いろいろ悩んでみた結果、ソニーのNC100Dという約1万円のイヤフォンを手に入れた。
【送料無料】 ソニーMDR-NC100D
ソニーMDR-NC100D
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いつもネットで下調べをして決め打ちをして物を買う質なのだが、思わず売り場でその意思を曲げそうになったノイズキャンセリングイヤフォンを発見してしまった。韓国のPhiatonというヘッドホンメーカーのPS 20 NCA商品なのだが、そのデザイン性から買う直前まで何度も何度もこの2機種で聴き比べして悩んでいた。
PS20NCのマイナーチェンジ独自のノイズブロッカー
PHIATON PS20NCA
価格:7,980円(税込、送料込)

結局はノイズキャンセリング性能と音質に勝るソニーにしたのだが、ソニーは本来デザイン性に優れた革新的商品を世に出す今で言うアップルのようなメーカーではなかったか。
デザイン性の評価は一人ひとり違うという前提はあるが、デザインのソニーが韓国メーカーにデザインで劣るとは一体どうしてしまったのか。

顧客を見る韓国メーカー、自社を見る日本メーカー

Phiaton製のイヤフォンがどのようなデザインなのかは以下の画像を見ていただきたい。

Phiaton PS 20 NCA

秀でた美しさというのはないが、無難で高級感があると感じる人が多いのではないか。黒金という組み合わせは高級感を演出するための鉄板の組み合わせだ。つやのある円柱のデザインは胸ポケットに挟んだ時に万年筆のような高級文具にも見える。
利用シーンをよく考えて、どう見えれば使用者が一番満足を得られるかが考えられていることを匂わせるデザインだ。

ノイズキャンセリングヘッドフォンはノイズを打ち消すチップとそれを動かす電池が必要で、このように本体が大きくなる。だからこそ他のイヤフォンよりもデザインが重要だ。
その条件下で、Phiatonのデザインは良く考えられているという感想を抱く。


一方、私が購入したソニーのイヤフォンを見ていただきたい。

SONY NC100D

昔流行ったMDポータブルプレイヤーの外部電池ケースのようではないか。10年以上前のウォークマンの時代からほとんどデザインが進化していない。
ソニーらしさを守っていると言えるのかもしれない。だが、旬を過ぎたデザインを頑なに踏襲することは保守性の表れだと感じざるをえない。

私はソニーファンではないけれど、ソニーとはソニーデザインを踏襲することではなくて、先進性の代名詞ではなかったか。ソニーはソニーらしさを守っているつもりで、実は本当に大切なDNAを捨て去ってしまっているのではないだろうか。


私が最終的にソニーのNC100Dに決めた理由は、性能と音質が理由だ。やはり長年の歴史があるだけあって、積み上げてきた連続的な進化の強みというものを感じる。
だが、全く同じ性能で合ったら間違いなくPhiatonを選んでいた。

最近元気の無い日本の製造メーカーに言えることだが、どのメーカーも連続的な進化をしているが、非連続的なイノベーションを起こした企業はほとんどないだろう。
ソニーがこの先もソニーであり続けるには、ウォークマンというとてつもない発明を生み出した非連続的イノベーションのDNAを取り戻すことが不可欠ではないだろうか。


 

2013/09/16

ブランド効果測定プログラム「BERTS」に見るレガシーとオンラインの乖離


オンラインマーケティングの技術ほど日進月歩で進化している分野もないだろう。
デジタルインテリジェンスとオムニバス、TubeMogulの三社が共同し、ブランド広告の効果をリアルタイムに測定できる「BERTS」という仕組みを提供開始した。

参考: 


BERTSをはじめとするオンライン広告を使ったマーケティングは、これまでのクラシックなマーケティング手法とスピード感やデータの信頼性が一線を画している。

リアルタイムな効果測定

オンラインマーケティングの一番の強みは、マーケティング施策をリアルタイムに評価しながら進められることにある。

通常のブランドリフトを目的とした広告は、テレビ広告、新聞広告、雑誌広告といったマスメディアを活用したCMがメインである。その広告の効果は、一定期間繰り返し放送し終わった後にようやくアンケートなどで測定することができる。通常は何ヶ月も先のことである。誰にどれだけ広告が露出したかもわからないので、正しい効果を図るのもなかなか難しいだろう。
そもそもマスメディアは広告の露出対象をコントロールできないので、ターゲットとする属性を持つ人達への効率的な露出が困難だ。

BERTSではビデオ広告を視聴した人、していない人を特定してアンケートを行うことにより、正確にそのビデオ広告の効果を測定することができる。しかもクリエイティブの反応ファクター分析を行うことができ、視聴者に訴えかけたのがコピーなのかタレントなのか、或いは訴求ポイントなのか、効果を分析することができる。
これら詳細な分析結果にプラスしてキャンペーン期間中にリアルタイムにサーベイできるという強みをかけ合わせると、非常に短い期間でクリエイティブのABテスト実施やクリエイティブ修正による広告効果の向上を狙えるだろう。

クロスバウンダリーの強み

オンラインマーケティングの新しい仕組みが次々と生み出されていく背景には、オンラインマーケティング会社がクロスバウンダリーに対して抵抗感を持たないからではないか。
これは国というバウンダリーにしてもそうだし、同じオンラインマーケティング市場の競合他社という意味でもそうだ。

BERTSを共同提供している三社のうち、デジタルインテリジェンスとオムニバスは日本の企業だが、TubeMogulは米国企業だ。どの企業もベンチャー企業であり、それぞれの企業はオンラインマーケティングのブレイクダウンされた一機能を提供している。例えばデジタルインテリジェンスは総合デジタルマーケティングコンサル、オムニバスはアドネットワーク、TubeMogulはビデオアドベンダーというように。

それぞれの企業がある狭い領域のスペシャリストであり、クライアントへ提供する付加価値を最大化して競合を出し抜くには、別の付加価値を提供している企業とのパートナーシップが重要になる。だからこそ、別の国の企業であることや同じマーケットの競争相手でありながら、パートナーシップを組むことに抵抗感がないのではないだろうか。
そしてビジネスのエグゼキューションに関しても、オンラインマーケティングのシステムはインターネットを介して地理的に離れた場所でデリバリできるので、地理的に遠いパートナーとの協業でも問題はない。


レガシーとオンラインのスピード差は日を追うごとに開くばかりだ。どちらもクライアントにとっての価値は同じものであるはずなのに、生態系が全く分離している。
このようなレガシーとオンラインの乖離はマーケティングに限らず、様々な分野で見られる現象になることだろう。

2013/09/15

進撃のマッチングサイトビジネス


『いこーよ』ロゴ

最近「進撃」という言葉が大流行なので・・というのはさておき、Webプラットフォームを活用したマッチングサイトが多様化し、ニッチ化し、増え続けている。
例えば親子のための遊び場検索サイト「いこーよ」。マッチングサイトがひしめき合っている職業検索サイトや賃貸物件検索サイト、中古車検索サイトなどに比べると、ニーズを持っている人は小学生以下程度の子供を持つ親に限られ、扱っている情報の性質上マネタイズも難しそうだ。しかし、それでもアフィリエイト広告、タイアップ広告、クーポンなどでビジネス化出来ている。しかも月間ユーザー数は300万ユーザーにも及ぶという。

検索サイト形式のマッチングサイトは、初期投資がさほどかからず幅広いニッチなニーズでビジネスが構築できる、一種の起業の型とも言えるだろう。
私自身、起業するのであればマッチングサイトから入るのがいいだろうと思っている。そんなWebプラットフォームのマッチングビジネスの特徴を考えてみよう。

ニーズが無限に広がっている

マッチングニーズは日常の至る所に転がっている。例えば私は一時期博物館に行くという趣味を持っていたのだが(残念ながら一過性の趣味で終わってしまったが)、各博物館のサイトに訪問してみないと、どのような展示がなされているのか分からない。これも立派な博物館検索サイトのニーズだ。マネタイズするのは難しそうではあるが。

マッチングビジネスの要は、世の中にあるどのような情報ギャップをマッチングサイトで解決するかという点にあるが、その情報ギャップは日常生活のなかで沢山発見することができるはずだ。

情報ギャップを満たすのは別の個人や企業

マッチングサイトの優れているところは、情報ギャップというニーズを満たすために最も重要なパーツである情報を他の利用者である個人や企業が満たしてくれるという点にある。知りたい人と教えたい人が情報を共有するためのプラットフォームを用意してあげればマッチングサイトは成立するのだ。無論、その場を使った情報交換の促進やマネタイズ方法を検討するという別の課題も検討しなければならない。

同じ情報ギャップを満たす仕事として士業やコンサルタント、スペシャリストという存在がある。これらの仕事は自分自身が情報プラットフォームであり続けることが不可欠があり、情報の収集と蓄積のために膨大な努力が必要だ。

ローンチまでの障壁が低い

マッチングサイトはローコストに始めることができる。
プラットフォームの構築はPHPやRubyといった動的Webサイト構築用の言語を使って構築されるが、一度構築が完了してしまえばすぐにサービスを開始できる。もちろんWebサービスを動かすためのサーバや回線の準備が必要だが、最近ではAmazon Web ServiceのようなPaaSやIaaSのお陰で初期投資いらずでローンチできる。PaaSやIaaSの存在も最近のマッチングサイトの繁栄に一役買っていることは間違いない。

だが、マッチングサイトにはマッチングサイトなりの新しい課題がある。まず情報を必要とする人達と情報を提供したい人達が集まらないことにはプラットフォームはただの場だ。だからこそマッチングサイトにおいてはユーザーを集めるためのマーケティング(最近のバズワードで言えば「グロースハック」)が致命的に重要なのだ。そして利用者を根付かせるための施策としてユーザーエクスペリエンスを向上させる努力も継続しなければならないのだ。

レンタカー返却に見る経済合理性


先日ニコニコレンタカーというレンタカー会社から車を借りた。
このレンタカー会社は独立した店舗を設けず、主にガソリンスタンドや車用品店に間借りしてレンタカーを営んでいる。もしかしたらレンタカー業をガソリンスタンドで営んでいるのもガソリンスタンドの店員かも知れない。

先日車を借りたガソリンスタンドはどうもガソリン販売をメインビジネスとはしていないようで、表示価格が近隣店舗よりリッターあたり17〜10円も高かった。代わりに整備や車検のサービスを充実させていて、たまにガソリンを入れてくれる人がいればいいやというスタンスが見受けられた。
そして、このスタンドでレンタカーを借りると、返却時の満タン給油がリッターあたり10円引きになるという。それでもリッターあたり7〜10円近隣店舗より高いのだが。

返却時にはそれなりにガソリンを消費しているので、安いところで給油して返そうとずっと考えていたのだが、最終的にはめんどくささが勝ってあえて10円も高いガソリンを給油して返却していた。
ガソリンはどこで入れても大きな品質差はないコモディティだ。基本的に競争は価格差だけだ。それでも約6%価格が高くても売れる方法があるというのは注目に値すべきことではないだろうか。

なぜリッター10円高くてもそこで入れてしまうのか

10円高くても喜んでそこでガソリンを給油する人がいるということは、ガソリンの販売には10円の価格弾力性が存在しているということだ。なぜ10円の価格差が着くのかといえば、そこには他の店舗で入れてくるという手間に値段が付いているからだ。
人は案外キャッシュアウトしない自分の労働力にも値段を付けているものだ。レンタカーの例で言えば、10円×数十リットルの価格差は、私にとってはその手間に見合わないと判断した訳だ。

この自分の労働力に対する値段は人と人の間で、あるいは同じ人でも状況によって、大きく差が出る。
例えば主婦は特売品の卵1ケースの価格差3円のためにスーパーを使い分けるとも言われている。仕事に忙しいキャリアウーマンは卵1ケース数十円の差があっても、近場であるとか一か所で全ての買い物が済むということに価値を億だろう。

日頃の買い物には価格弾力性が小さい主婦だが、一方でママ友同士の贅沢ランチには数百円どころか1000円でも許容されてしまうことだろう。卵333ケース分もの違いがあるにも関わらずだ。
同じ人であっても、価格弾力性は状況によってこれだけ大きな差が出てくるということだ。


このように、ガソリンのようなコモディティでも価格差を生み出すことができる。少し視点を変えて消費者の手間を解決することができれば、価格勝負でしかなかったコモディティ商品を収益性の高い商品に変えられる可能性を秘めているのだ。

2013/09/14

事業アイディアの外部調達


ハッカローソンの様子
ハッカローソンの様子(from Internet Watch)

アウトソーシングやシェアードサービスのような、会社の機能の一部を外部から調達するという動きが加速している。
極端な話、最大限会社機能をアウトソーシングしていくと、企業に残るのは経営と企画機能だけだと言われることがある。この言葉にあるように、判断や考える機能はアウトソーシングが難しいとされていた領域だが、事業やサービスのアイディアを外部から調達する動きが進んでいるようだ。

例えばローソンでは、ソーシャルメディアやキャラクター「あきこちゃん」の3Dデータ、ダミーの購入データを公開し、これらの情報を使った新しいアプリのアイディアを外部から集める取り組みを行っている。日経MJ(2013/9/11 P.3)によると、ローソンは「ハッカローソン2013」というイベントを開催し、外部の人材に新しいアプリのアイディアを募って実際にアプリをハッカソン形式で開発させた。

ローソンの取り組みは、アウトソーシングの聖域だったはずの企画機能を外部から調達した例だ。そしてこのような取り組みは様々な業界で増えているのだそうだ。

なぜ外部からアイディアを調達するのか

なぜ外部からアイディアを調達するのだろうか。企業にはいくつかのモチベーションがあるはずだ。

差別化の難しさ

どの企業もどうすれば競合とは異なる付加価値を顧客へ提案できるのか、四苦八苦している。プロダクトにしろ、サービスにしろ、商品が溢れかえっている今の時代、競合にはない付加価値を提供しなければ顧客に自社を選んでもらえない。
だからこそ新規サービスや新規事業を立ち上げる組織が企業には必要なのだが、どうしても業界内部の人の発想は業界の常識に囚われてしまうことが多い。

利用者の目線を新サービスのアイディアに

利用者にとって最も便利な製品やサービスは、消費者が一番よく知っている。皮肉なことに、業界知識や経験が長い人ほど顧客の目線から遠ざかってしまうのだ。
プロダクトアウトの発想で新サービスを考える分にはこれまで通り社内の企画部門が担えばいいが、マーケットインで新サービスを立ち上げたいならアイディアの外部調達はどんどん行っていくべきだろう。

また、利用者が生み出したアイディアに対しては、会社の上層部の人間も真摯に向き合うという副次的なメリットもある。売りたい相手がこれが欲しいと言っているのだから、真剣に受け止めざるを得ない。

企画部門はコストセンター

企画部門は会社の中でも花型の部門とみなされることもあるかもしれないが、実は金食い虫のコストセンターであるというのも事実だ。会社の業績が良いときならば問題視されないが、業績が悪くなってくると途端に肩身の狭い思いをすることになる。
会社としても、必要以上にコストセンターの人員を増やすわけにはいかない。だから必要なときに外部から調達できるのであれば、企業はできるだけ外部から調達しようとするベクトルに向かうだろう。

2013/09/13

なぜ組織は行動指針を作るべきなのか

先日所属してる部署の行動指針を作るというイベントがあった。研修会場を借りて二日間部署のメンバー全員が参加するという力の入れようだ。

多くの企業が行動指針やミッションというものを掲げているが、正直自分達で作り込むまではどうやって日々の行動に活かすべきなのか、その活用方法が分からなかった。行動指針を作った今でも完全に理解できているとは言い難いが、その目的と活用の仕方について考えてみたい。

行動指針とは何か


理想の姿

行動指針という言葉を一言で表現するならば、「理想の状態にある自分や会社が取るであろう行動や考え方」というのがしっくりくるだろう。そこに規定された行動をとることで、理想とする自分や会社の姿が現実になる。

行動指針の主語は個人の場合もあれば、会社や組織の場合もある。会社の行動指針の主語が会社であるか個人であるかは、その企業のカルチャーに左右される。スペシャリストやプロフェッショナルの集まりであると自分たちを認識している企業であれば行動指針は主語が個人になるだろう。逆に、組織としてのチーム力を重視するような企業であれば、会社が守護になるはずだ。

判断に迷った時に立ち戻るもの

行動指針が価値を発揮するのは、判断に迷った時だ。上司に頼らず自分だけで判断しなければならない時、A案とB案どちらも甲乙付け難い時など、適切な判断を下すのに十分な知識や情報が足りない場合に行動指針に頼ることになる。        

日々の行動を規定するもの

もう一つ行動指針が価値を発揮するのは、それが日々の行動をガイドしてくれるからだ。理想の姿に日々近づいていけてるのか、それとも離れているのかは、行動指針と自分の行動のギャップを省みれば分かる。

大きな目標を叶えるためには行動指針は欠かせない。しかも、組織という複数の人間が携わる場では、同じ理想と行動目標を共有するために不可欠だろう。        

行動指針を作る意味

迷いをなくす

行動指針を作る目的は、上記にあげた理想とする姿を実現するためだけではない。

行動指針を定めることで、日々の業務をスピードアップすることができる。なぜなら、行動指針に判断の基準が与えられているので判断に迷うことが少なくなるからだ。それに、皆が正しい判断をできるようになれば判断ミスによる手戻りを減らすことにもつながる。

末端の社員まで正しい判断ができるようになれば、相談に取られていたマネージャーの「死んだ」時間を「生きた」時間にすることができる。そして組織全体の効率化につながるだろう。

行動指針を作ることは自分たちを省みる機会

今回自分で行動指針を作ったことによって分かったことだが、行動指針を作るという行為は自分たちのやりたいこと・なりたい姿を棚卸しするのに最適な方法なのだ。

特に組織の行動指針を作るためにメンバーで集まり喧々諤諤と議論することにより、だんだん目標とする状態が浮かび上がってくる。その具体的なイメージをメンバー全員が共有できる機会はなかなかあるものではない。
どの組織でも理想の姿を言葉で共有することはあるだろう。だが、理想の姿を考えて言語化するというプロセスを経ることで、ただ言葉で聞くだけとは段違いに腹に落ちるのだ。

2013/09/12

舐められないことは重要なのか?

disgusting

ビジネスにおいて相手に舐められないことが重要だ、という言葉を聞くことがある。特に営業出身で出世の階段を登った人がよく言う印象がある。パートナーや下請け企業だけでなく、お客様に対しても舐められるな、と
舐められないことがどれくらい重要なのか。侮られることに甘んじること、そして、舐められないような態度に出ること、どちらがどれだけプラスがあり、マイナスがあるのだろうか。

そもそも舐められない態度というモノを定義する必要があるだろう。

舐められない=高圧的態度に出る

相手に舐められない態度を高圧的な態度と定義したとする。

誰が聞いてもこれは間違った態度だろう。相手が高圧的な態度に対して萎縮するタイプの人間なら、とりあえず言うことを聞いてくれるのだから物事はスムーズにすすむことになるだろう。だが、相手も同じタイプで反発してくるような性格だったらぶつかってばかりでビジネスの話どころではないだろう。

相手が萎縮するタイプの人だとしても、そこにつけ込んで言うことを聞かせているのであれば、それはただのパワハラだ。道徳的にも問題がある。

舐められない=言うべきことを言う
舐められない態度をとして正しいのは、表面上はソフトに、フレンドリーにコミュニケーションを取りつつも言うべきことを言うべきタイミングで言う、という態度であろう。

高圧的な態度に萎縮してしまう人に対しても、反発してしまう人に対しても、フェアな態度だ。そして相手に侮られている状態よりもビジネスが進むことだろう。
ただし、正しいことを言っているだけで良いのかといえばそうではない。正しいことを言うのは必要条件ではあるが、十分条件ではない。もっと相手とのパワーバランスをコントロールする別の要素が働いているはずだ。

舐められない態度が難しい

正しくあることは難しくないが、舐められない態度を取ることは案外難しい。

そもそも舐められない態度って何?という人は少なくないはずだ。特に子供のころから品行方正で友人関係も円満で牧歌的に過ごしてきた人にとっては。学生の頃からヤンキーだったり周りと軋轢を生むような生き方をしていない限り、意識的に相手を威圧するという技術は身につかないだろう。
そういう人は、人から学ばなければならないが、対人関係における行動パターンはそう簡単に変えられるものではない。舐められない態度を身に付けるのはなかなか難しいだろう。

また、侮られないにはどういう対応をすればよいかはわかっているが、行動に出せない人もいるだろう。
何をすればよいか分かっていても、行動に出せない。舐められない態度というのは必然的にある程度威圧的な態度にならざるを得ないので、相手への遠慮が出てしまう人も少なくないはずだ。前述のようにそういう必要性もない環境で育ってきた人にとっては。
一方で、舐められないように態度で示さなければ隙をついてこようとする相手とは一緒にビジネスする価値すらないと考え方もあるだろう。


私の場合、相手への遠慮もあり、またパワーゲームを仕掛けてこようとする人は相手にしたくないという理由で言うべきことを言うタイミングを逃してしまうことがある。反省。
でも、常に威圧的な態度をちらつかせて舐められないようにパワーバランスを配慮しなければならないような相手は、遅かれ早かれトラブルを起こすので一緒にビジネスすべきではないとも思うのだ。


photo credit: Cayusa via photopin cc

2013/09/11

ドトールの戦略転換は功を奏するか 2

ドトール




前回に引き続き、ドトールの新戦略店舗「白ドトール」について考えてみたい。

ドトールの新戦略

ドトールの新戦略は、カフェという大きなマーケットのトレンドに合わせたものだ。
カフェの新しい価値として、ゆったりと過ごす空間、第二のリビングルームのような役割が定着してきている。実際、今メインストリームにある大手カフェチェーンはこのセカンドリビングルームとしての価値を提供しているところばかりだ。

ドトールの新戦略は、まさにこの変化に食らいついて行こうというもので、セカンドオフィス、セカンドリビングとしての店舗の充実化を掲げている。
具体的な取り組みとしては、セカンドリビングとしては狭苦しい今のドトールよりもゆとりのある空間を作ろうとしており、出店数を増やすことよりも既存店の敷地を大きくすることを重視している。そしてセカンドオフィスには欠かせない無線LANの構築も行うそうだ。

その一方で、コーヒー一杯150円からという安さが売りの価格帯変更を検討しており、同時にメニューの充実も考えているようだ。
こうした新しいコンセプトで作り出した新生ドトールは、「白ドトール」として新たなブランドでスタートするそうだ。

ドトール新戦略は顧客イメージへのチャレンジ

果たしてセカンドリビングとしての価値を高めようというドトールの新戦略は上手く行くのだろうか。

まずドトールの現状だが、このカフェチェーンの魅力はなんといってもその価格の安さだ。ドトールへ来店する顧客の動機としても安さを一番にあげる人が多い。
誤解を恐れずに言えば、こうした顧客はテイクアウトニーズを除けば安く長居できるという点に魅力を感じている人が多いはずだ。

こうしたポジショニングにあるドトールが、高級路線の白ドトールへと変貌を遂げるとどうなるだろうか?恐らく安く長居することを目的にしていた顧客は裏切られた気分になり、マクドナルドやカフェベローチェなど安価に長居できる他の選択肢へなだれ込むことになるだろう。
価格が変わればその商品の意味付けが変わる。今までドトールを愛用していた人にとって、価格がスタバ並になってしまったドトールはドトールではないのだ。


現在ドトールを愛用している人達は安価である代わりに狭苦しいテーブルと硬い椅子に我慢できる人達であった。では、高価でも広々としたスペースで居心地の良い空間を提供する白ドトールに来るのはどんな顧客だろうか?

この問いは即ち新しい競合はどこになるのかという問いだが、顧客の頭の中ではやはりスタバやエクセルシオール、ルノアールと比較されることになるだろう。今後はコーヒー一杯に300円以上支払っても構わないからゆったり過ごせる空間がいいという顧客が主要なターゲットになるだろう。
これまでのドトールもこれらのカフェと競合していたが、値段が安いという分かりやすいアドバンテージだったので、価格に反応する顧客が訪れた。しかし、今後は低価格という差別化要素が弱まったことになる。こうした状況下で、明確な差別化要素をターゲット顧客へ提示できるか、そしてセカンドリビングでゆったりしたいというニーズを持っている顧客の頭の中に、白ドトールは選択肢の一つであることを想起してもらえるかが成功を決定する要因になるだろう。

ドトールではホットドックなどの軽食が比較的充実しているが、白ドトールではさらにフードメニューを充実させようとしているようだ。これは新たなセカンドリビングカフェの競合と差別化するには良い選択かもしれない。


ドトールの戦略転換は安価というドトールの強みを失わせる可能性があり、競合との差別化ができなくなってしまう可能性をはらんでいる。
だが、新しい戦略的店舗を白ドトールとし、現在のドトールと差別化したのは賢明だ。顧客の頭のなかで、二つのカフェが別物として認識される可能性が高いからだ。新戦略が成功するかどうかは、人々の頭のなかでゆったり過ごしたいときに白ドトールという選択肢がすっと浮かんでくるか否かにかかっている。

関連エントリー:

ドトールの戦略転換は功を奏するか1


ドトール

ドトールは全国に1000店舗以上を有する、国内有数のカフェチェーンだ。一杯150円からという安価な価格設定が受けて、仕事の一服に立ち寄る人やテイクアウトして仕事や勉強しながらコーヒーを楽しむ人達に人気だ。
だが都内の主要駅のそばには2つ3つのカフェが居並ぶ過当競争状態にあり、ドトールは戦略の転換に着手し始めている。その戦略の打ち手と予想される効果を考えてみたい。

ドトールの戦場

現在ドトールが置かれているマーケットを考えてみよう。
ドトールには二つの戦場がある。ここで言う戦場とは、顧客の購買行動の選択肢にドトールが入ってくるようなニーズやシチュエーションを意味する。そして戦場によって競合は変わってくる。

一つの戦場はテイクアウトコーヒーだ。
オフィスで仕事をしながらコーヒーを飲みたいというニーズがある場合、当然近所にドトールがあればドトールはその候補として有力な存在だろう。だが、最近色々な競合が存在する。例えば、スタバのようなコーヒーチェーンんはもちろん、テイクアウトコーヒーに力を入れているコンビニチェーンやミル挽きのコーヒー自動販売機、そして缶コーヒーもここに食い込んでくる。

いくつも競合は考えられるものの、ドトールのコーヒーを好んで購入する最も大きな動機は、一杯150円というその安さだ。この点を加味すると、テイクアウトコーヒーの戦場で最も競合しているのは、コンビニチェーンやミル挽きコーヒー自動販売機だろう。実際、自分もこの3つの選択肢で良く迷う。


二つ目の戦場は、ゆっくりとカフェで過ごしたいという、カフェをもう一つのリビングルームのように考えている人達のニーズだ。
カフェでゆっくりコーヒーを飲みながら本を読んだり、勉強したり、という過ごし方をする人が増えている。カフェはコーヒーを楽しむだけの場所ではなくて、自分のオフィスやリビングの延長として捉えられている。私自身、よくこの目的でカフェを利用する。

こうしたセカンドオフィス、セカンドリビングとしてのカフェ利用をするなら、やはりスタバや同じドトールグループ傘下のエクセルシオール、そして私が好んで利用しているルノアールなどが代表的なカフェであり、競合である。ただし、これらの競合と比較すると、ドトールは単価が安いものの席のスペースが狭かったり、居心地の良さという点で競合に劣っている。


現在のドトールの立ち位置としては、テイクアウトニーズの戦場ではコンビニやミル挽きコーヒー自販機と競合し、セカンドリビングニーズではスタバやルノアールと競合している。テイクアウトニーズの競合の中では価格はやや高いが、セカンドリビングニーズの競合の中では価格が安いものの過ごしやすい空間としては競合に劣るというポジションにある。


次回へつづく。

次回エントリー:

2013/09/09

LG化粧品のしたたかな日本進出


日経MJの2013年9月6日版でLG化粧品の日本進出に関する記事が掲載されていた。
LG化粧品は日本国内での知名度は低く、品質と知名度に勝る国内化粧品メーカーひしめく日本マーケットに進出するのは難しかった。しかし、日本国内からさらにアジアマーケットまで視野に入れた戦略的な動きを見せている。

あえてLGというブランドを使わない

LGは日本マーケットへ進出するにあたって、LGという知名度のあるブランド名を使わないという決定をした。既に知られているブランド名を再利用しようとするのは多くのCMOやCEOが犯す間違いだ。

ブランド名は常にあるカテゴリーの商品と結びついて消費者に覚えられているものであり、他の商品カテゴリーともマッチさせようとすると、途端に消費者の頭の中でコンフリクトを起こす。そしてブランドがもたらすイメージを弱体化させてしまうものだ。

さらにはLGというブランド名は家電という化粧品とはかけ離れたカテゴリーであるし、LGのブランドは化粧品に必要な高級品というイメージが結びつかない。むしろ安かろう悪かろうというイメージの方が強く、高級化粧品とはどうやっても相いれない。

銀座ステファニーの買収

日本国内マーケットへ進出するためにLGはLGブランドを捨て去り、銀座ステファニーの買収を足がかりとした。銀座ステファニーの買収は戦略的に妙手であった。

まず競争の激しい日本国内の化粧品マーケットではターゲットへリーチするための流通経路を獲得するのも楽ではない。そういった点では、すでにターゲットを顧客に有する企業を買収してその販路に自社製品を乗せる方が浸透は早い。

また、銀座ステファニーは韓国では発達していない通販という流通経路も持っていた。同社の買収は、通販という流通経路を韓国国内で開発するためのナレッジ獲得の意味もあったのだという。

こうした戦略的な日本マーケットへの進出も、さらにその先にある他のアジア圏進出へのステップにすぎない。消費者の目の厳しい日本で売れたという実績を元に、アジア圏へ販路を拡大するのがLG化粧品の真の目的なのだ。

2013/09/08

マーケティング失敗の法則


売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則

トップマーケターとして名高いアル・ライズとジャック・トラウトの共著「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則」という本がある。100%成功するマーケティング施策というものはないが、この本では本質的なマーケティングの法則について分かりやすく解説されており、マーケティング戦略を考える上でベースとなるコンセプトを得られる。

前回はマーケティングで成功するためには顧客の心に自社商品の存在を打ちたてる事だと書いた。今回は、マーケティングで犯しがちな失敗例を本書から取り上げたい。

参考エントリー:

失敗の法則

■難しい商品名を使う

顧客の心に自社商品の居場所を作ることがマーケティングの成功法則なのであれば、逆に顧客の心に入り込めないマーケティングはすべからく失敗ということになる。

マーケティングの失敗を招く分かりやすい法則は、意味のない商品名を付けることだ。
前回のエントリーでも述べたが、顧客の心に入り込むためには新しいカテゴリーの一番手として記憶されることであり、そのためには新しいカテゴリーと一致する分かりやすい商品名を付けることが上策だ。間違っても型番のような商品名を付けてはいけない。

ただし、型番のような商品名がブランドとして認知されている場合は別だ。国内4台バイクメーカーの大型バイクのレーサーフラッグシップモデルは「YZF-R1」や「CBR1000RR」といった暗号のような商品名だが、既に定着している。下手に商品名を変えてしまえば、レーサーフラッグシップモデルとして認識されなくなってしまうかもしれない。

■ナンバーワンと同じ価値を提供しようとする

ほとんどのマーケットでは、利益を得られるのはナンバー3までだ。それ以下のシェアしか持たない企業は利益を得られず遅かれ早かれ撤退せざるを得ない。
しかも成熟したマーケットになると、ナンバー3も利益を得られず、事実上ナンバー1とナンバー2しか利益を得られない。コーラという成熟したカテゴリーではコカ・コーラとペプシがマーケットのほとんどを占めているし、パソコンのOSではWindowsとMac OSが、スマートデバイスOSではiOSとAndroidの二大ブランドが独占している。

ナンバー2企業がナンバー1企業に追いすがり、なおかつナンバー3を振り切るには、ナンバー1と正反対の価値を提供しそれをターゲット顧客にアピールすることだ。これまで多くのナンバー2ブランドがナンバー1企業と同質化することで失敗をしてきた。顧客からすれば、同じ価値を提供してる2つのブランドがあるならば、ナンバー1から購入するほうが間違いがない。
ナンバー2企業がナンバー1に伍していくつもりならば、ナンバー1と正反対のコンセプトを携え、ナンバー1ブランドに満足していない顧客を集めるべきなのだ。

■ラインの拡張

あるブランドを成功させた企業が陥りがちな失敗が、新しい商品を持ってきて成功したブランド名を与えることだ。
成功したブランド名はある商品カテゴリーそのものを意味している。そこに新しい商品カテゴリーを付け加えてしまうと、そのブランドの境界線がぼやけてしまい、やがて意味を失ってしまう。企業はブランドが持つ強みを過信し、ブランドが新しいカテゴリーも取り込むものだと思いがちだが、実際には真逆の結果に至る。

ブランドを打ち立てることに成功した企業は、そのブランドからもたらされる金銭的・人的資産だけを再活用して新しいブランドを打ち立てることに腐心すべきなのだ。ブランドを使いまわして楽をしようとしてはだめなのだ。

■資金不足をアイディアで乗り切ろうとする

最後の失敗の法則は少々無慈悲に聞こえるが、優れたアイディアは豊富な資金によってのみ具現化する。同書では金のない優れたアイディアよりも、資金のある凡庸なアイディアの方が結果をもたらすと断言して憚らない。

だからこそ企業はいたずらにラインを拡張せずに、絞り込んだカテゴリーにリソースを集中させるべきなのだ。


参考エントリー:





マーケティングは顧客の心に入り込むこと


売れるもマーケ当たるもマーケ マーケティング22の法則

マーケティングのプロフェッショナルであっても、百発百中で当たるプロモーション活動をできる人はいないだろう。競合やマーケットの状況によって打ち手が変わるし、その状況は常に変化し続けている。しかし、状況は無限にあれど、本質的な法則というものは存在しているはずだ。
アル・ライズとジャック・トラウトの共著「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則」は、マーケティングとは顧客の心のなかに自社商品の居場所を作るための作業であることが端的で分かりやすく示されている。

顧客の心の中に商品の居場所を作る

マーケティングの目的は極めてシンプルだ。ターゲット顧客に自社商品を認識してもらい、覚えてもらい、より多く購入してもらう事だ。あらゆるマーケティング施策やプロモーションはこの目的を達するために、顧客の心の中で自社商品の居場所を作るための戦略・戦術なのだ。

ポイントは、どれだけお金をかけた広告やプロモーションであろうと、顧客の心の中に狙った通りのポジショニングで入り込めなければ失敗であるということ。そして成功と失敗には22のパターンがあることを、「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則」で紹介されている。

ベーシックな法則

22の法則の中でも、最も基本的かつ重要ないくつかの法則について紹介しよう。

■カテゴリーの一番手になること

自社の商品をあるカテゴリーで記憶してもらおうと思うならば、そのカテゴリーの商品の一番手になることが重要だ。別の言い方をすると、新しいカテゴリーを作るということ。

新しいカテゴリーを創りだした商品の商品名、または企業名は、そのカテゴリー名になることがままある。日本では馴染みが薄いかもしれないが、海外ではコピー機を「ゼロックス」と呼ぶことがある。これはゼロックスが最初に企業向けコピー機を普及させたからだ。

■顧客へ何を伝えたかではなくて、顧客は何を受け取ったか

カテゴリーの一番手になるということは、必ずしもカテゴリーで初めての製品である必要はない。企業は新商品が全く新しいカテゴリーの商品であることを明確に伝えなければ、顧客はしばしば既存カテゴリーの亜種としてみなし、覚えてくれない。だから商品がいくら斬新であったとしても、企業はその商品が一体なんであるのか、顧客教育を行うべきなのだ。
ただし、新しいカテゴリーはターゲット顧客にとって全く意味のない新しいカテゴリーでは覚えてもらえない。そのターゲットが抱えている何らかのペイン(課題)を解決するカテゴリーでなければならない。

そして、新しい商品と新しいカテゴリーの結びつきは、分かりやすい商品名で表すと効果が高い。Appleは既存のラップトップと比較して圧倒的に薄くて軽い(実はさほど軽くはないけれど)PCの新カテゴリー「ウルトラブック」の一番手商品に「MacBook Air」という商品名を付けた。Airという部分が、いかに薄くて軽いのかを分かりやすく示している。


「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則」には他にも様々なマーケティングの法則が、分かりやすい事例と説明で紹介されている。マーケティングに携わる人はチェックリストとして使ってみてはどうだろうか。


関連エントリー:
2013/9/8 マーケティング失敗の法則




2013/09/06

起業家と企業内起業家はどっちがマシなのか

起業家

私はとある企業で事業開発という新規事業の企画と開発を担う部署に身をおいている。自ら希望して事業開発に携わっている身なのだから、当然起業という選択を考えたことは何度もある。

何のしがらみもなく自分のビジネスプランを世に問うことができる企業という選択肢は非常に魅力的だ。だが、新しい事業の創造に携わる理由が、社会的・ビジネス的にインパクトのある事業を作り出したい、それもできるだけたくさん、という所にあるのなら、やはりエスタブリッシュトな企業の中で事業開発した方が合理的だと私は考えたのだ。その理由は、既存事業によって生み出された利益や人材というリソースにレバレッジがかけられるので、起業して一からやるよりも効率的で効果も大きいと思ったからである。

しかし、やはり企業の中で事業開発にすることには起業とは違う特有の難しさがあるものだと痛感する。

起業のデメリットが

私が起業に対して感じていたデメリットの最たるものは、ベンチャー経営者は資金獲得のために常に奔走しなければならないということだった。
ベンチャー企業は言うまでもなく万年金欠病だ。最初に大きな投資が必要な事業ならその資金を集めなければ事業が始められない。会社が立ち上がったとしても、従業員の給与を支払えなければやはり存続できない。

安定的な収益を稼げるようになるまで、起業間もないベンチャーの経営者は常にお金のことを心配しなければならないという。どうしても私はこの種の苦労のために自分の時間を割きたいとは思えなかった。常にお金の悪夢にさらされながら果たしてクリエイティブな事業構想ができるのだろうか?

もう一つ私が避けたかったベンチャー経営者の悩みは顧客獲得の苦労だ。立派な看板を持った大手企業の営業なら、顧客獲得もパートナーもそう無下に扱うことはないだろう。だが、知名度のない無名のベンチャー企業の営業は、まず営業の場をセッティングするだけでも苦労するだろう。

企業内起業の苦労

起業は資金獲得と顧客獲得で大変だ。とは言うものの、企業内起業にも苦労はたくさんある。

確かにベンチャー経営者のように、本当の意味で資金繰りに苦労することはないだろう。自分が稼いだわけでもない空から降ってきた予算を使って事業構想に集中することができる。

しかし、資金の配分は決して思い通りにできるわけではない。むしろ、同じだけ資金があるならば、起業家のほうが比べ物にならないほど自由度が高い。
起業家は自分の直感を信じて即決で資金を投資できるのに対し、事業開発者は経営会議という難関を突破しなければ大きな投資を行うことはできない。そして、この経営会議で承認を取る行為に下手すれば事業開発と同じくらいのリソースと時間を投入しなければならないこともある。

既存顧客の活用も一筋縄にはいかない。担当営業と営業マネージャーにパーミッションを取らなければならないし、ひとつひとつの顧客の状況を確認し、営業に迷惑をかけないように細心の注意を払わなければならない。

企業規模が大きければ大きいほど資産にレバレッジをかけ効果も大きいが、それに比例して社内を動かす苦労も増えるのだ。


とまあ、日頃感じる鬱憤ばらしに書いてみたが、やはり起業家の方が苦労もは多いと思う。特に精神的な面で。
良くも悪くも、失敗の責任を取らされても自分の財産までは取られないという安心感を持てるサラリーマンは精神的な安定感が違う。だが、一方で本当な起業してみたいという、悶々とした感覚を抱え続けなければならない。
一体どっちがいいのやら。

2013/09/04

自治体のプロモーション


少子高齢化が進む現代。特に地方での人口減少とそれに伴う税収減に歯止めが掛からない。そんな中で、町興しのために様々なユニークなプロモーションが各地方自治体で盛んに行われている。

栃木県ではフィルムコミッションという方法で観光産業の発達を狙っている。フィルムコミッションとは、自治体が窓口となって県内の景勝地や建造物でのドラマや映画撮影を誘致することだ。ドラマや映画でロケ地を探し許可をとるのはなかなか骨の折れる作業であろうことはイメージがつく。
栃木県ではロケ地を観光地化し、「聖地巡り」を目玉にした観光客の集客を試みている。なかなか戦略的な取り組みではないだろうか。

アセットを活かしたプロモーション

町興しはどこの地方自治体も重点課題として取り組んでいるが、結果を出す地方自治体はそうそう多くない。栃木県のようなプロモーションが成功している自治体は、そこにしかない資産を活用して町興しをしている点が共通している。

例えばアニメの参考となった鷲宮神社のある埼玉県では、多くのアニメファンが聖地巡礼に訪れることに便乗して町興しを行った。この町興しは地元に1年で1億円以上の経済効果をもたらしたという。

観光産業は地方の税収を回復する

今の経済環境で地方に突如新たな産業が生まれて地方自治体の税収が回復するということは考えにくい。手っ取り早く税収の回復を狙うには観光産業ということになる。

地方への旅行となると、やはり国内旅行者が主なターゲットだ。しかし、日本人の国内旅行バジェットは全ての地方自治体の財源を潤すには物足りないだろう。
となると外国人旅行者を増やすことも視野に入れるべきだ。外国人旅行者をいま一番呼び込みやすいのは、海外にもファンの多い映画やアニメなどのコンテンツ業界とコラボレーションすることではないだろうか。

旅行産業が回復すれば人口が回復する

地方自治体が観光業を盛り上げることができれば税収とともに人口も回復することができるだろう。

田舎で人口が減る主な要因は仕事がないことに端を発している。田舎から出てくる若者の話を聞けば、大抵仕事が無いからという理由が多く、逆に田舎に残る人は家業を継ぐとか農家を継ぐという人ばかりだ。観光業をもり立てることで雇用が生まれれば、自然と地方に留まる若者人口も増えることだろう。

観光業は比較的波及効果の裾野が広いと言える。観光地のガイドや土産物屋などで雇用が生まれるし、ホテルや旅館、その周辺の飲食店や酒・食料の小売店などなど。だからこそ、地方は観光業を発達させることが重要なのだ。


地方にはその土地その土地に眠る魅力的な資産がある。その資産を活かしたプロモーションを行うことで、観光業を発達させ、財源と人口の回復を狙うべきだ。

フラッシュマーケティングのマーケットを形作ったグルーポンに営業力で勝利したポンパレ

グルーポンロゴポンパレロゴ


三年ほど前、フラッシュマーケティング(共同購入クーポン)企業として一斉を風靡したグルーポン。彼らは消費者の間にフラッシュマーケティングという概念を植えつけた最初の企業であったが、結局今は営業力に勝るリクルートグループのポンパレにその座を譲った。
2011年1月にはグルーポンの売上が約9.8億円に対しポンパレが4.8億円とダブルスコアの差だったが、2013年2月の販売実績ではグルーポンの売上約13億円に対し、ポンパレの売上約15億円と逆転され、10%以上差を付けられててしまっていた。
フラッシュマーケティングというマーケットを形作ったのは紛れも無くグルーポンであったのに、なぜその座を譲らざるを得なかったのか。その理由を考えてみたい。

クライアントを既に抑えていたリクルート

グルーポンは50%を超える驚異的な割引率のクーポンを販売するフラッシュマーケティング市場を作った最初の企業であったことは間違いない。そんなグルーポンが日本市場に日本法人を置いたのが2010年10月であった。その安さのため、瞬く間にファンを増やした。

だが日本には割引クーポン専門フリーペーパーを発行していたリクルートのHotPepperが既に存在してた。HotPepperが創刊したのは遡ること2001年。実にグルーポンが進出してくる10年近く前のことだった。
フラッシュマーケティングはいかにクライアントとクーポンの企画を作りこむかがポイントであり、肝はクライアント営業であった。これは一時期グルーポンがものすごい勢いで営業担当を募集していたことからも明白だ。

グルーポンは一から日本マーケットでの営業網を開拓していったのに対し、HotPepperは既に10年に渡る顧客とのリレーションが存在していた。リクルートが日本マーケットでフラッシュマーケティングを開始したら、その顧客リレーションという資産のおかげでグルーポンより早くマーケットを開拓できたであろうことは想像に難くない。

グルーポンのビジネスモデルは圧倒的に革新的であったが、簡単に模倣できるものであり、同じビジネスモデルを提案できるのであれば、付き合いの長い業者の方が有利だったのだ。

ビジネスモデルに顧客接点の強みが勝つ日

新規事業企画者としては、顧客とのリレーションよりも優れたビジネスモデルが勝ると思いたい。
だが、グルーポンのケースから見るに、優れたビジネスモデルであっても競合がたやすく模倣できるビジネスである場合、最初にそのビジネスを始めた企業よりも顧客接点に勝る企業が勝つ。

自社が他社よりも強固な顧客接点を持っていれば、競合が新しいビジネスモデルで侵入してきたとしても対抗の余地がある。だが、顧客接点が弱ければ、一気に負けてしまう可能性がある。

グルーポンはフラッシュマーケティングというマーケットを1から作った第一人者ではあったが、クライアント企業とリレーションが深かったリクルートが同じビジネスモデルに踏み込んで駆逐されてしまった。
優れたビジネスモデルは大きな利益をもたらす。だが、常に顧客接点を持つ既存企業に目を光らせておかなければ、いつ足元を救われるか分からないのだ。

2013/09/02

Virtusizeはマーケットインアプローチの見本


Virtusize

日本のアパレルECサイト「MAGASEEK」で、購入しようとしている服と自分が持っている服のシルエットを並べてサイズ感を確かめるサービスがスタートした。
普通のECサイトでも寸法はサイズで書いてあるが、実際に買ってみるとやはり結構想定と違っていたりすることがよくあるものだ。このサービスを利用すれば、自分が持っている服との比較でさらに正確なイメージを持つことができる。


このサービスはスウェーデンのスタートアップ企業、「Virtusize」が提供しているサービスだ。サービスを開始したのは2011年だが、欧州を中心に25のECサイトで利用が始まっている。
Virtusizeを利用したECサイトでは、サイズ関連のクレームや問い合わせが50%減少したという。


Virtusizeを実際に使ってみると、思わず「なるほど」とか「なんで今までこの方法を誰も考えつかなかったのか」と思ってしまう。それぐらいVirtusizeが解決したサイズ問題はECサイトで服を購入する上で人々の共通の悩みであったし、その解決方法は至ってシンプルであった。
マーケットにある様々なペイン(悩みや問題)の解決を試みるために商品を開発することを、マーケットインアプローチという。Virtusizeもまさに服のサイズの悩みを解決するマーケットインアプローチで開発された商品だったが、非常に優れたお手本的なマーケットイン商品だ。その理由を説明しよう。

単純でありながら解決されなかった問題
Virtusizeが解決した問題は、誰もがアパレルECサイトを利用する上で不便に思っていたが、長らく解決されていなかったペインだった。もちろん実店舗で試着するのに比べればパーフェクトな解決策ではない。それでも服のサイズのクレームが50%減ったのは革命的な変化だ。

消費者とEC事業者のニーズを同時に解決した
ネットショップで服を買う上でサイズの問題に悩まされていたのは消費者だけではない。ネット事業者もサイズ問題の被害者であった。
一度販売した商品が返品されてくればピッキング、梱包、配送の手間が2倍かかるわけだし、他のECサイトとの競争もあって配送費の負担を消費者に負担させられない場合もあるだろう。また、商品が返品されて代金を購入者へ返金しても、返品商品は新品価格で売れないことがほとんどだろう。

利益率が高くスケールしやすいサービス
Virtusizeがビジネスモデルとして優れているのは、利益率が高い上にスケールしやすいことにある。VirtusizeのPLを見たわけではないが、このサービスは変動費となるコストは極めて少ないものと思われる。それに対して価格設定は利用回数に応じてラダー型であるから、利用するEC事業者が大きければ大きいほど利益率が高まることだろう。

スケールのしやすさも魅力的だ。
Virtusizeの場合、スケールの軸となるのは国境だ。ECサイトは各国で有力なプレーヤーが異なる。だからこそ国外にスケールするチャンスが多いのだ。
スケールのしやすさの理由は外部環境だけによるものではない。Virtusize自体がスケールしやすいシステムになっているのだ。どの国で利用するとしても、インターフェースの簡単な言語表記の変更するだけでカスタマイズ終了だ。


なるほどと唸りたくなるような、今までのペインをあっさり解決してくれるようなサービスは確実にそして簡単にマーケットから受け入れられる。サービス開始から約2年で25サイトで利用されているというのが早いのか遅いのかは判断が難しいところだ。だが、今後もVirtusizeを利用するECサイトは増え続けることだろうし、このベンチャー企業は成功する可能性が高い。
新規ビジネスの立ち上げには商品ありきでマーケットを開発するプロダクトアウトという方法もある。だが、圧倒的に競合優位性を持つ資源を所有していない限り、マーケットインの方が成功率の高いアプローチだ。

プロモーションに使えるものはまだまだある


自社の商品やブランドのプロモーションはどの企業にとっても重要なマーケティング活動の一つだが、IT技術の発展やマーケティングサービスの発達によって差別化が難しくなってきている。

IT技術の発展によってPPC広告やモバイル広告が発達したおかげで、零細企業から大企業まで簡単にWebプロモーションが行えるようになった。Webプロモーションの効果とコストが下がったことは、企業にとって良いことではあるのだが、逆にどの企業も簡単にWebプロモーションを行える時代になったので、競合他社よりも抜きん出るには難易度が高まったと言える。
マーケティングサービスも同様で、最近では有象無象のマーケティングコンサルタントが存在し、広告クリエイティブを作るサービスも供給過多だ。

プロモーションが容易になってくると、どうしても業界の中でプロモーションが似通ったものになってきてしまう。
例えば、個人店〜出店規模の小さいチェーン飲食店では、店をオープンしたら食べログやHotPepperに登録し、ローカルの情報誌にお店情報を掲載してもらい、駅前でチラシを配るというのがひと通りのお決まりのプロモーションだ。
消費者からすれば、食べログに掲載された数ある飲食店の中からその店を選択する確率はどうしても低くなる。チラシを渡されても、ああ、またかと思って受け取ってすぐ捨ててしまうのが関の山だろう。

「隠れや」のメニューを使ったプロモーション

プロモーション方法が出し尽くされた感のある飲食店で、「隠れや」は料理のメニューをうまく活用した口コミ誘導プロモーションを行っている。
隠れやのメニューは分厚い雑誌のような作りをしており、その記事の中身は占いやクイズなど、お客が酒の席場で話の種にしやすい内容となっている。付き合い始めのカップルや会社の仲間など、多少話題につまづきやすいお客に会話を誘うようになっている。

この雑誌形式のメニューは持ち帰り用のものも用意しており、持ち帰ったお客がSNSでシェアしたり、口コミにすることによってプロモーション効果を生んでいる。
ある隠れやのチェーン店舗では、オープンしたばかりの店舗という理由もあるが、雑誌形式メニューを始めてから2か月で80%も売上が伸びた。

隠れやの雑誌形式メニューがこれだけのプロモーション効果を上げているのは、やはりチラシや食べログよりも印象に残りやすいためだろう。また、シェアや口コミを誘発しやすいメディアであることも理由にあげられる。
チラシの場合、まず渡されてからそのチラシが自分にとって有益かどうかという判断が下されるのに対して、雑誌型メニューの場合はまず読んで面白い(=有益)という判断をした後に持ち帰る、という逆の流れになっている。押し付けがましいプロモーションよりも、自分がコントロールを持っている方が印象よく受け取られるものだ。

さほどコストをかけずに競合他社と差別化できるプロモーション方法は出しきったと思っていても、探せばまだまだ出てくるはずだ。
お金よりも頭を使って顧客にとってメリットのあるプロモーションプランを考えよう。 

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