2013/11/30

動画プロモーションの重要性

動画

昨今、新しいWebサービスを使ってみようとすると、ほぼ必ずそのサービスについてのプロモーション動画や、スタートアップマニュアル的な動画がサイトに埋め込まれている。また、ECショップでも商品の説明のために動画が使われ始めている。

数年前までは動画をサイトに埋め込むなんてサイトを重くするだけだから、動画がメインコンテンツの場合以外は嫌厭されていた。だが、ハードウェアの高性能化やHTML5の出現によって、動画がサイト内に埋め込まれているのが当たり前の時代になってきた。さらにスマートフォンやタブレットの普及と、動画を簡単に録画・編集、アップロードできるアプリが無料でも手に入るため、10年前や20年前と比べるととてつもなく簡単に動画を録画してWebサイトに上げることができる。

そんなテクノロジーのトレンドの流れを組むように、Webサービスや商品紹介でも動画の活用が当たり前になってきたのだ。


動画自体は何ら新しいものではなく、数十年も前から存在する技術だ。当たり前の話だが、テレビCMも動画を活用した商品やサービスプロモーションで、ほとんどの消費者が慣れ親しんでいる。だが、Webサイトでサービスや商品の紹介に動画を使うことが、驚くほどコンバージョンに結びついている

動画プロモーションの効果

返品自由で有名な米国の有名ECショップZapposではスタッフが商品について説明する1分程度の動画をアップしているが、動画がない商品のコンバージョン率が6%であるのに対し、動画がある商品のコンバージョン率は最大30%にまで達するのだという(日経MJ 2013/11/22 P.3)。

今動画をまったく活用していないECサイトが全ての商品に動画を載せたからといって、突然売上が5倍になることはないだろう。だが、売れ筋の商品に絞り込んで動画プロモーションを行えば、安価なコストで大きく売上を伸ばせる可能性を秘めている。

なぜ動画が受けるのか

なぜ動画のプロモーションを行った商品やサービスのコンバージョン率が上がるのだろうか。その理由は次の4つが考えられる。

■分かりやすい

テキストによる紹介文と全く同じ内容を伝えるにしても、動画にすると視覚的な情報が増えるため理解しやすさ、分かりやすさが格段に高まる。もちろんテキストの紹介文に画像が追加されれば、テキストだけの紹介文よりも情報がはるかにリッチになる。だが、さらに動画にすることで臨場感が生まれるのだ。この臨場感は、物理的な商品であれば自分が利用しているイメージがより強く思い描ける。Webサービスのスタートアップマニュアル動画であれば、そのサービスでできることや利用手順をより深く理解できるため、よく分からないからこのサービスはもういいや、と投げ出される可能性が減少する。

■専門家による紹介の信頼性

Zapposのように従業員が商品を説明する動画を見ると、プロが言っているんだから間違いないだろうという安心感を感じる。特にECのように実際の商品を見ることなく買わなければならない場合、専門家のひと押しが購入ボタンを押す最後のきっかけになる可能性は高い。
求めてもいないうんちくを垂れ流す専門家の説明は鬱陶しいだけだが、もう少し詳しく知りたいと思っている時の専門家の説明はまるで神の声のように聞こえるだろう。

■SNSと動画配信サイトのおかげでバズられる

コレは動画のおかげというより、動画配信サイトのおかげと言える。SNSや動画配信サイトが生まれる前、面白い動画があったとしてもそれを友達に手軽にシェアする方法はなかった。動画を見たければ、どこかのサイトにアップロードして、そのURLを友達に渡す必要がある。そしてURLを渡す方法はメールや掲示板くらいしかなかった。URLを渡された友達は一旦その動画のファイルをまるっとダウンロードし、動作の重いWindowsメディアプレイヤーなんかを立ち上げてようやく動画を見ることができる。

ところが現代では動画配信サイトに掲載されているURLを手軽にSNSやTwitterでシェアすることができる。見る側も、わざわざ動画ファイルを落としてメディアプレイヤーを起動する必要などなく、ブラウザ上ですぐストリーミングが開始される。動画をシェアする側も見る側も非常に簡単になったため、面白い動画やタメになる動画はシェアされバズられ多くの人の目に留まる用になる。

快活CLUBが切り開いた漫画喫茶の女性客

快活CLUB

既に成熟していると考えていたマーケットで、新しい試みが突如成熟していたマーケットに新しい空白地帯を生み出すよなケースを見ると、驚いて感心せざるをえない。まるでマインスイーパーでいきなり10個くらいのブロックが開くようだ。漫画喫茶に今そんな変化が現れている。


AOKIホールディングス傘下の漫画喫茶「快活CLUB」では、女性客の取り込み強化を始めた。セキュリティカードがないと入出できない女性客専用スペースを設け、利用したい女性は受付でセキュリティカードを受け取る。漫画喫茶を利用したいと思っても、男性比率が高くブースが個別に分かれているため利用しづらかった女性客に配慮した形だ。

女性専用個室の利用は食事に行く前に身だしなみを整えるなどこれまでにない利用のされ方をしており、比較的稼働率の低い夕方の利用が多いのが特徴だ。女性専用のフードメニューも用意している。テストマーケティングを行った店舗では、女性客比率が15%から30%に倍増した。女性専用個室の稼働率も採算ラインの20%をはるかに超える40%となっている。この結果を受けて快活CLUBは今後4年で女性専用スペースを要する店舗を150店舗に増やしていく。(参考: 日経MJ 2013/11/29 P.9)


漫画喫茶といえば自分も何度か飲み過ぎで終電を逃した際に利用したことがあるが、一種独特の空気感のある空間で確かに女性が利用するのは抵抗感があるだろう。だからこそ、これまで漫画喫茶の主要顧客は男性であった。

恐らく漫画喫茶業界の常識では、女性客はせいぜい現状の15%程度で、これ以上増やすのは無理だというのが共通認識だったはずだ。だが、不可能だと思っていた客層に対し、あえて果敢に挑んでみることで道が開けたのだ。この例のように、既にこれ以上は成長の余地がないと思うような業界でも、あえて困難だとされるターゲットに挑むことで道が開けることがあるのだ。

「課長の教科書」に見る課長の役割とスキル

課長の教科書

年功序列は若くて実力とやる気のある人間をどんどん外に流出させてしまう前時代的な仕組みだ。とはいえ、実力主義、結果主義はプロセスへの焦点が薄く、超短期的な視点に陥ってしまい若い才能を潰すことになりかねない。そんな正解の出ない組織論に辟易した現代において、成功している日本式の年功序列と実力主義のハイブリッドのような組織は今脚光を浴び始めている。そしてこのような組織において重要なのは、実力主義の欧米に置いてはテクノロジーの進化によって追いやられるとされていたミドルマネジメント、すなわち課長だ。


酒井 穰氏が著した「課長の教科書」ではそのミドルマネジメントの重要さと課長に求められるスキルや心構えが書かれている。

課長はミドルマネジメントという言葉の通り、自分の上司と部下の両方をマネジメントしなければならない。課長は予算に対する責任や人事権を持つ一番階級が下の職責だ。玉石混交の実力を持ち年代もバラバラの部下からなるチームを上手く盛り立てて予算などの目標を達成しなければならない。それと同時に、課の予算を最大限悲観的にして予算を通し、実力のある社員をより伸ばし、問題社員の実力底上げに腐心しなければならない。課長という実力のある人間しか部下に持たない部長といポジションよりも、ある意味困難なポジションとも言えるのが課長だ。

特に、部下の育成というのは課長にとって最も困難であり、最も評価される仕事でもある。活躍人材を育て上げれば人材を育成したという実績が残るだけでなく、課の全体の成績も上がるし優秀な社員の成果は課長の成果にもなる。その結果として部長への道が開けてくるのだ。

だが、部下は全ての社員が優秀なわけでもなければ全員が優秀になれる素養を持っているとも限らない。中には実力もなければやる気もないというお荷物としか言えない人物も存在するだろう。ただし、そういった人物に対しても愛を持って成長させてやることが課長の大きな仕事の一つだ。優秀な人間は裁量を持たせて難しい仕事を任せればトライアンドエラーで勝手に成長していくものだ。ちょっと寄り添ってあげるだけで良い。しかし、優秀でない人材はそうもいかず、時間をかけてできることから少しずつ育成していかなければならない。そうしなければやる気がなく実力がない人間でものさばっていられるという認識がチームに広がり、モラルの低下、モチベーションの低下、ひいてはチームの効率が低下する。
だから、課長のもっとも重要な仕事は、やる気もない実力もない社員をいかに底上げするかにかかっている。


今更強調される必要もない課長というポジションの重要性。そのポジションに求められるスキルは部長とさほど変わらない。そして経営と現場をつなぐ重要な役割を担っている。数年以内に課長になる、あるいは今課長として苦労している人には、ぜひ「課長の教科書」をおすすめしたい。



2013/11/28

Easy Pairingsの最大の困難は求職者の集客


採用という概念は、恐らく企業がこの世に生まれた時から存在している組織における課題だろう。企業のあるところに採用あり。それゆえ人材業界は大きなマーケットであり、日本でも9兆円とされている。

人材業界は古い業界ながら、新しいスタートアップ企業が果敢に新しい採用の方法を世の中に問うている。その一つが、米国のスタートアップ、Easy Pairingsだ。

Easy Paringsのビジネスモデル

Easy Pairingsはその名が示す通り、企業が採用したい人材要件にあった候補者を企業へ送客するサービスだ。このサービスはレストラン業界にターゲットを絞ったサービスで、この業界で働く人たちがまずEasy Pairingsに登録する。自分のこれまでの経歴や、希望するポジション(コック、フロア、ソムリエ、など)を入力して自分のレジュメを作成する。

次に、従業員が不足しているレストランがEasy Pairingsに欲しいスキルを持った人材を要求する。通常は求人メディアに募集広告を載せて応募を待つが、Easy Pairingに求人のリクエストを送ると、要件にマッチする候補者を決定していきなり面接の調整に入る。
時間のないレストランのオーナーにとっては、応募が来て履歴書を見て選考して、という作業が省けるメリットがある。また、オーナーが求人リクエストを出すとすぐに手元にある求職者のデータベースから適切な人材を見つけて面接に進めるEasy Pairingsと、リクエストを受けてから求人原稿を出して応募者を待つ求人メディアを比べれば、ほとんどの場合採用までのの時間が短くてすむ。実際に平均で18日から3日まで採用期間を縮める事ができるのだという。

業界にとどまり続ける人材?

採用するレストラン側からすると大きなメリットのある仕組みだが、本当に都合よく候補者が見つかるものだろうか?

まずこのビジネスモデルでは、今レストラン業界で働いている人がこれからもレストラン業界で働き続けたいと思っていることが前提になる。だが、その業界にとどまりたいと考えるのは、専門性が高くそれに応じて報酬も高い領域で働いている人達が大半なのではないだろうか。例えばプログラマーや証券会社のアナリストのような人達だ。こうした専門性も報酬も高い業種で働く人材は、次も同じ業種で転職する可能性が高いだろう。だが、レストラン業界のように、一流レストランのコックやソムリエ以外は一般的に専門性も報酬も高くない業種では、望んで飲食業界にとどまりたいと考える人はあまり多くないのではないだろうか。

もしそうだとすると、わざわざEasy Pairingに登録したいという求職者が集まらない、だから利用するレストランオーナーも増えない、というネガティブなスパイラルに入りかねない。


Easy Pairingsは最終的に様々な業界の特化型マッチングサービスへスケールすることが狙いだろう。だが、求職者の集客という最大の課題を克服しないと難しいだろう。
 
 

インストアプロモーションのEstimoteが面白い

Estimote

最近小売業界が熱い視線を送っているキーワードと言えば、プライベートブランドとO2Oではないだろうか。食品や生活雑貨の小売ではプライベートブランドが、アパレルやサービスではO2Oが脚光を浴びている。

小売店向けに、手軽にO2O環境を提供できるデバイスとソフトウェアを開発しているのがEstimoteというアメリカのスタートアップだ。Estimoteは今年2013年の6月に創業されたばかりのベンチャーだが、既にシードラウンドで30万ドルを獲得している。

Estimoteが開発しているのはBeaconと呼ばれるBluetoothの電波を発する小さなデバイスと、そのBluetoothの電波をスマートフォンが捉えた時に特定のアクションをスマートフォンに実行させるAPIだ。

EstimoteのBeacon


Beaconは画像の通り小さなデバイスで、店内の棚や天井、什器など好きな場所に簡単に設置できる。このBeaconから発せられたBluetoothの電波は、10cm〜約65メートルの範囲でスマートフォンがキャッチできる。

何に使うの?

このBeaconが設置された店舗にスマートフォンを持ったお客(ほとんどのお客がそうだが)が来店すると、スマートフォンが電波をキャッチして特定の動作を組み込まれたアプリがプッシュ通知でメッセージや画像、動画、その他のアクションを発生させる。APIが提供されるようなので、店舗側が自社ブランドアプリに電波をキャッチした際の動作を組み込むことができそうだ。

Estimoteの活用


例えば、まず店舗に入店したら「いらっしゃいませ」みたいな挨拶から新作の紹介や値引きセールの情報、あるいはイベントの告知などでおすすめ情報をお客さんにプッシュすることができる。また、店内に配置した複数のBeaconの電波から位置を正確に割り出すことができるようなので、特定の棚の前に来たらその商品の作成過程の動画を流したり、カラーのラインナップを表示する、コーディネーションを提案するなど、いろいろな方法で商品をアピールできるのだ。お客さんの属性によって同じ棚の前でもその人により響く情報を提供することができれば、プロモーション効果も大きくなるだろう。


小売店だけじゃないメリット

小売店以外にも、美術館や博物館でとある絵画の前に来るとその画の作者の情報を流したり、その画にまつわる歴史の動画を流すという事ができそうだ。美術館や博物館は音声ガイドを貸し出している所も多いが、これをEstimoteに代替させることもできる。そうそれば機器メンテナンスも楽になるし、これまでの音声ガイドと違って、ユーザーがその絵の説明を聞くために自分で指定されたトラックを入力するという手間も省ける。


顧客動線の獲得

このシステムのさらに便利なところは、店舗に来たお客さんの動線を獲得することができるという点にある。店内のどこでお客さんが長い時間回遊して、どこが最も回遊されない場所なのかを割り出して、店内のレイアウト改善に活かすことも可能だ。65メートルも電波が届くようなので、店舗外からお客さんを引き込むためにセール情報をプッシュして入店を促す導線を作ることにも使えそうだ。

Estimoteによる顧客動線


今のところBeaconは1台99ドルと、それなりの値段だ。とは言うものの、一店舗あたり数台で事足りるだろうからさほど大きな投資でもない。ある程度数が出るようになればBeaconが単価も下がっていくことになるだろう。キャッシュポイントはBeaconを売るだけでは対して儲からないだろうからAPIの一部の機能(例えばクーポン振り出しの機能とか)に課金をするといったような、ストック型のキャッシュポイントを設けるだろう。

日本に上陸するまではまだ数年かかるのだろうが、今から先が楽しみなStartupだ。とはいえ、インストアプロモーション系は他にもスタートアップが出現してきているので、デファクトスタンダード獲得合戦になるだろう。
 
 

2013/11/27

スマートフォン決済

新しいビジネス好きとしては触れないわけにはいられないスマートフォン決済ビジネス。遅きに失した感はあるが、プレイヤーが出揃って手数料値下げ競争にも歯止めがかかったようだ。
スマートフォン決済のと言えば、始まりはiPhoneのケースとしてクレジットカード読み取り機を搭載して2010年頃にスマートフォン決済を開始したペイメントマスターであった。それから3年たち、Paypal HereやSquare、楽天のスマートペイ、Coineyなど、多くの類似サービスが出現していている。


スマートフォン決済は、明らかにクレジット決済業界における破壊的イノベーションだ。

ウェブでちょっと検索をしてみると、中小の小売店や個人店が顧客サービスとしてクレジット決済を可能とするために加盟店に入ろうとすると、5-6%という店舗運営に支障が出るほどの手数料を要求される。これに対し、Coineyなどのスマートフォン決済は顧客の規模にかかわらず、3.24%~3.25%という手数料プランを出していることが多い。楽天スマートペイはさらに踏み込んで、ユピレジというiPhoneレジアプリとセットで利用すればさらに手数料を1%割り引いて2.24%とするプランを発表した

こうなるともはや数店舗の小さなレストランや販売店、個人店レベルの店がクレジットカード加盟店になるよりもはるかに利率が低い。しかも、支払いサイクルはクレジットカード会社と同等か、それよりも早い。例えば純国産のスマートフォン決済サービスのCoinyでは、月に6回締めがあり、入金は15日後だ。現金決済とは比べるべくもないが、一ヶ月未満の支払サイクルというのはかなり早い。


一つ不思議に思うのは、明らかに自分たちのビジネスを破壊されているクレジットカード会社がなぜ表面上スマートフォン決済に対して敵対的な対策を仕掛けないかということだ。スマートフォン決済の広がりはクレジットカード決済手数料率を全体的に押し下げる効果があるはずだ。買収を仕掛けたり、ロビー活動を仕掛けたり、そもそもスマートフォン決済は受け付けないという手も打てるはずだ。

恐らくクレジットカード会社も、スマートフォン決済を受け入れることによって小規模店へのリーチが広がることに魅力を感じているのだろう。クレジット決済端末を導入できない小規模店が世の中には沢山あるはずで、その長大なロングテールの潜在的な決済ニーズはかなり大きいはずだ。

また、大手の小売店などでは1~2%という決済手数料をオファーしているようなので、3.24%になったからといってさほど収益率に与えるインパクトはないと判断したのだろう。それよりロングテールにアクセスできることのほうが魅力的だったということだ。
 
  

2013/11/24

リーディングマークのrecmeは採用における動画利用モデルを作れるか?

インタビュー

社員採用領域でにわかに盛り上がる動画を使った新ソリューション。前回のエントリーでは、米国で普及し始めているビデオ面接ソリューションを紹介した。

ビデオ面接の紹介エントリーでも述べたとおり、日本は地理的に米国よりも狭く、しかも東京一極集中のため、米国と同じようなビデオ面接ソリューションの普及は難しいだろうという考察を書いた。米国のトレンドに数年遅れて似たようなStartupが現れる日本だが、ビデオ面接ソリューションは米国最大手のHire Vueが創業してから既に10年も経過したにもかかわらず、まだサービスを開始したStartupは日本には存在していないようだ。

そんな日本の採用マーケットにおける動画活用だが、リーディングマークの「recme」は興味深い活動をしている。

リーディングマークは東大卒のまだ20代の飯田 悠司代表取締役に率いられている、社員採用領域のStartup企業だ。同社は新卒向け採用イベントへの集客や、採用プロモーションのコンサルティング事業を手がけている創業5年目の若い企業だ。そのリーディングマークがサイバーエージェント・ベンチャーズから5000万円の出資を受け入れてアルファサービスを開始した「recme」というサービスが興味深い。


recmeは、Face to Faceの面接をビデオ面接に置き換えようとする米国のビデオ面接ソリューションとは根本的に仕組みが異なる。recmeでは学生が自分のプロモーション動画を作成し企業へ送付できるプラットフォームを提供する。学生達のレジュメ代わりにプロモーションビデオを企業に見てもらうという仕組みだ。

現在アルファサービスだが、それでもトヨタやユニリーバ、NTT東日本など、大手の企業に食い込んでいるようだ。サイバーエージェント・ベンチャーズからの出資金を使ってまずは無料サービスで試しに使ってもらっているところなのだろう。キャッシュポイントも決まっていないはずだ。それでも、一度大手企業とパスができていれば後から有料サービスを提供して換金化しやすくなる。ピボットしてサービスを変更したとしても売り込みやすい。


サービスとしてどれだけ普及するか、そして換金化することができるかはまだまだ未知数だが、面白い試みだ。日本企業における人材採用は非常にローテクだが、recmeは動画を活用した新たな採用モデルを作り上げていく可能性を秘めている。

関連エントリー:
 
  

米国で生まれたビデオ面接システムは日本でも普及するか?

ビデオ面接

米国では近年PCのWebカメラやスマートフォンのフロントカメラを利用した、ビデオ面接システムの利用が増えている。

米国では優秀な人材獲得のために、面接担当の人事がわざわざ優秀な候補者のいる場所まで出張するか、採用アウトソーシングを利用したり、ビジネスクラスやファーストクラスのチケットを候補者へ送って面接を受けに来てもらうということをやっている。国土が広い米国ならではの採用コストだ。

ビデオ面接を利用すると、予め採用側が設定しておいた質問を候補者へ送り、候補者は自分の都合のいいタイミングや場所で回答することができる。こうして、これまで一人の採用に多額の費用をかけていた大手企業は、面接のための出張コストや時間を大幅に節約することができる。ビデオ面接を提供している企業によれば、採用コストが10分の1にまで圧縮できるとしている。


米国ではビデオ面接のStartup企業が10社以上出現してきている。中でも業界トップのHire Vueではまだ売上が10億円にも満たないにも関わらず、約54億円もの資金を獲得している。採用大手に買収されるExit前提での評価なのだろうが、人材業界では非常に期待されているビジネスモデルであることが読み取れる。

Hire Vueのプライシングは1企業当たりの利用料が年間5,000ドル以上からと、結構な価格だ。それでもかつての米国企業は1採用あたり1,000ドル以上のコストがかかっていたのだから、5ポジション以上採用すれば元が取れるという計算が立つ。とは言え、基本的に年間の採用数が一定以上あり、採用者の品質に厳しい大手企業がメインターゲットと言える。


果たしてビデオ面接ソリューションは、日本国内でも普及するだろうか?
米国と違って国土が狭く東京に一極集中している日本の場合、米国の導入企業ほどの恩恵は得られないことは明らかだ。だが、日本では中途採用よりも新卒の一括採用がマーケットとして大きいため、採用面接前のスクリーニングとして利用される可能性は高いのではないだろうか。

日本でもリーディングマークが「recme」というサービスを開始した。ビデオ面接システムはこの先も目が離せないソリューションだ

2013/11/23

キュリア転職は実際そんなに脅威じゃない

一週間ほど前に、Yahoo傘下のキュリア転職という求人情報サイトが基本サービスを無料化し、これが求人情報サイトのマーケットを破壊するかもしれないというエントリーを書いた。だけどよくよく情報を調べていくと、大した脅威ではなさそうであることが分かってきた。

参考エントリー:

キュリア転職の無料化リニューアルで、無料プランと有料プランが生まれた。無料プランで募集をできるのはたったひとつの職種を募集する場合のみであり、複数の職種(5ポジションまで)を募集したければ有料サービスを購入しなければならない。今はこの有料プランも0円になっているが、期間は2014年3月末までの期間限定プランに過ぎない。この有料プランは今は12週で5万円という価格になっているが、2014年4月以降はもっと値下げすることを表明しているが、無料ではない。

中堅〜大手企業なら1ポジションや5ポジションしか募集しないということはありえない。つまり、キュリア転職はそもそも社員が数十人程度の中小企業を想定したようなビジネスモデルであることが分かる。正社員の募集広告に5万円という単価の安さも中小企業を意識しての価格付けだろう。

このことから、キュリア転職の無料化はメインターゲットである中小企業を集めるためのキャンペーンに過ぎず、他の大手転職求人サイトに値下げ圧力をかけるような効果を持つものではない。恐らく無料化でターゲット企業を集め、この値段ならまぁこのまま使い続けるか、と思えるような価格を設定するつもりだったのだろう。



キュリア転職の無料化もYahooショッピングの無料化やヤフオクの無料化と同じ文脈で語られていたりもするが、実際のところYahooショッピングとヤフオクのインパクトに比べればなんでもない。ただの中小企業の顧客を獲得するための一時的なキャンペーンに過ぎないのだ。
 
 

規模というアセットと、後追いという戦略で他を圧倒するセブンイレブン・ジャパン 4/4

セブン&アイロゴ

セブンイレブンの強みを解剖する本エントリーのシリーズ。

最終回の今回は後発参入戦略というセブンイレブンの隠れた強みを解剖してみよう。「隠れた」と書いたのは、この後発参入戦略は先に説明したドミナント戦略や規模にレバレッジを掛けた商品戦略よりも目につきにくいものだからだ。だが、セブンイレブンはこの戦略がそのナンバーワンの地位に貢献している割合は高い。


ナンバーワンプレイヤーの後発参入戦略

業界としては成熟しているコンビニエンスストアだが、商品開発や店頭サービスの小さなイノベーションが起こっているスピードは、ドッグイヤーとかラットイヤーと言われるIT業界並みのスピードかもしれない。気付けば店頭で公共料金の支払いや自賠責保険も購入できるし、日中に受け取れない宅急便の荷物を夜中に受け取ることもできる。これら一つ一つのサービスの追加と、それをさほどトレーニングに時間やコストをかけられないアルバイト従業員に運用させるのは容易ならぬイノベーションだ。

先に上げた店頭のイノベーションは実はセブンイレブンが先陣を切って取り組んできたサービスの例だ。だが、商品によっては飛びつく前に十分に商品を成熟させる時間を取って、後発から競合を抜き去る作戦に出ているのが面白い。

後発参入の店頭ドリップコーヒー

最近コンビニの店頭ドリップコーヒーが同じ100円コーヒーを提供するマクドナルドや、コーヒーショップのテイクアウトニーズを奪っている。今や大手はどこも参入している店頭ドリップコーヒーだが、実は1日1店舗あたりの売上数はダントツにセブンイレブンが優っている。セブンイレブンが1日90杯に対し、2番手のローソンでも60杯と1.5倍の差をつけられているのだ。ファミリーマートやサークルKサンクスはそれ以下で1日40杯にすぎない。

これだけセブンイレブンが圧勝したのには立地やその他の商品の品ぞろえなど様々な要因があるだろうが、一つはドリップマシンの性能にあるだろう。セブンイレブンは店舗でのニーズに答えるドリップマシンの開発のために、実はトップ4社の中で最も店頭ドリップコーヒーの参入が遅かったのだ。

日経MJ 2013/11/13 P.1―――――――――
いれたてコーヒー自販機などで実績を持つ富士電機とタッグを組んだ。店頭で邪魔にならない大きさで一杯ずつ45秒で抽出。従来は1時間かかったメンテナンスは5分でできる。導入費用も1台数十万円程度と4分の1にするなど多くの木法を掲げ、完成までに2年をかけた。
<中略>
導入が急速に進んだのは低廉な費用やメンテナンス容易さが大きい。緊急時に調達しやすいように、部品は全て国産。故障時には富士電機の技術者が直ちに駆けつけるバックアップ体制も敷く。機会ロスに加えて、来店客からのクレーム等を懸念するフランチャイズチェーン(FC)オーナーらの「安心感」にもつながっている。
―――――――――――――――――― 


セブンイレブンの企画力や運営力ならライバルから何年も遅れること無く参入することができただろう。だが、テイクアウトコーヒーへのニーズは同じコンビニ業界以外にも競合が多い。だからこそコンビニの早い回転にあわせて客を待たせたくないというFC店のニーズと、安くてもそれなりに美味しいコーヒーが飲みたいという利用者のニーズを満たせるドリップマシンを作るのに時間をかけた。

セブンイレブンの後発戦略はドリップマシンだけに留まらない。ローソンが積極的に展開しているナチュラルローソンや100円ローソンのようなコンビニのバリエーション展開にも、セブンイレブンが後発で挑戦している。


規模で圧倒するセブンイレブンが、後発で品質を高めた上で新しいサービスに参入するという戦略を強みにしている。これはナンバーワンプレイヤーとして手堅く確実な手段だ。規模で圧倒しているのだからクオリティを磨き上げれば後発参入でもひっくり返せる。ナンバーワンの座に安穏とせず、その強みを上手く活かしてくるトップ企業は2位以下の競合にとって手強い相手だ。

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規模というアセットと、後追いという戦略で他を圧倒するセブンイレブン・ジャパン 3/4

セブン&アイロゴ

コンビニエンスストア業界のトッププレイヤー、セブンイレブンの強みを分析するケーススタディ。
前回のエントリーでは小売業界の正攻法であるドミナント戦略でトップの座を射止めたことを書いた。今回は、2位のローソンよりも4割も店舗数が多いというセブンイレブンの圧倒的な規模を活かしたナンバーワン戦略を分析してみたい。

ナンバーワンプレイヤーの規模の戦略
セブンイレブンは業界3位のファミリーマートと4位のサークルKサンクスを足したくらいの規模を持つ、圧倒的な規模をもつナンバーワン企業だ。その規模を活かして、2位以下を引き離すべく次々と革新を起こし続けている。

PBと高級メーカーの限定商品
規模のメリットが活かされたのは、PBの充実だ。セブンイレブンはセブン&アイホールディングスの子会社になるが、グループ会社となるイトーヨーカドーやヨークマート、ヨークベニマルのようなスーパーと共通のPB「セブンプレミアム」、その高級版の「セブンゴールド」PBを展開している。セブンイレブン単体の規模でも1.4万店舗3兆円という圧倒的な規模があるのに、イトーヨーカドーなどのスーパーも加えると、5兆円近い売上規模を持つことになる。PBを提供する側としても、これだけの規模を持つセブン&アイと組むメリットは大きい。

規模のメリットを活用して業界を驚かせたのが、ハーゲンダッツによるセブンイレブン専用商品の供給だ。ハーゲンダッツはアイスクリームの世界では誰もが知っている非常に強いブランド力を持っており、これまで特定の小売業者向けに商品を供給したことはない。ハーゲンダッツほどのブランド力を持っているメーカーは、プレミアム価格で十分な収益を上げることができるからだ。

それでもハーゲンダッツジャパンはセブン&アイの規模に魅力を感じて、通常のハーゲンダッツよりもさらにプレミアム感の高い限定商品を供給することにした。

日経MJ2013/11/15 P.5−−−−−−−−−−−−−−−
ハーゲンダッツが特定の小売チェーン向けの専用商品を出すのは初めて。かつてセブンイレブンは競争力のある商品をそろえるハーゲンダッツに対して「我々限定のアイスを作ってほしい」と要請したことがあったが、「すげなく断られた」。
それだけに10月に発売した限定商品「ジャポネ<抹茶アズキ>」への思い入れもひとしおだ。セブンイレブンも開発段階から参加。4層構造で食感の変化を楽しめるという新しさを打ち出し、価格も1個360円とハーゲンダッツの通常商品より3割高くした。
限定商品発売に踏み切ったハーゲンダッツジャパンの馬瀬紀夫社長は「店舗数が魅力。1社限定でも組むメリットは大きい」と強調する。
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店頭ドリップコーヒーも規模を活かした試み
もう一つ規模のメリットを活かした商品展開が、最近コーヒーチェーンやマクドナルドから客を奪っている店頭ドリップコーヒーだ。

店頭ドリップコーヒーの成功のポイントは、できるだけ味を落とさず早くコーヒーを抽出してくれるドリップマシンの存在だ。コンビニはコーヒーショップよりも回転率も早く、オフィス街では混む時間帯が決まっているので、ドリップマシンのスピードへの要求はコーヒーショップよりも高い。実際にセブンイレブンでコーヒーを買ってもらえば分かると思うが、セブンイレブンのドリップマシンはカップを入れてボタンを押してからのドリップスピードがかなり早い。そして結構美味しい。

他のコンビニチェーンとの差別化を実現したこのコーヒーマシンは、日本メーカーとの長期に渡る研究開発により生み出されたのだが、その詳細は次回の後発参入戦略のエントリーで見てみよう。

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2013/11/21

規模というアセットと、後追いという戦略で他を圧倒するセブンイレブン・ジャパン 2/4

セブンイレブンのロゴ

セブンイレブン・ジャパンの強さを読み解く本シリーズ。
前回のエントリーでは2位以下とは彼岸の差があるセブンイレブンの強さを数字で確認した。このエントリーでは、セブンイレブンの強みを活かした戦略が実践されているケースを取り上げて分析してみよう。

小売のクラシックな出店戦略「ドミナント戦略」

まず、セブンイレブンの強さの原資を紐解こうとすると、ドミナント戦略とは切っても切れない関係にある。セブンイレブンが今の地位を築いた大きな要因の一つとしてこのドミナント戦略は外せない。

ドミナント戦略とは、セブンイレブン・ジャパンだけでなくスターバックスやウォールマートが実践してきた小売店のクラシックな出店戦略だ。この戦略を実践する企業は、特定した狭いエリアに大量出店する。もちろん各店がカニバラない(共食いしない)程度の距離を保って分散させつつ、できるだけ密集させることがポイントだ。

配送コスト削減と機械損失の防止

ドミナント戦略の強みは、小売の生命線である物流の効率にある。どんな業態でも、大手小売チェーンはほぼ確実に配送拠点を持っている。メーカーから仕入れた商品を一旦その配送拠点に集約し、そこから各店舗へ商品を運んだり、惣菜であれば配送拠点をセントラルキッチンにして、そこで調理した惣菜を各販売店に配送する。

ドミナント戦略は、配送拠点を中心とした店舗網をできるだけ密集することによって配送を効率化することがその戦略の肝だ。店舗が密集していればそれだけ配送トラックは移動距離が短くなり、無駄な移動時間を減らすことができる。また、惣菜のような足が速い商品でも、できるだけ長い時間店頭に置くことができる。こうしたメリットによって、配送拠点と店舗の時間的なギャップを最小化することにより、配送拠点と店舗の在庫を抑えることができるのだ。


店舗側の視点で見てみれば、店からの発注に対していかに速やかに、低コストで配送ニーズを満たすかがポイントだ。店頭在庫がタイムリーに満たされていれば、買いたい顧客がいるのに買えないという機械損失を防ぐことができるし、常に店頭に買いたいものが揃っていれば顧客の評価も上がり、来客数が増えるというポジティブなスパイラルを生み出すことができる。

コンビニのようななんでも揃うことが強みである業態は、それこそ後者の買いたいものがいつでも揃っているという顧客への約束がとてつもなく重要。セブンイレブンが実践したドミナント戦略はこうしたコンビニに求められるニーズを満たすのに成功したのだ。

店舗が密集することによる集客効果

もう一つ重要なのは定まったエリアに店舗が密集することにより、店舗そのものがマーケティング・ブランディング上の効果を持ち始めるということだ。例えばスターバックスを考えてみよう。スターバックスは1000店舗弱の店舗を日本国内で保有しているが、新宿や渋谷などでは非常に狭いエリアに6,7店舗出店している。普段の活動範囲が新宿や渋谷の人達からすれば、スターバックスがめちゃくちゃ流行っていると勘違いしても仕方がない。流行っているのは事実だけれど。

同じチェーンの店舗が同一地域に大量出店していると、その界隈を活動地域としている人達からすれば、その店舗が実際以上に流行っているように感じるし、記憶に刷り込まれる効果もあるし、知人友人からそのチェーンの話を聞く機会が多くなるだろう。


ドミナント戦略というのは、物流の効率化という効果だけでなく、顧客のマインドシェアを上げることにも効果があるのだ。セブンイレブンは早くからドミナント戦略のこうした効果に目をつけ、物流の効率を最大化しつつ、コンビニの代名詞として君臨するパブリシティ効果を得ることもできたのだ。

関連エントリー:

 

2013/11/20

規模というアセットと、後追いという戦略で他を圧倒するセブンイレブン・ジャパン 1/4

セブンイレブンのロゴ

コンビニ業界は日本にある産業の中でも特に競争が激しい業界の一つだ。約8兆円という大きな規模を誇り、全国に存在するコンビニの店舗数は5万店を超えたという。そして、上位4社でなんと業界全体の90%のシェアを占めるという、上位企業が市場を支配している業界でもある。

そんな中でもセブンイレブン・ジャパンが圧倒的な1位を占めているのだが、どのようにしてセブンイレブンが圧倒的な地位を築いているのか、その秘密を暴いてみたい。そこには多くのトップ企業が自社の優位性を保つためのヒントがある。

コンビニという業界

コンビニ業界は先にあげたとおり、全国で5万店という凄まじい店舗数を持つチェーンビジネスである。コンビニ上位4社でマーケットの90%を占める老成したマーケットでもある。特にシェア率の高いトップ4の企業を1位から順番に上げると、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスとなる。トップのセブンイレブンは特に巨大で、1社でコンビニ業界の約4割を占める3.2兆円の売上高を誇り、2位と3位を合わせた売上に違い。

東洋経済新報社「2013年版業界地図」参照

4社がトップランカーとはいえ、実際はセブンイレブンの一人勝ち状態なのだ。店舗数でも2位のローソンの1.4倍、日販(1店舗あたりの1日の売上)でも2位のローソンよりも20%多い。規模でも収益性でも、セブンイレブンが他を圧倒している業界なのだ。

 
 
 
業界の歴史がある程度古くコモディティ化されている場合、再編とブランドの固定化が進み、上位数社で大きなマーケット・シェアを占める。そういう意味ではコンビニは老成したマーケットなのだが、この業界の面白いところはマーケットが老成しているにも関わらず日々進化を遂げている活発な業界でもあるということだ。

そんな老成したマーケットでありながら競争の激しいこの業界において、どのようにセブンイレブンが今の競争優位性を築いているのか、次回以降のエントリーで見て行いこう。

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2013/11/17

ホリエモンが開始した注目のサービス「TERIYAKI」

ホリエモンこと堀江貴文氏は11月3日に有名美食家達によるグルメキュレーションサービス「TERIYAKI」をリリースした。TERIYAKIはiOSとAndroidアプリで提供されるサービスで、選ばれたグルメキュレーター「テリヤキスト」達がおすすめグルメの情報を発信する。オンライン予約サイト「ポケットコンシェルジュ」などと連携し、おすすめされたレストランの予約を取れる機能も追加予定だという。

このアプリのキャッシュポイントは毎月400円の購読料と今後実装予定の名産品のECによる収入だ。毎月400円という購読料は高額に感じるが、食べログのような玉石混交の情報を忌避して質の高いグルメ情報を知りたいという人にはヒットするのかもしれない。

さすがホリエモンというか、TERIYAKIを初めからグローバル展開する戦略を描いている。というのも、英語版や中国語版のアプリをリリースしてのグローバル展開を公言しており。そのために世界で定着している日本語の「TERIYAKI」をサービス名に冠した。ある意味食というのは全人類に共通することなので、抜群のスケーラビリティを持っているとも言える。

有名美食家を採用したというのはなかなか面白い。というのも、美食家ごとに特異なジャンルや特徴があるので、いろいろなニーズに応えることができる。例えば、日本に住むイスラム教徒はとても外食に苦労する。イスラム教徒は豚を食べることができないが、単純に豚肉を食べることができないだけでなくて、ゼラチンやショートニングを使った料理も食べることができない。そんなイスラム教徒専用のグルメを紹介するキュレーターなど、ニッチなニーズを捉えることもできるだろう。


TERIYAKIのキーになるのは著名美食家だ。通常のスタートアップではなかなかこうした人達の獲得は難しいところだが、ホリエモンはその知名度という資産があったからこそこのビジネスを開始できたのだろう。そして、有料メルマガ会員が1万人、Twitterのフォロワーが100万人を超えている有名人なので、スタートアップが期待できる。今後が楽しみなビジネスだ。

ネクタイ業界団体の悲痛な叫びは廃れいく業界の断末魔

ネクタイ組合が国のクールビズ施策に憤りを露わにしているようだ。2005年に環境省がクールビズを推進し始めてから、夏場の半年間ネクタイをしない人が増えた。このためネクタイの売上と生産量が激減しているのだ。

クールビズ前の2003年から2013年の10年の間にネクタイの流通量と生産量は激減した。流通量は65%に減り、国内で生産されていたネクタイの数は1/3にまで激減してしまったそうだ。この影響で廃業した流通業者や生産停止に追い込まれる国内工場が増加している。

参考: 国産ネクタイ減少、クールビズで大打撃…業界恨み節「国挙げてのイジメだ」(Yahoo! Japanニュース)

この状況を鑑みて、日本ネクタイ組合連合会という業界団体は時の小泉首相に抗議声明文を提出したという。また、民主党に政権が移った平成22年にはクールビズ廃止の陳情を行った。

こう言っては何だが、電力不足やCO2削減という大きな目標の前に業界のエゴを通そうとする同組合の姿には何の同情も覚えない。努力を怠り問題の原因を自分たちでは解決できなことに押し付けても何も変わらないというのに。廃れ行く業界のテンプレート的な反応ではないか。

あくまでも組合の反応なので、個別の企業の中にはこの時代の変化を機会と捉えて虎視眈々と自分たちのビジネスを変えようとしている企業もあるはずだ。そして組合と同じように責任を国や社会の変化に押し付け、自分たちは無力だと嘆くだけで何もしない企業もあることだろう。きっと数年もすれば全社の企業は伸び、後者の企業は無残に消えていくことだろう。


協同組合の声明によると、「ネクタイを外しただけのだらしない格好は国際社会の中でみうけられません」ということだ。TPOによるが、欧米でもビジネスの場でノーネクタイがかなり定着しているし、不快指数で言えば世界でもトップレベルの日本の夏にネクタイをしてスーツを着ているのはただただ異常と言わざるを得ない。それで汗だくになっているなら見ていて不快なだけだ。

ゴネ得を目指すのは業界団体の本質的な姿と言えるのかもしれない。だがこの反応をみるとこの業界の先行きは暗いとしか思えない。

2013/11/16

転職には垂直ステップアップだけじゃなくて水平ステップアップもある

散々メディアでも言われていることだが、今は転職も珍しくない時代になった。特に若い世代や外資系、ベンチャーなどに勤務するビジネスパーソン達は、常に転職を一つのオプションとして身近に考えている。

転職へのハードルが下がっていろんな仕事にチャレンジできる機会が広がったにも関わらず、私にはどうにも腑に落ちないことがある。それは、多くの人が現職と同じ業界を選択しようとすることだ。
例えば新卒で中規模IT企業に入りSEをしていた人が、大規模IT企業に転職してやはりSEをしているようなケースだ。一般的に言って、これはこれで順当なステップアップだしスペシャルティを極めるという意味では順調にキャリアを積み上げている。転職市場でも高く評価されることだろう。もし、そのステップアップが本心から出たものならば、だ。


私が疑問に思うのは、私の知る限り前述のような『真っ当な』転職をした人は、異業界に挑戦するということをハナから無理だと思って選択肢から除外しているのだ。例えば、IT畑の人間だったらシステムに対する知識とプロジェクトマネジメントのスキルという無形の資産を持っているとしよう。それをIT化の進んでいないゴルフ場経営に活かしてみたり、プロジェクトマネジメントスキルを医療機関に活かしてみたら面白い貢献ができるのではないだろうか。そういう考えの異業種への転職がもっとあっても良い。

移った先の会社でも他の社員にはできない新しい自分にしかできない貢献ができる。それが新しいビジネスや業界のベストプラクティスを生み出すかもしれない。同じ業界の同じ職種に転職してワンオブゼムになるより社内で目立つ存在になり、プロモーションや成長の機会に恵まれることも多いはずだ。先進的なIT企業のAppleが有名ブランドのバーバリーが引き抜いたことを見ても、いまや業界の中だけで人が行き来する時代ではない。


自分の選択が正しいなんて言いたいわけでも自己弁護したいわけでもないが、私は全く違う業界に転職をした。IT企業から人材系の企業に転職をしたのだ。職種はどちらの企業にいた時も新規ビジネス企画・開発ということで変わっていないのだが、業界が変わればやはり今までとは違う商習慣や業界の雰囲気を目の当たりにする。まだまだ活躍できているとは言いがたいのだが、それでも異業界から来たことによる視点の違いや、スキルセットの違いが周りに新鮮な驚きをもって迎えられ、ありがたいことに重宝がってもらえている。

手前味噌な話だが、同じスキルレベルの人がいたとして、同じ業界の同じ職種に転職するよりも、別の業界に転身したほうが自分にとっても周りにとっても刺激的で、それは即ち高いバリューを発揮できるということではないだろうか。ちょっと視点を変えて転職するだけでオンリーワンになれるのだ。とは言ってもT企業出身の人が異業界のIT部門に転職してもそれはちょっと違う。



私は転職には大賛成だし、今後もっと増えてくるだろう。すると、異業界の人を迎え入れて自社に刺激を与えようという気骨のある企業もきっと増えてくるはずだ。転職する側も、ちょっと人と違うことをして自分の価値を高めることを考えるべき時代だ。
 
 

Yahooがキュリア転職で転職求人サイトを破壊する目的は? 2/2

前回のエントリーではキュリア転職がどのような影響を転職求人サイト業界に与えるかについて考えてみた。
今回はYahooの狙いについて考えてみたい。

前回エントリー:

Yahooの狙いは?

Yahooによるこの破壊的な無料化戦略。果たしでどのような目的や狙いがあるのだろうか?

第一に、ヤフオクとYahooショッピングが無料化された時の憶測と同じく、無料化しているうちに出来るだけ多くの企業を取り込んですっかりYahooプラットフォーム上でビジネスの礎を築かせた上で、ある日突然有料化するという狙いだ。確かにこれはうまいやり方ではある。有料化されたとしても、他のプラットフォームで一からやり直すくらいだったら、課金してでも続けようという企業も少なくないだろう。

短期的に見ればこの戦略は悪くないかもしれない。だが、一方でYahooという名前に泥を塗るようなブランド毀損になるだろう。Yahooが何か自分たち(顧客企業)にメリットのある提案やキャンペーンを行ったとしても最終的に自分たちからお金を巻き上げるに違いない、というイメージを持たれてしまうだろう。これは長期的に見たらYahooにとって大きな問題になるだろう。B2Bビジネスにおいて、一度失った信頼を取り戻すのは簡単なことではない。


次に考えられるのは、フリーミアムモデル戦略だということだ。
一旦無料でプラットフォームを開始し、多くの顧客を集める。基本的なサービスは無料で提供されるが、例えば一度に3件以上の求人広告を載せるなら有料になります、というのがフリーミアムモデルの要諦だ。これはWebサービスの限界コストが非常に低いことに起因して作られたビジネスモデルだが、キュリア転職もこのモデルを活用しようとしている可能性はある。だが、現時点で有料サービスを業界最安値レベルで提供してしまっていることを考えると、フリーミアムでどれだけ収益が得られるのか考えものだ。


もう一つ考えられる可能性として、広告モデルへビジネスモデルを展開する可能性だ。無料でプラットフォームを開放することによってまずは利用者の訪問数を集め、そこにバナー広告などを掲載して広告費でビジネスを立ち行かせるというモデルだ。この可能性を考えつつも、実際はとても難しいと言わざるを得ない。Yahooには優秀なエンジニアが沢山在籍し、立派なオフィスがあり、つまり、経費が大きいのだ。広告モデルで成り立つのは少人数でやっているスタートアップ企業だ。なので広告モデルの可能性は低いだろう。



結論としては、正直現時点ではYahooの狙いが分からないというのが本音だ。

ヤフオクやYahooショッピングはYahooの売上の屋台骨だったはずなので後に有料化し、キュリア転職はポートフォリオ的には売上比重が高くないので話題性のために無料化したという選択肢も考えられる。とは言うものの、無料状態が続けば転職求人マーケットには大きな値下げ圧力がかかるので、放置しておけない事態である。それに、Yahooという超大型ポータルサイトのトラフィックを持っているので、Web求人サイトにとっては大きな脅威である。業界の人にとっては予断を許さない状況だ。
 
関連エントリー:
2013/11/15 Yahooがキュリア転職で転職求人サイトを破壊する目的は? 1/2
2013/11/23 キュリア転職は実際そんなに脅威じゃない

 
 

2013/11/15

Yahooがキュリア転職で転職求人サイトを破壊する目的は? 1/2


キュリア転職ロゴ

中途人材領域に、驚愕のニュースが流れた。Yahooの子会社が運営する「キュリア転職」が基本サービスを無料化し、有料サービスも業界最安値の価格設定へ変更したというのだ。


YahooオークションとYahooショッピングの出店料・手数料無料に続く、Yahooのサービス無料化攻勢が続いている。この求人・転職サイト無料化は同マーケットに小さくない変化をもたらすだろう。マーケットに与える影響はどのようなものだろうか?そして、Yahooは一体何を狙ってサービスの無料化を推し進めているのだろうか?

中途採用のビジネスモデル

そもそも求人・転職サイト、そして中途採用斡旋ビジネスについてご存じない方のために簡単なビジネスモデルの説明をしたい。

キュリア転職は見たところ、採用ニーズのある企業がキュリア転職という転職したい人が集まる場に求人情報を出し、その求人情報の掲載に対して課金し、さらに採用が決まれば成功報酬としてさらに手数料を受け取るモデルであったようだ。求人情報サイトでは、1求人情報の出稿あたりの費用を請求するビジネスモデルが大半だ。企業は広告スペースを購入するかのごとく、一定期間求人サイトに求人情報を掲載するためのスペースを購入する。一方、転職支援系のビジネスでは企業のニーズにマッチした転職希望者を紹介し、採用成功報酬を企業から得るモデルだ。転職成功者の年収の20-30%程度を手数料として受け取る。

求人情報出稿料も転職成功報酬も無料にしてしまったYahooのキュリア転職は、つまり収入源が完全にほとんど絶たれてしまった。企業が複数の求人情報を同時に掲載する場合、また、転職者をスカウトする機能には課金が発生するようだが、月数万円程度でインフラを維持するコストも賄えるかどうかというところではないだろうか。

マーケットへの影響

キュリア転職の無料化は、求人・転職サイトや人材紹介マーケットへのインパクトが小さくない。
まず、マーケットに値下げ圧力が発生するだろう。無料という選択肢が増えたのだから、これまで有料のサービスを利用していた企業もキュリア転職に切り替えるケースが出てくるかもしれない。無料なので最初はお試し的に掲載してみて、効果があれば有料のサービスを使うのはやめて、キュリア転職のみに切り替える、なんてストーリーが考えられる。窮地に立たされた有料求人サイトは、顧客をつなぎとめるために値下げやキャンペーンで対抗する可能性が高い。

Webの有料求人サイトからすると、顧客離れが何より恐ろしい。求人広告をサイトに掲載するコストなんて無料に近いのだから顧客離れを招くくらいなら、料金を大幅値引き、ないし無料にしてしまおうという発想になる。こうして値引き合戦になると求人サイトマーケットに大きな値下げ圧力がかかる。もしそうなればプレイヤーは大きな損失を被り、運用体制を根本的に変えるてコスト削減に乗り出すか、ビジネスモデルを転換させざるを得ない。同じように、成功報酬型のビジネスモデルにも値下げ圧力がかかるかもしれない。


もう一つの大きな影響は、各求人サイトに流れ込む利用者のトラフィックの変化だ。
鶏か卵かみたいな話になるが、利用者が多く集まるサイトには多くの企業が集まる。当然多くの利用者がいるほうが求人広告掲載コストに対する応募数が増えるからだ。その一方、求人情報が多く集まるサイトには、多くの利用者が集まる。良い状態にある求人サイトはこうした正のスパイラルが働く。

つまり、掲載求人情報を増やすことは多くの利用者を集める重要なファクターだということだ。無料で求人情報を大量に集めることができれば、やがて利用者の訪問数も比例して伸びていくことだろう。他の求人情報サイト運営会社が恐れるのは、キュリア転職が独り勝ちでこの正のスパイラルに入っていくことだろう。一つ前の影響で上げたように、一度顧客企業との接点を失えばそれを取り戻すのは大変だが、一度自社の求人サイトから離れた利用者を取り戻すことも同じくらい難しい。既存プレイヤー達にとっては利用者の喪失も非常に怖い現象の一つだ。



次回のエントリーで、Yahooの目的について考察してみたい。

2013/11/13

ボジョレーヌーボーと日本人のマインド

ボジョレーヌーボー

ボジョレーヌーボーが解禁される毎年11月の第3木曜日、世界的に見ても日本のマスコミは異常なほどボジョレーヌーボー解禁のニュースを全面に押し出す。ご存知の人も多いだろうが、世界広しといえどボジョレーヌーボーをこれだけ喜んで飲むのは日本くらいのものなのだ。
そして、ここに日本人のイベント好き、お祭り好きというマインドセットと、いかにマスメディアに影響され易い国民性かが伺える。


ボジョレーヌーボーとはその年にとれた葡萄で作った新酒で、その年号のワインの美味しさを占うワインだ。ボジョレーはフランスの中でもワイン葡萄で有名な地域で、美味しいワインを世界へ輩出している。
その年の初ワインを楽しめるなんて初鰹のようで贅沢だ、なんて思うかもしれないが、実際のところ出来たてのワインは未完成品で一般的に美味しいと言われるような飲み物ではない。無論、お酒は嗜好品なので好き勝手な方法で飲めばいいのだが、ワイン通からするとボジョレーヌーボーは初ワインを飲むというイベントにすぎず、美味しい美味しいと喜んで飲むものではない。なぜならワインは数年間樽で熟成させて初めて完成するからだ。

そんな事実をよそに、日本はボジョレーヌーボーの約半分を消費するという、ワイン消費量から考えたら異常なボジョレーヌーボー好きなのだ。これは何故だろうか?

第一に、マスメディアの報道に弱いという日本人の国民性が浮かび上がる。
11月のこの時期になるとニュースやワイドショーで今年のボジョレーヌーボーの出来は良いとか悪いとかという報道が多くなる。CMやバラエティ番組でも見かけるかもしれない。これらは電通や博報堂のマーケティングの影響による露出に過ぎないのだが、あたかも流行っているという事実のように受け取る国民が多いのだ。

そして、日本人のお祭り好きというメンタリティもあるだろう。
日本人にはなんとなくみんなが盛り上がっているところに参加したい、流行りモノから遅れたくないというモチベーションが働くようだ。日本のあちらこちらに祭りがあり、多くの日本人が祭りを楽しんでいることからも分かりやすい現象だろう。


外国人の視点で見てみると、さほどワイン消費量が多くない日本人のボジョレーヌーボーに対する熱狂は不可思議なものとして映るに違いない。だが、少し見方を変えると、日本人の国民性というのはこうした事例から学ぶことができる。逆に言うと、ある国をマーケットとして開拓しようとしている企業は、こうした特徴的な事象を研究すると、その国の国民性が分かってくるということではないだろうか。


2013/11/12

楽天市場の優勝セール価格不当表示

楽天イーグルスの優勝に伴う、楽天市場の優勝セールでECの信用を揺るがす大きな事件が起きている。
割引前の元の値段を高く釣り上げて割引率を高く見せる不当価格表示だ。

楽天イーグルスの優勝に湧く楽天市場では、監督の背番号77番にあやかって77%引きのセールを大々的に行っていた。楽天市場は公認のいくつかの店舗で77%引きセールを行っていたのだが、77%引きセール公認ではない他の店舗でも便乗して77%引きセールを開催していたのだという。普通の商品では、定価の23%なんてもちろん利益を出すどころか原価にもならない。

楽天の発表によると、17店もの未公認セールの店舗が1000品目に及ぶ範囲で不当価格表示を行っていたという。値引き前の価格を4倍程度に不当に釣り上げて、売価はそのままにすることで77%の割引率をでっち上げたのだ。子供だましレベルの詐欺のような話だが、17店もの店舗がこの悪事に手を染めた。また、正規の77%セール公認店でも3店舗が同じ不当価格表示をしていたのだという。楽天市場のチェック体制もあまりにもお粗末だったと言わざるを得ない。


楽天がこの事件に対してどのような対処を取るかで、楽天の企業倫理が浮き彫りになるだろう。

ECである以上、対応はさほど難しくないはずだ。割引率をアピールしている商品はその値引き前価格が定価よりも高くないか、または競合店との通常価格を比較して著しく高くないか、というチェックロジックを埋め込む事ができる。それに、不当価格表示に限らず、ユーザーの信頼を裏切るような店舗はネガティブコメントが集まるはずなので、店舗に対する評価を検索表示順に反映する事もできるだろう。

だが、こうした様々な対策が考えられるにも関わらず、現時点で楽天は信頼度の高い店舗を優先し、悪徳業者が自然に駆逐される仕組みを取り入れてはいないようだ。商品検索した言葉と全く違う商品が山ほど出てくる今の検索システムを見ても、あまりユーザーの利便性向上やユーザーの保護を考えられてはいないように見受けられる。

それもそのはずで、ビジネスモデル的に楽天は店舗オーナーが多ければ多いほど儲かる。固定費の出店料は一番安いプランで月額約2万円、売上に対する手数料が3.5〜6.5%だ。無論大きな売上を上げる店舗がたくさんあったほうがいいのだが、ある程度有名なブランドや店舗が出揃ってしまえば、それ以上大手店舗で急激に売上を増やすのは難しい。だが、固定の出店料プラス多少の売上手数料を回収できる小型店舗を大量に増やす余地は十分にある。さらに、店舗オーナー向けのセミナーやらサービスで、オーナーからのキャッシュポイントを増やしているのも楽天市場のビジネスモデルの特徴だ。こうしたビジネスモデルでは、極端な言い方をすれば買いまわりしてくれる買い物客は、お金を払ってくれる本当のお客である店舗オーナーを集めるための材料に過ぎない。楽天的には、買い物客の優先度は後に回らざるを得ない。


ネットでの薬品販売でECの信頼性が焦点になっているが、薬品のEC販売拡大を推進する楽天の三木谷社長は、今回の事件で図らずも自らECの信頼性を損なう事態を引き起こしてしまった。楽天は本腰を入れて上記に上げたような対策を取らなければ、長期的にネガティブなインパクトを持つダメージを追うだろう。買い物客の優先度が下がらざるをえないビジネスモデルで、どこまで楽天は本気を出せるだろうか。




2013/11/11

レンタルビデオの中小事業者はイノベーションに駆逐された 2/2

前回エントリーに引き続き、レンタルビデオの中小事業者がどのように駆逐されていったかを考える。今回はクライマックスである、オンライン販売やオンラインレンタルの影響だ。

第三の波、オンラインレンタル、オンライン販売

最終的に中小レンタルビデオ店を破壊したのは、楽曲や映画のダウンロード販売やオンラインレンタルサービスだ。

ダウンロード販売は今やiTunesやAmazonなど、大手プレイヤーのおかげで一般化してきている。まだまだダウンロード販売と言えば楽曲購入のイメージが強いが映画も販売されている。ダウンロード販売の映画はやはり画質の点でDVDレンタルなどに比べれば劣るが、それでも手軽に楽しみたいというニーズは十分に満たすことができるだろう。また、huluのような動画サイトで月額課金性で映画が見放題という有料動画サイトも存在感を増している。huluはある意味全てがオンラインで完結するオンラインレンタルモデルと言えるだろう。
これらに共通するのは、レンタルビデオ屋に行くという煩わしさがないのが圧倒的に大きなメリットだ。

店舗に出向かなくて良いという意味では、CDやDVDのメディアをオンラインでレンタルする「宅配レンタル」という業態も大きなトレンドだ。実店鋪を持つレンタルビデオ事業者でもあるTSUTAYAとGeoも、それぞれ宅配レンタル業態に参入している。また、実店鋪を持たずにこの宅配レンタルのみを取り扱っているDMM.comのような事業者もいる。
さすがにレンタルビデオ業界のメガチェーンである2社は宅配レンタル業態に参入することで何とかプレゼンスを保っているが、中小の事業者はインフラを構築する事ができずバタバタ潰れていっているというのがこの業界の現状だ。


オンライン事業者やメガチェーンが繰り広げる低価格競争と店舗に行く必要が無いという二つの付加価値に阻まれ、中小のレンタル事業者はなすすべがない。恐らく独立した中小レンタル事業者は息絶え、メガチェーンのFCになって生き延びるが廃業を余儀なくされることになるだろう。ネットリテラシーが高くないユーザー向けに細々と続く店舗もいくつかあるかもしれない。

残酷な話だが、新しいイノベーションにより過去の事業者より優れた付加価値をさらに安く提供する新しいビジネスモデルが現れた場合、リプレースされてしまうのは不可避だ。このトレンドに対向するために、メガチェーンは自社のリソースを使って新たなビジネスモデルを取り込むことができるが、中小の事業者はその選択肢も持たない事がある。だがそれでもニッチ顧客向けにマーケットを絞って絶対にリプレースされないニッチマーケットを作り出すこともできたかもしれない。だが、中小レンタル事業者のそのような努力はあまりお目にかかったことがない。

レンタルビデオ業界に起きたことは決して珍しいことでも何でもない。いつでもどの業界にでも起き得ることだ。これをケーススタディとして、イノベーションによる新しいトレンドに常に目を光らせておかなければならない。

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