2013/12/18

好評の新メニュー「牛すき鍋膳」は吉野家を苦しめる

牛すき鍋膳

12月初旬、吉野家から「牛すき鍋膳」という、牛丼と比較すると高価格でちょっと豪華なメニューがスタートした。一人用の鍋に牛すき鍋が提供され、安い・早い・うまいの吉野家としては高価な580円の戦略的メニューだ。
Webで「牛すき鍋膳」を検索すると、美味い!だとかコスパが高い!というコメントが多く、初速は悪くないようだ。だが、安い・早い・うまいの手軽軸の吉野家が、あまり安くない・ゆっくり・うまいのメニューを出すことは、果たしてどのような結果をもたらすのだろうか?

Newsポストセブンでは、吉野家が牛すき鍋膳を販売開始した狙いについて触れられている。

Yahooニュース 2013/12/17ーーーーーーーーーーーー
「吉野家がゆっくり食べられるメニューを出しているのは、会社帰りのサラリーマンの“チョイ飲み需要”も狙い、ビールを注文してもらって客単価を上げようという戦略がミエミエです。
例えば、中華食堂の『日高屋』はキリンの生ビールを安価で提供し、客はまず餃子をつまみに生ビールを1杯、それから食事をする人が増えたために客単価が上がって業績は絶好調。吉野家もそれと同じようなスタイルに変貌させたいと思っているのかもしれません。
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ある調べによると、280円の牛丼並盛りは原価率が7割近くに及び、一杯辺りの粗利は10円以下でほとんど利益が上がらない仕組みになっているという。どの牛丼チェーンも、利益の源泉はトッピングやセットメニューだ。そんなギリギリの線を行ったり来たりしているような業態では、利益率の高いメニューが売れてさらにビール一杯まで飲んでくれるとなれば飛びつきたくもなるだろう。


だが、これはあくまでも短期的な話であり、長期的に見た時の影響はネガティブに働くと私は思う。
吉野家や他の牛丼チェーンに訪れる客は、早い・安い・うまいのうち、特に前2つに敏感に反応する客だろう。「うまい」については、低めの及第点さえ超えていればそれで良い。それが牛丼チェーンに訪れるお客の平均的プロファイルだ。最初のうちは物珍しさに牛すき鍋膳を食べることもあるだろうが、このメニューは彼らの早い・安いに対する要求を満たしてはくれない。

今のところは話題性で牛すき鍋膳を食べに来る人も多いが、お客が慣れてくると同じ値段を出すなら他のファストフードや食堂が競合になってくるだろう。そうすると吉野家の牛すき鍋膳がどこまで魅力的であり続けることができるのか疑問だ。


また、ピークの混雑している時間帯に牛すき鍋膳を食べるお客が多かったら果たしてどうなるだろうか?ある調べでは、牛丼に比べて牛すき鍋膳では顧客一人あたりの食事にかける時間が2倍になるらしい。昼の混雑時間帯に回転率が半分に落ちたら、売上も数十%単位で落ちるだろう。それだけ売上が落ちればいくらメニューの利益率が高いとはいえ、全体として利益が落ちる可能性も高い。


単刀直入に言って、吉野家の「牛すき鍋膳」は短期的に利益を押し上げるが、安い・早い・うまいという牛丼チェーンの基本的価値を裏切ったことによってお客が離れていくだろう。そして、まあまあ安い・あまり早くない・うまい、という八方美人的なバリュープロファイルではどの顧客にも刺さらない。
この企業を一言で言うと「〇〇」である、というブランドを裏切った企業の行く末は暗い。

関連エントリー:
2012/12/4 吉野家の「極」 低価格路線原点回帰は吉と出るか?
2013/10/25 ネイルサロンの早い・安い・うまいを実現するアート
 
 

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