2014/04/06

外国人材の活用は慎重に考えるべき

移民問題

安部首相は減り続ける日本人労働力をまかなうために外国人労働者の受け入れを進めようとしている。企業からすれば労働市場を開放する動きは歓迎すべきものだろう。飲食や販売業のようなロースキル人材を大量に必要とするような業界では、労働力減少に加えて好景気で労働力需要が高まっており大きな問題だ。それに、東京オリンピックに向けて建設業の労働力不足もニュースを賑わせている。

参照: 首相「外国人材活用を」 建設や介護で検討指示 (日経電子版)

日本が今の経済規模や競争力を保持するためにも外国人労働社の受け入れは必要不可欠に思えるが、私個人の考えとしては慎重に慎重を重ねて限定的に少しずつ受け入れるべきだ。

■移民受け入れ国の失敗事例

私が移民受け入れに慎重な考えを持つのは、既に移民を受け入れた国がことごとく移民受け入れに失敗しているという事実だ。

例えば1960年代から東欧やトルコの移民を受け入れていたドイツ。当初は短期間労働だけが許可されていたが、移民が定住し、職を失ってもドイツ国内にとどまり生活保護を受け続けているという問題が起きている。また、受け入れている移民の大半がイスラム系であるため、宗教や文化摩擦といった問題を抱えている。

ブルガリアとルーマニアから広く移民を受け入れていたイギリスでは、実に77%のイギリス国民が移民の受け入れを減らして欲しいと考えている。キャメロン政権は2015年までに移民の数を10万人に絞り込むという公約まで掲げている。

また、ロシアでもアジア系の外国人労働力を受け入れて3Kのしごとを広く担っているが、移民に仕事を奪われたと逆上したロシア人によるアジア系住民への暴力事件や殺人事件が多発している。



どの国もはじめは慎重に移民を受け入れようとした。それこそ安部首相が掲げているようにビザの期間を限定したり、監視体制の強化も行っていた。


だが、受入期間を短期で制限しようとすれば十分な教育が行われず、移民労働者の質が上がらない。企業からは移民をしっかり教育して戦力化するためにビザ発行期間を増やすように要求が上がってくるだろう。そしてなし崩し的にビザ発給条件が緩和されることになる。

定住する移民労働者や永住権を獲得した移民労働者が増えると家族を呼び、仲間を呼び、移民の増加が加速することになる。そして一旦緩和が行われればその蛇口を閉めるのは難しい。

日本は移民受け入れに失敗した他の国と同じ轍を踏もうとしている。

■労働力不足を移民で補うことの問題

単純化すると、移民問題は経済的な問題と受入国の国民と移民の間の融和問題に分けられる。

経済的な問題は至極単純な話で、受入国の仕事を移民が奪ってしまうことと、それに付随する平均賃金の低下だ。
今回安部首相が目指す移民受け入れ政策は建設現場や介護、製造業などロースキル労働力を移民で解決する狙いだ。日本人のロースキル労働力を担う人材が移民と競合し、日本人の失業者が増える。

また、移民が増えることで労働力の供給が改善し、労働者間で仕事の取り合いが発生することになる。すると企業は市場の原理でもっと安い賃金で労働力を獲得することができる。つまり、同じ仕事でも移民が増えることでその平均賃金が下がっていくことになるのだ。



国民と移民の融和問題はもっと厄介だ。移民を受け入れる側と移民が完全に融和している国はゼロと言っても過言ではない。

移民の大半は言うまでもなく真っ当に職を得て真っ当に暮らそうと思って新天地である移民受け入れ国にやって来る。そしてそこで同じ国から来た移民たちとコミュニティを作って情報や相互扶助を行うのは生きる知恵だ。だが同時にこれは受入国との融和を妨げる行為であり、受入国からすると異分子が入ってきたという感覚を得るだろう。

移民の融和問題は経済的な問題だけではなく、宗教的・文化的な異分子を受け入れることに対して受け入れ側の国民が大きな拒否反応を示すのだ。文化的な生物である人間としては当然の免疫反応だと言ってもよい。



これら経済的な問題と融和問題は厄介なことにネガティブスパイラルを生み出す。不況期になると真っ先に移民労働者達が失業し、彼らが生活保護を受給したり、活きるための糊口を得るために犯罪を犯す。そんな移民たちに対して受入国の国民たちは拒否反応を示す。これはほとんど全ての移民受け入れ国で起きている。

■日本は外国人材活用問題をどう解決すべきか

個人的意見としては、そもそも受入国と移民の摩擦をなくすことは不可能だと思っている。移民を受け入れることのネガティブサイドがポジティブサイドを上回るという点に対しても懐疑的だ。

もし一つ可能性があるとすれば、シンガポールの手法に学ぶことだ。シンガポールでは国民が3K仕事に携わらず、時限的にその仕事限定でビザを発給された移民がその3K仕事を担っている。

シンガポールが移民を完全にコントロールできている理由の一つには、与党の人民行動党が圧倒的議席数を誇る政治体制にあるかもしれない。この点、日本がこの政策を真似るのは難しいかもしれない。

2014/03/21

Echelon 2014 日本Satelliteに参加してみた

Echelon日本Satellite

Echelon 2014 日本Satelliteというイベントが2014/3/14にNTTドコモベンチャーズのオフィスで開催された。このイベントはアジアのテック系スタートアップに投資するe27が開催するイベントで、アジアのテック系スタートアップ12社が登場した。6月にシンガポールで開かれる本番のEchelon2014の前哨戦みたいなものだ。

まだマネタイズのプランもない荒削りなスタートアップもあれば、既に100社程度に導入が進んでいるスタートアップもいるなど、結構幅広いステージにいるスタートアップが参加していたが、以前参加したサムライスタートアップ?よりも全体的にクオリティが高い。サムライスタートアップ?ではそのサービス一体誰が使うの?レベルのものや、そもそもこれから作ります、というものが多かった。スタートアップピッチはまだ数えるくらいしか見たことがないが、結構イベントによってバラつきがあるものなんだと認識した。

時間の関係で全てのスタートアップは見れなかったのだが、幾つか面白いスタートアップや発見があったので、シェアしてみたい。

1. iChef


iChefはiPadを使った快適な操作性と多機能性を持つ飲食店向けの新しいPOSシステムだ。iChefは台湾を拠点としたスタートアップで、台湾・香港で約100店舗に導入が進んでいる。同社は日本でのビジネス展開を目指している。
CEOだかCOOのKenのプレゼン能力が優れていて、ピッチでは他のスタートアップをはるかに凌いでいた印象がある。実際iChefは審査員賞を受賞した。

2. Capy

Capyでも画面
Capyのパズル型Cpatcha

Capyは新しいCaptchaのデファクトスタンダードを目指しているスタートアップだ。Captchaとは、サイトへログインするIDの不正利用を防ぐチャレンジ/レスポンス型のテストだ。OCRでは認識できず、人間にしか認識できないような文字列を入力させ、ソフトウェアによるハッキングを防止する。
一般的なCaptcha
一般的なCaptcha

Captchaは今大きな課題を抱えている。OCRソフトウェアの読み取り精度が上がってきているため、もっと認識が難しい文字画像を使うようになってきたが、今度は人間の認識の限界に達してきている。
そこでCapyが考えついたのは、人間の文字認識能力に依拠したCaptchaではなく、コンテキストを理解する能力を利用したCaptchaだ。

下記の参考画像ではパズルを正しい位置に埋め込むタイプのCaptchaだが、ピッチでデモンストレーションされていたのはキャラクターと帽子が表示され、帽子をキャラクターの頭の上にドラッグしていくと認証されるというものだ。それぞれの要素を認識し、どう要素を組み合わせるべきかという課題を、人間だけが持っている常識を活用して解決するという仕組みになっており、よっぽどAIが発達しない限りはソフトウェアのブルートフォースに対して強い対抗力を持つだろう。


何よりCaptchaのビジネスモデルが面白いのは、これからも世の中に増え続けるであろうSNSやWebサービスの基本機能として、大きなスケーラビリティを有しているということだ。シンプルな機能で、かつただのセキュリティ対策のコストでしかないので単価は安いだろうが、変動コストが低くチャリンチャリン稼げるビジネスになるだろう。
さらに、GoogleなどWeb系大手企業にバイアウトされエグジットする可能性も高い。投資先としても結構有望な企業だろう。

2014/03/02

LINEより一足先に換金化を開始したWeChat

メッセージングアプリユーザー数推移

Tencentは中国のコンシューマーWebサービスのナンバーワンプレイヤーだ。

2012年6月時点では世界のWeb系企業の中でも時価総額5位、もちろん中国国内では1位。そして時価総額では、Web系企業として日本で最も時価総額の大きいYahoo!Japanの3.7兆円の約4倍の13兆円だ。歴史は意外と古く、1998年に創業し2004年に香港証券取引所に上場。Facebookが設立されたのはちょうどTencentが上場した2004年なのだ。

■WeChatとは

WeChatはTencentが2010年にリリースしたアジア初でもっともユーザー数の多いメッセージングアプリだ。世界的に見れば最も利用ユーザーの多いSNSのFacebookMessengerがあり、最近Facebookに買収されたWhatsAppがあるが、その次にユーザーが多いのがWeChatだ。中国国内で圧倒的なシェアを誇るため、海外展開の進むLINEよりもユーザー数が多い。

■マネタイズの進むWeChat

どのメッセージングアプリも目指すビジネスモデルは、圧倒的なユーザー数を持つプラットフォームを作り、そこで多くのユーザーから薄く課金をして大きな売上を稼ぐことだろう。マネタイズにおいては、WeChatが他のアプリに先駆けて稲刈りを始めている。そしてその方法はLINEとはまたひと味ちがう側面がある。

・コンシューマーに換金ポイントを設ける

WeChatもLINEも収益の重心はコンシューマー側に重心がある。2013年のある四半期ではLINEの売上の60%はゲーム売上、20%はスタンプ、もう20%はB2Bの公式アカウントであり、実に80%がコンシューマーからの売上だ。WeChatの売上詳細は分からないが、恐らく似たようなものなはずだ。なぜなら、WeChatもLINEと同じように有料スタンプショップとソーシャルゲームを運営している。

だがWeChatがLINEよりも本気で換金化しているなと感じるのは、2013年8月にWeChatアプリに搭載されたオンラインペイメント機能だ。WeChatは主に3つのペイメント機能を提供している。ひとつひとつ紹介していこう。

(1) プリペイド型携帯電話代金のデポジット
ポストペイド型が主流の日本と違い、中国ではプリペイド型の携帯電話代金支払が主流だ。通常この支払はATMやネットバンキングなどで行われるようだが、WeChatでならペイメント機能を通じて、スマホからそのスマホの利用料を入金できるということだ。

(2) QRコードをスキャンして購入する機能
WeChatにはQRコードをスキャンしてオンラインペイメントを実行する機能が追加された。この機能は主にPCやタブレットでECショップを利用する場面を想定して作られているようだ。例えばTencentのECストアであるYixunで買い物しようとするとWeChatペイメントを選択することができ、QRコードをスキャンしてペイメントパスコードを入力すると決済が完了する。アカウントにクレジットカード情報を登録してネットショッピングするほうが簡単な気がするが、WeChatに支払を統一させたいというニーズがあるなら流行るかもしれない。

(3)公式アカウント内の商品をワンタップで購入
これは案外強いかもしれない機能だ。WeChatにもLINEなどと同様に企業のブランディングページを展開することができる。そこに企業が紹介した商品を、ワンタップで購入できるというわけだ。フラッシュマーケティングに向いたペイメントサービスと言えるだろう。
最近LINEもLINE MALLという個人もビジネスも使えるECプラットフォームを提供し始めたが、WeChatのほうが3四半期も先に企業向けにマーケットプレイスとしてプラットフォームを提供し始めた形だ。

・銀行サービス

さらにWeChatにユニークなサービスが、つい最近参入したオンラインバンキングサービスだ。
WeChat Wealthなるサービスでは、100万元を上限にファンドへ投資することができる。この口座に入金すると、自動的に華夏銀行が運営するファンドに運用され、年率6.435%の運用益が見込まれるのだという。
WeChatがコンシューマーのあらゆる生活側面に根ざしたサービスになろうという思想が透けて見える。



アジアではWeChatとLINEがユーザー数を競い合っているが、グローバル展開という意味ではLINEが一足先ん出ている印象だが、換金化のスピードや幅広さはWeChatも負けていない。だが一方で、LINEもつい先日B2B向けにAPIを公開したり、クリエイター向けにスタンプショップを公開したりと矢継ぎ早に換金化サービスを広げている。どちらのサービスがアジアを制するのか、引き続き見守って行きたい。

2014/02/20

shazamのコンバージョンまでのルートが美しすぎる件

Shazamロゴ

Shazamというサービスをご存知だろうか。iOSとAndroidの専用アプリを立ち上げ、内蔵マイクで流れている音楽を拾わせるとものの数秒でその曲を探し当てるという便利アプリだ。全世界で1000万以上ダウンロードされていてファンも多く、つい最近Androidアプリがアドネットワークへ個人情報を送信していたことが発覚した事件もあってご存知の方も多いだろう。

私は流行りのアプリやガジェットにそこそこアンテナを張っているつもりなのだが、Shazamはつい最近まで知らなかった。使ってみて数秒で曲を確実に当てるテクノロジーと、利用からコンバージョンまでの流れがあまりにも美しかったので取り上げてみたい。

■利用場面からコンバージョンまでの美しい流れ

Shazamの何が一番気に入ったかというと、ユーザーがこのサービスを利用してコンバージョンに至るまでの心理的なハードルを下げる仕組みと、さらにそれを増長するようなシンプルで利便性の高いUI・UXだ。

・気になった曲≒欲しい曲

Shazamのサービスでは探し当てた曲を購入できるiTunesリンクやそのアーティストのコンサート情報にワンクリックでアクセスできるようになっている。いわゆる購入に至った曲のアフィリエイト収入が主な課金方法のようだが、これが実に上手くできている。

同じアフィリエイトビジネスとしてブログアフィリエイトとの比較を考えてみよう。一般的に言って、そのアフィリエイトブログにランディングするユーザー(=利用ユーザー)が購入意欲の高いユーザーである確率はあまり高くない。ブログアフィリエイト商品というと、よくダイエット食品なんかが取り上げられていたりするが、そのページに辿り着いたユーザーの多くはそのダイエット食品についての情報を集めている人である可能性が高い。そして本当に購入したい人は、楽天やamazonで検索するだろう。そこをなんとか構成や文章で購買意欲を高めてコンバージョンに持っていくのがブログアフィリエイトなのだ。

一方、Shazamのケースを考えてみよう。ふとレストランで流れている曲や垂れ流しにしていたネットラジオで流れている曲で、これちょっと良いなと思った曲を検索する、というのがモデルケースだろう。この時、ユーザーはどんな心理状態だろうか。この曲いいな、と思って探す時点で高確率で購入を希望しているはずだ。また、この曲いいな、と思った時点でタイムラグ無しで購入を薦められれば高確率でコンバージョンするはずだ。

ブログアフィリエイトと比較すると、サービス利用者が商品を購入したい人である可能性が高いのだ。
アフィリエイトモデル、広告モデルのネットビジネスは数多いが、これだけ購入意欲の高いユーザーにサービスを利用してもらえるビジネスモデルはそう多くない。このサービス設計に美しさを感じずにはいられない。

補足すると、iTunesやAmazonのような1曲1曲ダウンロード購入できるミュージックストアの普及もこの動きに拍車をかけている。かつては音楽を購入するといえばアルバムCDをまるまる1枚数千円かけて購入するのが当たり前だったが、いまや1曲ずつ購入して自分の好きなプレイリストを作るのが常識になりつつある。Shazamはこのトレンドともすこぶる取り合わせが良い。


・購買までの障壁が低いUX

購買意欲の高いユーザーにサービスを利用してもらってからコンバージョンまでのUXは重要だ。ここで使いにくさがあれば、ユーザーはiTunesアプリやブラウザからAmazonのMP3ダウンロードサイトで検索して自分で購入してしまうだろう。

Shazamはユーザーが購入するまでの離脱の可能性を最小限に保つ工夫に優れている。
一つはその場ですぐに購入できるiTunesリンクが挿入されている点だ。音楽の検索結果が出ると、ユーザーはワンクリックでiTunesでその曲の購入ページに飛べる。まあこれはよくある設計だ。

よく考えられているなと感心させられるのは、ワンクリックでその曲を視聴できるボタンが付いていることだ。コンバージョン率を高めることに焦れば、視聴ボタンを置かずにiTunesへのリンクだけ張り、とりあえずiTunesにユーザーを飛ばしてしまうという設計もできただろう。しかし、本当にその曲が正解なのかまず確かめたいというユーザーの当然の心理を汲み取って視聴ボタンを置いたのだろう。

瑣末なことかもしれないが、ユーザーにとっては満足度が高まるはずだ。


■どんな曲でも見つけてくれるテクノロジー

もう一つShazamについて語るべきは、その楽曲検索のテクノロジーだ。私が試したところ、5秒もかからず百発百中で探し出してきてくれる。1000万曲を超えるデータベースからこのスピードでこの確実性で見つけ出してくれるのは素晴らしいとしか言いようがない。

Shazamのライバル製品には鼻歌から曲を当ててくれるというものもあるようだが、Shazamでは原曲をマイクで取り込まなければならない。なぜならメロディーラインの音階といった抽象化された情報ではなく、オーディオフィンガープリントという曲全体のスペクトログラムをマッチングさせて正しい曲を探し出してくる。

楽曲のスペクトログラムをマッチングさせて曲を検索するという技術自体はさほど難しくないだろうが(それでも相当高度なはず)、1000万を超える曲の中から5秒程度で見つけてくる検索アルゴリズムがすごい。恐らく音楽の波形でデータベースの曲をグルーピングし、コンマ数秒単位で該当しないグループをそぎ落としていくという方法で検索しているのだろうか。

検索に数十秒、数分かかっていたら利用ユーザーはガクンと減るだろう。技術の粋を極めて作り上げた数秒で楽曲を検索するシステムも素晴らしいUXに貢献している。


■Shazamについて

超先進的なテクノロジーを有しているShazamだが、実は結構このサービスの歴史は古い。会社の設立は1999年、音楽検索サービスの開始は2002年だ。

当然当時はスマートフォンが存在していなかった。なのでその頃のサービスでは携帯電話からShazamの電話番号にダイアルし、知りたい曲を30秒程度流す。すると折り返しのテキストメッセージでアーティストと曲名を教えてくれるというサービスであった。

当時は一曲あたりの検索が0.99ドルという課金方法をとっていたようだ。スマートフォンが普及し、音楽ダウンロードサービスのお陰でCD単位ではなく曲単位で購入することが主流になってきた時代のトレンドにもマッチするビジネスモデルだ。
 

  

2014/02/09

LinkedinによるBright.com買収は求人サービスのちょっとした事件

Linkedin acquired Bright.com

Linkedinは2013年度の決算報告と同時にBright.comの買収を発表した。2003年に設立され、これまでに9社買収してきた同社にとっても、もっとも大きなディールだ。Bright.comの買収金額は1.2億ドル(約123億円)で、3600万ドルをキャッシュで残額をLinkedin株で支払う。8億ドルのキャッシュを持つ同社にとっては安い買い物だ。しかし、Linkedinに対する投資家の期待値は高く、対前年度比57%の売上増にも関わらず株価を下げていた。

このLinkedinによるBright.comの買収。日本ではほとんどニュースにもなっていないが、求人サービス市場におけるインパクトは大きい

■Linkedinとは?

Linkedinは言わずと知れた世界最大のビジネスSNSだ。ユーザーは実名で、かつ自分の詳細な仕事の経歴プロフィールをLinkedinに登録する。ビジネス上つながりのある人のプロフィールを閲覧するという使い方だけでなく、キャリアエージェントやヘッドハンターが採用活動に利用するといった場面でもよく利用されるSNSだ。

Linkedinは日本ではまだ馴染みが薄いが、ビジネスプロフェッショナルの間では徐々に浸透しつつある。特に米国のプロフェッショナル達が登録している割合が高く、名刺やメールの署名にLinkedinのIDが挿入されているのも日常の光景だ。Linkedinのプロファイルにはほとんどのユーザーが詳細な仕事の経歴やスキルを記入しているので、キャリアエージェントからダイレクトメッセージで新しいポジションのオファーが入ることも珍しくない。ビジネスでチャンスを掴みたかったらLinkedinに登録しろ、という時代と言っても過言ではないかもしれない。

2003年に創業したLinkedinは2011年5月19日にニューヨーク証券取引所に上場し、初日に売り出し価格45ドルから上昇率109%の94.25ドルで引けた後も順調に株価を伸ばし、までは210ドル近辺まで伸ばしている。時価総額は250億ドル(約2.6兆円!)にのぼり、日本で言えば三井物産やKDDIに匹敵する大企業に変貌を遂げた。起業したのはほんの11年前の2014年だ。

Linkedinのビジネスの特徴は、SNSという収益化が難しいビジネスでありながら、ビジネス向けSNSに特化したことでB2Bの安定した収益性を獲得したことにある。B2CのSNSはユーザー課金や広告モデルによる収益化が主流だが、ここでつまづくSNSは枚挙にいとまがない。Linkedinはユーザーに課金するのではなく、優秀な人材を必要としている企業を顧客とすることにより安定した収益基盤を気づくことに成功したのだ。彼らの主要顧客は企業の採用担当や斡旋事業者、ヘッドハンターだ。

■Bright.comとは?

一方買収されたBright.comとはどのようなスタートアップだろうか。
Bright.comは2011年2月にファンドレイズされた、わずか創業3年のスタートアップだ。Bright.comは求職者と求人情報のマッチングサイトというよくあるWebサービスであるが、ひとつ大きな特徴を持っている。それは「Bright Score」と名付けられた、その人の経歴と求人情報のマッチングを測るスコアの存在だ。

Bright.comはこのスコアを最大の差別化ポイントとして、相当のパワープレイをしている。普通のWebサービスと違い、優秀なWebディベロッパーではなくて原子力物理学者、天体物理学者、地球物理学者、組織心理学者、有名クイズ番組の優勝者など、普通じゃない頭の良さを持った人を集めに集めた。この世界屈指のブレーンを持った15人のチームが過去280万人分の経歴書と880万の求職者、210万の募集職種を分析し、18ヶ月で延べ4万時間以上の時間を投資して辿り着いたのがBright Scoreだ。

Bright Scoreは新し職を探している人と、募集ポジションのマッチングを100点満点で評価する。パターンマッチングやクラスター分析、経歴書の文書や構成まで分析してこのスコアを弾き出し、その精度は93%にも及ぶという。

参考: Bright.com - Bright Scoreについて(英語)

■なぜLinkedinはBright.comを買収した?

LinkedinがBright.comを買収した動機は、Linkedinのバイスプレジデントが明らかにしている。それは、Linkedinの世界最大のビジネスプロフェッショナルのプールとBright.comの世界最高精度のマッチングアルゴリズムを結びつけ、求職者には本人に最適な求職情報の提供を、リクルーターには募集ポジションに最適な人材を発見するための機会を提供することにある。

この世界観が実現されると、人材業界に大きな変化が訪れるだろう。
求職者が自分から転職を試みる場合、今まではネットの求人サイトや転職エージェントに頼ることが多かっただろう。求人サイトの情報を元に転職先を探しても、自分に合う企業がどこかというのは公開されている一面的な情報から得ることしかできなかった。転職エージェントを利用する場合も、その転職エージェントの情報量や判断力に依存していた。しかし、Bright ScoreがLinkedinのプラットフォームに搭載されることで、求職者はもっと良い条件の求人があるのではないか、もっと自分にあった企業があるのではないか、という終わることのない転職先企業の検索作業から開放されるだろう。企業にとっても、泥の中に篩を入れて砂金を探すような最適な求職者探しから開放され、採用コストの削減にもつながるだろう(ただし、Linkedin+Bright Scoreのサービスのコストが転職エージェントよりも安ければの話だが)。

■求人サービス市場への影響

求人サービス市場への影響を考えてみよう。

まず大きな影響を被るのは、上でも上げた求人情報サイトと転職エージェントだろう。
求人情報サイトは一面的な情報を提供することしかできていない。マッチングテクノロジーが発達し、人材市場でも活用されつつある米国では、単一的な求人情報を掲載するだけの求人情報サイト(Job Board)の存在感は相対的に低下してきている。実際、世界最大規模のJob BoardであるMonster.comも2013年度は2012年度よりも約10%売上を落とし、慌ててマッチングテクノロジーの獲得に注力している。LinkedinとBright Scoreの融合は、こうした純粋な求人情報サイトの地盤沈下を加速させることになるだろう。

転職エージェントもダイレクトな被害を受ける可能性が高い。転職エージェントの役割は、まさに求職者と求人情報をマッチさせることにあったが、Bright Scoreがその役割をリプレイスしていくことになるだろう。これもLinkedinという世界最大のプラットフォームとの融合によって加速することは間違いない。

私自身転職エージェントにお世話になって、満足の行く転職を経験することができ、優秀な転職エージェントのマッチング能力はとても有用だと感じている。求職者と面談することによって得られる言語・非言語、志向や意志や哲学といった情報からマッチングすることの精度は、そう簡単にテクノロジーが覆すことができるものではないと思う。それでもエージェントによる能力のバラ付きというネガティブもあるし、履歴書や経歴といった情報以上の求職者の情報を使ったマッチングテクノロジーが今後も磨かれていくことだろう。そうなると、転職エージェントという仕事が成り立たなくなる日も近いかもしれない。

■まとめ

米国の人材テクノロジーサービスのマーケットは日本よりも相当進んでいる。日本では未だに求人情報サイトどころか、フリーペーパーや新聞の折込チラシといった前時代的なメディアの存在感が非常に強い。これに対して米国では既に求人情報サイトすら時代遅れになりつつあり、代わりにテクノロジーによるマッチングのWebサービスに置き換わりつつあるのだ。

これは、米国における仕事の探し方が、求人情報はここに全部乗っているからさあここから探せ、というスタイルから転職エージェントが手間ひまかけてやっていなようなマッチングをWeb上でコンピューターがサクッとやってくれる時代に変わりつつあるということだ。

こうしたトレンドを踏まえると、大量の求職者予備軍と求人情報を掲載したい企業のプラットフォームであるLinkedinと、恐らく現時点で最高の求職マッチングテクノロジーを持っているであろうBright.comの組み合わせが、いかに大きな事件かが分かるだろう。
数年後には転職の仕方が今とは大きく変わっているかもしれない。
 

  

2014/02/04

不動産取引の重要事項説明ネット化のまとめと影響について考えてみた

不動産取引の重要事項説明ネット化

Webやテクノロジー系の仕事をしている人はついつい忘れがちになってしまうが、世の中まだまだネット化が進んでいない業界が多い。地方のひなびた温泉宿でも旅行サイトに掲載される時代になったが、未だにネットと縁がなく予約も電話でしか取らないなんて旅館が数えきれないほど存在している。

不動産業という世界は少し特殊だ。市場に出回る不動産はレインズという国の認定を受けたシステムにほとんどの物件が流通していて、どの不動産会社も一つのデータベースから日本中の物件を取り扱うことができる。さらに、アットホームやスーモといった民間のマッチングサイトも充実している。こうしたサイトを利用すれば転勤先がはるか遠い場所にあったとしても、自宅から賃貸物件を選ぶことができる。当たり前のサービスになっているが、よく考えれば非常に便利だ。

一方、いざ契約の段になると必ず不動産業者に訪れなければならないという、前時代的な流れも残る。不動産売買の取引はおろおか、賃貸契約でも対面で重要事項説明を受けて契約書にサインしなければならない。それどころか、契約の進め方にもよるが複数回不動産屋への訪問を必要とすることも多い。結果的に不動産取引には長い時間がかかるのが現状だ。

また、重要事項説明を対面で受けても不動産のプロではない我々が不動産のプロにしか説明できないようなことを口頭で言われてもその重要さは分からない。何も判断の基準が見いだせないまま、私たち素人は信用して契約書にサインせざるを得ないのだ。


■不動産業界に新たな兆し

物件のネット化は進んでいるものの、契約締結がひどくアナログな不動産業界。その不動産業界がより自由で効率的な取引が実現できるよう、さらなるIT化の議論が生まれてきている。

2013年12月20日のIT総合戦略本部の会合で、IT活用に向けた行動計画の中に非対面での重要事項説明と契約書の電磁的方法を進めていくことが盛り込まれた。国土交通省が2014年6月に中間とりまとめを行い、2014年中に結論を得る方針だ。 早ければ2015年にも完全オンラインで賃貸契約と不動産売買取引が完結できるようになるかもしれない。

12月20日の会合に先立ち、楽天の三木谷社長が代表を務める新経済連盟が2013年11月に政府のIT総合戦略本部分科会で関連法の変更や、行動計画を提案していた。薬品のオンライン販売では完全オンライン取引化に失敗した新経済連盟だが、不動産取引のオンライン化では是非ともうまくやって欲しい。

資料

■不動産取引完全オンライン化のメリット

不動産取引が完全にオンライン化され、無訪問で完結するようになったらどのようなメリットがあるだろうか。

現在の対面による重要事項説明と契約書交付の問題点は冒頭にも述べた3点に絞られるだろう。

1) 不動産会社を訪問する、あるいは訪問をしてもらうという手間
2) 契約締結までの時間
3) 口頭での重要事項説明では十分な検討なしに判断せざるを得ない状況

これらの問題は、新経済連盟が指摘している通りオンライン化で解決される可能性が高い。


1)の訪問の手間は不動産取引をする人と仲介する不動産会社双方にメリットがあるだろう。賃貸にしろ売買にしろ、取引主体者はフルタイムで働いている可能性が高い。すると自然と土日に重要事項説明を受けたい人が増えて、不動産会社も土日ばかりがピークになってしまう。不動産会社もピークに合わせて社員を用意しておく必要があるから、閑散期には人件費のムダが出てしまうだろう。オンライン化が実現すれば、利用者も平日に重要事項説明と契約締結がしやすくなるためピークが平準化されて、2)の問題も自然緩和されるだろう。

3)の問題も重要事項説明がオンラインで文書化されれば、自分で調べたりセカンドオピニオンを人に求めることで冷静によく考えた上で判断することができるようになる。もちろん、すべての人がこうした方法を望むわけではないだろうが、オプションとして文書による需要次項説明があればそれを選択する人も多いはずだ。

■不動産ビジネスに与えるインパクト

2015年に不動産の重要事項説明と契約書の電磁的交付が実現したら、どのような影響が不動産業界のビジネスにあるだろうか。

ポジティブサイド

ポジティブな側面についてまずは見てみよう。

第一に、不動産取引の活発化がポジティブな側面としてあげられる。特に不動産投資の活発化だ。
現状では投資家が不動産を購入するためには下見や重要事項説明、そして契約の締結のために、何度も不動産会社を訪れることになる。私自身が投資物件を購入した時も、不動産業界の慣習なのか何かとFace to Faceでの打ち合わせを要求され、何度も不動産会社やら喫茶店やらに足を運んだ覚えがある。

さすがに下見までオンラインで完結するようになるまでにはまだ時間がかかるだろうが、重要事項説明がオンライン化されればプロの投資家やいくつも不動産を購入している個人投資家は不動産事業者と合わずに売買を完結できることに大きなメリットを感じるだろう。また、対面説明の義務がなくなることによって、外国人投資家も購入しやすくなる。


第二に、この業界で新しいビジネスモデルが生まれてくることだろう。
イメージがつきやすいのは、不動産取引を全てネットで完結できるようなネット不動産仲介事業者だ。アットホームやスーモのような不動産情報検索サイトは、不動産会社への送客が今現在の主なキャッシュポイントだろう。だが、これらの事業者がそのまま自分たちで仲介を担当してくるケースも十分に考えられる。ネット化で場所の制限がなくなれば、宅建取引主任者を何人かセンターに集めてビデオチャットや電話などで効率的に全国の顧客に重要事項説明ができる。普通の不動産事業者よりもローコストでの運営が可能になるだろう。

また、法律的にOKなのかわからないが、宅建資格保有者を集めて重要事項説明のアウトソーサーのような新たなサービスが生まれるかもしれない。あるいは外国人投資家向けに、下見を代行するサービスや日本国内での実務を請け負い、本人たちは海外から一歩も出ずに日本の不動産購入を完結できるサービスも出てくるかもしれない。

いずれにせよ、新しい価値を提供するスタートアップやベンチャー企業が出てくる可能性は十分ある。

ネガティブサイド

ネガティブな側面も少なからず出てくることが予測される。

まず、不動産取り引きの仲介手数料に値下げ圧力がかかることになる。不動産売買における仲介取引手数料には、法律で明確に上限金額が定められている。定められているのは上限だけであるが、手数料は基本常に上限金額請求されるのが現状だ。だが、完全オンライン化取引で事業を効率化した新しい不動産事業者が、安い手数料を売りにビジネスを開始するかもしれない。すると、雪崩を打ったように追従する不動産会社が出てくる可能性が高い。

不動産仲介はレインズという誰でもアクセスできるデータベースがあるお陰で、差別化が難しいビジネスだ。不動産という商品そのものは、どの業者でもラインナップが同じ(≒レインズに掲載されている不動産)だから、商品自体を差別化することができない。かといって、仲介という行為そのものも差別化することは困難だ。中には投資家クラブみたいなものを組織して、顧客の囲い込みとリファレンスによる新規顧客の獲得を狙う事業者もある。

少し話がそれたが、商品で差別化できない不動産仲介事業者は、値下げ競争に巻き込まれる可能性が高いということだ。大きな影響を受けるのは、街の小さな不動産のような体力のない小規模な不動産事業者だろう。業務の効率化、合理化と集客力のある大手事業者による統廃合が進み、小規模な事業者は困難な状況に追い込まれるケースが多くなることが予想される。


ポジティブな面でもネガティブな面でも、重要事項説明のネット化と契約書の電磁的交付は小さくな影響を業界に与えるだろう。廃業に追い込まれるような企業も出てくるだろうが、総合的に見てメリットが勝るはずだ。是非ともオープン化、ネット化がどんどん進んで欲しいものだ。
 

  

2014/01/28

日時更新をやめる理由

このEveryday Biz Ideaというブログでは、毎日ビジネスに関するトピックをエントリーし続けてきたが(たまに翌日、翌々日に繰り越すこともあったけれど)、明日から不定期更新にすることを決めた。不定期とはいえ、週に1-2本のエントリーは維持するつもりだ。皆さんにとってはどうでもいい話だろうが、500日以上毎日続けてきた習慣を投げ出すのはなかなか勇気のいる決断だった。なので、この習慣をやめる理由について書いてみたい。

■書き切ることが目的になってしまう

このブログは、そもそも毎日書き続けるということを目的としていた。毎日書き続ける、書き続けるために考え続ける、という習慣を付けることがまず第一の目的としてあり、その次にエントリーの品質があった。この優先順位には結構まえから疑問を感じ始めていたのだが、せっかく付いた毎日書くという習慣をなかなか手放せなかったのだ。

だが、最近いよいよ書ききることが目的のブログ執筆に大きな違和感を覚えるようになった。毎日仕事から帰ってきて、習慣だからという理由で無理やり書くことを決めて書き続けていても、読む人にとって有益なエントリーを生み出すのは難しい。だからペースを落としてもっと有益な情報を出していきたいという結論に至った。

書ききることも重要だけど、目的は書き切ることだけにあらず。もっとビジネスに対する洞察力を高めて、有益な情報を提供したいのだ。

■クオリティを上げたい

クオリティを上げるためには1日で1つのトピックを書き上げるには、自分には時間が短い。毎日やらなければならないタスクとして各トピックを決めて、時間がないから構成も考えずに書き始めて却って苦労するというネガティブなスパイラある状態にあった。自分の専門分野のことだけを書いていればまだしも、ご覧の通りこのブログでは結構広い範囲のトピックを扱っている(つもりだ)。毎日ひとつエントリーを書くに値するネタを探し、執筆するには時間と実力が足りていない。

書き続けることに注力すべきか、エントリーの品質を上げるべきか考えた結果、一度エントリーの品質を上げることに注力しようという結果に考え至ったのだ。

■他の活動に時間を使いたい

最後のポイントは、ブログ以外の生産的活動にも注力をしたいという理由もあった。仕事が忙しくなってきたと同時に、個人的に勉強していることも面白くなってきたので、ただでさえ少ない可処分時間をもっとうまく使わねばという焦りが出てきた。普段の生活の中で何を削るか考えた結果、毎日ブログ執筆にかけている時間を削ることに思い至った。


というわけで、日時で更新しなくはなりますが、頻度は減らしても品質を上げていきたいと思いますので引き続きよろしくお願い致します。
 

  

2014/01/27

スマホがあらゆる家電のリモコンになる日

LGスマート家電

2014年1月のCES(世界的な家電見本市のイベント)でLGがLINEでコミュニケーションが取れるスマート冷蔵庫を発表した。


LINEやLG HomeChatというアプリを使えば冷蔵庫にビールが何本残っているか調べたり、冷蔵庫の中を写真に撮って送ることもできる。さらには、冷蔵庫だけでなく電子レンジやロボット型掃除機、洗濯機にも同様の機能を搭載し、チャットで情報取得や動作制御を行うことができる製品をリリースしている。

スマート家電という構想はSFやアニメの世界で、昔から期待されていた進化の形だが、その世界観がようやく実現されそうだ。全ての家電をスマホから操り、自宅に帰る前から電気をつけたり暖房で部屋を温めたり、料理を温めておいたり、という便利な世界がさほど遠くない未来に実現されそうだ。ただ、家電とチャットするという発想はUX的にイマイチで、もっと使いやすいインターフェースの専用アプリを作って欲しいものだが。


つい先日Googleが買収したNest Labsもスマートフォンをユーザー・エクスペリエンスの中心に据えたスマートセンサーだ。これもやはりハード自体の性能だけでなく、スマートフォンを連携してハード単独では提供できない新し付加価値を作り出す製品だ。Nest Labsの製品はさらにAIの自己学習機能を備え、自分で考えてユーザーにより最適な室温環境を提供する。

関連エントリー: 


以前のユビキタスという言葉がバズワードと化したとき、家電もスマート化するという期待が渦巻いたが、実際にはそうならなかった。スマートフォンという、それらを統合するリモコンが存在しなかったからだ。しかし、現在ではスマートフォンが完全に普及期を迎え、この問題が解決されたため、スマート家電も普及の下地ができていると言える。

最初に取り上げたLGの冷蔵庫にしろ、Nest Labsのサーモスタッドにしろ、生活を便利に変えていく誰もが望む未来の家電だ。日本でもこの流れに遅れないよう、国も一丸となって望んで欲しいものだ。スマート家電の流れに遅れまいとスマートエアコンを出そうとしたパナソニックに、50年前に作られた法令の違反という理由でスマホからの電源オン機能を無効化させるようなことはあってはならない。
 
  

2014/01/26

東南アジアで急速に進むモバイルファーストと転職・就職サーチ

東南アジア諸国では急速に進みつつあるのが、モバイルファーストのネット接続世代と職業の流動化だ。かつて米国でそうであったように、インドネシアやベトナムなどの東南アジア新興国では海外プレイヤー、国内起業家達によって次々とジョブボードやキャリアSNSが乱立してきている。そこにモバイルファーストでネットに接続する若い世代が増えることが、どのように東南アジア新興国の就職・転職マーケットに影響をおよぼすだろうか。

考えられるのは転職・就職サイトのモバイル化だ。
米国などの先進国でも転職・就職サイトのモバイル化は急ピッチで進んでいる。特に、パートタイム労働者や飲食サービス、販売サービスのような領域を主とするプレイヤーがモバイル化を推し進めている。そこそこ年齢が高く大学を出ているホワイトカラー職の人たちはPCやエージェントを使って転職先を探すのに対し、若年層や貧困層でパートタイム職を探す人たちは恐らくPCよりもモバイルでネットへ接続し、モバイルで仕事を探す可能性が高いからだ。

だが、東南アジアの新興国マーケットは少し異なるかもしれない。なぜなら、今までインターネットに接続することができなかった層に急速にネット化の波が広がっているが、彼らはエリート層でも貧困層でも、モバイルが最初のネット接続端末なのだ。彼らからすると調べ物をするのも、友達とチャットするのも、就職先を探すのも全てモバイルからになるだろう。なぜなら、それらのサービスを提供する企業側が大多数ユーザーのネット接続端末であるモバイルに最適化してくるからだ。

転職・就職サイトに限らず、東南アジアのユーザー向けのサービスはモバイルファーストのものが増えてくるだろう。東南アジアがマーケットの中心に近づくに従い、世界中でもモバイルファーストのサービスが今後増えてくるのかもしれない。
 

  

IBMはAI事業に復活をかける

IBMのWatson

IBMが低価格帯サーバ事業をレノボに23億ドルで売却することが決まった。2013年Q4の売上高は277億ドルで、そのうちハードウェア部門は43億ドル、売上高を率にすると15.5%にすぎない。サーバを含めたハードウェア部門はすでに何年も前からIBMの非中核ビジネスなので売却は妥当な考えだろう。

今、IBMは7四半期連続の減収に苦しんでいる。ハードウェア事業がシュリンクし続ける中、ソフトウェアやコンサルなどの基軸事業が伸びていないからだ。だが、その一方でAIに対する大きな先行投資を行っている。IBMはAI事業を次世代の基軸事業として考えているのだ。


AIとは人間の思考方法をシミュレートするテクノロジーのことで、コンピューターの処理スピードがいくら早くなっても克服することができなかった「ひらめき」のような人間的思考方法を再現し、かつ人間には遠く及ばない処理速度を活用して事業課題や社会課題を解決することを目的としている。

もっと具体的なレベルの話をすると、ウェブ広告事業でどのオーディエンスデータにどの広告をぶつけることが最もCVRを高めるか、人と人をつなぐマッチングビジネスではどの属性をもつ人同士をつなげれば最も効果が高いか、という課題があるが、現状はビッグデータを処理するのは機械だが、その結果を得てどの広告を誰に表示するか、誰と誰をマッチングするかを判断するのは人間であった。だが、AIが発展すれば、結果を評価して次にもっと良いCVRを出すためにはどうすべきかを考えて実行に移す、一連のプロセスをAIが全て自動化することになるだろう。

先日NTTデータがソフトウェアの開発を自動化してコストを下げるという計画がニュースに流れていたが、これも同じように人間が経験則で判断している部分をAIに行わせようという試みだろう。


IBMは何度も自分たちが押し広げてきたビジネスモデル拡大の果実と、そのマーケットの収縮による辛酸を舐めてきた企業だ。だが、いまでも一流IT企業として生き残っている事実は、その先を見る能力を物語っている。
今ふたたびAIマシンのWatsonを中心とした「Watson Group」事業を立ち上げ、AIの領域で復権しようとしている。
 
  

2014/01/25

自治体がベンチャー企業振興に参画する意味

最近ベンチャー企業、スタートアップ企業を振興しようと自治体の働きかけが増えているようだ。徳島でIターンベンチャーを支援する企画が結構前にテレビで取り上げられていたし、福岡は「スタートアップ都市・ふくおか」を宣言している。国外に目を向ければ、英国にもTech Cityという英国版シリコンバレーを作ろうという試みがある。西も東もシリコンバレーに続けとばかりに血気盛んだ。

自治体がベンチャー企業振興に参画することは意味があるのだろうか。
基本的に、行政がベンチャー企業振興のために直接支援できることは少ない。箱物を作るか税金を優遇するくらいだろう。スタートアップが求めているのは箱物でもなければ、初期の何年かは赤字が続くので税制優遇でもないだろう。直接的な資金注入はベンチャースピリットを妨害するかもしれない。

本質的に、シリコンバレーのようなスタートアップ企業の集積地は自然発生でしか生まれ得ないだろう。自然と固まっていたスタートアップ企業群があり、そこに優秀でリスクテイカーな人材が集まり、スタートアップを対象としたスタートアップやVCが集まり、コミュニティが強化されていく、というポジティブなスパイラルが生まれる。行政が主導でこのスパイラルを生み出すのは難しいが、このスパイラルを加速させることはできる。だから行政は地域のビジネスの兆しや偏りをよく調べ、ポジティブスパイラルを加速させることに徹するのが良いだろう。

バイオベンチャーやITベンチャーなど、ジャンルによって求める環境が異なるのだから、行政はスタートアップを顧客だと思ってそのニーズを良く把握することが重要だ。
 
  

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