2014/01/28

日時更新をやめる理由

このEveryday Biz Ideaというブログでは、毎日ビジネスに関するトピックをエントリーし続けてきたが(たまに翌日、翌々日に繰り越すこともあったけれど)、明日から不定期更新にすることを決めた。不定期とはいえ、週に1-2本のエントリーは維持するつもりだ。皆さんにとってはどうでもいい話だろうが、500日以上毎日続けてきた習慣を投げ出すのはなかなか勇気のいる決断だった。なので、この習慣をやめる理由について書いてみたい。

■書き切ることが目的になってしまう

このブログは、そもそも毎日書き続けるということを目的としていた。毎日書き続ける、書き続けるために考え続ける、という習慣を付けることがまず第一の目的としてあり、その次にエントリーの品質があった。この優先順位には結構まえから疑問を感じ始めていたのだが、せっかく付いた毎日書くという習慣をなかなか手放せなかったのだ。

だが、最近いよいよ書ききることが目的のブログ執筆に大きな違和感を覚えるようになった。毎日仕事から帰ってきて、習慣だからという理由で無理やり書くことを決めて書き続けていても、読む人にとって有益なエントリーを生み出すのは難しい。だからペースを落としてもっと有益な情報を出していきたいという結論に至った。

書ききることも重要だけど、目的は書き切ることだけにあらず。もっとビジネスに対する洞察力を高めて、有益な情報を提供したいのだ。

■クオリティを上げたい

クオリティを上げるためには1日で1つのトピックを書き上げるには、自分には時間が短い。毎日やらなければならないタスクとして各トピックを決めて、時間がないから構成も考えずに書き始めて却って苦労するというネガティブなスパイラある状態にあった。自分の専門分野のことだけを書いていればまだしも、ご覧の通りこのブログでは結構広い範囲のトピックを扱っている(つもりだ)。毎日ひとつエントリーを書くに値するネタを探し、執筆するには時間と実力が足りていない。

書き続けることに注力すべきか、エントリーの品質を上げるべきか考えた結果、一度エントリーの品質を上げることに注力しようという結果に考え至ったのだ。

■他の活動に時間を使いたい

最後のポイントは、ブログ以外の生産的活動にも注力をしたいという理由もあった。仕事が忙しくなってきたと同時に、個人的に勉強していることも面白くなってきたので、ただでさえ少ない可処分時間をもっとうまく使わねばという焦りが出てきた。普段の生活の中で何を削るか考えた結果、毎日ブログ執筆にかけている時間を削ることに思い至った。


というわけで、日時で更新しなくはなりますが、頻度は減らしても品質を上げていきたいと思いますので引き続きよろしくお願い致します。
 

  

2014/01/27

スマホがあらゆる家電のリモコンになる日

LGスマート家電

2014年1月のCES(世界的な家電見本市のイベント)でLGがLINEでコミュニケーションが取れるスマート冷蔵庫を発表した。


LINEやLG HomeChatというアプリを使えば冷蔵庫にビールが何本残っているか調べたり、冷蔵庫の中を写真に撮って送ることもできる。さらには、冷蔵庫だけでなく電子レンジやロボット型掃除機、洗濯機にも同様の機能を搭載し、チャットで情報取得や動作制御を行うことができる製品をリリースしている。

スマート家電という構想はSFやアニメの世界で、昔から期待されていた進化の形だが、その世界観がようやく実現されそうだ。全ての家電をスマホから操り、自宅に帰る前から電気をつけたり暖房で部屋を温めたり、料理を温めておいたり、という便利な世界がさほど遠くない未来に実現されそうだ。ただ、家電とチャットするという発想はUX的にイマイチで、もっと使いやすいインターフェースの専用アプリを作って欲しいものだが。


つい先日Googleが買収したNest Labsもスマートフォンをユーザー・エクスペリエンスの中心に据えたスマートセンサーだ。これもやはりハード自体の性能だけでなく、スマートフォンを連携してハード単独では提供できない新し付加価値を作り出す製品だ。Nest Labsの製品はさらにAIの自己学習機能を備え、自分で考えてユーザーにより最適な室温環境を提供する。

関連エントリー: 


以前のユビキタスという言葉がバズワードと化したとき、家電もスマート化するという期待が渦巻いたが、実際にはそうならなかった。スマートフォンという、それらを統合するリモコンが存在しなかったからだ。しかし、現在ではスマートフォンが完全に普及期を迎え、この問題が解決されたため、スマート家電も普及の下地ができていると言える。

最初に取り上げたLGの冷蔵庫にしろ、Nest Labsのサーモスタッドにしろ、生活を便利に変えていく誰もが望む未来の家電だ。日本でもこの流れに遅れないよう、国も一丸となって望んで欲しいものだ。スマート家電の流れに遅れまいとスマートエアコンを出そうとしたパナソニックに、50年前に作られた法令の違反という理由でスマホからの電源オン機能を無効化させるようなことはあってはならない。
 
  

2014/01/26

東南アジアで急速に進むモバイルファーストと転職・就職サーチ

東南アジア諸国では急速に進みつつあるのが、モバイルファーストのネット接続世代と職業の流動化だ。かつて米国でそうであったように、インドネシアやベトナムなどの東南アジア新興国では海外プレイヤー、国内起業家達によって次々とジョブボードやキャリアSNSが乱立してきている。そこにモバイルファーストでネットに接続する若い世代が増えることが、どのように東南アジア新興国の就職・転職マーケットに影響をおよぼすだろうか。

考えられるのは転職・就職サイトのモバイル化だ。
米国などの先進国でも転職・就職サイトのモバイル化は急ピッチで進んでいる。特に、パートタイム労働者や飲食サービス、販売サービスのような領域を主とするプレイヤーがモバイル化を推し進めている。そこそこ年齢が高く大学を出ているホワイトカラー職の人たちはPCやエージェントを使って転職先を探すのに対し、若年層や貧困層でパートタイム職を探す人たちは恐らくPCよりもモバイルでネットへ接続し、モバイルで仕事を探す可能性が高いからだ。

だが、東南アジアの新興国マーケットは少し異なるかもしれない。なぜなら、今までインターネットに接続することができなかった層に急速にネット化の波が広がっているが、彼らはエリート層でも貧困層でも、モバイルが最初のネット接続端末なのだ。彼らからすると調べ物をするのも、友達とチャットするのも、就職先を探すのも全てモバイルからになるだろう。なぜなら、それらのサービスを提供する企業側が大多数ユーザーのネット接続端末であるモバイルに最適化してくるからだ。

転職・就職サイトに限らず、東南アジアのユーザー向けのサービスはモバイルファーストのものが増えてくるだろう。東南アジアがマーケットの中心に近づくに従い、世界中でもモバイルファーストのサービスが今後増えてくるのかもしれない。
 

  

IBMはAI事業に復活をかける

IBMのWatson

IBMが低価格帯サーバ事業をレノボに23億ドルで売却することが決まった。2013年Q4の売上高は277億ドルで、そのうちハードウェア部門は43億ドル、売上高を率にすると15.5%にすぎない。サーバを含めたハードウェア部門はすでに何年も前からIBMの非中核ビジネスなので売却は妥当な考えだろう。

今、IBMは7四半期連続の減収に苦しんでいる。ハードウェア事業がシュリンクし続ける中、ソフトウェアやコンサルなどの基軸事業が伸びていないからだ。だが、その一方でAIに対する大きな先行投資を行っている。IBMはAI事業を次世代の基軸事業として考えているのだ。


AIとは人間の思考方法をシミュレートするテクノロジーのことで、コンピューターの処理スピードがいくら早くなっても克服することができなかった「ひらめき」のような人間的思考方法を再現し、かつ人間には遠く及ばない処理速度を活用して事業課題や社会課題を解決することを目的としている。

もっと具体的なレベルの話をすると、ウェブ広告事業でどのオーディエンスデータにどの広告をぶつけることが最もCVRを高めるか、人と人をつなぐマッチングビジネスではどの属性をもつ人同士をつなげれば最も効果が高いか、という課題があるが、現状はビッグデータを処理するのは機械だが、その結果を得てどの広告を誰に表示するか、誰と誰をマッチングするかを判断するのは人間であった。だが、AIが発展すれば、結果を評価して次にもっと良いCVRを出すためにはどうすべきかを考えて実行に移す、一連のプロセスをAIが全て自動化することになるだろう。

先日NTTデータがソフトウェアの開発を自動化してコストを下げるという計画がニュースに流れていたが、これも同じように人間が経験則で判断している部分をAIに行わせようという試みだろう。


IBMは何度も自分たちが押し広げてきたビジネスモデル拡大の果実と、そのマーケットの収縮による辛酸を舐めてきた企業だ。だが、いまでも一流IT企業として生き残っている事実は、その先を見る能力を物語っている。
今ふたたびAIマシンのWatsonを中心とした「Watson Group」事業を立ち上げ、AIの領域で復権しようとしている。
 
  

2014/01/25

自治体がベンチャー企業振興に参画する意味

最近ベンチャー企業、スタートアップ企業を振興しようと自治体の働きかけが増えているようだ。徳島でIターンベンチャーを支援する企画が結構前にテレビで取り上げられていたし、福岡は「スタートアップ都市・ふくおか」を宣言している。国外に目を向ければ、英国にもTech Cityという英国版シリコンバレーを作ろうという試みがある。西も東もシリコンバレーに続けとばかりに血気盛んだ。

自治体がベンチャー企業振興に参画することは意味があるのだろうか。
基本的に、行政がベンチャー企業振興のために直接支援できることは少ない。箱物を作るか税金を優遇するくらいだろう。スタートアップが求めているのは箱物でもなければ、初期の何年かは赤字が続くので税制優遇でもないだろう。直接的な資金注入はベンチャースピリットを妨害するかもしれない。

本質的に、シリコンバレーのようなスタートアップ企業の集積地は自然発生でしか生まれ得ないだろう。自然と固まっていたスタートアップ企業群があり、そこに優秀でリスクテイカーな人材が集まり、スタートアップを対象としたスタートアップやVCが集まり、コミュニティが強化されていく、というポジティブなスパイラルが生まれる。行政が主導でこのスパイラルを生み出すのは難しいが、このスパイラルを加速させることはできる。だから行政は地域のビジネスの兆しや偏りをよく調べ、ポジティブスパイラルを加速させることに徹するのが良いだろう。

バイオベンチャーやITベンチャーなど、ジャンルによって求める環境が異なるのだから、行政はスタートアップを顧客だと思ってそのニーズを良く把握することが重要だ。
 
  

2014/01/24

クラウドソーシングのランサーズがビジネス向けサービスを開始した

ランサーズ

クラウドソーシングプラットフォームを提供するランサーズは、Lancers for Businessというエンタープライズ向けのサービスを開始した。

もちろんこれまでも企業がランサーズを利用してフリーのデザイナーやウェブサイトデベロッパーへ発注することはあったが、あくまでも企業対個人の契約になっていた。このため、中小企業やスタートアップ企業を除いては、個人とプロジェクト単位で業務委託を発注するのが難しい企業が多かった。
Lancers for Businessでは、どうやらランサーズが顧客企業向けの窓口として業務を受託し、フリーランサー達が実働するというビジネスモデルになっている。この仕組のおかげで大手企業もだいぶ利用しやすくなっただろう。企業はどうしても契約の相手方に品質保証や損害賠償規定を求める必要があるから、相手が個人ではやりにくいという課題に対処したかたちだ。


ランサーズ含め、クラウドソーシング業界は順調に進化を遂げてきているようだ。労働力をクラウドソースするというビジネスモデルは、そもそも顧客が企業であることを前提としている (個人が個人に発注するという世界観も思い描いているかもしれないが、それはもっと先の未来だ)。しかし、これまでの企業が個人と契約するという仕組みは、どうしても普及を妨げる問題になっていた。

また、ちょっとした仕事を一人のフリーランサーにアウトソースするならまだしも、短期間に大規模の労働力が欲しいというクラウドソーシングの本質的な価値に対する要求に、クラウドソーシングは応えられていなかった。突発的に100人の労働力が必要なときに、クラウドソーシングでは一々個人と契約しなければならない。それならば企業は当たり前のように業務委託を選ぶ。Lancers for Businessはこの契約の煩雑さというクラウドソーシングの弱点も克服した。逆に言うと、受託型事業者との違いはソーシングの方法の違いだけになったと言っても良い。

コンプライアンスの問題やフリーランサーとランサーズの責任分解点をどうするのかなど、多くの課題があっただろう。だが、それを乗り越えて普及の妨げになっていた一番の問題を解消できたのは大きい。
2014年はクラウドソーシングは大きく成長する年になるのではないだろうか。そして、ITエンジニアの特定派遣やウェブデザインやデザインの受託ビジネスをしている企業は競争環境が熾烈になることが免れない。
 
  

2014/01/23

中国のネット企業業界の特殊性はしばらくプラスに働く

中国のネット企業は、時価総額でもはや日本企業が太刀打ちできないほど大きい。ネット専業なのにSNSのTencentは12兆円、検索大手の百度は6兆円、EC大手の阿里巴巴も未上場だが13兆円ほどの価値があるとも言われている。日本ではテレコム、モバイル含めたソフトバンクグループがようやく時価総額10兆円、ネット専業で言えばYahoo Japanがやっとこさの3.7兆円だ。


この規模の差はなんだろうか。マーケットの大きさがあるのは間違いない。日本の10倍の人口がいる中国では、モバイルネットワークやインターネットの普及率が1/4でもユーザー数が2.5倍いることになる。これだけ圧倒的な差があれば、時価総額が膨れ上がるのも理解できる。

しかし、それだけでなく欧米で普及し始めているサービスをすぐにコピーして中国内で展開するというモデルが一定の評価を受けているように思われる。以前も紹介したが、Uberライクのサービスがすぐに立ち上がり、そしてSNS大手のTencentがWeChatそれを搭載してスケールさせるといった、スピード感のある動きが顕著だ。こうした中国のネット企業は明らかに良い評価を得ていて、米国ファーストティアVCのセコイアが中国スタートアップに投資するケースも出てきている。果たして日本のスタートアップがセコイアから投資を受けたことがあるだろうか?パクリパクリとは言われているが、少なくともその経済的インパクトと躊躇のないパクリっぷりは評価を得ている。


こうした背景もあり、中国のネット系スタートアップ企業は資金が潤沢であり、小規模スタートアップの買収が頻繁に行われているようだ。これはとても健全な経済活動だ。MAを積極的に手がける大企業があれば、MAによるエグジットを目標(あるいは可能性の一つ)としたスタートアップ企業が生まれる土壌になり、こうした土壌が育つと中国ベンチャー企業の技術力もビジネス力も磨かれていくことになるだろう。今はパクリと言われていても、数年後にはかつての安かろう悪かろうだった日本の製造業が高品質の代名詞になったように、中国ネット企業を見る目も変わってくるのではないだろうか。
 
  

2014/01/21

Blackphoneは売れる。これでなければならない、という「必然性」があるから

Blackphone

Blackphoneという世界で最もプライバシーの強固なスマートフォンがまもなく発売される。BlackphoneはSilent Circle社とGeeksphone社の共同開発製品で、今年の2月24日にスペインのバルセロナで開催されるMobile World Congressで正式に発表され、予約販売を開始する。


この製品イメージからして物々しいBlackphoneは、Androidをベースにプライバシー機能を強化した「Private OS」が搭載されている。説明によると、VPN接続によりBlackphoneの利用を秘匿し、セキュアな電話、テキストメッセージ、ファイル保存、ビデオチャット、ウェブブラウジングなどができるようだ。


現時点ではBlackphoneの秘匿性やセキュリティの堅牢さはまだまだ未知数だ。だが、発売後すぐに多くのテック系サイトで取り上げられ、その検証が行われるだろう。その結果大したことない製品であることが露呈すればすぐに皆興味を失うだろう。しかし売り文句の通りの性能を秘めているのだとすれば、爆発的なヒットをするのではないかと思う。スマートフォンを導入したいけどセキュリティが気になっていた企業は間違いなく興味を示すだろうし、スマートフォンでバンキングや決済を活用するテクノロジー好き、スマートフォンが欲しいけどセキュリティが怖くてなかなか踏み切れない個人など、大きな反響を得るはずだ。


なぜそれだけBlackphoneに期待するかというと、コンセプトが超明確だからだ。売れる商品にはどうしてそれが欲しいのか、という明確な理由が存在している。
スマートフォン単体で見れば圧倒的に大ヒットしているiPhone。なぜAndroidではなくiPhoneを使い続けるのかと聞かれれば、デザインが良いから、とかAndriodスマートフォンみたいに安っぽさがないから、とかインタフェースの動作があたかも脳に直結しているように感じるから、とかiPhoneであることに必然性を感じてを利用している人が多い。OSシェアで言えばAndroidのほうがシェアが高いが、単体製品でiPhoneに比肩できる製品が見当たらないのはiPhoneのようにその製品である必然性を持つ製品がないからだ。

これまでもTaizenやFirefox OSのように、iOSとAndroidのモバイル支配に一石を投じようという商品はあったが、決してその野望は叶わなかった。iOSとAndroidに慣れた人たちが、新しいOSに乗り換えるインセンティブが何もなかったからだ。

そして、このBlackphoneにはその必然性がある。圧倒的にセキュリティが高いスマートフォンというのは誰もが望んでいて、何故か今まで決して作られることがなかった。今からそのリリースと反響が楽しみな製品だ。
 
 

2014/01/19

Amazonが購入前に出荷を開始するという異次元の事態に

米国Amazonが注文前に商品を出荷するサービスを検討中との情報が流れた。釣りのようなタイトルだが、倉庫で人が棚に商品を探しにい行く従来のピッキング作業を逆転して、動く棚がピッキング作業員に商品を持ってくるというイノベーションを起こしたAmazonだ。あながち夢物語とも言い切れない。

実際に記事を読んでみると、やはりAmazonはどこまでイノベーションを続けるのかと驚かざるをえない内容だった。



私は購入ボタンをクリックする前からAmazonが購入者に配送を開始するのか、というSF映画のようなことを想像していたがそうではないらしい。Amazonがやろうとしていることは、利用者が購入する前に別のハブにある在庫を最寄りのハブへ動かすという仕組みだ。ある商品を一定時間商品説明を閲覧してカートに入れたら購入する確率が高いので、その商品の在庫をその利用者の最寄りのハブに移動させる、という具合だ。要はAmazonのサイトにおけるユーザーの全行動をビッグデータとして分析し、購入に紐づくと思われる行動を洗い出し、その行動をユーザーが見せたら商品在庫を動かすのだ。ある意味、オーディエンスデータから最適な広告をサイトに挿入するウェブ広告の仕組みに近い。

なぜこのような仕組みをAmazonが必要としているかと言うと、米国のような広大な国ではいくつもの倉庫が必要になる。Amazonのように配送スピードにこだわる企業は、より狭いエリアを担当するハブと呼ばれる倉庫を置き、短時間で配送できるエリアを増やす。だが、単純にハブを物理的に増やせばすむ簡単な問題ではない。ハブを分散させればさせるほど全体の在庫の数が増えていくことになるし、かといって在庫を減らせば減らすほど購入者近くのハブで在庫切れを起こし、結局遠くのハブから商品在庫を移動させることになり、配送時間の短縮とコスト削減は実現されない。

購買データから各ハブにおける在庫を推測し最適化する取り組みはAmazonも手を入れていることだろう。これからは購買データではなく、購買以前の行動データに一歩遡ってデータを分析し、在庫を最適化するというのが今回の取り組みだ。

この仕組みは予測の精度が致命的に重要だが、購買前の行動はサイトのデザインなどもろもろの理由で変わっていくことも考えられるため非常に難しいだろう。だが、Amazonならやりきってしまうのではないかという期待がある。
そしてAmazonはさらにECの世界で他社をよせつけず独走していくのではないだろうか。


2014/01/18

アメリカは労働生産性が高いというけれど

各国労働生産性

日本は労働生産性が低いと言われ続けている。GDPの規模に比して労働人口一人当たりのGDPが低いというのだ。欧米諸国と同じ先進国でありながら、生産効率が悪いという論調がよく新聞に踊っている。

だが、生産効率性で3位のアメリカ人と仕事をしている私の経験からすると、そんなシンプルな話ではない。一社一社、一人ひとりのビジネスパーソンというミクロ視点でみると、少し違うものが見えてくる。

実際の労働生産性

労働生産性を研究している公益財団法人日本生産本部によると、2012年における日本の労働生産は7.2万USドルで世界第21位だ。これに対して1位はルクセンブルクの12.8万USドル、2位のノルウェーが12.7万USドル、そして3位がアメリカで11.3万USドルだ。日本は1位、2位に対して約1.8倍、3位のアメリカに対して1.5倍差を付けられている。
時間あたりの生産性に直すと、1位がノルウェーになり86.7USドル、アメリカは4位に後退し64.1USドル、日本は20位で40.1USドルだ。ノルウェーが日本やアメリカと比べて働く時間が短く、労働効率が良いことが分かる。

ちなみに、労働生産性の求め方を簡単に解説しておくと、各国のGDPを購買力平価で換算し、就業者数で割ったものが労働生産性だ。国民一人当たりがどれだけ1年間にGDPを生み出しているかを求めた数字だ。そしてその数字を一人あたりの平均労働時間で割り戻すと時間あたりの労働生産性を求めることができる。


日本とアメリカの生産性の違い

本題の日本と欧米の労働生産性の話についてだ。私はアメリカのパートナー会社と一緒に仕事をしているのだが、確かに仕事のスピードは早い。例えば、契約でなかなか担当者同士で話がまとまらないときは、すぐにCEOや意思決定者が同席して電話会議を行い、その場その場で意思決定をしていく。日本の企業のように、会議を「次回までに確認しておくことのリスト作り」に利用することはない。アメリカのビジネスマンからしたら、何人も雁首揃えて会議に臨みながらそこでは何も決められず、何もかも持ち帰って確認します、という日本式の会議の進め方に大きな違和感を感じることだろう。

じゃあ、やはりアメリカ人はビジネスにおいてすべての面で日本人よりも生産性が高いのかと言われると、決してそんなことはない。業界の因習なのかは分からないが、私が相手をしているテック系のベンチャー企業は日本の企業にいる私からすると、非常に仕事が雑だ。システムの変更点や改修点をディスカッションするとき、アメリカ人は即座に電話会議を開いて仕様を詰めていくという方法を好む。確かに話は早い。だが、その決めた仕様はロクにドキュメント化されずに作業に入る。ドキュメント化とか仕様を文書に落とすということをしないのだから完成までのスピードは早い。だが、細部に関してはドキュメント化されないことがアダになり、間違った修正がなされたり、そもそも忘れられていたり、デグレ(正しく稼働していた部分が別の部分の修正により新たなバグが出てしまう)したりすることが本当によくある。SnapchatやPointと大量の個人情報流出事件はこのようなスピード感を求めるあまり等閑になった部分から火が吹き出したのだろうと思う。


すぐに電話会議、その場で決める、というスタイルは大いに日本人がアメリカ人から学ぶべきものだ。だが、アメリカ人はドキュメンテーションや細かいチェック作業を学ぶべきだ。細かなケアができるのは日本人の特殊性であり、それが原因で生産性が低いのは事実だと思うが、一方でクールジャパンと呼ばれるような他の国にはないエキゾチックなカルチャーを形成する要因となっているのではないだろうか。

断っておくと、私がビジネス経験のある相手はアメリカのテクノロジー系のせいぜい設立10年未満のスタートアップ企業に偏っている。大手や金融といった全く異なるセグメントのアメリカ人は全く違う仕事文化を持っているであろう。逆に自分が大企業のホワイトカラーじゃなくて地域の中小企業の人間だったら、もっとアメリカ人ビジネスパーソンに彼岸の差を感じたかもしれない。そんな一個人の感想であることを断っておきたい。
 
  

古い業界でもイノベーションを量産し続ける日本交通

日本交通はタクシー業界のなかで異質な光を放っている。タクシー業界という古くて変化のない業界にあって、元マッキンゼーの川鍋社長は次々と精彩を放つ新しいサービスを投入している。規制に守られ、揺さぶられ、受け身であることに慣れきった業界は、川鍋社長にとっては改善点という宝の山のように見えるのだろう。

関連エントリー:

そんな日本交通は、子を持つ親向けの子供送迎サービスであるキッズタクシーで、法人マーケットの開拓を開始した。

日経MJ 2014/1/15 p.9ーーーーーーーーーーー
タクシー大手の日本交通(東京・北)は子供の送迎サービス「キッズタクシー」で法人顧客を開拓する。これまでは個人客から申し込みを受けていた。保育サービス事業者や学習塾など法人と契約することでまとまった人数の利用が見込める。 (中略) 学研グループの学研塾ホールディングス(東京・品川)と市進ホールディングスが共同出資で設立した幼児教育の新会社「GIビレッジ」(東京・港)とこのほど法人契約した。 (中略) 子供を預ける保護者は共働きが多いため、送迎サービスのニーズは高いという。保護者が負担する費用は片道750円。「特定の運転手に責任を持って送り届けてもらえる安心感がある」(GIビレッジ)。幼稚園や小学校から施設まで送迎するほか、子供が自宅に帰宅する際も対応する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

日本交通は、これまで業界に先駆けてキッズタクシーという子を持つ親向けのサービスを提供していた。親が登録していれば塾の送り迎えに子供だけでタクシーに乗車でき、支払い方法も後払いを用意して子供に現金を持たせることを防ぐことができるという、親心に配慮したサービスだ。

GIビレッジとの提携前は、エンドユーザーである小さな子を持つ親に対して直接アプローチする方法を取っていた。だが点で顧客を抑えに行くより、利用者(Consuming Unit = 実際のサービス利用者)が多く集まる塾と協業し、利用決定者 (Decision Making Unit = サービス利用を決定する人)である親を面でおさえようという戦略だ。


日本交通はUberが国内に参入してくる2年も前から、国内でモバイルから配車できる仕組みを実現した。ビジネス戦略を分析する上で、MBAの恰好のケーススタディとなるイノベーションに優れた企業ではないだろうか。
 
  

2014/01/17

モバイルネイティブが殺すワールドワイドウェブ

モバイルネイティブ世代が、http://www.〜に慣れ親しんだ我々インターネット世代を駆逐する。そんなコラムを書いたwired.jpの記事が面白い。


この記事によると、生まれて初めて接するデバイスがスマートフォンやタブレットという世代が増えると、今の20代以降が慣れ親しんできたブラウザとwww (ワールドワイドウェブ)の文化が死ぬと述べている。なぜなら、スマートフォンでは用途ごとにアプリが作られ、その用途に特化したUXが実装される。するとユーザーはブラウザという枠からHTMLで記述されたWebサイトを閲覧するという経験をほとんどしなくなるだろう。

特定用途のために作られたアプリはブラウザよりもUXに優れているのは間違いない。どんな目的にでも使えるブラウザは汎用性が高いが、器用貧乏とも言える。一時期HTML5によるアプリ作りがもてはやされたが、ユーザー体験の低さから、Facebookがそうしたようにネイティブアプリに回帰してきている。今後もモバイルネイティブ世代はブラウザからどんどん離れていくだろう。また、PCに触れる経験も少なく、モバイルで完結という世界観は今後も進むだろう。

それを証明するかのように今年のPC出荷台数は対前年比10%マイナスだ。全世界的に景気の回復が見られたというにもかかわらずだ。一方で先進国でも途上国でも、生まれて初めてのウェブ体験がモバイルという人が今後増え続けることが確実だ。


インターネットにブラウザからアクセスする世代と、モバイルあぷりからアクセスする世代では、そのインターネットに対する世界観の違いは大きく異なるものであることは創造に難くない。

例えば企業ブランディング。ほとんどの企業のブランディングではwww(検索、ニュース、プレスリリース、ブログなど)などから自社ブログやSNSなどのオウンドメディアにユーザーを誘導するように作られている。もしワールドワイドウェブが存在しなくなったとしたら、いまデザインされているユーザーフローは全く無効になってしまう。いかにニュースや検索エンジンから自社サイトに訪れてもらうかというデザインから、いかにモバイル広告やSNSの広告から自社のアプリをダウンロードしてもらうか、というデザインに変更を要求される。

こうした変更を要求されるのは、広くあまねくtoB、toCのビジネスが対象になるだろう。どのサイトも検索やニュースメディアといったwwwからの流入をあてにしているからだ。


ワールドワイドウェブがそのものがなくなるということはほぼありえないことだ。だが、それは仕組としてはなくならないという意味で、影響力としてはどんどん小さい存在になりかねない。
 

  

2014/01/16

Googleが32億ドルで買収したNest Labsとは何者なのか

Nest ProtectNest Thermostat

日本のニュースではBeam社を1.6兆円で買収したサントリーのニュースで目立たなかったが、スタートアップ界隈ではGoogleによるキャッシュ32億ドルでのNest Labs社買収が大いに話題になっている。何しろモトローラ買収の125億ドルに次ぐ規模である、とかiPodの生みの親であるCEOがGoogleに買収される、とかハードウェアからサービスという新しいスタートアップの潮流が具現化した案件だとか、いろいろな話題に事欠かないからだ。



実は以前シリコンバレーのスタートアップに関するセミナーに参加した時に耳にしていた企業だが、まさかこれほど話題になり、32億ドルという莫大な金額でエグジットするとは思っても見なかった。ハードウェアスタートアップ恐るべしだ。

参考エントリー:


さて、このNest Labsだが、どうしてまだ創立4年を迎えていない2012年時点で120名程度の規模の企業が32億ドル(≒3200億円)という巨額のエグジットを迎えたのか興味を持って調べてみた。

結論から言うと、プロダクトをどれだけ売り上げているだとか、合計いくらファンドレイズしたとか、詳細がどうにもつかめない企業だ。だが少なくともNestの$249のサーモスタット(エアコンのリモコンみたいなもの)はAmazon.comで1822カスタマーレビューを集めて星4つをキープする人気商品である。


Nest Labsが特異な点は創業からの時間の短さもそうだが、プロダクトがハードウェアで、かつ2製品だけのプロダクトラインナップというシンプル極まりないプロダクトラインだ。サーモスタットと煙探知機。言葉だけ見るとなんとも興味のそそられないコモディティだが、画像を見ていただければいかに優れたデザインかが直ぐにわかる。しかも、優れている点はデザインだけではない。

このサーモスタットにはOSとラーニングシステムが搭載され、ユーザーによる温度の設定を記憶し、適切な時間に適切な温度を自動設定するといったような機能を持っている。しかも自己学習して勝手に実行するというのだ。クールなデザインだけが売りなわけではない。また、サーモスタットも煙探知機もネットワークに接続され、スマートフォンで遠隔地から操作したり、逆に室内に異常がないかモニターすることができる。ネットワークに接続されていることを活かして、デバイスプログラムの更新を適用することまでできるのだ。

結構すごいものなので、ぜひプロダクト紹介ムービーを見てもらいたい。




Nestの製品はKickstarterやIndieGoGoで注目を集めるハードウェアスタートアップの代表格だ。クールなだけではない、「ハードからサービスへ」という最近の新しいハードウェアスタートアップの走りと言える存在だ。今後もハード&サービス+モバイルという組み合わせでNestに続くスタートアップが出てくるだろう。そしてGoogleやAppleのような、大きなトレンドを作る企業による買収劇がこれからもスタートアップ界隈のメディアを賑わせるはずだ。
 
  

2014/01/15

相変わらず新しいもの好きのよしもとと、クラウドソーシング業界のコラボ


よしもとクリエーティブ・エージェンシー(YCA)がまた新しいテクノロジーとのコラボレーションの動きを見せた。今回はクラウド上で仕事をしたい人と仕事を発注したい人を結びつけるクラウドソーシングがその舞台だ。
YCAはテクノロジー業界とのコラボレーションに積極的で、この前もYoutubeのマルチチャンネルネットワークを活用した試みを始めたばかりだ。

参考エントリー:

今回YCAはクラウドソーシングプラットフォームを提供するクラウドワークスが組み、「クリコン」というクリエイター向けクラウドソーシングの運営を始める。この新しいクラウドソーシングプラットフォームでは、年間1万回を超える(!)お笑いライブを行っているよしもとがロゴ作成やポスターのデザインなどを発注する。このサイトに登録するクリエイター達は、自分でやってみたい発注を発見したら受託金額を申し入れるか、コンペ形式で作品を投稿し、仕事を受注する。

クリエイター達は仕事の幅を広げる機会になるし、クラウドワークスにとってはよしもととのコラボにより認知度を上げたりユーザーを集める良いプロモーションになるだろう。だが、よしもとが最も恩恵を受けているのではないだろうか。年間1万回を超えるお笑いライブのチラシやポスターなどのデザイン費用は馬鹿にならなかったはずだが、クラウドソーシングにより大きくコストを下げられたのではないか。また、Youtube上でのOmOの開設もそうだが、よしもとはお笑いに限らないもっと大きな意味でのエンターテイメント企業になろうとしている。一人ひとりのクリエイターの実力を見ることができるクラウドソーシングプラットフォームを活用し、新しい才能を獲得してそんな変革期に備えようとしているのではないだろうか。

エンターテイメント業界やクリエイティブな仕事にかぎらず、実際に仕事を発注してその実力を確かめ、それから初めてリクルーティングするという使われ方が将来クラウドソーシングには訪れるのではないかと思う。本人の人となり、そして仕事の実力を知っての採用ができるのだから失敗が少ない。クラウドソーシングベンダーの中にも、そういったビジネスモデルに舵を切っていくところも出てくるのではないだろうか。


人材業界界隈に身をおく者として国内のクラウドソーシングは気にかけているが、どうもランサーズよりもクラウドワークスのほうが最近コラボレーションやプレスによるパブリシティが活発な印象がある。パブリシティの活発さイコール企業の強さに直結するというわけではないが、クラウドソーシングが生粋のマッチングビジネスであることを考えると、集客の強さ、ひいてはプラットフォームの強さに響いてくるだろう。
 

  

2014/01/14

TencentがWeChatでUber的サービスを開始し、9日間で10万回配車を達成

Didi Dache
Tech in Asiaより
Tencentはアジア最大のネットサービス企業だ。中国人と知りあえば、ほとんどの人がTencentの提供するSNS&IMサービスであるQQやWeChatを利用していることに驚くだろう。日本人でも私を含めとりあえずアプリを入れている人も少なくないかもしれない。Wikipediaによると、Tencentは中国のネット人口が4億人程度とされているのに2009年時点でQQアカウント数が約10億と公称したり、ウィルスソフトを提供する会社にスパムやウィルス扱いされたりと、規模がデカイだけに様々な話題が取り沙汰されている企業だ。

そのTencentがスマホ向けに提供しているIMアプリのWeChat(微信)はLINEと並びアジア市場で存在感を高めているが、Uber的なタクシー配車サービスが実装された(参考: In China you can now hail a taxi and pay the driver on WeChat(Tech in Asia))。元々はDidi Dacheという中国のスタートアップがUberをオマージュ(良く言えば)したサービスを展開していたのだが、そのDidi DacheへTencentが熱心に投資していた。そして今回WeChatにDidi Dacheのサービスを実装させることに成功。その結果はというと、9日間で10万回の配車を実現したのだ。既にこのサービスにサインアップしたユーザーは20万人を超え、ドライバーの登録者数も35万人にのぼるとされている。


この事例一つを見ても如実に現れているが、アジア最大とは言えどTencentを始めとする中国のネットサービスはまだ世界に発信していくような新しいサービスを創造できていない。だが、逆に世界、特にシリコンバレーを始めとする欧米で普及しているサービスは、すぐに類似サービスを提供するスタートアップが立ち上がってくる印象がある。スタートアップ側のパクリっぷりも迷いがなく、米国で成功しそうなサービスはまだ確証が得られずともすぐにそのまま中国国内のスタートアップによって国内マーケットに投入される。そして、そのサービスを取り込むTencentのような大手ネットサービス企業のスピード感もGoogleやAppleのような米国大手テック企業を超えてきているように感じる。

これは非常に大きな脅威と言えるだろう。中国のネット業界が模倣を繰り返すことで下地を身に付け、徐々に存在感を増してくる。Tencentは昔はただICQとFacebookとTwitterを模倣し、中国国内で初めてのサービスだったためユーザーを獲得した(これが重要だし難しいことだけれど)にすぎなかった。だが、今となってはそのプラットフォームにレバレッジをかけて有効活用する方法をGoogleやFacebook以上に身に付けているように見える。

こうした中国の動きと見比べると、やはり日本のネットサービスマーケットは霞んで見えてしまう。膨大なユーザーベースにレバレッジをかけて新しいサービスをスケールしていくことに熟達しているのは、日本では唯一ソフトバンクの孫さんくらいだろうか。スタートアップのみならず、スタートアップを含めたエコシステムの構築を日本は急がなければならない。

2014/01/13

ファンを3万人減らすバーガーキングのプロモーション

バーガーキングがノルウェーで斬新なFacebookキャンペーンを実施した。その名も「Whopper Sallout(ワッパーの裏切り者)」で、ファンの忠誠心を試し、本当のファンではないのに「いいね!」をしている人を永久に追放するという思い切ったプロモーションだ。

バーガーキングは自社のFacebookページでファンに対し、「あなたは真のファンですか」と「あなたは裏切り者ですか」という問いかけを行い、裏切り者を選択したファンはビッグマックの無料引換券を渡す代わりに永久にFacebookページから追放されるという思い切ったキャンペーンだ。

バーガーキングのFacebookプロモーション
adgang.jpより

二番手だからこそできるプロモーション


二番手には強い個性が必要だ。ハンバーガーの業界で言えば、ナンバーワンのマクドナルドは安い以外に特に特色はないが、モスバーガーは味にこだわっているし、バーガーキングは明らかにバーガーがデカイ。そういった特徴がなければ二番手以降が自社のポジションを確保することは難しい。

そして今回のバーガーキングのようなプロモーションは、二番手以降が自社の特徴を明らかにして顧客とコミュニケーションするための重要な場だ。強い個性を持つことに成功したら、次にその個性を良しとする人達にコミュニケートしなければならない。そういう意味ではバーガーキングは大胆にFacebookのファンを減らしたが、結果そのバーガーキングの特徴を愛してやまないコアなファンたちを選別し、さらに忠誠心を高めることに成功した。残ったコアなファンたちは、今後もバーガーキングの忠実なファンであり続けるだろう。

二番手以降が圧倒的な個性を磨くには、コアなファンが必要だ。一番手はそのジャンルの商品の代名詞となっているので、コアなファンよりも一般的な消費者が多い。例えばマクドナルドを考えてみると、私自身、その他大勢の人達も、ハンバーガーを食べたいと思ったらなんとなくマクドナルドを選ぶ。心理学用語で利用可能ヒューリスティックというが、ハンバーガーと言えばナンバーワンのマクドナルドを想起しやすいため、特にこだわりがなければマクドナルドへ行くのだ。二番手以降は、こうしたなんとなくハンバーガーを食べたいだけの消費者層を後に回し、コアなファンに何度も再訪してもらう戦略を立てるべきなのだ。





2014/01/12

Facebook Wi-Fiは三方良し

Facebook Wi-Fi
ASCII.jpより
訪日外国人向けの観光インフォメーションセンターであるTIC東京が、訪問客がFacebookでその施設にチェックインすればWi-Fiが無料で利用できるFacebook Wi-Fiを導入した。

参考: 

TIC東京に訪れた外国人客は、その場でFacebookからTIC Tokyoにチェックインすることで施設内のFacebook Wi-Fiを無料で利用することができるようになる。空港でモバイルルーターを契約することもできるが、結構な値段なのでもっと気軽にWi-Fiが使えたらな、というニーズを持つ外国人は少なくないだろう。私も海外に行くとまず空港でフリーのWi-Fiを探し、ネットで移動手段なんかを検索することがよくある。

仕組みとしては、チェックイン毎か月額固定のプロモーション費用を支払う契約をFacebookと交わし、FacebookがWi-Fiサービスをその施設に開放するというビジネスモデルだろう。契約した施設はお客のチェックインによってFacebook上で話題になる機会が増え、FacebookはユーザーのFacebook利用時間を増やすことができ、ユーザーはチェックインするだけでWi-Fiが利用できるという、三方良しのアイディアだ。


最近ではカフェやファミレスでWi-Fiを引くことが多いが、有料サービスであることが大半でフリーで使える仕組みはなかなかないものだ。Facebook Wi-Fiは店のプロモーションにもなるし、フリーWi-Fiを求めてお客が集まってくるだろうから、ぜひ導入が進んで欲しいサービスだ。
 
  

2014/01/11

長く生き残る超ブランド企業と一夜にして世界を変えるホリゾンタル(水平)分業の覇者

Appleとスタバ

ここ数年絶好調だったサムスンに異変が見え始めたというニュースが流れている。サムスンの営業利益がここ2年で初めて減益し、前四半期比8%減少の78億ドル(約7800億円)であった。それでも十分驚異的な数字ではあるのだが。この驚異的な利益率の67%を担っていたのがスマートフォン事業に陰りが見え始めている。その原因は高級ブランドとしてはAppleに及ばず、低価格路線では中国メーカーが猛烈な勢いで追いかけてきているからだ。

Appleやスターバックスは、圧倒的なブランドという強みを持つ企業だ。性能や味ではナンバーワンではないし、完璧な商品というわけでもない。それでも「もう、それでいい。文句は言いません。あなたの商品が欲しいんです」と消費者に言わせる強さを持っている。こうした企業は米国でもフランスでもタイでも、全世界で同じ価格で販売することができる。購買力平価で考えればとんでもない値段になるのだが、ブランド力があるから途上国でも買ってくれる人はいる。

圧倒的ブランドの獲得に成功した企業は、世界中のどこに行っても殿様商売ができる特権を得ることができるのだ。


ホリゾンタル(水平分業)なビジネスモデルで一分野に圧倒的強みを持つ事業も強い。例えば「衣類を販売する」というビジネスは、商品を選定し、商品を仕入れ、店を作り、陳列し、消費者を集客し、購入してもらう。考え方次第でもっといくらでも細かいステップに分けることができるが、これらのうち一つのストップだけ切り出してそこに特化することがホリゾンタルなビジネスだ。分かりやすい例をあげると、購入時の決済方法を提供するコイニーやSquareのような企業の存在だ。彼らは決済という単一機能だけを提供しているが、そこに特化することで圧倒的な利便性やコストの安さをアピールすることができる。

ホリゾンタルなビジネスは単一機能を提供するビジネスモデルゆえ、スタートアップが短い期間で一気に成長できる可能性を秘めている。一時期ものすごい勢いで成長したグルーポンもまさにそんな企業の一つだ。だが単一機能一辺倒のビジネスモデルは、同時にその一本足を狙われると一気に崩壊するという大きなリスクをはらんでいる。コイニーやSquareは勢い良くレガシーのクレジットカード決済サービスを塗り替えて行っているが、さらに画期的な決済方法が現れれば次に一挙に塗り替えられるのは彼らの方だ。
 
  

2014/01/10

とあるエスプレッソのキャンペーンの話

私のオフィスにはエスプレッソマシンの自動販売機があるのだが、ちょっと面白いキャンペーンをやっていた。

どんなキャンペーンかというと、1月の間に飲まれた数の10%を2月に無料で提供するというキャンペーンだ。1月中に100杯売れれば、2月には恐らく先着順?で10杯無料で飲めるということになる。

実はこのエスプレッソマシン、設置されている場所が悪いこともあって相当売上が悪いようだ。存在は一応フロアの人達に知られてはいるが、一度も買ったことがない人が多い。フロアの人達に存在を思い出してもらい、初めて買ってもらうことが課題だ。そんな状況において、このキャンペーンはなかなか面白いものだと感心した。


費用的に見れば、このキャンペーンのコストは売上の10%ということで、決して小さいものではない。だが、今現在ほとんど見向きもされず日常的に愛用している人もほとんどいない状態では、まず今まで飲んだことがない人に興味を持ってもらい、試しに買ってもらうことが重要だ。その中から一部でもキャンペーンのあとに飲み続けてくれる人が出てくれるなら悪くない投資だ。エスプレッソマシンは結構な頻度で中のコーヒーがらを捨てたりマシンの洗浄が必要になるので、固定費用がバカにならない。だから多少はじめはリターンに乏しくとも、販売数を増やすことで損益分岐点を超えやすくなるはずだ。

環境を考えると、オフィスという固定客を相手にしている立地であるので、仲間内で一致団結、たくさん飲もうという雰囲気になりやすい。必ずしも自分が無料コーヒーを飲めるとは限らないが、イベントとして仕事の合間の息抜きにはなるだろう。

そして、2月になったら無料を期待してこぞって人が買いに来るだろう。先着順にタダで飲めるのではなくて、たまに当たりが出てタダになるとかのほうが飲む人と頻度が高まることだろう。射幸心を煽る方法なので、昨今あまり感心されない方法だろうけれど。


2014/01/08

グロースハックまとめ 2/2


前回のエントリーでは、グロースハックはマーケティングよりも短期的スパンで明確な数値目標を達成するための概念であり、その方法論は商品開発と深く関係するものであることを説明した。マーケティングが売上やユーザー獲得のための間接的で遠回りなアクティビティであるのに対し、グロースハックはより売上やユーザー獲得に対する直接的なアクティビティである。

前回は概念の説明に終始してしまったので、今回はその具体的な方法についても述べてみよう。参考図書は前回と同様、月刊事業構想の1月号だ。

KPI設定の重要性

グロースハックで重要なのは、正しいKPIを設定してその数値を改善するためのアクションとレビューを素早く回す事だ。

正しいKPIとは何だろうか。観点によるが、ことグロースハックに関しては最終ゴールをグロース(成長=売上)に置いているので、KPIは売上に直接的につながる中間目標に置くべきだ。そして正しいKPIは当然ながらサービスによって異なる。例えば広告収入モデルであればUUよりもPVが重要になるだろうが、フリーミアムモデルならば課金ユーザーに違い行動を取る質の高いユーザー数にKPIを設定すべきだろう。

有名サービスが実際に設定している数値を見ると、Facebookでは「登録後10日以内に7名の友達とつながる」をKPIに置いている。Facebookは広告収入モデルなので、最適な広告を表示するためにユーザーがどれだけ自分の個人情報を登録するか、そして広告のCTRを高めるためにどれだけタイムラインを頻繁に見るかが売上に直結する要素だ。Facebookはこう仮説を立てている。多くの友達を登録してもらうことがより多く個人情報を登録する行動を促し、頻繁にFacebookアプリを開くことにつながり、最終的に売上につながる。

ここからは私の私見だが、KPIは目的とする売上に対する直接的な影響を持ちながら、できるだけ具体的な事象にすべきだろう。なぜなら改善案を立てやすいからだ。前述のFacebookのKPIが一週間あたりのアプリ起動回数だったらどうだろうか。確かに売上とは直結するが、考えられるアクションの範囲が広すぎて、どの案から手を付けるべきなのか迷いが出るだろう。一方、登録して10日以内に7人友達を登録してもらうというアクションなら、この人は友達ではありませんか?という通知をアプリ上やメールでプッシュするのが良さそうだ、と優先順序がつけやすい。そのKPIがある程度のコストで最大限の効果が出せたのなら、そこで次のKPIへ移ってさらなる改善をしていけば良い。

AARRRモデルに分解する

グロースハックにおいてもAARRRモデルを活用することで、効率的に改善が図れるだろう。以前のエントリーでAARRRモデルがWebサービスにおける顧客獲得ステップのフレームワークとして紹介したので、ぜひこちらを参照頂きたい。

参考エントリー:

グロースハックを考えるときも、AARRRモデルを意識すると分かりやすい。グロースハックの究極目標は、AARRRの最後のRであるRevenue(換金化・売上)を最小コスト・最短時間で最大化する事だ。自社のサービスがその手前のAARR、つまりAcquisition(ユーザー獲得)、Activation(サービスを経験)、Retention(ユーザーの再訪)、Referral(既存ユーザーがサービスを推薦)のうち、どれが売上に直結する要素なのかを見い出し、そこにKPIを設定して改善してゆくのだ。
 

  

2014/01/07

グロースハックまとめ 1/2


月刊事業構想の1月号グロースハッカーが特集されている。自分の中でも何となくの理解でしかなかったグロースハックについて鱗が落ちた思いがするので、まとめてみよう。

マーケティングから分離した概念

グロースハッカーが担当する領域は、本来マーケティング部門が担当する領域であった。
グロースハックは短期的に売上に直結する施策を、仮説を立てて実行して結果をモニターして仮説を修正してさらに実行する、というPDCAサイクルを高速で回して目標である売上に最速で到達するためのアクティビティだ。ある意味ダイレクト・マーケティングに非常に近い概念と言えるかもしれない。

マーケティングは本来こうしたアクティビティも含んでいたはずだが、昨今では商品をいかに魅力的に見せるかという課題解決のための広告やプロモーション、そして資金調達や採用のための企業自体のブランディングに比重が置かれてきている。いわば大企業が長期的に成長するための半年〜数年単位の長いスパンの施策であり、大きな投資を伴うものであり、そして1つひとつのアクティビティの効果が見えづらい。

これに相対する概念として、グロースハックは長くて数ヶ月、短ければ数時間単位の非常に短いスパンの施策であり、投資は最低限で抑え、KPIで1つひとつのアクティビティの効果を確実にモニターしていく活動だ。そして、企業のブランディングというフワッとした目的ではなく、売上を上げることを至上命題とした明確な目的と目標数値を持つサイエンスなのだ。

製品開発に深く根ざした活動

グロースハックのもう一つの特徴は、その活動が商品の開発に深く関わるアクティビティであるということだ。

広義の意味でのマーケティングには本来製品開発も含まれていただろうが、最近ではプロダクトディベロップメントやR&Dは専門の部署が置かれ、マーケティングとは独立した組織であることが多い。マーケティング活動は商品そのものに働きかけるものではなく、商品の背景やコンテキストに働きかけることで見込顧客の意欲を引き出す活動になったと言えるだろう。これに対し、グロースハックは直接的に商品に働きかけ、KPIをより高いレベルで実現する活動である。

例えばあるアプリをマーケティングする活動とグロースハックする活動を対比させてみよう。マーケティング的な活動でアプリをプロモートするなら、まずは大きなメディアに広告を掲載したり、キャラクターとコラボレーションする、といった方法が主な打ち手になるだろう。商品そのものではなくて、その商品の見せ方を変えることで購買意欲を引き出すのだ。

これに対し、グロースハッカーならばアプリ内のユーザー登録ボタンを真ん中に配置してみたり、右側に配置してデータを取り、より効果が高いUIをあぶり出していく。さらにバイラル効果を出すためにSNSと連携して自動的に登録するといったアクティビティも含まれる。マーケティング活動と比較すると、ユーザーの獲得という売上の間接目標を明確に狙った小さい改善の積み上げの活動だ。


次回のエントリーへつづく。


関連エントリー:
  
  

新しい変化に敏感な吉本興業(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)

OmO

吉本興業グループのよしもとクリエイティブ・エージェンシー(YCA)は、youtubeにタレント発掘プラットフォーム「OmO」を設立した。OmOはYoutubeのマルチチャンネルネットワーク(MCN)という仕組みを活用している。MCNは言わばTV局のようなものであり、YCAが作ったジャンル(≒番組)へ素人が自分の動画を投稿するという仕組みだ。YCAのMCNにユーザーが動画を投稿すると、吉本ファンの視聴者の目に触れる機会を手に入れることができ、さらにマネタイズまでできるのだという。

YCAの思惑としては、素人から新たな才能を持った人材を発掘できるという点と、エンターテイメントの総合商社としてのブランド価値を磨くことにあるのだろう。

素人の才能を発掘するという意味では、Youtubeは既に多くの有名人を排出してきた。世界的な有名ドコロをあげれば、Twitterフォロワー数世界一位のジャスティン・ビーバーは素人時代にYoutubeへ投稿していた動画をきっかけにスターダムをのし上がった。これからもYoutubeは世界的なスターを輩出するプラットフォームであり続けるだろう。

そしてOmOの試みの面白いところが、吉本と言えばお笑いだが、お笑いに限らずファッションや音楽、グルメと言ったジャンルにも手を広げているところだ。お笑い以外に手を広げている理由は、お笑いタレント養成所から総合タレント事務所への変貌という目的もあるのかもしれないし、総合エンターテイメントプロバイダーになろうという壮大な目的があるようにも思える。個人的には後者だったら面白いのだが、これはこの先のOmOを見守らなければ分からない。


吉本興業は、実は創業100年を超える歴史のある企業であるにもかかわらず、OmOのように新しい世界にアジャストし続けている。時代が変われば笑いの質が変わる。笑いをリードし続けながらも時代によって笑いが変わることを謙虚に受け入れてきたことの証だろう。だからこそ今の地位を築いており、これからも総合エンターテイメントプロバイダーとして輝き続けるのではないかという期待をしてしまう。

YCAの柔軟さは、大手企業が忘れがちな「時代の変化はいつも正しい」という原則を思い出させてくれる。
 

  

2014/01/06

2014年のトレンドの一つはグロースハックツール

グロースハック

2013年に話題となったトレンドの一つ、グロースハック。元々の意味は会社の成長(Growth)をつきつめる(Hack)ことだが、Webサービス界隈でよく使われる言葉なので、サービスを利用してくれるユーザー(の卵)を獲得するという意味合いで使われる事が多いようだ。

2014年ではさらにこのグロースハックという概念が定着し、Webサービス向けやモバイルアプリ向けのグロースハックのためのサービスが続々と出てくるだろう。その筆頭となるであろうグロースハック系ツールのプロバイダーがサイバーエージェント子会社の「シロク」だ。

シロクは2013年後半にグロースハック系ツールを3つ立て続けにリリースした。スマートフォン向けにプッシュ通知を行いユーザーのレスポンスを測りA/Bテストを実現するGrowth Push、モバイルネイティブアプリのデバッグを効率化するGrowoth Debug、そして共通ポイントプラットフォームをアプリ利用者に提供するGrowth Pointの3つだ。中でも2014年のトレンドを先取りしているのはデバッグ効率化のGrowth Debug、そしてポイントプラットフォームのGrowth Pointだろう。

デバッグ系のツールではKaizen Platformのほうが一歩先へ進んでいる印象だが、UI/UXの重要性が重視される昨今、2014年はさらに伸びるだろう。開発ツールや開発向けサービスが充実してきたおかげで、一つパズドラのようなヒット商品が生まれると、数ヶ月と待たずに類似サービスがすぐに市場を埋め尽くす。そんな競争環境においてはユーザビリティの重要性が改めて問われているのだ。このトレンドは引き続きベンチャー企業の重要な課題であり続けるだろうから、今後もA/BテストやUI/UX改善系のツールはたくさんリリースされるだろう。

とは言うものの、Kaizen PlatformのPlanBCDもシロクのGrowth Debugも、その本質としてはDebug・UI/UX改善の工数付加と期間短縮に付加価値があり、クラウドソーシングや人材派遣という形でアウトソースすることが差別化のポイントになっている。こうした労働集約的な要素があると、品質を担保するためのマネジメント力や質の高い人材の集積が資産となる。この資産はより多くの経験と規模を持つ企業に貯まり、後発企業が追い上げるのは難しくなるので、先行企業がそのまま逃げ切る可能性が高いと思う。

グロースハックのためのポイントプログラムとの連携も面白い試みだ。だが、シロクのGrowth Pointは独自のポイントマーケットに閉じている試みなので、スケールさせるのが難しい。誰だって何種類ものポイントを集めたくはない。Tポイントなどのメジャーなポイントプラットフォームと組むことができればスケールできるだろう。


2014年はこうしたグロースハック系ツールが数多く生み出され、そこから他の既存サービスとの連携や合併が広がることだろう。
 
 

2014/01/04

手書きの履歴書を求める日本の人事部と、Web化ビジュアル化に進む欧米

新卒で就職活動をしたことがある方はご存知であろうが、日本の人事部は今だに手書きの履歴書とエントリーシートを要求する。一方、米国ではデジタル化されたレジュメ(職務経歴書)の受け入れどころか、Web化、ビジュアル化する方向に動き始めている。

例えばBeyond.comはキャリアマッチングサイトであるが、自分のレジュメをWeb上に作成してあなたの持つスキルセットを必要とする企業からのオファーを待つこともできるし、レジュメ代わりにレジュメのURLを送る事もできる。

サンプルのレジュメを見ていただくと分かるが、Beyond.comは入力した経歴を線表に表したり、シンプルで見やすいビジュアル化を自動で施してくれるため、非常に見やすいレジュメを自動作成してくれる。欧米ではこうしたビジュアルレジュメサービスが百花繚乱でデファクト争奪戦になっている。


翻って日本はどうだろうか。中途採用なら履歴書と職務経歴書のファイルをメール等で送るだけでOKな企業もあるが、こと新卒採用については冒頭に述べた通り手書きを要求する企業がほとんどだ。特に内資系の企業が手書きにこだわっており、新卒採用向け商品の法人営業をしていた知り合いに聞くと、どの企業も自社への志望度を確かめるために手書きの履歴書とエントリーシートを要求するのだという。

全くナンセンスだと言わざるを得ない。志望度の低い人からの応募を減らしたいという意図があるようだが、就活生が当たり前のように100社にエントリーするような現状を見ると、全く目的を達成できていない。むしろエントリーシートや履歴書を手書きする手間のせいで企業研究の時間が取れないという悪循環に至っているのではないか。もちろんこれは学生側にも問題があるのだが。

もしも企業が本当に学生の志望度で選別したいのなら、志望動機書や小論文を書かせるべきだろう。早く日本の人事部も無意味な風習と横並び視点を克服して、新しくて良いものを積極的に受け入れて欲しいものだ。
 
 

2014/01/03

Googleとアウディの提携は氷山の一角

Googleとアウディの連携

年の瀬の2013年12月30日にGoogleとアウディの提携をウォールストリート・ジャーナルが発表した。Android OSによるアウディ車の社内システム開発に関する業務提携だ。音楽再生やカーナビといったインターフェースをAndroid化するという計画のようだが、Androidスマートフォンを通じた遠隔操作やモニタリングなど多岐に渡る連携が考えられそうだ。


モバイル+αの連携

2013年はモバイルと既存商品の連携が大きく取り沙汰された年であった。

これもつい先日のニュースだが、LGの洗濯機とロボット掃除機がAndroidスマートフォンと連携する機能が発表された。LINEを使って冷蔵庫に命令をすると、冷蔵庫内の写真を取って中身を遠隔地から確認できたり、残っているモノを分析してレシピの提案が可能になるという。ロボット掃除機も同様にLINEを使って掃除を指示したり、前回の掃除履歴を確認することができる。

また、クラウドと自動車の連携はもっと歴史が古く、Microsoftとトヨタの連携は2011年に始まっているし、同じくらいの時期にPandoraというインターネットラジオは自動車のラジオとして搭載され始めていた。

もはやクラウドやモバイルといった新しく普及したテクノロジーとレガシー製品の連携は待ったなしだ。

ビジネスチャンスはどこにあるのか

こうした時代の変化をビジネスチャンスとして捉え直してみよう。

・自前主義から調達主義へ

まずレガシー製品を扱う大手企業に求められる態度は、こうした新しいテクノロジーを自分たちで獲得しようとする無駄な努力をしないことだ。日本の電機メーカーを中心に、大手メーカーは自前主義化強すぎるきらいがあるが、あらゆるイノベーションを追いかける体力などあるはずもないので、そこはスタートアップに任せることだ。そして大手企業はビジネスをリードしていくのが良い。

レガシー製品メーカーが新しいテクノロジーのスタートアップと組むことのメリットは、新しい付加価値を追加することによって新しい顧客層を獲得できることにあるのではないだろうか。前述のLG白物家電とスマートフォンの連携は、LINEという若者が使い慣れたインターフェースを利用することによって、若者を囲い込むことができるだろう。

・チャネルの獲得

レガシー製品を扱う大手企業と連携することは、スタートアップ企業にとっては高速エスカレーターに乗るようなものだ。最近スタートアップ界隈でグロースハックという言葉がトレンドになっているが、この概念の誕生はスタートアップ企業が顧客を集めることの難しさの裏返しでもある。レガシー製品を扱う大手企業と連携し、数万、数十万のユーザーへアクセスできれば、スタートアップ企業にとってはグロースハックという大きな手間を省けることになる。そして財務的にも安定した取引先を獲得できることになるので大きなメリットだ。
 
  

2014/01/02

どんな業界にも共通する大きな流れとは何か

以前いくつかのエントリーでも書いたことがあるが、私はIT業界からHR業界に移った人間だ。ITとHRは人材の行き来があまりない、全く違う領域のビジネスだ。だが、もっとメタレベルの大きな流れを見ていると、共通する大きな流れがある。

テクノロジートレンドは業界を超える

まず第一に言えることは、テクノロジートレンド(情報通信分野)はもはやIT業界への影響に留まらないということ。新しいテクノロジーが生まれたときは、ITに限らずHRやその他多くの業界のビジネストレンドを大きく左右する。

例えばソーシャル。テクノロジーの発展によりソーシャルという概念とそれを実現する手段が生まれ、SNSが花開いた。同じテクノロジーを利用して、IT業界の企業は社内SNSやCRMツール、グループウェアなどに派生してきた。そして人材業界では、SNSを活用して人材を見つけるソーシャルリクルーティングや、応募者の人となりをSNSで調査するバックグラウンドチェックなどのビジネスに展開してきている。最近では、モバイルというテクノロジーがIT業界だけではなく、やはりHR業界にも新しいトレンドを生み出している。

このように、イノベーティブなテクノロジーが生まれたとき、そのテクノロジーがあらゆる業界のゲームチェンジャーになりえるということを意識すべきだろう。特に新しい事業を生み出す役割の人達は。

統合と近似する領域への引力

もう一つのメタレベルの大きな流れは、各企業の事業は常に垂直方向への統合か近似する領域への水平移動をするということだ。

モバイルの例で垂直方向への統合を説明しよう。数年前にiPadがタブレットという市場を創りだしたとき、IT業界の関係者はBtoB領域でも大きなマーケットが生まれるのではないかと期待し多くの企業がモバイルマーケットに進出した。端末を売る企業、セキュリティソフトを作る企業、初期セットアップを代行する企業、CRMアプリを作る企業、それぞれが自分たちが最も得意とする領域の商品で参入する。そしてある臨界点を超えると、それらバラバラに提供されているソリューションをパッケージに統合してクライアントへ提供する企業が現れる。いわゆるSIerだ。SIerはクライアントの代わりに、必要な物を集めてきて動くようにする、という付加価値を提供している。

統合しようとする企業は顧客にとって最も付加価値の高いツールを提供している企業であることもあれば、端末を提供しているディストリビューターのこともあり、はたまた元々クライアント企業にITサービスを提供しているアウトソーサーであることもあり得る。つまり、どのプレイヤーも統合するというベクトルに向かう可能性があるということだ。


もっと小さな範囲、例えば機能レベルで統合が発生することもある。先ほどの例で言うと、別々の企業が提供していたモバイルを管理するソフトとウィルス対策ソフトが吸収合併して統合モバイル管理ツールになる、という統合の仕方だ。管理ソフトを作っていた企業がさらに開発を進めてウィルス対策機能を搭載することもあれば、事業買収やパートナーシップで統合されることもあるだろう。

パターンは様々だが、多くの場合、新しく取り込む機能は近似する領域の機能だということだ。CRMツールを作っていた企業がウィルス対策機能を盛り込んだりすることはない。だが、社内SNS機能を取り込むことは十分にありえる。このように小さな統合は近似する領域に引っ張られるように発生するのだ。ソーシャルやモバイルのような新しいテクノロジーはまっさらな紙の上にインクを落とすように忽然と新しい領域を作り、そこから互いに惹きつけられるように近接する領域にインクの枝が伸びていくようなイメージだ。


言語化すると当たり前のようなことではあるが、こうした大きな視点でみるとマーケットの大体の流れがつかめるだろう。そこからより具体的なレベルにブレイクダウンしていけば、自ずとこれから訪れる大きなチャンスや脅威の仮説が立てられるようになるだろう。
 

  

討論や会議で論点を合わせることの重要性

議論

特番が続く正月休み。私も寝正月とばかりに普段見ないテレビを何となく見てしまっているわけですが、深夜になると意外と真面目な討論番組をやっている。おなじみの「朝まで生テレビ」や、他にも教育について素人を交えて討論しているような番組もある。


こういう番組を見ていると常々感じるのが、粒感が違う観点から賛成派、反対派双方が延々と主張を繰り返していることの多いこと多いこと。議論している人達は熱が入って全体が見えなくなっているのだろう。一方が方法論について論じ、他方が目的論について論じているようなことがある。こうしたスタートから決して平行で交わることがない議論を聞いていると辟易するしかない。

討論会や会社での会議でもそうだが、議論が噛み合わない大きな要因は論点がズレていることにある。方法論に対して目的論で反論することもそうだし、ある主張に対してそれを包含する一つ上の概念で反論していると、議論が折り合わない平行線になる。


こうした無茶苦茶な議論にならないようにするためには、二つの方法がある。

まずは、討論のアジェンダ(テーマ、問い)を適切なものにすること。例えば、〇〇に賛成か?とか〇〇は必要か?という問いに設定してしまうと、その根底にある△△という課題に賛成するか反対するか、という話に還元されて、意味のない議論になってしまう。今見ていたテレビ番組では、大学入試に人物本位の入試を導入すべきか、という議論であったが、まったく議論が噛み合っていなかった。賛成派は今の大学入試に問題があるから賛成、という目的論になっていて、反対派は人物本位入試が実現できる手段がないのではないか、という方法論からの主張になっており、ずっと議論が平行線。結局、今の大学入試、ひいては大学教育に問題がありやなしや、という踏み絵状態になっていた。これでは建設的な議論とはいえない。本来この議論は、ある方法論を示してそれをOKか否かという議論をすべきだった。

もう一つは、ファシリテーターが常に論点を整理して議論を導くこと。ファシリテーターは議論を活発にさせることだけでなくて、どの論点について話すべきかを常に議論の場へフィードしなければならない。もし最初に設定されたアジェンダが正しくないとすれば、アジェンダを有機的に変えていく態度が求められる。


どうでも良いことだが、いろんな面で苦難の道を歩いてきたであろうオカマキャラの人がポロッということに、凄みのある真実を感じる。
 

  

LinkWithin

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...