
前回はビジネスにおけるプラットフォームの意味合いとその価値について書いた。
今回はビジネスの世界で成功している(しそうな)プラットフォーム戦略を一つ一つ見ていこう。
■ Appleはエコシステムと利便性で顧客をロックイン
Appleはプラットフォーム戦略のドン。
iOSという魅力的なデバイスと、アプリと音楽の流通経路であるiTunesを垂直統合して一大エコシステムを築いている。
その強固さでは右に出るものはいないだろう。
Appleのプラットフォーム戦略の恐ろしいところは、Appleのエコシステムから離脱することによる資産(有料アプリや音楽、ブックなど)の損失だけではない。
iOS―iTunes/iCloud―Macという統合された環境の過剰な利便性がこのエコシステムから抜けにくくする。
iTunesで音楽やアプリを購入すれば勝手に所有してるiOSデバイスや他のMacで同期されるし、バックアップもユーザーが何の意識もせずに勝手に取られている。
一度この甘やかされた環境に浸ってしまうと、何もかもバラバラで自己管理なMicrosoftやAndroidのプラットフォームに移るのは苦痛になってしまう。
こうして完成されたApple信者(私含む)はこのプラットフォームで搾取され続けるのだ。
■ 顧客のニーズをすべて満たせるスペースを作る楽天
楽天といえば楽天市場が分かりやすいECモールのプラットフォームだ。
このプラットフォームに出店する小売業者はなんと4万店。
利用者は7000万人とも8000万人とも言われる。
これだけでなく、楽天はさらにWebでやりたいことを全てできるプラットフォームを目指しているようだ。
旅行の予約はもちろんのこと、証券口座も開けるし引越の見積も取れるし、Webデザインの発注まで可能なのだ。
この超巨大プラットフォームはどこまで成長するのか楽しみだ。
■ ダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ
前回のポストでも登場頂いたダイヤモンドダイニングの宴会コンシェルジュ。
この企業のプラットフォームが面白いところは、コンシェルジュサービスをベースとして誘導する先の飲食店が全て自社グループだということだ。
そして、顧客がロックインされるメリットとしてダイヤモンドダイニンググループで使えるマイルポイントシステムがある。
100業態・100店舗というアセットがコンシェルジュサービスとマイルポイントシステムを支えている。
一社完結しているという意味では、プラットフォーム戦略の例外と言えるかもしれない。
■ ネットプロテクションズの会員化
ネットプロテクションズは、多くのECサイトで採用されているNP後払という決済サービスを提供しているユニークなビジネスモデルの企業。
ユーザーがECサイトで後払い決済を指定して購入すると、まずネットプロテクションズがECサイトに支払い、そのあとユーザーが商品到着後にネットプロテクションズに支払うという仕組みだ。
この会社にとっては、ECサイトがまず第一の顧客で、ECサイトを利用する消費者も同社の第二の顧客ということになる。
ネットプロテクションの創業は2000年だが、2006年に全く同じビジネスモデルで後払いドットコムというサービスが生まれた。
唯一無二のビジネスモデルに競合が生まれたというわけだ。
しかも後発らしく、ネットプロテクションズよりも安価な手数料率の設定だ。
しかし、ここでプラットフォーム戦略の出番だ。
ネットプロテクションズの柴田社長によると、ネットプロテクションズの後払いを利用した顧客を会員化することを狙っているという。
後払いを利用した顧客を会員化したあとにどのようなビジネスプランを描いているのかはわからない。
しかし、会員化されたプラットフォームを作り出して消費者にとっての付加価値を上げ、消費者がNP後払いを好むように仕向ける。
すると、必然的に消費者が選ばない後払い.comを離れてECサイトはネットプロテクションズに戻ってくるというわけだ。
■ タイムズ24は駐車場をプラットフォームに
これは少し番外編になるかもしれないが、タイムズはコインパーキングをプラットフォームにしてカーシェアリングという別のビジネスを展開している。
アライアンスパートナーは土地と車を提供するオーナー。
タイムズ24はコインパーキングをプラットフォームにして顧客をロックインしているかというと、決してそうではない。
むしろ全く逆で、カーシェアリングは車を持たない顧客層を取り込むビジネスモデルだ。
プラットフォームを活かした、とてもユニークなビジネスモデルだ。
平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ
東洋経済新報社
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photo credit: Gumdrop Sweet via photopin cc