
正社員募集広告の業界では、マイナビの毎日コミュニケーションズやリクナビのリクルートジョブズとリクルートキャリアなど、人材大手の活躍が目立つ。
だが一方で、非正規雇用募集広告の領域では、リブセンスなど新しいベンチャー企業の活躍が目立つ。
前回リブセンスについて取り上げた記事では、リブセンスが既存の非正規雇用募集メディアから破壊的イノベーションで顧客を奪っていることについて書いた。
→2012/12/22 リブセンスのしたたかなビジネスモデル
→2012/12/22 リブセンスのビジネスモデルは破壊的イノベーション
私も含め一般大衆は分かりやすい勢力図が好きなので、旧帝國が新しい革命家たちに滅ぼされる図よろしく、革命家ベンチャーが一方的に旧帝國大手をキリキリ舞いにさせていると思いがちだが、決してそうではない。
たまたまリクルート内部の人から事情も聞けたので、少しリブセンス対リクルートジョブズの新旧対決について書いてみたい。
まず、現状の比較だ。
リブセンスが23億円の売上見込でリクルートジョブズが670億円の広告取扱高を誇る。社員数ではリブセンスがアルバイト含め約80名、リクルートジョブズが約1900名。
リブセンスはアフィリエイトモデルのウェブ専属媒体。
リクルートジョブズは紙媒体とウェブ両方を活用したハイブリッドな広告代理店モデル。
リブセンスは主に2つの武器で人材募集広告業界に一石を投じた。
一つは、成功報酬型のビジネスモデル。
これまでの広告枠の販売モデルと違い、採用が決まらない限り費用は発生しないので、企業は気軽に採用広告をうてる。
もう一つは、SEO。
リブセンスは紙媒体を持っていないので、いかに「アルバイト+〇〇(地名)」という検索ワードで自社のウェブメディアに求職者を集めるかが重要だ。
SEOに関する深いノウハウを持っていたため、リブセンスはアルバイトと地名の検索ワードで大体トップ表示される。
一方でリブセンスの弱点は垂直的なビジネス展開ができないことにある。
ローコストオペレーションのため、顧客との接点が薄い。
顧客のビジネスを理解していないから、新たな価値提案が難しいのだ。
別の言い方をすると、顧客コネクションという資産がない。
その結果、同じビジネスモデルを他の分野で提供する水平的展開が事業拡大の手段になる。
例えば実際にリブセンスが事業展開している住宅情報や中古車情報などだ。
逆に、リクルートジョブズは膨大な営業社員を有し、顧客企業とのコネクションを持つ。
つまり、顧客コネクションという資産を有している。
顧客コネクションを有しているリクルートジョブズは、顧客に働きかけて新しい価値提案が可能なのだ。
新しい価値提案とは、例えば正社員の代わりに複数の非正規雇用者でワークシェアリングすることだ。
国内の人材市場は基本的に縮小していくことが運命づけられている。
海外へのアウトソーシングや生産年齢の現象のためだ。
人材系の企業が新たなビジネスチャンスを開拓するには、採用する企業側に採用の変化を促すしかないだろう。
例えば、フルタイム働くことができない子育て中の母親や、要介護の親を持つ人々の積極的雇用だ。
一人の正社員の仕事を分割して2人以上のパートタイムや業務委託の人材を採用するのが今の日本社会に沿った雇用のあり方だ。
こうした企業側の行動変化を伴う新しいビジネスモデルの開拓には、顧客企業との密接な関係性が不可欠。
だからこそ、顧客コネクションという資産を持っていることが重要になる。
リブセンスは水平に事業展開するしかないが、リクルートジョブズは垂直的展開が可能なのだ。
しかし、ビジネス展開の優位性の違いは決して固定的なものではない。
リブセンスは売上規模でいえばリクルートジョブズの30分の1だが、社員数では20分の1で、ビジネスモデルの割に社員数が多い。
上場のために採用を増やしたことと小規模ゆえの管理部門の効率性の低さがあるのかもしれないが、もしかしたら顧客企業との接点を持つための営業社員を抱えたり、新規事業の企画メンバーを増員して新たなビジネス開拓を目指しているのかもしれない。
新旧対決は今後も目を離せない。
リンダ・グラットン
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photo credit: Will Cyr via photopin cc
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