割引前の元の値段を高く釣り上げて割引率を高く見せる不当価格表示だ。
楽天イーグルスの優勝に湧く楽天市場では、監督の背番号77番にあやかって77%引きのセールを大々的に行っていた。楽天市場は公認のいくつかの店舗で77%引きセールを行っていたのだが、77%引きセール公認ではない他の店舗でも便乗して77%引きセールを開催していたのだという。普通の商品では、定価の23%なんてもちろん利益を出すどころか原価にもならない。
楽天の発表によると、17店もの未公認セールの店舗が1000品目に及ぶ範囲で不当価格表示を行っていたという。値引き前の価格を4倍程度に不当に釣り上げて、売価はそのままにすることで77%の割引率をでっち上げたのだ。子供だましレベルの詐欺のような話だが、17店もの店舗がこの悪事に手を染めた。また、正規の77%セール公認店でも3店舗が同じ不当価格表示をしていたのだという。楽天市場のチェック体制もあまりにもお粗末だったと言わざるを得ない。
楽天がこの事件に対してどのような対処を取るかで、楽天の企業倫理が浮き彫りになるだろう。
ECである以上、対応はさほど難しくないはずだ。割引率をアピールしている商品はその値引き前価格が定価よりも高くないか、または競合店との通常価格を比較して著しく高くないか、というチェックロジックを埋め込む事ができる。それに、不当価格表示に限らず、ユーザーの信頼を裏切るような店舗はネガティブコメントが集まるはずなので、店舗に対する評価を検索表示順に反映する事もできるだろう。
だが、こうした様々な対策が考えられるにも関わらず、現時点で楽天は信頼度の高い店舗を優先し、悪徳業者が自然に駆逐される仕組みを取り入れてはいないようだ。商品検索した言葉と全く違う商品が山ほど出てくる今の検索システムを見ても、あまりユーザーの利便性向上やユーザーの保護を考えられてはいないように見受けられる。
それもそのはずで、ビジネスモデル的に楽天は店舗オーナーが多ければ多いほど儲かる。固定費の出店料は一番安いプランで月額約2万円、売上に対する手数料が3.5〜6.5%だ。無論大きな売上を上げる店舗がたくさんあったほうがいいのだが、ある程度有名なブランドや店舗が出揃ってしまえば、それ以上大手店舗で急激に売上を増やすのは難しい。だが、固定の出店料プラス多少の売上手数料を回収できる小型店舗を大量に増やす余地は十分にある。さらに、店舗オーナー向けのセミナーやらサービスで、オーナーからのキャッシュポイントを増やしているのも楽天市場のビジネスモデルの特徴だ。こうしたビジネスモデルでは、極端な言い方をすれば買いまわりしてくれる買い物客は、お金を払ってくれる本当のお客である店舗オーナーを集めるための材料に過ぎない。楽天的には、買い物客の優先度は後に回らざるを得ない。
ネットでの薬品販売でECの信頼性が焦点になっているが、薬品のEC販売拡大を推進する楽天の三木谷社長は、今回の事件で図らずも自らECの信頼性を損なう事態を引き起こしてしまった。楽天は本腰を入れて上記に上げたような対策を取らなければ、長期的にネガティブなインパクトを持つダメージを追うだろう。買い物客の優先度が下がらざるをえないビジネスモデルで、どこまで楽天は本気を出せるだろうか。
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